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鑑定の簡略化

お待たせいたしました。

前回遅くなった分、今回は頑張って少し早く更新できました。

評価をして下さった方、有難う御座います。

今回も僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。

 〇七九 鑑定の簡略化


 明けて早朝、寝起きの記憶統合がされても、睡眠前の記憶統合の延長でしかなく、目新しい事は特に何も無かった。

 アルベール王国とは時差が八時間程あるので、彼方(あちら)の時間はもう直ぐ昼になる。

 当然、今日の移民も始まっており、今の処、問題無く順調に進んでいる。

 そして朝食の時間に、アルベールでの食事の配布も三日後の夕食で終了だと発表もした。

 アルベールでの支援を延々と続ける事もできないので当然だ。

 この食事の配布で多くの者の胃袋も掴めている筈なので、今後の移民は加速するだろう。


 手早く身支度を終えたが、朝食までは未だ時間が有る。

 時間を無駄にするのも勿体無いので、国造りに関して天照達に相談して時間を有効に使う。

 幾つかの提案と選択を示されたが、今、決定できる事はそれ程多くは無い。

 文化や習慣の違いもある筈なので、ライルさん達に確認や相談する必要もあるのだ。


 やがて程良い時間になった処で食堂に向かう。

 何時も早い三刃が居らず、代わりに一狼兄上と富月義姉上が居た。


「おはようございます」

「おはよう、四狼」

「おはようございます、四狼さん」

「三刃は今日も寝坊ですか?」

「いえ、私の代わりに台所ですよ」


 どうやら三刃は、身重の富月義姉上の代わりに台所に入って、本格的に家事の修行を始めたらしい。

 今日の朝食は多少形が悪くても、気にしない事にしよう。

 やがて五狼や三狼兄上も来て、暫くすると台所組もやって来て朝食だ。


「「「いただきます」」」


 本日の献立は朝食の定番、焼き魚と納豆だった。

 そして何時もの野菜たっぷりの味噌汁を食べていると、三刃が心配そうに眺めている。

 僅かに不揃いの野菜を見るに、これは三刃が切ったのだろう。

 多少形が悪くなっても、味にそうそう影響は無い。

 何時も通りに美味しいと伝えると、三刃も安心したのか、朝食を食べ始めた。


 朝食を終えると三狼兄上は仕事に出掛け、台所組は後片付けに向かう。

 僕達はお茶を飲みつつ食休みをしていると、台所組が戻って来て、入れ替わる様に道場組が道場に向かった。


 三刃が戻った処で、僕達は呪力操作の練習だ。

 三刃は二刃姉上だけでなく、今度は既に呪力操作を持っている富月義姉上まで誘っていたので、妊娠中にやっても問題無いのか、天照に確認してみる。


『呪力操作の練習でしたら、本人にも胎児にも悪影響はありません』

『寧ろ、産まれてくる子供が呪力操作を得易くなるのですよ』


 どうやら良い胎教にもなるらしい。

 その事を伝え、富月義姉上も練習に参加した事で、一人あぶれていた秋穂母上も指導に回ってくれた。

 そうして何時もより倍に増えた人数で小一時間程練習をすると、最後の締めに全員で手を繋いで呪力を回す。

 参加者中、二番目に呪力の低い五狼に合わせた為、一番呪力の低い三刃には少しだけ負荷が大きい様だが、二人の差は僅かなので問題ない。

 やがて全員での呪力循環を終えると、皆に極少だが呪力回復効果の有るお茶を振る舞う。

 これで呪力操作の練習疲れも取れるだろう。


 そうして休んでいると、桜花様が剣術修行にやって来る。


「では行きましょうか」

「はい、よろしくお願いするで御座る」


 昨日の宣言通りに、伊吹さんは秋穂母上に特別訓練を受ける為に連行されて行った。


「さあ、童達も修行を始めるのじゃ」

「はい、始めましょう!」


 桜花様と三刃が率先して何時もの屋外修練場に向かう。


「四狼、秋穂母上を伊吹さんに取られたし、今日は私も其方に参加して良いかしら?」

「勿論です、皆に二刃姉上が手解きして頂けるなら大歓迎ですよ」


 普段、家事の合間に秋穂母上と修行している二刃姉上が、今日は僕達と修行するという。

 これは普段とは違った戦い方を学べる、桜花様達にとても良い機会になるだろう。


