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新しい仲間

お待たせいたしました。

前回は主人公の出ない閑話的な回だったので、今回は予定より少し早めの更新です。

今回も僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。

  〇八九 新しい仲間



 開けて翌朝、先日二刃姉上が言った通りに雷鳥の卵を使った出汁巻き卵等の朝食を食べ終えると、日課になりつつある呪力操作の練習だ。

 練習後は雷鳥の解体の為、先日の解体講習の参加者で解体小屋に向う。

 解体小屋で雷鳥を無限倉庫から取り出して解体を皆に任せると、三刃が僕は参加しないのかと尋ねられた。


「僕はこの後、桜花様に昼食会に呼ばれているからね。解体後の臭いを残して食事会に出る訳にもいかないだろ?」


 三刃は僕だけ狡いと言うが、王様でさえ参加できない会だし、三刃達も午後から買い物だろう、と言うと不承不承で納得してくれた。


 解体小屋から屋敷に戻ると、今度は一狼兄上に呼び止められた。


「今夜か明日に予定している三刃の苦痛の行についてだが、先ずは可能な限り衣服を切り刻め。何なら全て剥ぎ取っても構わん」


 一瞬、一狼兄上にそんな趣味が? と脳裏を過ったが、恐らく何か意味が有るのだろう。


「一応、お尋ねしますが、それは一狼兄上の趣味という訳では無いのですよね? 理由を聞いても良いですか?」

「あ、当り前だ! 俺に女子(おなご)の服を剥いで喜ぶ趣味等無い!」


 一狼兄上が一度溜息をつくと、理由を説明してくれた。


「男なら全裸は兎も角、(ふんどし)一丁でも戦地で動きが鈍る事は少ないが、女子の場合は胸元が(はだ)けただけで動きが鈍る者も多い。実戦でこれは致命的な隙になるだろう。従って、女子には羞恥に対する心構えも必要なのだ。というのが俺の受けた説明だな。一応、一刃も二刃も通った道だ」


 一狼兄上も、父上から受けた説明を繰り返しただけらしい。

 成程、羞恥心も苦行の一種と考えているのなら、一応は納得できなくもない理由だ。


「理由は理解しましたが、後で三刃にも説明をお願いします」


 流石に終わった後に避けられる様になるのは寂しい。


「勿論だ。説明は母上方がして下さるから、安心して切り刻め」


 いまいち安心できない言い分だが、そこは母上方を信じるしかなさそうだ。


「問題は姫様の苦行だが、三刃の後に行うのなら、当然肌を見られる事も了承済みだとしても、俺迄同席するのは避けたい。誰か口の堅い者を用意できぬか?」


 羞恥心に耐える特訓なのだから、男が同席しないと意味が無いのは判るし、一狼兄上としても弟の嫁になるかもしれない女性の肌を見るのを躊躇う気持ちも分からなくもない。

 更に相手の身分は略最上級だ。

 勢多さん辺りに頼むのが無難な気もするが、如何しようかと考えていると、月詠から妙案が提案された。


『要は桜花様が肌を見られて恥ずかしい、と思う者が同席すれば良いのですよ』

『つまり、本物の人である必要もありません。好色そうな顔の精密型絡繰りを二~三体同席させれば問題は解決します』

『後は露出が増える度に喜ぶ演技をさせれば完璧なのですよ』


 成程、確かに桜花様が見られて恥ずかしいと認識さえすれば、実際に人である必要はない。

 しかし、事が事だけに王様に前もって確認はしておいた方が良いだろう。

 後で城に行った時に、伊吹さんに確認を頼もう。

 伊吹さんも既に苦痛の行は受けているのだし、説明も僕より詳しくできる筈だ。


「心当たりがあります。二~三人で構いませんね?」

「十分だ。三刃も身内だけでは余り羞恥を感じないかもしれない、三刃の苦行から見学させてくれ」

「承知しました」


 一狼兄上は僕との会話を終えると、道場に向けて去って行った。



    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 桜花様に指定された時間迄はまだ余裕があるが、折角なので商店街等で時間を潰しつつ、一刃姉上に昨日の狩りのお土産を持って行ってあげようと、小型の魔道車に乗って出掛ける。

