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安全対策強化

お待たせいたしました。

ブックマークやいいねをしてくれた方々、有り難う御座います。

今回も僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。

 〇九七 安全対策強化



 屋敷に帰ると秋穂母上に、明日の午前に仮設の台所小屋を建てる話をするが、二刃姉上が気に入ったのなら問題無いと、今の台所を直接改装しても良いとの許しを得た。意外と秋穂母上も新しい調理の魔道具を気に入っていたのかもしれない。

 それを聞いていた二刃姉上が手を叩いて喜んでいるが、結婚が決まれば来年にも家を出る事を忘れているのだろうか。

 その後、皆は既に済ませたというので、僕も夕食前に風呂に入って汚れを落とした。


 夕食の献立は雷鳥の親子丼だった。

 日本ではたまに実の親子じゃ無いからこれも他人丼だ、(など)という捻くれ者も居た様だが、これは正真正銘の親子丼だ。

 だからといって本来は味が変わる訳でも無いのだが、やはり自分達で狩った獲物の料理は普段もよりも美味しい気がする。

 達成感とかの心理的な調味料が効いているのかもしれない。実際三琅兄上と三刃も夢中になって食べている。


 食後は何時もの団欒なのだが、今日は三刃達が買い物に行った先での話を楽しそうに語っていた。


「色々なお店を見るのは楽しかったけど、通りを抜ける度に二刃姉上が男性に声を掛けられてて、中々進めなかったのです」

「年頃の未婚の娘が町中を歩けば、その様な事も有るでしょう」


 和富王国でも日本の様に女性は左手の薬指に指輪を付けて、既婚や婚約済みである事を周知する風習がある。

 既に相手が居る事を周知する事で余計な問題の発生を防ぎつつ、同時に未だ相手が決まっていない事も周知する為だ。

 和富王国では少し前の日本と同じ様に、結婚は一種のステータスにもなっている為、結婚して半人前、子を持って一人前という風潮は根強く、皆、結婚には積極的なのだ。

 更に、適齢期を過ぎても未婚だと、人として問題が有ると考える者が多いのも原因の一つだろう。

 実際、和富王国では余程の問題が無ければ殆どの人が結婚しているのだから、無理もない。

 尤も子を作る事も功績になるのだから、これ等は恐らく過去の覚醒者が広めた価値観なのだろう。

 なので余程焦っているのか、中には少し強引な軟派男も存在する。


「何人かしつこいのがいたけど、二刃姉上が投げ飛ばしてたのが面白かったのです」


 三刃は、二刃姉上が絡まれて返り討ちにするのを、何故か楽しんでいた様だ。

 三刃も後四~五年も経てば同じ目に合うだろう事に、未だ気付いていないらしい。良い縁談が来る事を祈ろう。


「断られたら素直に引くのが男だろうに、無様なものだな」


 三琅兄上はしつこい男が気に入らない様だ。


「しかし幾らしつこいといっても、武家の者が素人さんに武力で打って出るのは感心しませんね」


 春菜母上は弱い者虐めに感じているのかもしれないが、二刃姉上より強い者等、武士や術師の上位陣以外は滅多に居ないのだから仕方が無い。


「春菜母上、二刃姉上が投げた者は、皆、断られると刃物を持って襲って来たからです。此方から手を出した訳ではありませんし、二刃姉上はそれでも武器は抜いていません」


 春菜母上の、二刃姉上に対する苦言に五狼が理由を説明する。


「只の声掛けにしては物騒ですね」


 秋穂母上が心配そうに話す。


「何しても、やられたらやり返す、極当たり前の事だ。道場を営んでいると腕試しにと襲って来る者も一定数湧くからな」

「一狼様、道場と関係なく、二刃さんは婚約の問題も有りますから、他の候補者からの嫌がらせの可能性も捨てきれませんよ」


 一狼兄上は自分の経験から、冨月姉上は最近お気に入りの恋愛小説からの説を話すが、二人共少し趣味に走り過ぎじゃないかな。


「あら、婚約が原因なら、三琅と四狼の件も有るんじゃないの? 本人より家族の安全を人質にする事で、姫様には伝わり難くするとか?」

「いや、婿取り場合は本人の能力が重視される。無能者を家に入れて家が潰れては本末転倒だからな。従って候補に残っている者は皆、既に能力を認められているという事だ。

 本人に今更襲撃しても、余程の手練れでなければ返り討ちに会うのが目に見えているのだから、家族を狙うというのは一見有効に見えるかもしれんが、そもそも姫様との婚姻を辞退する権利が男側には略無い。民に絶大な人気を誇る姫様との婚姻を断れば、民からの非難は相当なものになるだろう。ならば断った理由も必ず調査されて、誰が邪魔をしたかも何れ発覚する。其処迄(そこまで)考えられぬ愚か者が最終候補に残るとも思えん」


