第2話帰還
第2話です。短いです。
「君、よくもやってくれたね」
朝目が覚めたら白い空間にいた。
淡い桃色の髪にツインテール、日曜日の朝やってる変身して戦う少女のアニメみたいな衣装の幼女が目の前にいた。
「僕は夢と妄想の神ドリム」
不機嫌そうに自己紹介したドリムと名乗る幼女。
どうやら俺は神に誘拐されたらしい。
「昨夜、夢の枷が機能しなかったから大変だ。見てよ」
そう言って渡されたタブレット端末には生気の抜けた人々の姿が写っていた。
「……」
そもそも夢の枷とは何なのだろうか。
「意味がわからない。説明してくれないか?」
「夢の枷が無いと人類は絶滅してしまう」
「絶滅?」
「睡眠の間、僕は人々の魂を創造された世界で疑似体に移す。そしてそれぞれの願いが叶えられた後、願いを叶えた事による充実感以外を消去して地球に戻す。そして充実感を糧にした人々が世界を発展させるキッカケに繋がるんだ。その消去装置こそ夢の枷。人間の欲望は果てしない。創造された世界の出来事を人類が思い出して現実世界で生きる事を辛いと思ってしまうのを防ぐためのモノだったんだ。でも昨夜、夢の枷が機能しなかったから人々は既に現実世界で生きるのに嫌気がさし始めてやる気をなくしているんだ」
「それを何で俺に言うんだ?」
「これを見て」
そう言った幼女の手には小さな小瓶。
「君の為に創造された世界の住人だよ」
小瓶の中にはマステールが閉じ込められていた。
「創造された世界は本来なら一日が経過すると自然に消滅する。この住人は経過する前に何らかの方法で世界を渡って他の創造された世界を回ったみたいなんだ。そのせいで夢の枷に負荷がかかって機能しなかったんだ」
カアッと足元が輝き出した。
「今から送るのは最悪の世界。神が倒すことが出来ずに封印された邪神が数多く存在しているんだ。人々の平穏を乱した君に神である僕は罰を与えないといけない。君の夢の住人と共に送る。一年経ったら呼び戻すよ」
俺の視界が真っ白に染まった。
八年後━━
「随分と地球も変わってしまったな……」
白い空間で呟いた神━━ドリム。
夢の枷が機能しなかったのはドリムのミスだった。
双士は勘違いで異世界送りにされたのだった。
それから八年が経った現在、転移魔法が発動しなかった事からドリムは双士を死亡したと思っていたが……
「こ、ここが神の世界!?スーッ、ハーッ!神気で満たされていますね!ここなら私の発明が捗りそうです!」
「静にしろ。メフィス様が困るだろう」
「わーい!久しぶりに空気がキレイだー!」
「リーダー皆が煩い」
「お前ら全員黙ろうな」
突如空間に穴が開き、五人の人間が現れた。
そして一人がドリムの目の前に立った。
黒い長髪に道化師の仮面。紺碧のコートを纏った人間。
「君達は何者だ!」
神である自分の神域に穴を開けて現れた存在に警戒体勢に入る。
「酷いな……覚えていないのかよ」
コートの人間が仮面を外した。
「俺の名前は夢藤 双士。神によって異世界に送られたが無事帰還した男だ」