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土傀儡

お待たせいたしました。

ブックマークをして下さった方、有難う御座います。

今回も僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。

 〇八〇 土傀儡


 二刃姉上が若干怖い事を呟いているが気にしない事にして、その後は僕の班三人対二刃姉上の班二人で人員を入れ替えつつ何度か組手を行い、最後に桜花様以外の三人対、僕の術による模擬戦を行う。


「四狼、何故童だけ参加しないのじゃ?」

「これは三人の連携訓練ですので、桜花様には見取り稽古をして貰います。最後に客観的な意見も聞けた方が皆の訓練にもなりますので、ご協力をお願いします」

「成程、分かったのじゃ」


 桜花様への説明に嘘は無いが、もう一つ理由が有った。

 それは桜花様の位階が十九に達している事だ。

 もう一つ位階が上がってしまうと、苦痛耐性を得るのに必要な苦痛が増えてしまう。

 なので、明日の狩りで三刃の位階が上がれば苦痛の行を受けるので、その姿を見せて桜花様に苦痛の行を受けるか、選択して貰うまでは位階を上げたくないのだ。

 そんな思いを込めつつ、桜花様に下がって貰うと、僕は土傀儡(つちくぐつ)の術で体長五メートル程の大きな土熊を作り出す。


「おお、凄いのじゃ」

「大きいです」

「こんな大きな像を作り出すって、四狼も成長しているわね」

「大きさ重視なので、攻撃力や防御力は余り有りません。これで熊との模擬戦をします」


 攻撃力が少ないといっても大きな土の塊だ。当然重量は相当にあるので、皆にはこっそりと頭から胴に対して結界で保護しておく。

 手足は潰れても治せるが、頭や心臓等の生命維持に重要な臓器が潰れたら助からないので、当然の安全措置だ。

 更に周囲に影響が出ない様にと修練場も結界で覆っておく。これで多少騒いでも外に影響は無い。

 準備ができた処で僕と桜花様は端に寄り、皆は武器を通常の物と交換して模擬戦を開始する。


 先ずは小手調べと土熊の右前足を皆の中央に叩き付ける。

 皆は散開して躱し、距離を適度に抑えた二刃姉上が呪力で刃先を伸ばした薙刀で、叩き付けられた前足を切り離す。

 しかし切り離された前足が崩れ去ると、元から土で出来た熊なので、簡単にもこもこと前足が復元される。


「ええっ! 直っちゃうの?」

「脆い分、呪力を復元力に回しています。一応首を落とせば全身が崩れ去りますが、倒す必要はありません。存分に攻撃と回避を試して下さい」

「四狼って、意外に厳しいのね」


 二刃姉上の疑問に答えるが、返答が辛い。

 あくまで三狼兄上が大きな熊を倒す手伝いの訓練なのだから、皆が倒せる必要も無いと思う。


「二刃もまだまだ甘いのじゃ。そこは、倒しても構わんのだろう。と答えるのが正解なのじゃ」


 桜花様がまたおかしな感想を呟いているが、声が小さく、距離も離れているので二刃姉上には聞こえていないだろう。


 土熊が、今度は左の前足で二刃姉上を横に薙ぎ払うが、二刃姉上は後ろに跳んで躱して距離を取る。

 その足を三刃が小太刀で斬り掛かるが、刃の短い小太刀では表面を僅かに傷付けるだけだ。


「三刃! 呪力の刃を伸ばさないと、大きな標的には効果が無いし、もっと呪力を込めて保護しないと武器が痛むぞ!」


 和富王国の人達が巨大な魔物に対抗できる理由の一つが、この呪力による刃の伸長だ。

 物理的に大きな武器の使用にはそれなりの体格が必要だが、呪力で伸ばした刃に重量は無いので、体格に左右され難い。

