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其々の未来

お待たせいたしました。

評価やブックマークをして下さった方々、有難う御座います。

今回も僅かでも楽しんで頂けたら幸いです

 〇七四 其々の未来


「あの、私達は何方(どちら)に並べば良いのでしょう?」


 三十人程の子供と、三人の大人の女性を連れた四十代半ば程の女性が、案内をしていた絡繰りに声を掛ける。


「貴女達は?」

「私共はアベル東地区の孤児院の者です。この子達には私達大人の同行者が居ますが、此方の国の孤児院に入る事はできるのでしょうか?」


 女性は心配そうに絡繰りに訊ねる。


「勿論入れます。孤児達の世話をなされていた方々も、希望者はそのまま此方の孤児院で働く事も可能です。但し、適性が無いと我々が判断した場合は辞めて頂く可能性も御座います。住民登録は子供達は孤児専用の物を、大人は一般用で登録し、希望する職業を孤児院職員と担当者に伝えて下さい」


 絡繰りの説明に孤児院の代表らしき女性が「ありがとうございました」と頭を下げ、同行者に指示を出す。

 代表の女性はもう一人の大人の女性を連れて一般の住民登録に向かい、残った二人の大人の女性は子供達を連れて子供達の登録に向かう。


 子供達は登録担当の絡繰りの指示に素直に従い、住民証が出て来ると初めて見る魔道具に楽しそうに(はしゃ)ぎ、それを引率の女性達が(たしな)めている。

 やがて登録を終えた代表の女性達が戻り、入れ替わりで引率をしていた女性達も登録を済ます。


 登録を終えた子供達には無くさない様に、住民証の穴に紐を通して首に掛けて貰う。

 そうしてこの場に居た子供達も全員が登録を終えると、孤児院担当の精密型絡繰り人形が説明を始める。

 孤児院の担当には子供達の教育の面もあるので、表情の分かる精密型を男女四体ずつ起用したのだ。


「これより皆さんが暫く過ごす孤児院にご案内いたします。少し遠いので移動にはもう一度、此方の小さな転移門を使用します。付いて来て下さい」


 絡繰りが転移襖で開けた空間に入り、その後を孤児院に入っていなかった子供達が続き、更に孤児院の者達も付いて行く。

 全員が転移すると、最後に残っていた孤児院担当の絡繰りも通って襖を閉じた。

 後からも未だ来るだろう孤児達の為に、この場には受付の絡繰り達が残る。


 転移した先には芝生の様な広場があり、その中央には外壁の門と玄関を繋げる石畳の通路がある。

 後ろには大きな建物が在り、その建物が孤児院だ。

 敷地を覆う様に高い壁が在り、壁の前には様々な遊具が設置されていた。


「何だ? あれ?」

「変な物がいっぱいある」


 子供達は見た事の無い物体に興味が有る様だ。


「あれは遊ぶ為の道具です。使い方を間違えると危険な物も御座います。後日使い方を説明するまでは使用は禁止です」

「遊び道具!?」

「規則を守れない者は食事を減らしますよ」

「「「!!!」」」

「ぼ、僕は規則を守るよっ!」「僕もっ!」「私もっ!」


 遊び道具という言葉に子供達は益々興味をそそられたが、それ以上に食事を減らされるのが嫌なのか、次々に規則を守ると宣言する。

 そうして遊具が気になる子供達を(なだ)めながら玄関に入ると、幾つもの下駄箱が並んでいて、此処で靴を脱いで入り、中は土足厳禁だと説明する。

 一階は応接室と台所と食堂、二階には事務室とお風呂に畳と板張りの二つの遊戯室、三~五階が居住区だ。


 居住区は王の字型になっており、全ての廊下の突き当りには便所が在り、その手前に手洗いが在る。

 手洗いの廊下を挟んだ反対側は階段になっていて、廊下の左右が其々(それぞれ)四人部屋になっている。

 王の字の廊下の上辺と下辺で男女に別れ、中央は職員と、主に低年齢の男女の兄弟姉妹に使って貰う予定だ。

 小さな子供達を男女だからと、兄弟姉妹を別々にするのも可哀想だと思ったからだ。

 それらの説明をした後は今後の予定も話す。