 第一門を潜って一般区画の商業地区に着くと、魔道車を無限倉庫に収納する。大きな異界が有ると駐車場が要らないので助かる。

 幾つかの商店を覗きながら藤邑商会を目指した。


「四狼、私の処に直接来るなんて、今日は商売の話じゃないの?」


 最近は商売の話しかしていなかったから、一刃姉上がそう考えるのも仕方ない。


「早々商売の話はありませんよ。今日は昨日の狩りの成果をお裾分けに来ました」


 そう言って、無限倉庫から雷鳥の卵を一つ取り出して一刃姉上に渡した。


「これって、雷鳥の卵じゃない。良い物を見付けたみたいね」

「ええ、目標の灼熱熊を倒した直後に雷鳥の襲撃を受けまして、撃退した後に近くに巣が有るのではないかと、周囲を探索して見付けました。僕達も朝食に頂きましたが、とても濃厚な味わいで美味しかったです」

「貰えるのは有難いけど、雷鳥の卵なんて一両以上で売れるし、買うと三両はするわよ」

「元から灼熱熊を狩りに行ってたのですから、十分な稼ぎになっています。三琅兄上なんて、一日で三年分の稼ぎになったと逆に落ち込んでいました。お腹の子の滋養にも良さそうですから、受け取って下さい」

「ふふ、三琅らしいわね。それじゃあ卵は有難く受け取るけど、良く貴方達だけで雷鳥なんて倒せたわね」

「流石に雷鳥の時だけは一狼兄上にも手伝って頂きましたし、最近は色々と教えてくれる方が居るので、その知識が役に立ちました」

「そうね、そのお方のおかげで家の商会も儲かっているそうよ。私も感謝していると、伝えておいて頂戴」


 一刃姉上は焜炉の発明者と勘違いしている様だが、あながち間違いともいえないかと了解と受け流す。

 そうして暫く話した後、帰り際に巧義兄上にも声を掛けてくれという二刃姉上に従うと、魔石柱と設置装置の追加を頼まれた。


 何でも取引先の職人や工房に薦めた結果、新製品に使いたいという注文が殺到しているらしい。

 和富王国ではお金の様に、八つで一纏めの束という単位が有るので、手持ちの在庫の半分、魔石柱を六十四束(五百十二個)と設置装置を三十二束(二百五十六個)渡すと、巧義兄上に感謝された。

 僕にも利益が有るし、魔石柱が広まるのは僕の功績にもなるそうなので、寧ろ僕の方が得をしている。

 喜ぶ義兄に別れを告げて、魔道車に乗って藤邑商会を後にする。



    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 時間には余裕を持たせているので、最近の狩りで唯一利用していない西の狩人組合に情報収集に寄った。