 和富王国の兵士は先ず、この技を使えないと戦力外として、町外任務に参加できないらしい。

 そして、土の塊を刃物で切り付けても刃物が痛んでしまう。呪力を纏わせて保護しないと、直ぐに使い物にならなくなるだろう。


 僕の注意を聞いていたのか、五狼は槍に十分な呪力を纏わせ、更に呪力で穂先を広く、長く伸ばして三刃の反対側から前足を連続で突く。

 前足は半分程削れるが、五狼が退くと徐々に元に戻って行く。


「本当に脆いわね。これじゃあどんな攻撃が効くかは試せないから、四狼の言う通り、連携の訓練をするしかないわ」


 二刃姉上がそう呟いて二人に指示を出し、同時に三ヶ所を攻撃したり、三人で同じ場所を連続攻撃したり、一人が気を引く囮作戦を実行したりするが、土熊を操作しているのが僕な所為か、何処か土熊の動きに人間っぽさが抜けない。

 このままでは土熊戦というより土巨人戦になってしまいそうなので、天照達に相談する。


『通常の土熊はもっと適当に、熊っぽく動けと術を掛けるのですよ』

『ご主人様が自動行動型の術を掛けずに、操作型の術を掛けたのが原因です』


 自動だと加減が効かず、やり過ぎてしまうのが心配だったのだ。


『土熊に身体操作の能力を付与をする事で動きが良くなるのですよ』

『身体操作の能力を通じて、私が熊の行動様式を補佐致します。力加減もお任せ下さい』


 天照が加減してくれるのなら安心だ。二人の案に乗って土熊に身体操作を付与すると、動きが一変した。


「おおっ! 急に動きが良くなったのじゃ」


 能力付与を施した土熊は獣じみた動きに変貌し、素早く地を駆け五狼に近付くと前足を振るう。

 五狼が咄嗟に槍で防御するが大きさが違い過ぎる為、五狼は吹き飛ばされてしまう。

 しかし薙ぎ払ったと同時に、土熊の腕も強度不足で折れてしまった。

 数メートル飛ばされた五狼が地面に落ちて転がるも、止まると直ぐに立ち上がる。

 派手にぶっ飛ばされた割に五狼の損傷が軽微なのは、防御結界の成果と、叩いた土熊の腕が折れた事で衝撃も緩和された為だ。


 土熊は折れた前足が再生すると、今度は後ろ足で立ち上がり、そのまま前方に軽く跳んで三刃と二刃姉上を押し潰そうと倒れ込む。

 二人が躱し、地面に倒れた土熊は、更に身体を丸め、押し潰すように前転しながら前に逃げた三刃を追う。


「ちょ、此処までするの!? 四狼の修行も父上や母上と変わらず、本当に厳しいのね」

「今日の四狼兄上は何時もより厳しいのです!」


 先日の熊戦は偶然だったが、明日の狩りは熊が目的だ。できるなら事前の対策は当然だと思う。

 文句を言いながらも、落下地点から逃げた二刃姉上は未だ余裕が有りそうだが、追いかけられた三刃に至っては若干涙目だ。

 三刃は転がりながら横に逃げ、土熊の背中で潰されるのを免れた。


「ほほーっ、急に強くなったのは、お約束の第二段階という奴じゃな」


 必死になっている三刃達とは裏腹に、桜花様は既に観戦モードに入っているらしい。自前の飲み物を手に、とても楽しそうだ。


 土熊はその後も跳び掛かっては、薙ぎ払いや叩き潰しを繰り出し、稀に噛み付きも混ぜて逃げ惑う二刃姉上達を翻弄する。


「このままじゃ埒が明かない。五狼、三刃、連続で仕掛けるから私に続きなさい! 狙うのは首よ!」

「は、「はい!」」


 皆は更に何度か土熊の攻撃を躱しつつ様子を見る。

 やがて叩き付けを身体半分躱した二刃姉上が飛び上がりながら身体を捻り、更に薙刀を二転三転させつつ呪力を刃先に込めて、呪力が刃を覆う球体の様になると、その球体で土熊の下顎を叩き上げて砕く。


