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 臨時国会で突如、ボセニカ首相が提案したのが、

名簿式全国一律比例代表制度

 それだけでも国民も、国会議員も、大きな衝撃に見舞われたが、ボセニカ首相の言葉は終わらなかった。

「私が将来的に実現させたいのが、選挙のない参議院であります」

 ここでアゲオブビは、内閣職員から配られた書類を、今一度、読んでみた。しかし、そこに参議院についてなど書かれていない。

「おいおい、ボセニカ首相はどうなったんだ?」

 画面のボセニカは正面だけを見据え、言葉を続ける。

「ここで皆様に思い起こしてほしいのは、長く続いた鎖国を解き、列強からの独立を守り、近代国家を作り上げて来た、我が国の歴史であります。私は何も、今の時代に富国強兵をしろと言っているのではありません。この国が、急速な近代化を成し遂げ、列強に負けない独立国家を築き上げた来た原動力に、時の選挙に左右されない、不動の政治的リーダーシップがあった、と言いたいのです」

 ボセニカが話している場が参議院ではなく衆議院の臨時国会ということもあり、その場はだんだんとざわついて来た。しかし、ボセニカの言葉は続く。

「私は参議院を、首相経験者、各党の代表経験者、さらには各県の知事経験者などを一定の参加条件の元に集結させた、この国の政治経験者の知恵が蓄積された、言うなれば、我が国の賢人会議的な組織へ向け、改編を提案したいと思います。本来、参議院の理想は、良識の府であります。ところが、衆議院も参議院も任期は異なるとは言え、同じような選挙制度の元で議員が構成されていて、良識の府は実現するでしょうか?これは理想の実現のための改革であります」

 画面のボセニカの顔をじっと睨んでいたアゲオブビが叫んだ。

「おいおい、これは早い話、ボセニカ首相の延命策じゃないか。彼は5期目で、もう後はない。さっき、参院の構成メンバーとして首相経験者なんて言ってたが、首相を辞めても、党内に、ミス国政治に影響力を残したい。彼の狙いはそれだろ」

 それを遮るように言葉を発したのは、ヨマバだ。

「ミス国の周りには、政治体制の違いで、指導者が変わらない国がいくつもある。この国で合法的に、腰の据わった政治を行うためには、これくらいの改革は必要だろ。俺は支持したいが」

「何、言ってるんです。これは明確に憲法違反ですよ」

 そこで大声を上げたのは、バデパフンだ。

「ミス国の憲法には、衆議院も参議院も選挙によって議員を選出すると書いてあります。それに立候補者に特別な制限を加えない、とも書いてあります。選挙をしない、メンバーに首相経験者を結集させるなんて参院改革は、明らかに憲法違反です」

 バデパフンの声は直接、ボセニカ首相には聞こえないはずだが、そんなヤジがあったのか、少し間が空いて、ボセニカが話し出す。

「無論、私がお示しした参院改革が、今の憲法では、難しい改革であることは承知しております。よって、その理想を実現させる第一歩が、次回の名簿式全国一律比例代表制度による衆院選です」

 ボセニカが憲法に言及したこともあり、国会の中は様々な野次と怒号で、騒然として来た。

「国滅びて憲法あり、それで政治家の使命を果したと言えますか。選挙に通るだけが政治家の仕事じゃない。法案説明は以上です」

 ボセニカは、そう言うと、演壇から去って行った。

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