 二刃姉上が原因を僕達に擦り付けて来るが、一狼兄上が理由を語って否定する。

 皆、陰謀論とか好きだよね。そんな事しそうなのは草薙くらいだろうに。

 その後も皆は色々推理しているが、やがて只の妄想比べと化してきた。

 聞き流しても良いのだが、埒が明かないので月詠に答えを尋ねる。


『冨月義姉上と二刃姉上の説が半分ずつ正解なのですよ』

『え? 一狼兄上は否定してるけど、僕達の婚約話も原因なの?』

『一狼兄上の説明には一つ抜けが有ります。何も襲撃を計画した者が候補に残っている必要はないのです』

『犯人は候補から外された者の関係者なのですよ』


 どうやら本当に只の軟派ではなかった様だ。


『やっぱり犯人は草薙なの?』

『いえ、今日の襲撃者自体は只のごろつきですが、雇い主の黒幕は横井家の先代当主になります』

『横井家の三男が桜花様の婚約者候補でしたが、先日候補を絞った際に外された一人なのですよ』

『更に次女が二刃姉上と婚約を争っていますが、此方も現在不利な状況の様です』


 うちと婚約者候補が丸被りしている家が他にも在るとは思ってもいなかった。


『横井家は親戚の横井商会を通じて裏社会の者を間に複数挟んで今回の件を依頼していますので、警邏隊では捕まえたごろつきからは横井家までは辿れないでしょう』

『中間業者が増えた分、実行犯には二刃姉上の実力が正確に伝わらなかったのですよ』

『横井家が文官系の家だったのも、武家の娘の実力を見誤った原因の一つです』


 二刃姉上の実力は伊吹さんと同等だ。

 まさか近衛武士と同等の実力が有りながら、花嫁修業に精を出す娘が居るとは、武家に詳しくない者は考えないのだろう。

 しかし文官系家系だからといって、武家にごろつき程度をあしらえない子女が居ると考えるのは、甘いとしかいえない。武家で戦えない者は等は、先天的な異常でもなければ有り得ないのだ。それ程に武家の看板は重い。

 そして五狼の説明には一つ疑問がある。


「五狼、刀や槍なら普通は武器と言うだろう? 武器と言わずに刃物と言ったのはどうしてなんだ?」

「四狼兄上、それは相手が武器代わりに使ったのが鉈や鋸だったので、本物の武器では無いと思ったからです」、


『今回襲撃に使われた刃物は使い古された廃棄品です』

『一般の者なら、欠けた鉈や錆びた鋸で雑な傷を付けられれば、傷が残る可能性が有るのですよ』


 確かに、古い刃物と一目で判るなら状態も悪いのだろう。そんな状態の悪い刃物で斬られれば歪な傷になって痕が残り易くなるし、付着した土から菌が入って化膿する可能性も上がり、適した治療が受けられないとやはり痕が残ってしまう。

 しかし、我が家には上級治癒術が使える春菜母上が居る。余程質の悪い細菌感染でもしない限り、傷は綺麗に治せるのだ。

 やはり相手は此方の情報を正確には掴んでいない様だ。

 そして、どうやら横井家の主目的が二刃姉上の婚約に有るのが確定したといって良いだろう。


「五狼、その鉈の状態は覚えているか?」

「そうですね、所々欠けていたり錆が浮いていたりで、余り良くなかったと思います」


 天照に聞いた事をわざわざ五狼に確認したのは、皆とも情報を共有する為だ。

 僕が春菜母上を見ると、春菜母上も納得した顔だった。


「どうやら目的は二刃さんの婚約に有ったようですね。恐らく顔に消えない傷痕でも作りたかったのでしょうが、その程度で傷が残るのなら、二刃さんは既に傷だらけです。私の治癒術も甘く見られたものですね」


 春菜母上が少し不機嫌そうにごろつきの目的を皆に話すと、皆も深刻な顔になる。


「二刃は暫く一人で外に出るな。出る時は秋穂母上か四狼、又は師範代の一人を供に付けろ」

「何もそこまで警戒しなくても」


 二刃姉上は納得できていない様子だったが、何かあってからでは遅いと、一狼兄上が強引に言い聞かせる。


「俺は護衛に着かなくて良いのか?」

「四狼が一緒なら十分牽制にはなるし、三琅は仕事があるだろう」


 一狼兄上の言い方では、まるで僕が仕事をしてない様に聞こえなくもないが、僕は未だ成人前だし、学生が勉強するのが仕事といわれる様に、今の僕は修行が仕事だ。

 それに一応、桜花様から指導料も貰っているから家業も手伝っている事になるし、序でに五狼達の修行もみている。なので仕事は家事手伝いと言っても良いと思う。決して無職では無いのだ。

