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非日常奇譚/絞殺欲求・十二支編  作者: 柊木 渚
絞殺欲求・十二支編
20/36

【第二章 事件と猫】02【

「なんだってこんな――痛っ!」

 何重にも編んで作り上げられたであろう太い麻縄を自身の方へ強く引っ張るがチクチクと手に麻が刺さりって上手く手に力が入らずすぐ離してしまった。

 手から離れた麻縄はビシンッ!と音を鳴らしながら縄を張ってしまった。

 助けを呼ぼうと辺りを見回したが人っ子一人おらず車も通らない状況であった。

「どうする、どうすれば――そうだ紙!」

 神野から渡された紙をふと思い出してポケットから取り出す。

「・・・・・・はあ?!彼奴!もろ犯罪じゃねえか!」

    事件に遭遇した場合。

 1被害者の写真を撮ってメールで送信。

 2君の母親、三奈木さんに電話。

 3順序が逆になってしまう状況の場合は頑張れ!

 4以前の事件について三奈木さんから出来る限りの情報を聞け。

            LIME/ID○○××

                    頑張れ大城/生姫より

 紙には綺麗な字で箇条書きでそう書かれていた。

「本当に生姫の頭を疑うぞ!こんなのモラルもクソも無いじゃねえか!――あぁもう!」

 紙に向かってそう吐き捨て逡巡するも自身の為にも従うしかないと判断してまずはは母さんに電話する。

『はく、こんな時間にどうしたの?』

 外に出ているのだろうか、車や選挙カーから聞こえてくる演説等の環境音が電話越しに聞こえてくる。

「今すぐ来てほしいんだ!人が、人が橋に吊るされてる」

『分かった急いでいくわ!場所を教えて、奏!予定変更だ。席を変われ!』

『ふぇえ~!またですか~~!』

 現在地を教えると母さんの方から一方的に電話が切られた。

 それにしてもいつもながらこの橋の人通りの無さは異常だ。

 まるで現実から切り離されたんじゃないかと疑う程に静寂と孤独に包まれている。

「あ、おーい!そこの人!助けてくれないか!」

 電話後数分が経った時だった。よく見ると反対側の歩道に誰か立っているのが見れた。

 街灯が無く顔や体型といったのは判別ができないがそこに居るのは何となく雰囲気で分かる。

「人が吊るされているんだ!助けてくれないか!」

 僕の声に反応を示さないその者は再度助けを求める声を聞き終えるとスっと何事も無かったかのようにどこかへ歩き始めた。

「何だよ彼奴――」

 不気味にも程があるぞ・・・・・・

 それからすぐにサイレン音と共にパトランプを回して荒々しい走行をしながらパトカーは路肩に急停止した。

「はく!」 

 停車したパトカーの窓から出てきたのは母さんだった。

「もっと普通に登場できないのか・・・・・・」

「何よその言いぐさ、それより吊るされてるってのは・・・・・・これか、奏!早く来い!」

「ぎ、ぎもぢわるい」

 母さんの言葉で助手席から今にも吐きそうな顔をしている以前にも一度会ったことのある女性警察官が出てきた。

「早くしろ!はくも手伝って」

 母さんは後ろポケットから手袋を二セット取り出して一つを僕に渡してもう一つを自分の手にはめた。

「縄を手に取れ――いくぞ、せーの!」

 母さんが先頭で縄を軽く引っ張って後ろの僕と奏さんが握る場所を確保してから掛け声と共に縄を引っ張り始めた。

「おぼいい!」

 後ろから弱音を吐くような声が聞こえてくるが一分も経たない程で縄はガコンと鈍い音を鳴らして橋の裏側につっかえた。

「くそ、つっかえたか――ちょっと持ってて、合図を出したら一気に引っ張って!」

「ええ!」

 母さんは縄から手を離して橋の手すりを跨いでギリギリ足が置ける位置に移動してから縄を手で揺らし始めた。

 縄を伝って揺らしているのを感じて何となく母さんの行動の意味は理解できた。

「今だ!」

「「せーのっ!」」

 揺れが最高潮に達した瞬間、母さんからの合図で僕と奏さんは息を合わせて思いっきり引っ張り上げた。

 縄の先端で縛られていた人の姿が現れた。

 母さんは最後に手すりを跨いだ状態で吊るされてた被害者が引っ掛からない様に持ち上げて橋の中に入れた。

 縄から手を離して僕らが呼吸を整えていると母さんは腸が煮えくり返る様子で怒鳴る様に「クソ!」と声を荒げ、パトカーに戻って無線でなにやら話し始めた。