「今日の予定は先ずお風呂に入って汚れを落として頂きます。その後昼食を挟んで午後は部屋割り等を行います。お風呂で綺麗になったら、建物内を見学しても良いですよ」


 子供達は新しい住処を早く探検したい気持ちを抑えながら、絡繰り達の先導でお風呂に向かって行った。

 子供達が元気で何よりだ。彼らの未来がより明るい物である事を願う。


    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 処変わって此処(こちら)は仮町の有る島とは別の島。

 其処(そこ)には三十人程の男達が居た。


此処(ここ)何処(どこ)だ?」

「まさか、このぼろ小屋が新しい家なのか?」

「ふっ、ふざけてんのかっ!」


 目の前には幾つもの家が立ち並ぶが、いずれも小さな平屋だった。

 これは複製世界で回収したアルベール王国の下層の住民の家や、その同格の家を他の国からも移設した物だ。


「ご説明いたします。お静かにお願いします」


 喚いている男達の後ろに男性型の絡繰りが現れる。


「その仮面、貴様、俺達を騙したのかっ!」

「騙してなどいません。お約束通り、家の中に保存食や衣服等、生活に最低限必要な物が用意されています」

「さっき食べた美味いパンから、こんな小屋に住めと言われるとは思わんだろっ!」

「勿論、他の方達にはもっと綺麗な家をご用意させて頂いております。しかし貴方達は犯罪者です。処罰されなかっただけ、ましだと思って下さい」

「な、何を証拠に俺達を犯罪者呼ばわりするんだっ!」


 男の言葉に周りの者も便乗し「そうだそうだ」と囃し立てる。


「貴方達が通った転移門には犯罪者を判断する機能が御座います。それが全てです」

「なっ……」


 絡繰りが取り付く島もなく断じるが当然だ。

 今回使った転移門には行動履歴に犯罪行為が有った者を、この島に複数作った犯罪者村に転送するという機能も付けておいたからだ。

 つまり、有害物質と同様に、有害人物も別の島に送ったという訳だ。


「貴方達は我が国に移民する事に同意したのですから、当然裁判権も我らに有ると理解している筈です。その我らが犯罪者と断定した時点で罪が確定するのは当然の事でしょう」

「お、横暴だっ! 犯罪者扱いされるなら、移民なんてする訳がないじゃないかっ!」

「横暴? 人を殺して金品を奪った貴方が其れを言いますか?」

「し、知らん。ど、何処に俺が殺したって証拠が有るってんだっ!」


 強盗殺人をばらされた男は白を切るが、周りの者達もその男から距離を取り始める。

 そして会話が同道巡りを始めたので絡繰りは判定の説明を打ち切り、この集落の説明に移る。


「一度しか説明いたしません、聞き逃しの無い様ご忠告いたします。この集落の中央には井戸が在り、その周りに人数分の家屋を用意してあります。各自好きな家を使って下さい。集落の周りには簡素な木の柵が設置されていますが、余り丈夫ではありません。大型の獣には効果が薄いでしょう。夜間の外出は控えた方が良いと忠告いたします」

「大型の獣って何だよっ!?」


 男の質問には答えず、絡繰りは説明を続ける。


「この島にはこの様な集落が複数作られていますが、森を挟んで数十キロは離れていますので、遭遇する可能性は低いでしょう。たとえ遭遇したとしても、各自の判断で行動して下さって構いません。我々の規則を守れない貴方達は此処で自由に生きて下さい。奪い合うも助け合うも自由です。今後、我らが貴方達に干渉する事は御座いません」


 絡繰りの説明に男達は唖然とするが、絡繰りは気にせず最後に「失礼します」と挨拶して集落を後にした。

 こうしてアルベール王国の犯罪者の大半が、監獄島に廃棄される事になるのだった。

 彼らの未来は相当に暗いだろう。


    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 僕は荒野の旅館別荘の食堂で、皆に配布した物と同じ朝食を食べながら其々の状況を確認していた。