 しかし、特にこれといった依頼は無かったが、小鬼の目撃情報が増えており、なるべく退治して欲しいとの要望が貼られていた。

 小鬼は魔石以外の素材が取れず、身体を苦労して運んでも肥料にしかならない。

 放置すると直ぐに数が増えて被害も深刻化するので、討伐には一応、国からも補助が出るが、それでも儲けが少ないので人気が無いのだ。

 僕達は最近の狩りで十分儲かっているし、人型を殺す練習には丁度良いかもしれないと、次の狩りの候補に入れておく。


 狩人組合を後にした僕は北に進み、桜花様の執務室に近い、お城の北門から中に入る。普段は屋敷から近い南の正門からか入る為、少し新鮮だ。

 此方は裏門になるので、主に軍の小規模演習場等が在り、新人兵士が汗を流している。確か、その奥には魔術の演習場も在った筈だ。

 更に進むと軍の施設が在り、其処から先は徒歩になる。

 魔道車を無限倉庫に収納して桜花様の執務室に行くと、伊吹さんが出迎えてくれた。


「姫様の仕事が終わるまでは、私が話し相手になるで御座るよ」


 給仕が用意してくれたお茶を頂きながら、暫し伊吹さんと情報交換だ。


「ご兄弟だけで雷鳥を倒したので御座るか? 流石で御座るな」


 伊吹さんの称賛には、作戦が上手く嵌っただけだと誤魔化しておく。

 そして桜花様の苦痛の行について、王様に意見を伺って貰える様に頼んだ。


「確かに、姫様なら受けたがるで御座るな。しかし、修行内容的に私達だけで判断できないというのも正しいと思うので御座る。王様には私が進言しておくで御座るよ」


 伊吹さんも経験者だから、話が早くて助かる。

 やがて桜花様が執務を終えて、僕が待っていた応接室にやって来た。


「待たせたのじゃ」

「いえ、然程(さほど)待ってはいませんので、お気になさらずに」


 社交辞令的な挨拶を済ませると、桜花様にもお土産に雷鳥の卵を一つ渡した。


「これは見事な卵じゃな。しかし、童を抜きに狩りに行くとか、少し薄情では無いか?」

「目的が桜花様に()てられた三琅兄上も灼熱熊を狩りたいというのが理由なので、桜花様が参加しては意味が無かったのです。それに、初めての兄弟姉妹だけの狩りでしたので」

「そうか、三琅にも困ったものだが、兄弟姉妹が水入らずでは仕方がないのじゃ」


 更に、桜花様には次の狩りには誘うと約束する事で納得して貰い、次の狩りの段取りを考えながら本日の会食の場に向かった。


 会場は花々が咲き誇る庭の中の四阿(あずまや)で、中には円卓が設置されており、少しだけ和と洋が合わさった感じがした。

 其処(そこ)には既に数人の男女が座って会話をしている。


「皆、待たせたのじゃ」

「桜花様、その方が桜花様の先生で、新しい仲間なの?」

「先生が仲間で婚約者なんて、運命を感じる。羨ましい?」


 僕達と同世代に見える、そっくりな女の子が二人、席を立って近付いて来て、騒がしく桜花様に尋ねた。


「今から紹介するから、落ち着きなさい」


 桜花様が席に着き、僕はその左隣を指示されたので素直に従う。

 桜花様を挟んで反対側には先程の二人が座り、僕の隣には二〇代位の男性が二人、その奥に女性が一人座っている。


「では、改めて紹介する。今日から仲間に加わる八神四狼じゃ。私の戦闘指南役でもある」


 桜花様の紹介に、僕は宜しくと頭を下げる。


「先生って事は、今までは上手く誤魔化していたんでしょ? どうしてバレちゃったの?」

「楓、そういう話は後にして、先ずは皆の事を四狼に紹介するのが先よ。四狼、この五月蝿いのが森永楓。その奥のそっくりなのが妹の紅葉よ。非常に珍しい事に、双子で両方覚醒者よ。あと、二人とも四狼と同じ歳ね」


 確かに、覚醒者自体少ないのに双子の両方が覚醒者だなんて、もの凄い確率だ。

 そして二人は馬尻尾にした髪を右寄りか左寄りにしているだけで、他に違いが見当たらなかった。鑑定とか持って無いと区別が難しいかもしれない。


「五月蝿くないしー」

「五月蝿い楓は兎も角、私は紅葉。宜しく」

「はい、宜しくお願いします」

「二人は若手有望株で、魔術師団の見習いでもあるわ」


 確かに、成人前後でいきなり魔術師団に入ったのなら大したものだ。通常なら一般兵で数年の下積みが必要になる。

 但し、初めから覚醒者と分かっていたのなら、囲い込みの意味もあったのかもしれない。


「反対側の奥から、鷹野翼と爪太、こっちの二人は夫婦で、桃花と清治の近衛でもあるわ」


 覚醒者同士で結婚したのか。そして二人とも近衛なら、やはり優秀なのだろう。


「四狼君は姫様の婚約者候補なんでしょ。覚醒者は覚醒者同士で結婚した方が、価値観が近くてやり易いわよ」


 確かに、前世の価値観とか考えると、それも有りかもしれない。


「そうだ。うっかり前世の言葉を口にしても変な目で見られないのは助かる」

「僕としては余り気になりませんね。前世の知識といっても人其々ですから。実際、皆さんも僕の話に乗ってくれないじゃないですか」

「それは幻奉の話が専門的過ぎるからだろ。男の俺でもお前の話にはついていけん」

「四狼の隣に座っているのが、自走車を作った幻奉よ。四狼も気にしてたみたいだし、幻奉の話を聞いてくれるかもよ」

「はい、自走車については聞いてみたいと思っていました」

「おお、君は自走車の価値を判ってくれるか!」


 今まで余り話を聞いて貰えなかったのか、平田さんの喜び様が凄い。


「今日は平田さんに会えるという事で、知人からこれを預かって来ています」


 そう言って僕は、魔道車の設計図を平田さんに渡した。


「こ、これは自走車の設計図……いえ、違いますね。むむう、これは、興味深い」


 設計図を見始めた平田さんは、設計図に全神経を集中し始める。


「こうなったら幻奉は暫く戻ってこないぞ。俺達で話を進めよう」


 何時もの事なのか、平田さんは放置するらしい。

 

