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援助

お待たせいたしました。

今回は予定内に更新できてホッとしています。

僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。

 〇八三 援助


「ハーレムというか、お嫁さんを沢山貰いたいのなら、一定以上の収入と身分が有れば、この国では一夫一妻も可能ですよ」

「一定以上って幾らだよ?」

「月に三十二両位ですね。六十四両を超えると逆に二人目の嫁が義務になります。稼いだ分、養う者を増やせという事ですね」

「いや、高過ぎるだろ! 俺の月の稼ぎなんて一両もねぇよ」


 確かに安くは無いが、一両八万円とすれば年収で二千万円程だ。日本でも数十人に一人位は居たと聞いている。厳しいが不可能ではない金額だ。

 そして月一両は少な過ぎだ。十歳時の僕の半分しかない。


「残念ながらその稼ぎでは複数の嫁は貰えません。多くの嫁が欲しいのなら頑張って稼いで下さい」

「頑張れる気がしねぇよ」


 流石に目標額が高過ぎたのか、彼は肩を落としている。

 続けてもどうにもならないので話を変える。


「それで、何で魔物が居て危険だと知っていて、一人で狩りをしているのですか?」

「狩人組合の集団狩猟は断られたんだから、一人でやるしかないだろ」

「それは戦闘用の能力が無いのと、位階が足りないからです。集団狩猟でも採取部門でなら参加ができる筈ですし、大勢で行うので一人で町の外に出るよりもずっと安全です。そこで狩りにも参加できる位階になるまでは採取を頑張りながら、同じ様に狩人を目指す仲間を探す事をお勧めします」

「その位階って何だよ?」

「位階を知らないのですか? まぁ、前世知識が有る方になら、レベルと言った方が分かり易いかもしれません」


 実際にアルベール王国ではレベルになっていた様に、位階というのは和富王国の方言みたいなものだ。


「この世界にはレベルも有るのか? ゲームっぽいとは思ってたけど益々ゲーム染みてきやがったな」


 彼は生物鑑定を持たず、持ってる知人も居なかったのだろう。位階の存在すら知らなかったらしい。


「ゲームの様に位階を上げれば強くなれますが、ゲームと違ってセーブはできないのですから、死んだら今生は終わりです。そこは気を付けて下さい。位階を上げたり能力を増やす事で生活は向上しますし、功績にもなるそうなので、頑張って増やす事をお勧めします」

「ちっ! その面倒を省略するのがチートだろうに、神様もマジで使えねぇな。」

「いえ、神様に貰った能力は功績にはならないそうですから、比較的簡単に習得できる能力は自力で習得した方が得だと思います」


 つまり、既に略全ての能力を持っている僕は、新しい能力獲得による功績は殆ど積めないという事らしい。

 その分の功績は無駄に多い能力を駆使して稼ぐしかないというのが現状だが、出来る事の幅が広い分、此方の方が有利なのは確かだ。


「簡単に能力を習得しろって言われても、やり方が分かんねぇよ」


 そもそも彼の様に算術すら持っていない人は初めて見る。

 和富王国では普通に初等教育を受けていれば、覚醒前に算術2以上は習得できた筈なのだ。

 産まれが町以上の規模であれば初等教育は無料で受けられる筈なので、彼の産まれは学校等の無い小さな村だったのだろう。

 郷に来てからも前世知識で知っていた為、わざわざ練習しようとしなかったのも原因の様だ。


「一定期間内に一定以上の計算をすると算術の能力を習得出来ます。先ずは何でも良いので三桁以上の計算をいっぱいして下さい」

「計算位はできるぞ」

「できるかできないかではなく、計算を何度もしたという過程が必要なんです」

「面倒くさいなぁ」

「その面倒な行為が経験であり、能力を習得する方法なのだから、仕方がありません」

「でも、習い事には金が掛かるだろ? そんな金はねぇよ」


 確かに慈善事業でもないのだから、我が家の様な道場に通うにはお金が掛かる。

 しかし前世知識を持っていれば、何らかの学習法の一つや二つは知っている筈だ。


「計算もそうですが、前世知識を持っているなら前世で習った事を実践すれば良いのです。簡単な科学実験や元素知識で初歩の錬金術の能力を得られますし、科学知識は魔術にも応用が利きます」