 一般の移民は問題無さそうだし、孤児院の子供達も楽しそうだ。

 粗方の犯罪者も上手く排除できた様だし、其々の未来に上手く明暗を付けられたんじゃないかと思う。

 つまり、今の処全て順調に進んでいる。

 強いて言えば、昨日解放した女生徒達が未だに起きてこない事くらいだ。


 そう考えていると、エステル嬢に付けていた絡繰りから、エステル嬢が目を覚ましたという念話が届いた。

 朝食を終えた僕は丁度良いと、エステル嬢の元に向かう。

 部屋の前に着くと呼び鈴を鳴らし、中の絡繰りに許可を貰って部屋に入る。


「お加減は如何ですか?」

「あの、貴方がわたくしを助けてくれたのですか?」


 エステル嬢は寝ている間に着せられていた、着慣れない浴衣姿を恥ずかしそうに、布団を手繰り寄せながら尋ねて来た。


「まぁ、そういう事になります」


 面と向かって助けたと言うのは少し気恥しいが、事実なので肯定する。


「そうですか、助けて下さってありがとうございます。しかし、わたくしは手足を折られていた筈なのですが、痛みも無く、普通に動かせます。どういう事なのでしょう?」


 エステル嬢は不思議そうに手を動かす。

 一応鑑定で状態を確認してみたが、空腹としか表示が無く、天照も言っていた通り、性交も6人から無しに変化していた。

 どうやら無事に、無かった事にされた様だ。


「怪我の方は全て魔術で治療してあります。栄養さえ取れば直ぐにでも動ける様になりますよ」

「骨折を治せる程の魔術!? 貴方は凄い魔術師なのですね」


 エステル嬢は驚いているが、和富王国で骨折程度を治せない者は治癒術士を名乗れない。

 なので、エステル嬢の称賛に僕は「それ程でも」と答えておく。


「申し遅れましたが、わたくしはアングラード侯爵家長女のエステル・アングラードです。アングラード侯爵家の名に懸けて、後日、改めて十分なお礼をさせて頂きます」

「はい、皆さんにエステルさんの名前は伺っています。僕の名前は今は訳あって話せませんが、詳細は後で皆さんと一緒に話しましょう」

「皆に、という事は、わたくし以外の捕らわれていた者達も無事なのでしょうか?」

「はい、他の学生さん達は(・・・・・・)別室でお休みになっていますが、全員怪我もありません」

「そうですか、良かった」


 本当に安心して力が抜けたのか、エステルさんのお腹が「くぅー」と鳴く。


「元気になられた様なので、朝食の用意をしましょう」

「あ、ありがとうございます」


 エステルさんが俯き、長めの黒髪に顔を隠しながら恥ずかしそうに礼を言う。

 部屋に付けていた絡繰りに指示し、布団を跨ぐ卓とお約束の雑炊を用意をさせる。


「熱いのでゆっくり食べて下さい。食事が終わりましたら、皆さんと今後の話し合いをしましょう」

「はい。何から何まで、ありがとうございます」

「何かありましたら彼女に伝えて下さい。引き続きエステルさんの事は任せる」

「畏まりました」


 エステルさんに絡繰りを示し、此方の事は担当の絡繰りに任せて僕は食堂に戻る。

 途中、林太にエステルさん達の無事と、昼までには家に送ると、ライルさんに伝える様に指示を出しておいた。

 食堂に到着すると、丁度フランさん達が起きて来た処だった。


「おはようございます。ゆっくり眠られた様ですね」

「お、おはようございます。すみません、遅くなりました」

「おはようございます。おかげさまで久方振りにゆっくり眠れました」

「「「「おはようございます」」」」


 僕は浴衣に茶羽織という、温泉寛ぎスタイルの皆と朝の挨拶を交わすと「早速朝食にしましょう」と言って、絡繰り達に朝食を用意させる。

 献立は朝の配布所で配布した物と同じ、肉麦餅と乳酸菌飲料に、野菜スープも付けてあげる。

 野菜スープを配布所で配らなかったのは、配布する人数が多いので品数が増えると配布に時間が掛かり過ぎると考えたからだ。

 ついでに貴族女性が大口を開けてパンに噛り付いたりはしないだろうと、肉麦餅は食べ易い様に四つ切にしておいた。


「これも美味しいですね」

「はい」


 アンリエットさんとフランさんは言葉通り、美味しそうに食べている。

 他の女生徒達は乳酸菌飲料の味に困惑していたが、フランさんに身体に良い飲み物だと説明されると、納得したのか顔を顰めながらも飲んでいる。

 皆が朝食を食べ終わった処で絡繰りに確認し、彼方(あちら)の朝食も終わっている様なのでエステルさんを食堂に連れて来て貰う。


「皆さん、ご無事で何よりです」

「「「「「エステル様っ!?」」」」」


 女生徒達は立ち上がってエステルさんの元へ集まり、お互いの無事を確認し合う。


「エステル様、酷いお怪我をされていると聞いたのですが、ご無理をなさってはいないでしょうか?」

「はい、すっかり良くなって、前より調子が良い気がいたしますわ。貴女達も無事で良かったわ」

「私達が無事なのは、エステル様を生贄に差し出したからです。この罪は如何様にも償います」

「何を言っているのかしら? 貴女達を罰したら、わたくしが痛い思いをしてまで庇った意味が無くなってしまうわ。それに、元はわたくしの我儘で寄り道をしたせいで盗賊に出会ってしまったのだもの、責任を取るのは当然です。そして、今は全員無事に助かったのだから、その幸運を喜びましょう」

