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大盤振る舞い

お待たせいたしました。今回は予定内に更新できました。

ブックマークやいいねをしてくれた方々、有り難う御座います。

今回も僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。

 〇九五 大盤振る舞い



「ふふふ、四狼君は戦闘や商売だけじゃなくて、女性関係にも強いのね」

「女性に強いなんて事実はありませんよ。あったらとっくに婚約者が決まっている筈です」


 翼さんが茶化すだけで飽き足らず、酷い言掛りを付けて来たので反論しておく。先程の試合で負けた意趣返しなのだろうか?

 そもそも、本当に僕が女性関係に強かったら、五千年も童貞を護ってる訳がないって、なんだか自分で考えてて悲しくなって来た。


「でも、私達と同じ歳なのに、近衛より強くて商売も上手だなんて、羨ましいわね」

「うん、これで四狼君もお金持ちの仲間入り」


 森永姉妹が妙に僕を持ち上げる。


「紅葉、仲間入りも何も、四狼の父君は将軍なのよ。元から和富王国で有数の資産家の子息じゃない」

「桜花様、家の資産は父上の物ですし、四男の僕には相続権が無いので関係ありませんよ」


 継げない資産に期待されても困るので、此方もしっかりと否定しておく。


「それでも家を出る時に貰える餞別は、一般家庭の比じゃない筈よ」

「それこそ父上の気持ち次第なので、僕からは貰えるとも言えませんよ」


 現状、既に色々と収入が有るので貰う必要が無い事も、その頃には父上も理解している筈なので、多分何も貰わない。

 仮に餞別を提案されても既に処理しきれない隠し財産が有るので、断る心算だ。


「そんな物無くても既に灼熱熊を狩れる実力があるだろう? 灼熱熊の売却だけでも十代で持つには十分過ぎる額の筈だ」


 しかし、爪太さんが灼熱熊の価値を森永姉妹に話してしてしまう。


「桜花様と狩った灼熱熊は、家で消費するので売却はしてません。桜花様も先日の焼肉会で食べたじゃないですか」

「そう言えば、熊も食べたわね」

「いやいや、灼熱熊を売らずに、自分達で食べてる時点で金持ちだろ!」


 お金にしていないと主張した筈が、する必要が無いのは金持ちの余裕だと、爪太さんに指摘されてしまった。


「でも、昨日も更に灼熱熊を狩ったって言ってたわよね」


 桜花様が追加で灼熱熊を狩った事も暴露する。


「結局、売った分がある? 灼熱熊って、売ったら幾らで買い取って貰えるの?」

「そうね、少なくとも百両以上で売れるわね」

「百両! それって、私達の何年分の給金になるのよ! 十分お金持ちじゃない!」

「おおー、狩りはお金になる!」


 紅葉さんの質問に翼さんが答え、楓さんが突っ込む。

 そろそろ止めないと、紅葉さんが本気になってきてるじゃないか。


「一応、僕一人じゃなくて、参加した兄弟姉妹全員で分けましたからね」

「五人で割っても一人二十両も貰えるじゃない」

「連れてって貰える狩りの成果に期待」


 僕一人の成果じゃないと主張するが、桜花様が僕の取り分を指摘してしまう。

 実際は二頭売っているので、その倍以上の収入だったのだが、わざわざ火に油を注ぐ必要はないので黙っておく。

 そして紅葉さんの目が、完全にお金に向いてしまった様だが、今の紅葉さんが灼熱熊を相手にするのは無理がある。


「紅葉、これは四狼の兄弟が異常なだけで、普通は十代で中型の魔物は狩れないからな」

「そうよ、先ずは動きの単純な一角鼠程度の、小型の魔物で経験を積んでおきなさい。今の紅葉には足狩り兎でも危険だわ。中型に遭遇すると、普通に死ぬわよ」


 桜花様が初日から足狩り兎を狩れたのは、普段から身体を動かしている前衛だからだ。

 前衛に比べて普段の運動量の少ない見習い魔術師が、足狩り兎の攻撃を躱せるとは確かに思えない。

 爪太さんの僕の兄弟に対する評価は兎も角、翼さんの指摘は正しいだろう。


「そうね。今は殆どの日本人が狩りをしないから、現代の日本人に狩りというとゲームとかを思い浮かべそうだけど、攻撃を受ければ痛いし、当たり処が悪いと普通に死ぬからね。実際の狩りとゲームの区別ができてないなら止めときなさい。長年狩りを生業にしていても、一定の被害が出るのが狩りなのよ」