 そうそう修行と言えば。


「二刃姉上、僕と一緒なら外出できるのなら、三日後の狩りにも同行をお願いしても良いですか? 新人が二人居るので五狼達をお任せしたいのです」

「それは構わないけど、新人って誰なの?」

「昼にお城で会った、桜花様のお知合いです。僕達の狩りに参加したいという事で、桜花様が許可しました」

「そういう事なら構わないわよ。お弁当も人数分用意しておくわね」

「二刃姉上、有り難う御座います」


 これで僕は森永姉妹に専念できる。


「今度の狩りはどんな大物を狩る心算なんだ?」

「三狼兄上、新人が参加するのですから大物は狙いません。その分、数を狩れればと思っています」

「そうだな、新人が居るのなら無理はしない方が良い」


 三琅兄上が少しにやけながら尋ねて来るが、一狼兄上の言う様に無理はしない。

 次の狩りは此方の人数も多いし、最近増えているという小鬼を可能な範囲で減らしておく予定だ。

 森永姉妹はパワーレベリングをご所望なのだから、数を狩った方が良い。

 それに小鬼が相手なら、森永姉妹でも早々危険な事にはならないだろう。


「また姫様と狩りに行けるのが楽しみです」

「三刃、調子に乗っていると痛い目を見るぞ」

「三刃は調子になんて乗っていません」


 一狼兄上が注意するが、実際三刃は未だ痛い目に遭っていないから、狩りの本当の怖さが分かっていない。

 それに、三刃は次の狩りも昨日と同じに考えている様だが、次は少し趣向を変える予定だ。

 色々考えておけば暇してる分体が道具を用意するから、僕も直接出来る事をしておこう。

 その後も暫く若干過激な団欒を過ごした後、僕は早めに自室に戻って安全対策強化をする。


 ごろつき程度では二刃姉上を如何こうできる訳も無いが、不意打ちの全てを防げると楽観視する事はできないし、人質でも取られればどうなるか分からない。

 対策として狩りの時に掛けている、胴体から頭を攻撃から護る結界を防毒の腕輪に追加で付与しておく。

 防毒の腕輪は今日配った組紐と違い、略全てを魔導金属で作ったのは、こうして後から追加の付与を可能にする為だ。

 更に防毒の腕輪には何時でも追加の付与ができる様に僕の腕輪とも連動させているので、必要な呪力は増えるが僕の腕輪に付与するだけで全ての腕輪に同じ付与が追加される仕組だ。

 一応結界は随時発動させていると追加した効果が発覚してしまいそうだし、苦行の時とか敷地内での修行の際に邪魔になるので、敷地内では結界が発動しない様に、地図の位置情報と危機感知も合わせて付与して連動させ、序でに結界発同時には僕の腕輪に連絡が入る様にもしておいた。

 これで不意の襲撃や抵抗出来ない状況でも自動で結界が展開して護ってくれる筈だし、結界が展開されれば分かるので、直ぐに駆け付けて対応する事もできるだろう。


 最後に敷地内に張っていた敵対者進入禁止の結界を、張り忘れ防止の為に魔道具に任せる事にする。

 僕はこっそり野外修練場に向かい、土術で高さ四十メートル程の穴を掘ると、今度は敷地の中央付近まで横に掘って行き、穴を広げて部屋を作る。これだけ深く掘っておくのは水道管や下水管を傷付けない為だ。

 部屋の中央に台座を作り、台座の上に結界の魔道具を固定すれば完成だ。結界の魔道具は神金で作ってあるので、これで半永久的に結界が張られたままになる。

 但し今までの様に道場まで結界で覆うと、武者修行の者や押しかけ試合の希望者が敷地に入れなくなる可能性が有るので、今までより少し結界範囲を狭めて道場は範囲から外しておいた。

 押しかけ試合とは道場破りの劣化版みたいなもので、負けても看板は取られないが、負けた方がお金を払う事で勝った方に賞金が出る仕組みの、一種の賭け試合の様なものだ。

 他流派との試合は双方に利が有るので色々と規則が出来て今に至る。

 一応、押しかけ試合は同じ道場には月に一回だけという規則もある。毎日来られて道場側が負け続けても困るからだ。

 最後に魔道具を置いた部屋以外を埋め直して自室に戻る。


 今日は翼さんとの試合に平田さんに魔道車を薦めたり、他の覚醒者にも耐毒道具も渡せたし、何故か新事業にも巻き込まれたけど巧義兄上のお店も大きく出来そうだし、最後に個々人の防御結界も追加して、屋敷の防御力も上げた。

 僕は良い仕事ができたと自画自賛しながら眠りにつく。

 おやすみなさい




読んで下さった方々、有難う御座います。

次も三週間以内に更新出来る様に目指して頑張りますので、今後も宜しくお願い致します。

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