「エステル様……」


 エステルさんはわざと「痛い」や「庇う」という言葉を使って、今回の事件の責任は自分に有ると誘導し、アンリエットさん達の罪悪感を逆に封じようとしている様だ。

 真っ直ぐなのか強かなのか判断に迷うが、僕は好感は持てると思った。


 やがて十分に無事を確かめ合った女生徒達が僕に礼を言う。


「改めて、エステル様を救って頂き、ありがとうございました」

「もうお礼の言葉は何度も頂いています。それよりも今後の話を始めましょう」

「はい」


 僕の隣に椅子を追加してフランさんに座って貰い、フランさんが座っていた席にはエステルさんに座って貰う。

 皆が席に着くと絡繰りに飲み物を配らせ、全員が揃った事で昨日は疲れているだろうと見送った自己紹介を、先に紹介を受けたエステルさん以外に時計回りで簡単にして貰った。


 エステルさんの隣、アンリエット・ルノワールさんは伯爵家の長女で、エステルさんと同じく黒髪で濃茶眼をしている。

 その隣、フェリシー・フォンテーヌさんは子爵家の次女で、金髪で碧眼。この中では一番背が高く、僕より若干大きい。

 正面に移って、ヴィクトワール・ブリュネルさんは男爵家の三女で、紅髪に赤眼。

 その隣、オリアンヌ・ヴィトンさんも男爵家の次女で、暗い灰髪に碧眼。

 そして最後に、僕の右斜め前のエミリー・ロランさんが子爵家の長女で、金髪に灰眼。この中では一番背が低いが、それでも桜花様より数センチ大きかった。


 皆は学生なので、当然全員十代半ばの女性達だ。

 更に女学院で一緒に行動していただけあって、全員貴族家のお嬢さんだった。


 次に状況を分かっていないエステルさんに、フランさんが現状を説明した。


「フランシーヌが此処にいる理由も分かりましたが移民ですか。その様な大事になっているとは思いもしませんでした」


 まぁ、盗賊に捕らわれている間に、此処まで状況が変わると想像するのは無理があるだろう。

 その状況を作った犯人は僕なので、突っ込まずに話を進める。


「全体から見れば未だ僅かですが、既に移民に参加した者も居ます。今の処はあまり手荷物を選ぶ必要の無い、孤児や低所得者が多い様です」

「あの、子供達に国を跨いだ移動は大変なのではないでしょうか? 何人無事に辿り着けるか心配です」


 エステルさんの心配は尤もで、歩いて別の国に行くのなら確かに大変だが、転移門で一瞬で着くので問題無い事を、この場で知っているのは僕とフランさんだけだ。


「移動方法は後でお見せしますが、安全に移動できる魔道具を使うので心配は無用です」

「私も何度か使わせて頂きましたが、子供でも何の問題ありません」

「そうですか、フランシーヌが問題無いと言うのなら、信じましょう」


 エステルさんのフランさんに対する信頼は厚い様で、あっさり納得してくれた。


「それで今後の事なのですが、皆さんにもできれば移民をして頂きたいのと、貴女達の父君達には其々の町の代官を引き受けて頂ければと考えています」

「「「「ええっ!?」」」」


 女生徒達が一斉に驚いて声を上げた。


「あの、私達を助けて頂いた上に、更に役職を頂くのは立場が逆だと思うのですが」


 アンリエットさんの隣からフェリシーさんが申し訳なさそうに発言すると、他の女性達も頷く。

 どうやら助けて貰った礼をするのは自分達の方なのに、更に好待遇で迎えるという話が理解できないという。


「僕としては一つ一つの町を全て管理する事はできませんから、其々を代官に任せたいのです。つまり面倒事を代わって貰おうと考えています」

「代官の仕事を面倒事と……?」


 エステルさんは困惑顔だが、前世知識の有るフランさん達は分かる、といった顔だ。中間管理職って大変そうだもんね。


「それに、直接民衆の上に立つ者には現地の者を選んだ方が、余所者に管理されるよりも民衆は安心できると考えるからです」