 桜花様も、少し欲に目が曇っている紅葉さんに気付いたのだろう。如何に狩りが危険かを注意してくれた。


「でも、狩りに出ないと位階も上がり難いんでしょ? 何時かは参加する必要が有るんじゃない」

「少しずつ、慣らしていきましょう、というお話です。約束通り、連れて行ける狩りにはお誘いします。次の予定は三日後ですが、妹の修行次第で流れる可能性もあります」


 尤も、紅葉さん希望のパワーレベリングをする予定なので、直ぐに小型の魔物程度なら問題無く狩れる様になるだろう。

 そして三刃の修行というより、実際は桜花様の苦行の結果次第で、狩りの予定は変わる。


「その日は仕事ね」

「残念」

「だったら私の付き添いに指名してあげるわ。それなら狩りの参加も仕事にできるでしょ」

「桜花様、良いの?」

「有難う」


 当日は仕事だという姉妹に、桜花様が連れ出す事で仕事と口実を与えて、森永姉妹が狩りに参加する事が決まった。


「そもそもお前達は、狩りの装備って持っているのか?」

「魔術師に武器は要らないんじゃないの?」

「武器以外にも、最低限の防具は必要よ」


 爪太さんの指摘に楓さんが答えるが、確かにこの国の魔術は杖とか必要としない。しかし魔術の効果を上げたり呪力消費を抑えてくれる魔道具は存在する。

 そして最低限、脛を護る足甲が無いと、足狩り兎に足を持って行かれると伝えると、その位は持っていると返された。

 しかし、本当に最低限の装備しか無い様だ。


「結局、お金が無いと狩りには行けず、狩りに行かないとお金も貯まらない。鶏と卵じゃない!」

「いえ、お金は狩り以外でも普通に稼げますし、今の給金を貯めて装備を揃えれば良いんです。先程も言った様に、普通は集団狩猟に着いて行って、採取から始めて装備や仲間を集めるものです」


 楓さんが変な方向に切れかけていたので、再度基本を説明して、採取から始めるよりは楽だと宥めておく。


「その採取って、どのくらい稼げるのよ?」

「それは採取品の知識や、目的地が当たり外れで違うから、日によって差が出るな」

「普通なら頑張っても八分って処じゃないかしら。四分越えれば成功よ」


 僕は採取のみで参加した事が無かったから、鷹野夫妻の情報は有難い。


「私達の給金と大差ないわね」

「うん。四狼君の場合はどうだった?」

「僕は初めから兄や姉に連れられて狩りに参加したので、採取のみはやったことが無いんです」

「始めは採取からの説得力が丸で無かった」


 紅葉さんの突っ込みは尤もだ。参考意見が言えなくて申し訳ない。


「初めから指導者付きなんて、結局はこの世界でも生まれた家で有利不利が決まるって事じゃない」


 確かに産まれた家に由る優位不利があるのは日本と同じだ。しかしこれは資本主義を超える画期的な方法が発明でもされない限り、この法則を覆すのは難しいと思う。


「楓、初めから強者は居ない。俺達だって転生前に能力を貰ったり、士族の家に生まれているんだから、十分に他の者より優遇されている様なものだ。それに、四狼の場合は確かに環境が良かった面もあるかもしれんが、さっき聞いた話では相応の苦労も有ったと思うぞ」

「そうよね、この場に居る唯一の平民出の平田さんに比べたら、私達だって士族家に生まれた分、恵まれた生まれなのよ。生まれですべてが決まる様に言うのは、努力で第二位商候にまで成った平田さんに失礼だわ。それに、幾ら強くなれても技を受けてみろなんて、普通の家じゃ有り得ないわよ。楓も親に斬り刻まれたかったの?」

「そ、それは流石に嫌ね。確かにやり過ぎる家よりは真面(まとも)な家の方が良いわ。それと平田さん、平民を馬鹿にする様な言い方をしてごめんなさい」

「いえ、僕は然程(さほど)特別な苦労をした訳でもありませんし、気にしていませんよ。平民は士族の様に変な(しがらみ)が少なくて、気楽な面もありますから、皆さんが考える程、悪い物でもありません」


 若干翼さんの言い方が多少意地悪だが、楓さんも反省した様だ。鷹野夫妻が頼もしい。

 そして平田さんは大人の対応なのか、素で士族社会を面倒と思っているのか、判断に迷う処だ。


「四狼君の家は兎も角、強い家系は羨ましい」

「戦い方の伝承もあるだろうしな、確かに其処は素直に羨ましいな」

「強くなる為の道筋が示されているものね」


 そして、やはり皆も女神様から功績の積み方を聞いている。

 殺す事も功績になる世界なのだから、強さを求めるのも当然の結果なのだろう。


「多少のお手伝いはしますから、頑張って下さい」

「うん、頑張る」

「も、勿論よ。四狼君の手伝いには期待しているわ」


 まあ、手伝いと言っても狩りに連れて行く程度の事しかできないが、次の狩りの標的は小鬼だ。田中さんにあげた様に、複製世界で手に入れた不用品を押し付ける序でに、対策になる道具も渡しておこう。


「では、手伝いの一環として、これを差し上げます。要らなくなった装備品と、桜花様の腕輪には及びませんが、毒耐性の組紐です」

「要らないって、売れば多少はお金になるのに良いの? それに、毒耐性って魔道具でしょ? そんな高価な物迄、本当に良いの?」


 楓さんが繰り返して確認するが、元から配る為に作った魔道具だ。素直に受け取ってくれた方が助かる。


「どちらも協力者に贈る様にと、魔道車開発の方から贈答用の品として大量に預かっている物の一つです。材料費も半両と掛からない安物だそうなので、遠慮はいらないそうです」