「今よ!」


 二刃姉上の合図と共に、三刃が降ろされた土熊の前足を駆け上がり、仰け反った首元に呪力で刃先を伸ばした小太刀を二閃、首の前から左に掛けて二割弱削れる。

 更に五狼も飛び上がって呪力で伸ばした刃先で切り付けて、更に土熊の首を三割程削る。

 地面に着地した二刃姉上が、刃先に残っている呪力の塊を刃状に四倍近くまで伸ばし、技を放つ。


『飛び斬岩!』


 岩を斬れる斬岩撃を呪力斬に乗せる技だ。直接斬るより若干威力は落ちるが、再び飛び上がるよりは此方の方が早い。

 残り半分ほど繋がった土熊の首に命中すると首が跳ね飛び、首が地面に落ちると同時に土熊の身体も崩れ去った。


「ふー」

「お、終わったー!」

「疲れたのです」


 言葉通りに疲れたのだろう、戦っていた三人はその場で腰を下ろす。


「お疲れ様でした」

「皆、よう頑張ったのじゃ」


 僕と桜花様は皆を労いつつ、飲み物を配る。


「本当に疲れたわよ。四狼はあれだけの術を使った割には、元気そうね」


 二刃姉上は飲み物を受け取りながら、不思議そうに訊ねる。


「最近は呪力操作の練習の成果か呪力が充実していますし、今回の術は強度を上げていないので、見た目以上に脆く、その分、呪力の負担は少ないんですよ」


 実際は色々と能力が覚醒したおかげで呪力も跳ね上がっているからなのだが、それは説明できない。

 そして強度が低い為に、必要な呪力が少なかったのも事実だ。


「確かに、自分の攻撃の反動ですら壊れていたわね」


 僕の説明に納得したのか、二刃姉上は渡した飲み物で喉を潤す。


「少し時間が早いですが明日に疲れを残さない為に、今日は此処までにしましょう。二刃姉上達はお風呂で汗を流して来て下さい。お昼は僕が用意します」

「あら、私達だけ良いの?」

「恐らく伊吹さん達も合流しますから女性は大人数になりますし、男は僕と五狼だけですから魔道具で汚れだけ落して、お風呂は夕方にします」


 五狼もそれで良いと了承し、二刃姉上達は着替えを準備しに一旦部屋に戻る。

 五狼に浄化装置で汚れを落として先に食堂で待って貰い、僕はお風呂の準備をしてから食堂に向かう。


    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 今日の修行は二刃も加わって、普段以上に良い鍛錬になった。

