建て替え計画
大変お待たせいたしました。
最近、家族を含め、病院通いが続き、予定より遅くなってしまいました。
皆さんも日頃の健康診断には気を付けましょう。
前回もブックマークや評価、いいねをしてくれた方々、ありがとうございます。
今回、切りよく終わらせる為、何時もより短めですが、僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。
〇九六 建て替え計画
城を後にした僕は、桜花様達との会話で突如決まってしまった魔力屋の事を話す為に、再度藤邑商会にやって来ていた。
「午前にも来たのに午後にも来るなんて、何か問題でも有ったのかい?」
何か重大な問題でも発生したのかと、巧義兄上が心配そうに尋ねて来る。
「確かにある意味では問題が発生しましたが、巧義兄上にとっては悪い話では無いかと思います」
そう断ってから、桜花様達と決定した魔力屋の事を巧義兄上に伝える。
「それはつまり、姫様が新しい商売を始めるけど、実際にその商売の運営は僕に任せる、という事ですよね?」
巧義兄上は一旦言葉を区切り、深く息を吐き出すと続ける。
「姫様からの名指しの要請、しかも立ち上げ費用は向こう持ちなのですから断る理由がありません。確かに四狼の言う通り、悪い話処か、寧ろこんなに良い話は普通有り得ません。僕で良ければ喜んでお受けしますと伝えて下さい」
魔力屋の利益はスタンドだけではなく、電力会社の利益も含んだ様なものだ。間違いなく莫大な利益を生む話だし、断られる可能性は無いと思っていたが、実際に受けてくれた事に僕も一安心だ。
「受けて頂けて助かります。これで僕の面子も保てそうです」
「いや、流石にこれだけの儲け話を断る様では商人を引退するべきだよ。全く商売の才能が欠片も無い」
巧義兄上にしては辛辣な評価だが、これだけ分かり易い利益が見えない様では、確かに商売人としてやって行くのは難しいかもしれない。
巧義兄上が新事業を引き受けてくれたので、今後の詳細を説明する
「受けてくれるという事で、先ずは此方の店舗でも魔道車の販売と、魔力供給装置の設置の為、裏の馬車止めを改装させて下さい」
商会の裏には自走車や馬車を止めて置ける駐車場がある。其処の一部を潰して魔力供給所を作ろうと思う。
魔道車も日本の車と同じ程度に大きいので、魔道車の展示も今の店舗の中では手狭になる。専用の展示場が必要になるだろう。
「馬車止めを減らすと富裕層の入りが悪くならないかい? 当商会の商品は一般の道具も多いけど、四狼のおかげで魔道具も増えているから、富裕層の客が減るのは売り上げが落ちて困るのだが」
巧義兄上の心配も尤もだろう。しかし、魔道車に魔力を供給する度に魔道車を店内に入れる訳にもいかないので、魔力供給装置はガソリンスタンドの様に屋根だけ有る半分外の様な形態で設置するのが望ましい。
そう説明すると、巧義兄上も渋々と言った感じで納得してくれた。
「しかし、色々と新商品を紹介してくれるのは有難いが、こう毎日増えていては、お店が手狭になる日も近いかもしれないね。扱う商品の見直しも必要かもしれない」
「お手数をおかけしてすみません」
「いやいや、すまない。これは嬉しい悲鳴という奴だ。商売繁盛で四狼には感謝している」
「そう言って貰えると助かります」
僕の所為で巧義兄上に迷惑を掛けている訳じゃないというのなら何よりだ。
しかし、複製世界の分体は実質一人で留守番の様な状態なので、時間を持て余している分、つい、色々試した結果、既に開発した魔道具は三桁に届く勢いだ。
このままでは巧義兄上の言う通り、お店には並べきれなくなる。
いっその事、お店全体の釣り合いも考えると、建物を完全に建て替えた方が早いのかもしれないと考え、巧義兄上に提案する。
「確かにその度にお店を改修していては、お店が歪になってしまいますね。折角なのでこの機会にお店の建て替えをしてしまいませんか?」
「いや、流石に店を建て替えるのはお金が掛かり過ぎるよ。それに、店が使えない間の売り上げが無いと、従業員の賃金も払えなくなるし、僕達の住む場所も無くなる」
此方の巧義兄上の心配も尤もだが、監獄惑星で先に建築しておいて、完成後に移設すれば此方の店舗が使えない時間は極僅かだ。
寧ろ建て替え時間より、商品の並べ替えの方が余程時間が掛かるだろう。