「半両を安物って、私の一週間分の給金なのにぃ……」

「有難う」


 楓さんが、がくりと肩を落とすが、紅葉さんは素直に受け取ってくれた。


「毒耐性なら素材に関わらず、普通に高値で売れるでしょ? 随分太っ腹なのね」

「僕が買った訳じゃありませんから僕の懐は痛みませんし、元から信用出来そうな協力者に配って安全確保と恩を売っておけと、提供者から預かった物ですから」


 この程度で懐は痛まないくらいに素材は豊富だし、仲良くできそうな人には元気でいて欲しいというのも本音だ。


「洗濯機もそうだけど、随分太っ腹な提供者ね、魔道具の大盤振る舞いじゃない」

「翼さん達の分も有りますけど、必要ありませんか?」

「ちょ、意地悪な事を言わないでよ。凄く貴重な魔道具だもの、頂けるなら有難く頂くわ」


 要らないならあげませんと言うと、若干慌てた様に翼さんは責めている訳じゃないと取り繕う。

 僕も確かに意地悪な言い方だと反省し、他の三人にも毒耐性の組紐を渡す。


「僕迄良かったのですか?」

「平田さんだけ渡さない訳にもいかないでしょ」

「お気遣い、有難う御座います」


 平田さんは終始素直に受け取ってくれた。

 覚醒者が草薙に操られると色々と厄介だと思い、協力的な覚醒者には予防できる道具を渡すという目的もこれで果たせた。


「これが大量に有るって本当か? もし良かったらもう二つ、用意して貰う事はできないか?」

「もう二つ、ですか?」

「ああ、俺達の護衛対象である王子と姫にも付けさせたい」


 爪太さんが追加で欲しい理由は桜花様の弟妹の為らしい。

 確かに護衛対象が毒に強いと護衛も楽になる。しかし、この組紐は簡易的な物だ。


「桜花様、二人の護衛対象の王子達は位階が八以上という事はありませんよね?」

「二人共五~六歳だもの、当然ね」

「申し訳ありませんが、この組紐は毒物が体内に入ると当人の呪力を使って抵抗する物なので、位階が八未満では呪力が足りません」

「そうか、無理を言って悪かった」


 爪太さんは少し残念そうに謝る。

 しかし、いくら当人を毒から護っても、仕える主が操られては確かに意味が無い。


「代わりにこれを差し上げます」


 ならばと、僕は一辺が一寸半程有る四角錘の魔道具を渡す。


「これは?」

「個人用の簡易結界を張る魔道具です。起動させれば数日は中の人を毒だけでなく、物理や魔術の攻撃からも護る事ができるそうです」


 魔血晶の効果確認の為に作った魔道具の一つが役に立ちそうだ。


「組紐は使えなかったが、寧ろこっちの方が王子達には都合が良い。感謝する」

「四狼、弟達の為に有り難う。私からも礼を言う」


 鷹野夫妻に結界の魔道具を渡すと、爪太さんだけでなく、桜花様も礼を言ってくれる。

 王子達も

 二人に使い方を説明して効果も見て貰うと、一応の予備の魔血晶も渡しておいた。


「酸欠とか大丈夫なの?」

「有害な物を通さないだけですから大丈夫だと思います」


 酸素を通さないと数日も籠っていられないから、其処は対策しておいた。


「攻撃だけじゃなくて、音も通さないのは少し問題ね」


 音による攻撃もあるし、催眠術とかも防げないと意味が無い。


「四狼君は何でも持っているのね」

「未来から来たロボットみたい。空飛ぶ道具とか遠くに行ける扉とか、持ってないの?」

「楓さん、何でもは持っていませんよ。預かっている物だけです」


 持ってない物は色々あるから、嘘じゃない。

 そして、紅葉さんが鋭い指摘をするが、転移門とかは本当に持っているので、(あえ)て明言は避ける。


「でも、皆も不思議なポケット的な能力は持ってるじゃない」

「確かに異界ってそんな感じの能力よね」


 桜花様の指摘に、翼さんも同意する。


「紅葉さん、遠くに移動できる魔術もあるらしいですよ。使える様に頑張ってみては如何ですか」

「どれだけ頑張れば良いの?」

「もの凄く、でしょうね。僕も使えないので正確な事は分かりません」


 平田さんが転移の魔術が有ると紅葉さんに教えるが、空間制御の能力も必要なので、道は険しそうだ。


 そうして若手の相談を大人組が答えたり、皆の失敗談等を交えた有用だったり、只の笑い話だったりを楽しく語り合い、本日の顔合わせは終了した。




読んで下さった方々、有難う御座います。

次も三週間以内に更新出来る様に目指して頑張りますので、今後も宜しくお願い致します。

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