「大袈裟ね」


 二刃姉上がころころ笑いながら三刃達を追って行った。

 僕と五狼もそれに続く。


 僕達が修練場に着くと、既に桜花様と三刃は型稽古を始めていた。

 遅れて来た僕達も型稽古を始め、一通り稽古を済ませると組手だ。


 先日用意した練習用の武器を簡略化して、素材費を下げてた物を皆に配る。

 当然、一狼兄上に言われた様に、痛みを増加させてある。

 今回は種類も増やして、薙刀や槌、鞭や弓も用意してあるので、二刃姉上には薙刀を渡す。


「これの正式名称は決まったのかの?」

「いえ、特に考えていない様ですが」

「では、痛撃の不傷武器でどうじゃろう?」

「僕は構いませんよ」


 確かに何時までも練習用というのも何だし、特に拘りも無いので期待を込めた目で見つめてくる桜花様の案を採用する。


「よし、今日からお主は痛撃の不傷太刀じゃ」


 何故か楽しそうに桜花様が木刀を掲げると、三刃も真似して「痛撃の不傷小太刀です」と両手の短い木刀を掲げる。


「三刃と姫様、何故か楽しそうですね」


 五狼も理由は分からないみたいだ。

 何時までも遊んでいても仕方が無いので、先日と同様に僕対三人の対戦練習を始める。

 二刃姉上には皆の実力を持て貰う為、一先ず見学だ。


 三人が集まって軽く作戦会議をすると、先日とは違い、今回は横に並んで一斉に僕に突っ込んで来た。

 先ずは真ん中に居て相対的に僕に一番近く、攻撃範囲の広い五狼が木槍で突いて来る。

 突き出された木槍を強めに左やや下に弾き、桜花様の行動を牽制すると、右下から三刃が足を狙って切りつけて来る。

 僕は刀を振る勢いのままに左足を軸に半回転、更に右足を軸に半回転し、身体一つ分左に移動しながら一回転し、その流れのまま木刀で木小刀を跳ね上げると、体重の軽い三刃は身体を横に回転させながら転がって行く。

 そこに体勢を立て直した桜花様が横薙ぎで斬り掛かって来るのを、跳ね上げた木刀を振り下ろして受ける。

 木刀が止まった僕に五狼が槍を突き込んで来るが、桜花様を押し返しながら後ろに下がって躱す。

 其処に起き上がった三刃が突っ込んで来たので受け流してやると、そのまま五狼にぶつかってしまった。


「三刃、味方の動きも把握して行動しなさい!」

「……はいぃ……」


 僕が引っ繰り返っている三刃に注意をしている間にも、桜花様の攻撃は続く。

 左逆袈裟、右袈裟、と弾くと今度は左太腿を狙って突きが来る。

 それに合わせて右に回り込んだ五狼が僕の脇に向けて突きを出し、三刃が跳び上がって上から斬り掛かって来る。

 僕も跳び上がって空中で三刃を受け止め、その反動を利用して僕も皆から少し離れる。


「三刃、高く飛び過ぎだ!」


 この世界の人の身体能力は高い。覚醒前の僕でも垂直飛びで二メートル以上飛べたのだ。三刃も勢いを付けて三メートル近い高さまで飛んだ為、逆に迎撃の隙間ができてしまっていた。

 隙間が小さければ、僕が跳んでも五狼の突きは僕の足に当たっただろう。

 尤も、その場合は僕も上に跳んだりはしないのだが。


「桜花様は良い連撃でした。五狼も狙いは悪くなかった」

「三刃だけ駄目出しっ!?」


 褒められた桜花様と五狼は嬉しそうに、叱られた三刃だけが憮然としている。


「まだまだ続けるぞ!」

「「「はいっ!」」」


 こうして更に二十分近く連携訓練を続け、皆が疲れて来た処で休憩だ。


「皆、思っていたより強くなっているわね」


 皆が水分補給をしながら休憩していると、見学していた二刃姉上が感想を語る。


「皆、何時も頑張っていますし、先日の狩りで実戦も経験しましたから」

「そうね、実戦の経験は大きいものね」


 二刃姉上も自身の経験から納得の顔だ。


「この後は二刃姉上も皆に稽古をお願いします」

「あら、皆の前に四狼の稽古でしょ」


 二刃姉上は僕とも組手をする心算の様だ。

 上手く負けるのって、単純に勝つより難しいので遠慮したいのだが、上手い断り文句が出てこないし、聞いていた桜花様も興味津々の様だ。

 仕方が無い、此処は坂本殿との試合とは逆の方向で頑張ろう。

 一応、参考に二刃姉上を鑑定しておく。



 名前:八神 二刃

 生年月日:和富歴1036年2月26日 h10歳(16歳)