 私達は修行後の程良い疲れと汗を共に流す為、二刃達を待ってから風呂場に向かう。

 すれ違いで四狼が脱衣所から出て来て、お風呂の準備ができたと告げると食堂に去って行った。

 何から何まで準備の良い事だ。


 私達は早速服を脱ぐと洗い場で汗を流し、お風呂に入る。


「ふー、動いた後のお風呂は格別なのじゃ」

「はい、姫様、気持ち良いですねー」


 私達がお風呂に入って寛いでいると伊吹も修行を終えたのか、秋穂殿が伊吹を連れて風呂場に入って来た。


「姫様、失礼致します」

「此処はお主の家じゃ、童の方が借りておる立場なのじゃから、童に遠慮等不要じゃ」


 私の言葉に、秋穂殿は軽く頭を下げ、湯を浴びて汗を流す。

 伊吹は余程疲れたのか、黙々と汗を流すと湯船に入って来た。

 元々大家族用だけあって八神家のお風呂は広く、五人で入っても狭さを感じない。

 尤も、和富王国の人族は日本人より背が低いせいもあるのだろう。そんな事を考えていると。


「やっぱり姫様のお胸は大人達と同じ位有るのです」


 三刃の言葉に二刃や秋穂殿を見ると、確かに私と大差ない様に見える。

 三刃も最近成長し始めた胸が気になっているのだろう。ならば夢を持たせるのも悪くはない。


「そうか、しかし童も三刃も未だ若い、今後もっと大きくなるかもしれぬのじゃ」

「はい、三刃も何時か伊吹さんの様に大きくなるのです」


 三刃が伊吹を目標にしているのは、職業の方だけだと思っていたが、体型も目標にしていたらしい。

 三刃の言葉に、先程確認しなかった伊吹を見るが、恐らくあれは無理だろう。だが、希望を持つのは悪い事ではない。


「伊吹の胸は和富王国では規格外じゃが、未来は判らぬ。精々頑張るのじゃ」

「姫様、規格外は酷いで御座るよ。それに、私の姉上方も同じか、もっと大きいで御座るよ」


 そう言えば伊吹の姉達も相当な大きさだった。つまり伊吹の胸は遺伝なのだろうと思うと、三刃の未来は然程明るくは無さそうだ。

 そんな私達の会話に、二刃も伊吹や私と自分の胸を見比べて眉を顰めているが、隣の秋穂殿は気にせずに我関せずを貫いているのは、やはり既に子育てを終えつつある大人の余裕なのだろう。


「二刃さん、他者の胸を眺めていても自身の胸は大きくなりませんよ。それに胸など、赤子に十分な乳を与えられればそれで良いのです」

「秋穂母上、確かにそうかもしれませんが、やはり気にはなります」

「それは未だ意中の殿方を捕まえていないからです。自信を持てないから気になるのです。結婚してしまえば、然程気にはならなくなりますよ」


 秋穂殿は流石は既婚者といった処か、確かに当時は未だ将軍にはなっていなかったが、将来の将軍を捕まえたのだから自信にもなるだろう。


「姫様、あの方はもっと胸の大きい女性の方が好みなのでしょうか?」


 二刃の婚約者候補には当然多少詳しいが、流石に巨乳派か如何(どう)かまでは知らないし、男女で話す事でもない。


「その様な話を(おのこ)女子(おなご)にする訳がなかろう。二刃は四狼や三狼が好む女性の胸の大きさを知っておるのか?」

「いえ、胸云々以前に、女性の好みでしたら二人共姫様でしょう。四狼は十中八九ですが、三狼は十割確実です」

「確かに、三狼さん程判り易い男性もいないでしょうね。尤も、隠す気も無さそうですが」


 二刃の回答に秋穂殿も笑いながら賛同し、他の二人も頷いている。

 そうか、四狼も十中八九私が好みなのかと、少し頬が緩みそうになるのを抑える。


「即答されるとそれはそれで話が繋げずに困るのじゃが、ならば二狼や五狼はどうなのじゃ? 好みについて聞いた事はあるのかの?」

「あの二人は判りませんね。女性の話題が出た記憶も有りません」

「そもそも五狼さんは未だ、その手の感情に目覚めていないかもしれません。余り女性と会う機会も有りませんから」


 まあ、確かに五狼は未だ若い。恋愛云々もこれからだろう。


「何しても、二刃は二狼や三狼が、女性の胸は大きい方が良いとか、小振りな方が良いとか、聞きたいのかの?」

「申し訳ありません。確かに、余り聞きたくないですね」

「そういう訳じゃから、体型の好みを童に聞かれても答えられぬ。じゃが、女性の能力を妬む様な小物ではない事は童が保証する。存分に鍛えて、強く賢い、頼れる女性になるのが良いのじゃ」

「あ、ありがとうございます、姫様。私、あの方に頼られる様に頑張ります」


 家同士の繋がりや(しがらみ)もあって、中々婚約者を決められない事情もあるのだが、それが二刃の不安にも繋がっているのだろう。少しでも二刃が前向きになれたのなら良い事だ。


「さあ、余り長湯をしていては、昼食を用意してくれている四狼達が待ちくたびれるのじゃ」

「それもそうですね」


 二刃が納得した処で話を打ち切り湯船を出て、皆がそそくさと身体と髪を洗って手早くお風呂を終える。

 着替えて魔道具で髪を乾かし、身嗜みを整えてから食堂に行くと、四狼が優しく出迎えてくれた。




読んで下さった方々、有難う御座います。

次も三週間以内に更新出来る様に目指して頑張りますので、次回も読んで頂けると嬉しいです。

また、気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みになりますので宜しくお願いします。

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