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非日常奇譚/絞殺欲求・十二支編  作者: 柊木 渚
始まり始まり
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【始まり始まり】05【

 一旦整理。

 ここはミステリー研究部で、さっき机の上で仁王立ちをしながら自称神様を名乗る僕っ子が居て日本人形の様にどこか儚げな、けれど装いと反してわんぱくな容姿―――って情報多すぎ、意味が分からん!

「帰る」

 脳がパンクしそうな程に情報過多な室内を目の当たりにした僕は踵を返して旧校舎を後にしようとするがそれを止めるように誰かに後ろから肩を掴まれた。

「僕に恐れをなしたかモリアーティ、ミストに連れられてここに来たのだろう?まあいいから中に入って行きたまえよ。事件はまだ始まったばかりなのだから」

 耳元で自称神様がそう痛々しく囁く。聞いているこっちまでもむず痒くなってしまうほどの痛い言葉の連続になおの事ここにはいられないと肩に置かれた手をはがし

「嫌です。帰ります」

 と立ち去ろうとするが

「まあまあ、良いではないか」

 ・・・・・・

「嫌だあ!厨二病の相手なんかごめんだ!」

「お願いですから少し、少しで良いので!」

 何なんだこいつ!腰に引っ付きやがる上にさっきまでの厨二病口調が噓のように普通に喋るじゃねえか!

「離れろ自称神様!」

「残るって言うまで離さないぞ!」

 往生際の悪い自称神様のこった。

 何度か揺らしたりするもへばりついて離れない。

 そんなこんなしていると横から霧縫さんが声を掛けてきた。

「私からもお願い、せきちゃん根はいい子だから話だけでもいいから聞いてあげて」

 せきちゃん?この子の名前か?

 う~~ん、そう言われると断りずらいし霧縫さんのお礼も兼ねてここに来たわけだし話くらいなら――

「まあ、霧縫さんがそう言うなら・・・・・・」

 渋々霧縫さんにそう言ってから腰に引っ付いて離れない無様な自称神様に

「分かった話だけなら聞いてやるから離れろ」

 というと自称神様は霧縫さんを少し見てアイコンタクトで状況を把握したらしく引っ付くのを止めて顔を輝かせながら

「そうか!ならはいりたまえ!僕の禁書庫を見せてやる」

 と、またも痛々しい言葉を発しながら部室に入っていく。

 僕も霧縫さんの後に続いて部室に入る。

「改めてようこそミステリー研究部へ」

 さっきまで居た教室と同じくらいの大きさの部屋で壁沿いにズラリと置かれた本棚、ドアを開ける為のスペースを空けてあるだけでそれ以外は本棚で塞がれている。ドアと対照的な場所の位置にあるであろう窓は本棚によって隠されていて窓としての機能を失っている状態にあった。

 非情に暗い室内を照らす一本の蛍光灯がどこか探求心や心地よさをまさぐってくるような感覚を覚えながら僕は室内を見回してみる。

 本棚に並べられている本は一見して全てが推理小説である事が分かる、入り口入って左の本棚にはアガサ・クリスティーやアーサー・コナン・ドイル等の外国人の推理作家が執筆した作品群が並べており右側の本棚には江戸川乱歩や坂口安吾などの日本人の推理作家が執筆した作品群が並べられていた。

「なんだよこれ・・・・・・すっごい量の推理小説ばっかりじゃん!」

 その光景に度肝をぬいていると部屋の中心に置かれた大きな円卓の奥でふんぞり返りながらこちらをニヤニヤと嘲笑いながらせきが

「どうだい、ここにある推理小説達は僕が一から集めたものなんだ。凄いだろ~、おやおやどうしたワトソン君。まるでライヘンバッハの滝で死んだはずのホームズが生きていたみたいな顔をして――」