 種族:人族

 身長:4尺9寸(約147センチ)

 体重:11貫20両(約42キロ)

 胸囲:2尺6寸(約78センチ)

 胴囲:1尺8寸3分(約55センチ)

 尻囲:2尺6寸(約78センチ)

 状態:良好

 性交:無


 霊格:h80

 位階:h24(36)

 平均筋力:36

 平均知力:38

 平均呪力:37


能力:異界倉庫3、算術3、無生物鑑定3、太刀術2、小太刀術2、薙刀術4、言霊術2、調理4、清掃2、狩猟3、解体2、苦痛耐性2、錬金術1、過食成長1

称号:料理人、一途な乙女、兎殺し

職業・役職:家事手伝い


 年齢が伊吹さんと同じせいか、位階も伊吹さんと同じだった。

 二人共に八神流の武闘派なだけあって、年齢の割に位階はかなり高い。

 これは和富王国の一般的な同世代の女性に比べても三倍程高い位階で、通常はh0B(11)前後だ。

 狩人や武士等の相当に活動的な女性でない限り、能力補正の大きい位階の二桁目が上がらず、h0F(15)止まりで生涯を終えるのが普通なのだ。


 更に熊之介の事もあったので、今回から鑑定で開示される基礎能力の項目を減らし、平均で分かる様に鑑定の簡略化をしておいた。

 一応、僕の鑑定能力は最大らしいので、逆に超詳細にすると一つ一つ全ての筋肉の筋力さえ事細かく分かるそうだ。

 しかし、何百あるかも分からない筋肉の力なんて、知っても意味が無いし、多すぎる情報は返って邪魔になる。

 知りたい事が部分的にも分かる、自由度の高い鑑定能力が地味に助かる。

 通常は此処まで細かくは分からないが、鑑定の熟練度が相当高くならないと、逆に分かる範囲を絞る事も出来ないらしい。

 つまり、僕の能力隠蔽を解除した状態で鑑定すると、延々と何十時間も能力名が頭の中を流れる事になり、相当に鬱陶しい事になるだろう。

 これがリーズさんに説明した、下手に強者を鑑定すると負担になるという事だ。

 鑑定は今後も必要に応じて調整しながら活用していく事になるだろう。

 考えが逸れたが、何はともあれ、これで向き不向きが一層判り易くなる筈だ。


 単純に戦闘を中心に考えれば、筋力が高ければ物理攻撃力や防御力が高くなり、呪力が高ければ魔術の威力や使える回数が増え、知力は知覚系や制御系、成長速度に影響が有るらしい。