「問題ありません。彼らの技術ならば店舗の建て替えも半日も有れば余裕の筈ですし、費用の方も今後の利益を交渉の材料にすれば、相応に抑える事ができる筈です」
主な建築資材は無限倉庫に大量にあるから問題無いし、建てるのも僕だから代金は僕の匙加減一つになる。
後で天照達と藤邑商会の経営に負担の少ない金額を考えよう。
「有り得ないくらいに工期が短いけど、先方の建物の工期なんてよく知っているね」
「丁度明日、屋敷に統合型の新型台所設備の試験用の小屋を造る予定でしたので、確認していたんです」
なんだか最近は、この手の言い訳が上手くなってきた気がする。
「それだけ工期が短いなら、確かにお店の負担は減るけど、流石にお店を建て替える程のお金は直ぐには出せないよ」
「魔力屋や魔道車の利益を考えれば直ぐに回収できるでしょうから、分割払いという方法もありますよ」
「確かに元手無しの店舗も一つ手に入る事を考えると、有りかもしれないが、逆に店が増えるとその分、従業員も必要になる。此方の店舗まで広くなると対応が間に合わないよ」
この国では異界持ちへの防犯の為にも、個人商店や屋台の様な、一人でも全ての商品に目が届く店なら兎も角、全てを監視できない中型以上お店では、地球の様に客に好きに商品を取って貰って、後で纏めて会計という訳にはいかないので、全ての商品は宝石店の様な硝子の展示箱に入れてあるか、防犯紐付きの見本を置いているかのどちらかだ。
異界に物を収納するには触れられるくらいの距離にある事と、間に固体が無い事が条件になるので、これだけでも対策になるのだが、一応の監視も含めて商品に対して相応の販売員も必要になる。
異界に商品を勝手に収納されても、お店側が盗みを証明できないので、客が自由に商品を手に取る事ができない仕組みが必要なのだ。
そう言った理由から闇雲に商品を増やす訳にもいかないのが現状だ。何か対策を考える必要が有りそうだ。
「話は聞かせて貰ったわっ!」
僕達が困っていると、突然隣の襖が開いて一刃姉上が入って来た。
地図で隣の部屋から聞き耳を立てていたのには気付いていたけれど、一刃姉上が商売の話に割り込んでくるなんて珍しい。
そして前世知識が無くても、こういう台詞は普通に出るんだと変な事に感心してしまった。僕も桜花様に毒されてきているのかもしれない。
「新しいお店には新しい住居も付けるんでしょ? 当然台所も新型になるのよね?」
どうやら一刃姉上も新型の台所には興味があるらしい。
「一刃、いくら四狼が君の実弟だとはいえ、今は商売の話をしているんだ。邪魔はしないでくれ」
「あら、お店を新しくするのなら、同じ建物内に有る住居も一緒に新しくするんでしょ? だったら無関係とは言えないじゃない。それに新しい家族が増えるんだから、今のままでは何れ手狭になるんだから、丁度良い機会じゃない」
「赤子が一人増えた処で手狭にはならないだろう」
巧義兄上がやれやれといった身振りで反論する。
「今は一人でも、何れ二人三人と増えますし、この調子で商売が上手く行けば、直に二人目の妻も迎えねばなりません。私の手が空いている内に準備をした方が良いに決まっています」
一刃姉上の言い分も分かる。和富王国の平均出生率は五前後。妻が一人の家で六人前後、二人の家では十人前後の子供が居るのが一般的だ。
僕も八人兄弟姉妹だから、これでも平均よりは少ないらしいが、母上達は何方もぎり三十代だ。
もう一人位は可能性が有るし、屋敷の部屋数にはまだまだ余裕がある。
確かにそれだけ家族が増えれば、今の居住空間では手狭になるだろう。
そして収入が増えれば、二人目の妻が義務になる。
「今の建物は仕事と住居の境目が曖昧ですし、早く安く建て替えができる機会を逃すのは、商人として如何なものでしょう?」
「はー、分かったよ。商才を疑われては仕方が無い。確かに良い機会だし、子供が増えてからの引っ越しは大変だ。但し、四狼、先ずは図面と費用の確認をさせてくれ。決定するのはその後だ」
一刃姉上が更に畳み掛けると、巧義兄上も少し前向きになったのか、僕にも尤もな条件を出してきたので了承する。
「どんな建物になるか、今から楽しみだわ」
一刃姉上も望み通り、新居の建て替え計画が進んで嬉しそうだ。
その後は魔血晶の販売は当面しない事や、細かな調整を話して藤邑商会を後にする。
読んで下さった方々、有難う御座います。
次は三週間以内に更新出来る様に目指して頑張りますので、今後も宜しくお願い致します。