 こいつに向かって素直に凄いって言いたくない・・・・・・

「それでミステリー研究部ってのは何をする部活何ですか?」

 本題に入ろうと率直にそう尋ねると待っていた言葉とは違ったようで少し拗ねながら

「ミステリーを研究する部活だよ、それぐらい分かれ」

「何拗ねてんだ。って名前そのままじゃねえか!」

「そのままで悪いか!」

「いや、悪くはないけども・・・・・・」 

 実際のところこれだけ多くの推理小説があるのなら研究のしがいもあるだろうし名前そのままでもいいのかな。

「ほほぉ~、もしかしてワトソン、お前推理小説好きだろ」

「何でそれを―――じゃなく自称神様さ、そのワトソンってのやめてくれます?僕には大城 白野って言うれっきとした名前があるんで!」

「さっきから私のことを自称神様ってなんじゃいそれ!僕はれっきとした神様じゃい!それに私にも神野かんの 生姫せきってしっかりとした名前もあるんじゃい!」

 そう言って生姫と名乗る神様は近くに置いてあった紙にマーカーペンででかでかと名前を書いて見せつけてきた。

「生姫だから自分の事神様って言ってたのか―――いやくそ寒いんだが!」

「五月蝿い五月蝿い!そっちこそ大城ってなんだ!お前こそその身長でよく言えたもんだな!推定百六十センチだろどうせ!」

「残念!百六十五センチですうぅ~!それに生きる姫で”せき”ってキラキラも大概の名前じゃねえか!名付けた親を見てみたいな~!」

「名前を愚弄するかこの大城ならぬ小城野郎!」

「受けて立つぜキラキラネーム!」

 こうして生姫と僕の今世紀最大のどうでもいいマウント合戦の火蓋が切って落とされた!

「そこまでですよ二人とも!仲が良いのは良いですが喧嘩は駄目ですよ!」

 火花を散らす僕らの間に割って入り叱りつける様に霧縫さんはそう言って僕らが切ったはずの火蓋を瞬間接着剤によって修復した。

「「すみません」」

 どちらもしょうもない事だと気がついていたのであっけなく二人とも謝って和解となった。

「それで?実のところ大城、この部活に入る気はあるか?」

 何事もなかったかのように平然と標準的な言葉で生姫は問いかけてきた。

「まあ楽しそうではあるから嫌ではないな―――って生姫、さっきまでの厨二病どこいった」

「ただの設定だ。気にするな」

「設定かよ!」

 面倒くさくやつだなまったく!

「それじゃあ大城君も入ろうよ!うちの部活今年結成したばかりでせきちゃんと私の二人しかいなくて廃部寸前なんだよ」

 それで僕を呼んだのか、でもなあ部活か~

「このミステリー研究部に入ると特典でもれなくここにある推理小説が読み放題だぞ」

「大城 白野入部します」

「即決ですか!」

 この量の本をタダで読めるんだ。ここで入らなきゃ男じゃない!

「そうか、これからもよろしく頼むぞ大城」

「ああこちらこそ生姫」

 僕は生姫に近づき熱い魂の籠った握手を交わした。

 なんかこの僕っ子とはこの短い間で親睦が深まった気がする。

「お?」

 握手を交わし終わった後にポケットに入っているスマホから鳴動がしたので取り出してみると父さんからメールが届いていた。

 父さん

『引っ越しの段ボールの中に入ってる赤いファイルを取ってこの住所に急いで持ってきてくれないか?』

 住所と共に端的に書かれたメッセージに僕は断る理由も無いので『分かった』と返信した後に帰宅する為二人に

「すみません急用が出来ちゃったので帰りますね、それと入部届は明日こっちで勝手にだしとくんで」

「そっか、じゃあまた明日ね大城君」

 と霧縫さんは手を振って言い、生姫は

「夜の外出は自粛するんだぞ~じゃあな大城~」

「なんだそれ?って急がないと、それじゃあ二人ともまた明日」

 学校から自宅まで自転車で三十分は掛かる、出来るだけ早く届けないといけないし今は急ごう。

 生姫の発言に疑問を抱いたがそれどころじゃないので明日改めて言葉の意味を教えてもらう事にして今は帰る事にした。

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