「マジかー!?」

「マジなので頑張って下さい」


 能力については今後に期待するしかない。今はこれ以上言っても無駄だろう。


「あと、狩りに来ていると言う割に大した武器を持っていない様ですが、どうやって狩りをするのですか?」


 彼の腰には刃渡り一尺(約三十センチ)程度の鉈の様な物が括られているだけだ。

 三刃の小太刀でさえ、刃渡り一尺六寸(約四十八センチ)あるのだ。

 一般的な狩りの対象になる小型の獣でも、対応する戦闘系能力がないので何の役にも立たないだろう。


「狩りなんて所詮獣相手だ。簡単な罠で十分だろ」


 彼の言い分は分かるが、彼には罠作成の能力が無い。本当に効果が有るのか疑わしい。


「ちなみに最近の成果は?」

「先週は野鼠を捕らえたぜ」


 彼は得意そうに答えるが、この世界の野鼠は日本の家猫程の大きさがあるが、最下層の住民でもなければ食べない位に不味いと聞いた事がある。殆ど売り物にはならないだろう。

 しかも成果が有ったのは先週だという事は、今週は未だ成果が無いという事だ。

 知り合った以上、このまま見捨てるのも後味が悪いので、予定通り少しだけ援助をする事にした。


「仕方が有りません。これを差し上げますから町に帰ったら練習をして、能力習得に役立てて下さい」


 そう言って無限倉庫から、駆け出し狩人御用達の槍と、序でに採取用に折り畳み式の鎌を取り出して一緒に渡した。

 既に町を出ている今の状況でできるのは、多少真面(まとも)な武器を渡す位しかできない。


「うおっ。この槍は何処から出したんだ? いや、これがアイテムボックスなのか? 糞、すげえ便利そうだな。いや、それより槍なんて高価な物、本当に貰って良いのか?」

「機能は多分間違っていませんが、これはアイテムボックスでは無く、異界倉庫、()しくは異界収納と呼ばれる能力です。そして槍は駆け出し用の安物ですし、僕には使い道も有りませんから、遠慮なく使って下さい」


 複製世界で大量に回収した複製品の一つだし、値段も精々十六分前後の安物だ。僕の緋桜は当然として、五狼の槍と比べてさえ価格は一割にも届かない。


「マジで金持ちかよ。しかも会ったばかりの奴に武器を渡すなんて、お前は何処のラノベ主人公だよ。それに、渡した武器で攻撃されるとか考えねぇのか?」

「いえ、位階も低く、戦闘系能力も持たない人ではどうやっても僕には勝てませんし、これだけ差が有ると、僕が素手で殴っただけで貴方は死にますよ」

「やっぱチートかよ! つか、攻撃なんかしねぇから、殺さないでくれよ!」

「チート以前に、僕の十歳の妹でも瞬殺できる程に貴方は弱過ぎです」

「お、俺は十歳児にも負けるのか……?」


 流石に彼も成人した男性なのに、小学生程の女児にも負けると言われると落ち込む様だ。


「この世界の人の戦闘力は修行次第でそれこそ漫画の様にとんでもなく上がりますからね。まぁ、僕の妹は年齢の割には強いですから仕方が有りません。次はその槍で少しは修行してから狩りに出る事をお勧めします」

「ふ、ふん! 分かったよ。この槍はもう貰ったからな。今更返せって言っても返さねぇぞ」

「言いませんよ」


 序でにおにぎりと兎の串焼きも二つずつ渡し、お昼にして貰う。

 彼は位階十一の割に基礎能力の平均が9と低かったので、魔物肉が足りていないと判断した為だ。


「おおっ! 飯迄くれるのか? だけど此処までされると逆に何か企んでそうで怖いんだが……」

「まあ、前世では有りますが、ある意味で同郷のよしみとでも思って下さい」


 僕の知っている覚醒者は大半が貴族や王族だ。これだけ生活の厳しそうな者は今まで居なかった。

 下手をすれば郷の町の孤児よりも酷いかもしれないと思うと、僕の恵まれた環境との差に悪い気がしてきたのだ。

 どうせ複製世界の物資は必要な人の為に使おうと思っていた物だから、一つや二つ彼に譲る位、問題無いだろう。

 アルベール王国で放出している物資に比べれば微々たる物だ。


 最後に土壁で真ん中の繋がっていない【の】の字に囲った安全地帯も作る。

 灯りが要らない様に屋根の半分は格子状にして、人外侵入不可の結界で囲っておく。これで獣や魔物が来ても安全だ。


「うおっ! 今度は何だ? 急に壁が出来たぞ!」

「これが魔術です。倒せない獣や魔物が来たら中に逃げて下さい。人以外は入れない様になっていますから、盗賊にでも襲われない限りは大丈夫だと思います」


 盗賊は入れるのかよ、と彼が呟くが、町の外に盗賊なんて和富王国では滅多に発生しないし、長続きもしない。

 確率を考えたら遭遇するのは余程の運が悪い者だけだ。気にするだけ無駄だろう。


「魔術や武術は見るだけでも訓練になりますから、機会が有ったら他者の戦いも見学してみると良いですよ」


 僕の説明を聞いて興味を持ったのか、彼は土壁を触ったり中を確認したりしている。


「魔術ってすげーなぁ」

「一日しか持ちませんから、明日以降は使わないで下さい」

「一日でも安全なら助かるぜ」

「一応、彼方の方向に一里半(約六キロ)程の距離に灰色狼の群れが、此方の方向に一里(約四キロ)弱の距離には槍猪や一角鼠が複数いますので気を付けて下さい。知り合った方が帰り道で残骸になっていたら、流石に僕も気分が悪いですからね」