 但し、筋力が幾ら高くても知力との差が大きくなると、今度は身体制御が追い付かなくなる為、自身の力に振り回され、逆に運動能力は下がってしまうそうだ。

 同じ様に呪力だけが高いと、術を制御できずに暴発する恐れもあるという。

 何事も有る程度の釣り合いは必要という事らしい。


 そして、二刃姉上は人族に最も多い典型的な釣り合い型。

 一見、器用貧乏になりそうな気もするが、結局は全ての基礎能力が連携するので、実は弱点の少ない理想的な基礎能力なのだそうだ。

 そして更に見た事の無い称号まで持っていた。


『一途な乙女は、想い人の為を想う事で成長補正や能力補正が発生します』

『片思いや二番目三番目でも良いと、自分よりも相手の事を第一に考えていると取得できるのですよ』


 少し古臭そうな名称の称号だなと考えていたら、男性版の一途な漢という称号もあり、此方は三狼兄上が取得していると天照が教えてくれた。

 姉弟揃って愛が重いよ。そしてストーカー化しない事を祈っておく。


 結局、二刃姉上は万能型と判っただけで、特に気を付ける点は判らず仕舞いだった。

 まあ、なる様になるか。


 二刃姉上は、僕が渡した痛撃の不傷薙刀を構え、僕と対峙する。

 今回は僕が挑戦者なので、僕の方から仕掛ける。


 僕は一気に距離を詰めると、小手調べとは名ばかりの胴を狙った横薙ぎを繰り出す。

 二刃姉上は薙刀を立てて受け止めると、木刀を巻き込む様に薙刀を縦に回転させる。

 僕は木刀を引いて巻き込みから逃れると、二刃姉上はそのまま薙刀を回転させ、刃先が此方を向くと首筋を掠める様な鋭い突きを繰り出して来た。

 僕は木刀で受け止めると、弾く反動を利用して横に移動しつつ逆袈裟気味に切り付けるも、またもや柄で受け止められ、今度は石突側で薙ぎ払って来る。

 身を屈めて躱し、起き上がる勢いに連動させて木刀を振るが、二刃姉上は距離を取って躱した。


「やっぱり、思っていたよりやるわね」

「ありがとうございます」

「次は此方から行くわよ」


 二刃姉上はそう断わると、四連の突きを放つ。

 僕は其々を木刀で受けるが、最後の突きを受けた直後、二刃姉上は薙刀を捻り刃先の反りを使って木刀を絡め取ろうとする。

 僕は引かれる力に逆らわずに前に跳び、更に側転で捻りにも合わせ、上下逆さの視界の中で、木刀を引く動作の勢いで牽制の横薙ぎを放つ。

 二刃姉上は半歩下がりながら「器用ね」と呟いていた。


 その後もお互いの攻防は続き、半時程経った処で僕が狙って木刀を弾き飛ばされる事で組手は終了する。


「ありがとうございました」

「私の方も凄く良い鍛錬になったわ。ありがとう」


 互いに礼をして皆の元に戻ると、皆が称賛で迎えてくれた。


「二人共、凄い動きじゃったのじゃ。特に四狼の空中回転は映画みたいで恰好良かったのじゃ」


 桜花様は映画の部分だけ声を潜めつつ、称賛してくれた。

 折角なので開示能力に立体行動も追加しておく。


「先日の試合と違って、三刃でも見えたのです」

「はい、早かったけど僕でも目で追えました」


 そこは二刃姉上が僕達の位階に合わせてくれたからで、二刃姉上は力では坂本殿に負けるだろうが、本気で動けば坂本殿よりも早く動ける筈だ。

 その事を説明すると、皆は更に二刃姉上を褒め、二刃姉上が若干照れていた。

 普段の修行で僕に手も足も出ない二人にとって、僕に勝った二刃姉上は称賛に値するのだろう。


 薄めた果汁水に若干の塩を混ぜた飲み物で、水分と塩分を補給しながら一休みした僕達は、今度は二刃姉上対僕以外の三人で組手を始める。

 普段と違う相手との組手に、皆が手探りで挑む。

 桜花様達は、何時もより長い間合いの薙刀に戸惑い、普段は秋穂母上と家事の合間に修行している二刃姉上は、久し振りの複数人との対戦に僅かに手間取っている様だ。

 しかしそれも初めの数分だけで、やがて調子を取り戻した二刃姉上に翻弄されて行く。


「流石四狼の姉上、二刃は強いのじゃな」

「ありがとうございます。姫様」

「身体中が光ってます」


 三刃の言う通り、組手が終わってみれば、二刃姉上に斬られまくった桜花様達三人は、身体中に光の線や輪が走り、如何に打ちのめされたのかが分かる状態になっていた。


「幾ら叩いたり斬ったりしても怪我をしないのは便利よね」


 二刃姉上は痛撃の不傷薙刀を眺めながら、遠慮なく斬れる、としみじみと呟いた。



読んで下さった方々、有難う御座います。


度々申し訳ないのですが、刀剣術だと小太刀も入りそうなので太刀術に、小太刀二刀流だと八神流や立花流の様に流派と紛らわしいので、小太刀は基本二刀とし、小太刀術に変更しました。宜しく願いします。


次も三週間以内に更新出来る様に頑張りますので、次回も読んで頂けると嬉しいです。

また、気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みになりますので宜しくお願いします。


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