「それで、長年隠してたのに、どうして急にバレちゃったの?」


 楓さんは余程経緯が気になる様だ。

 誤魔化しても桜花様本人の前では意味が無い。能力数が多く、覚醒に時間が掛った事を正直に話した。


「能力数でそんな事が起こるなんて、初耳よ」

「そもそも、多くの能力を貰うには転生点が幾らあっても足りない」

「ええ、ですが選択できる能力の中には、一つで複数の能力を得られるものも有ったんです」


 僕は森永姉妹の疑問に答える。


「そんなの便利な能力なんか有ったか?」


 爪太さんの言葉に、皆が頷く。どうやら誰も複数の能力が纏まった能力を知らないらしい。


「でも、私は選択できる能力だけが表示されるって聞いたわ。つまり、転生点や条件の満たしていない能力は、選択肢にすら出ないのよ」

「それじゃあ、私達は何かが足りなかったんだ。残念」


 翼さんの情報に、紅葉さんは大して残念でもなさそうに呟く。


「でも、見た感じ能力が多いって程でもないんじゃない?」


 楓さんが僕を鑑定した様だ。


「当然、能力を隠す能力もありますので、その能力で隠しているんですよ。余り見られたいものでありませんからね」

「まあ、勝手に見られて気分の良い物じゃ無いのは同感ね」


 僕の説明に、翼さんが同意してくれる。


「それに、能力名が延々と頭の中を流れる状況を考えてみて下さい。結構鬱陶しいと思いませんか?」

「確かに鬱陶しそうだな」


 今度は爪太さんが同意する。


「長時間能力の継続使用は身体にも負担が有るそうです。当然、鑑定の様な知覚系能力の継続使用が続くと脳に負担が掛かり続けますから、場合によっては頭痛や気分が悪くなったり、最悪後遺症が出る事も有るそうです」

「つまり、能力を隠しているのは自分の為だけじゃないって事?」


 紅葉さんの答えに、僕は頷いて答える。


「四狼君の能力が多いって事は納得したけど、結局幾つの能力を持っているの?」


 んー正直に言える訳にもいかないけど、既に多いとは言っているので、適当な数字で誤魔化すしかないか。


「正確な事は秘密ですが、百以上とだけ答えておきます」

「「「百以上!」」」


 皆の驚き様に少し多過ぎたかとも思ったが、脳に負担とか言った手前、余り少なくても意味が無いと思う。


「想像以上」

「でも、結局口だけじゃない」


 紅葉さんは兎も角、楓さんは未だ納得いっていない様だ。


「隠蔽を外して見せても良いですが、相応の頭痛が暫く続きますよ」

「い、痛いのは嫌ね」


 僕としては無理に信じて貰う必要すらない気がするのだが、天照達に意見を求めてみる。


『一時的に百五十程開示能力を増やして、桜花様に確認して貰えば良いと思います』

『数百程度なら、桜花様の腕輪の効果で脳の負担も無効化できるのですよ』


 どうやら、腕輪の精神耐性が鑑定の負荷を減らしてくれるらしい。他の人に見られるよりは桜花様の方が余程信用できるし、その案を提案してみる。


「ほう、この腕輪にはそんな効果もあったのね」

「鑑定の負荷を緩和する効果? そんな能力があったなんて初耳ね」


 翼さんも知らない効果に驚いている。


「一応注意しますが、他の方は僕を鑑定しないで下さい。脳に障害が残っても責任は取れませんので、宜しくお願いします」

「わ、分ったわ。鑑定しない」

「ん」

「お約束します」

「だな」


 皆が同意してくれた処で、天照に頼んで適当に開示能力を増やして貰った。


「桜花様、どうぞ」

「う、うむ」


 桜花様は緊張気味に僕の鑑定を始めた。



読んで下さった方々、有難う御座います。

次も三週間以内を目標に、なるべく早めの更新ができる様に頑張りますので、今後も宜しくお願い致します。

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