「一々言い方がこえぇよ!」


 敢て怖い言い方で冗談めかして注意するが、彼の実力では一角鼠一匹に襲われても対処できないだろう。

 出会えば確実に一角鼠の餌になってしまう。

 此方は冗談ではなく、本気でそんな物は見たくない。


「怖いと思って貰わないと危険ですからね。ご武運を祈っておきます」

「ちっ! 気持ちは受け取っとく。色々ありがとよ」


 話を終えた僕は魔道車に戻る。



「終わったか。問題は無かったのか?」

「ええ、挨拶と、一応の安全地帯を作って来ましたから、大丈夫でしょう」

「過保護な事だな」


 一狼兄上は心配そうに尋ねるが、三琅兄上は自己防衛もできないのに町の外に出た事に対して、少し不満な様子だ。


「戦闘系能力を未だ習得していない様なので致し方ありません。今後に期待しているのです」

「若者ならそれも有りだな」


 一狼兄上が納得した処で話は終わった。

 僕は魔道車を発進させ、改めて今日の狩場に向かう。

 三刃と五狼は初めから我関せずと、次々と高速で流れる景色を楽しんでいた。

 彼らも全力で走ればもっと速く走れるだろうが、町外の魔道車から見える景色が珍しいのだろう。

 時折見かける日本の鶏大の小鳥等を見付けては、二刃姉上に食べられるか確認に忙しそうだ。

 今は狩りに向かっているのだし、食糧になるか否かの情報は確かに必要だろう。


 魔物の反応も所々にあるが、わざわざ魔道車を止めて迄狩る必要もない。

 そうして魔道車を走らせ続けていると森を抜け、木々が疎らになって来る。

 更に暫く魔道車を走らせ、途中から街道を逸れて林に入り暫く進むと、木々が増えて来た処で魔道車での移動は此処までにする。


「木が増えて来たので自走車で進めるのは此処までです。此処からは走りになりますから、皆降りて下さい」

「此処から走るのですか?」

「ああ、目的の熊が居るのはこの先の森を抜けた更に先だからね」

「ふぁーっ、着いたのか?」

「三琅、いくら乗り心地が良いからといって、町外を移動中に居眠り等、弛んでおるぞっ!」

「す、すみません、一狼兄上、座り心地の良さに、つい……」


 妙に静かだと思っていたが、やはり三琅兄上は寝ていた様だ。

 町外用の車を快適に作り過ぎたのだろうか?


「二刃姉上、もっと硬い座席の方が良かったのでしょうか?」

「三琅が眠ってしまったのは一狼兄上の言う通り、三琅の気が緩んでいただけよ。戦う前から疲れさせない座席に罪はないわ」

「三刃も早くて揺れない自走車の方が良いと思います」


 真っ先に降りた三刃が振り返って答える。

 確かに戦闘前に尻が痛むよりは良いかと僕も納得する。どうやら本当に改悪の必要は無さそうだ。

 全員が降りると、無限倉庫から分体一号に開発して貰った小部屋を二つ取り出して説明する。


「これは移動式の厠です。移動前に用を済ましてから、鎧等の準備をして下さい」


 二つ在るのは男女で分ける為だ。


「四狼は本当に準備が良いわね。ありがたく使わせて貰うわ」


 二刃姉上は僕に一言断ると左側の厠に入って行った。


「此方は二刃姉上が使っているので、もう片方を男性用にします。五狼、先に済ませておきなさい」

「あ、はい、四狼兄上」


 そうして順番に用を足し、終わった者から鎧を着込んで準備を整える。

 今日の僕は前回とは違い、全身鎧は使わずに胸鎧と鉢金の軽装にした。


「四狼兄上は今日は三刃と同じなのですか?」

「ああ、今日も皆が前衛だから僕は術中心に行動するからね。前に出ないのなら重い鎧は必要無いだろ?」


 先日の狩りでは結局僕は直接戦闘はせずに魔術による補助に徹していたので、今回も同じ様に補助に徹する予定だからだ。

 そもそも常時結界の方が防御力は高いので、鎧は言い訳に過ぎない。

 三刃も納得したのか頷いて答えた。

 全員の準備が終わった処で魔道車と厠を無限倉庫に仕舞い、僕達は狩場に向けて走り出した。



読んで下さった方々、有難う御座います。

次も三週間以内に更新出来る様に目指して頑張りますので、次回も読んで頂けると嬉しいです。

また、気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みになりますので宜しくお願いします。

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