 母さんが去ったのを目にして僕は立ち上がり、死体近くに行くとポケットからスマホを取り出して二人にバレないように隠し撮った後にすぐにしまった。

 暗がりであまり分からないだろうがフラッシュをたいてはばれてしまうのでフラッシュをたかずにして撮るしかなかった。

「牛のマスク?――それに・・・・・・」

 写真を撮ってから被害者を注視すると頭部に牛のマスクを被っており、前の事件同様に首から垂れ下がるホワイトボードには【猫より無作為の愛をこめて】と書かれていた。

「はく!離れなさい!」

 話し終わったのか母さんが僕の元へやってきて左手を引っ張りながらパトカーの近くへ連れていかれた。

「あれは、前の首吊りと何か関係が・・・・・・」

「貴方には関係ない事よ、さあ、パトカーに入っていて」

 僕の言葉に被さるように強めに母さんは言った。

 関係ない、そんな訳あるかよ。

 母さんの手を振りほどき僕は不満の声を垂らす。

「この事件は一体何何だよ!教えてくれよ母さん」

 震える両手で僕の頬を包みこみながら母さんは

「お願いだから事件の事については聞かないで、貴方にはもう危険な目にあってほしくないの」

 神野達から聞いた今だから分かる。

 母さんは誰よりも僕の事を思ってそう言っているんだと、だからこそその言葉を吐かれてしまっては次の言葉が出てこない。

「分かったよ・・・・・・」

 言いたいことは色々あったがぐっとこらえ、僕がそう言うと「ありがとう」と優しく言ってから奏さんを呼んだ。

「奏!ちょっとはくの事見ててくれる」

「は、はい!」

 言われるがままにパトカーの後部座席に座り母さんは一人被害者の元へ向かった。

「災難ですね、二回も事件の第一発見者になるなんて」

 助手席に乗り込んだ奏さんは苦笑いを浮かべながら僕に話しかけてきた。

「貴方の方こそ母さんの運転に付き合わされて心中お察ししますよ」

 家族で極稀に外へ出かける時は何時も父さんが運転していたのを思い浮かべ、命拾いしていたという事実に胸をなでおろしながら言うと

「はい!そうなんですよ!三奈木主任に聞かれたら殺されそうですけど、あの人の化け物みたいな運転は毒でしかないんですよ!あんなの後五回くらい運転されたら私ストレスで死んじゃいます!」

 凄い気迫でうんうんと頷きながら僕の言葉に同意した。

 そんな話をしていると後方から数台のパトカーがサイレン音を響かせながらやってきた。

 追加で三台のパトカーが路肩に停車しぞろぞろと被害者の元へ集まり始めた。

 ライトを点灯して被害者を確認しながら母さんと何やら話してから僕の方へライトを向けて確認し、また話し始めた。

「これって以前の事件と容疑者が連続して行っているんですかね――」

 母さんから聞くのは難しいと踏んだ僕は奏さんに犯行について聞くことにした。

「う~~ん、私の見解だとそうですね。ホワイトボードといいマスクといい昨日の犯行と場所は違えど犯行の手法は同じですからね~」

 奏さんはどうやら他の仕事をしているのか俯きがちに何となくで答えていた。

 好機と見た僕はポケットからスマホを取り出して神野のLIMEIDを打ち込んだ後にメッセージを開きながら話を続ける。

「母さんは前の事件で何か気がついたりしてましたか?」

「う~~ん、そうだな~、特には無いね。指紋が一切無かったしあの建物周辺に監視カメラは設置されていなかったからね~、一番近くの道路付近に設置されていた監視カメラを調べても特に異常はなかったし~」

 本当にこの人、べらべらと喋ってくれる・・・・・・・まあその理由は粗方僕が母さんの息子だからだろうけど。

 メッセージに写真を添付し、すぐさまこちらのスマホに入っている被害者の写真を消去したと同時に母さんが後部座席のドアを開けて、

「はく、事情聴取をしたいそうよ。長くはなるから申し訳ないんだけどいい?」

 と言ってきた。

 スマホをポケットにしまってから「分かった。すぐ行くよ」と言ってから奏さんに向けてお礼を述べた。

「ありがとうございました」

「あいよ~」

 軽くあしらわれながら僕は後部座席から出て男性警官の元へ行き、別のパトカーの中で事情聴取を受けた。

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