「確かにそうですね、私も共和国等の他国から派遣された代官に町を管理されるよりも、元から同じ国に住んで居た者が代官になった方が、安心できると思います」


 フランさんも僕の考えを理解したのか、賛同してくれる。


「更に僕に恩を感じてくれているのなら、裏切りや横暴な代官にはならないだろうとも期待できますからね。勿論、無理強いをする心算は無いので、他にやりたい仕事が有るのでしたら、相談に乗りますよ」


 僕の提示する好条件に、皆が考え始める。


「あの、私の父は町の警備隊長をしているのですが、移民先でも同じ様な職に就く事は可能でしょうか?」


 ヴィクトワールさんが先陣を切って訊ねて来る。


「勿論可能です。代官よりもその方が良いというのなら、それでも構いません。但し、仮町で適性が無いと判断した場合は本国で続ける事はできませんが、それは他の職業でも同じ事です」

「分かりました。父に相談したいと思います」


 僕達の質疑に、皆も納得したのか先ずは父に相談しないと意味が無いと、当たり前の結論に達した様だ。

 抑々(そもそも)本人不在で娘が勝手に決められる事でも無いのだし、僕は僕の希望を伝えただけなのだ。

 僕の提案に乗ってくれれば僕も助かるが、後の判断は本人がすれば良い。


 こうして情報交換と今後の希望を話し終えた僕達は、温泉寛ぎ状態から元の制服に着替えて貰う。

 当然、エステルさんの破られた服も修復済みだ。

 そして外に出て、約束の移動手段を見せるついでに、未だ移民を始めていない町の市庁舎の三階廊下に転移襖で移動した。


    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「こんな不思議な魔道具が有るなんて……」

「不思議というより非常識ですわ」

「私は、便利だと思いますよ」


 皆、口々に転移襖の事を言っているが、窓から見える町の方を見ようよ。


「この扉は何処にでも繋ぐ事ができるのでしょうか?」


 興味が有るのか、エステルさんが転移襖の性能を質問して来る。


「いえ、距離的な制限もありますが、使用者の管理下や使用許可が有る場所、他に管理者が居ない知っている場所等にしか移動できないので、許可の無い他人の家や部屋に直接移動はできません。つまり、お風呂に入っている時に誰かが直接入って来る事もありません」

「「ぶふっ!」」


 僕の冗談にフランさんとアンリエットさんが吹き出す。


「確かにお風呂の最中に知らない人が現れたら、怖いですね」


 エステルさんの言葉に皆が嫌そうに頷くので、その為の安全装置にもなっていると誤魔化す。


「ああ、だから何時も移動先は殆どが外だったのですね」


 僕はフランさんの確認の言葉に頷く。


「つまり貴方がこの建物は持ち主だから、直接来れたという事ですか。安心しました」


 アンリエットさんの言葉に皆も安心したのか、ほっとした顔をする。


「それで、この町は昨日案内して貰った町とは違うのですね」


 転移襖に慣れているフランさんがいち早く状況を確認し、窓から町を見た感想を口にする。


「ええ、昨日紹介したのはライルさんに代官を頼む町で、此方の町にしたのは皆さんの父上方に頼む予定の町と、同じ規模の町や住居を見て貰う為です」


 この市庁舎は当然県庁舎より小さい為、三階に市長執務室が在り、四階と五階が市長の居住区になっている。

 四階にはホテルのスイートの様な客室が複数と、食堂や使用人の部屋が在り、五階が個人の部屋や風呂が在る構造だ。

 女生徒達は客室に在る小さめのお風呂に驚き、五階の大きなお風呂に喜んでいた。


「父が代官になれば、此処に住めるのですね」

「何とか説得しなければいけませんわ」


 一人が漏らした本音に、何人かが賛同する。

 こうして簡単に住居を説明した後は、家族への説明や護衛と治療の為に、皆に医療用の絡繰りを一体ずつ付けて、各家に転移襖で送る。

 帰り際、アンリエットさんにだけこっそりと、夕方、もう一度呼ぶので来て欲しいと頼む。

 アンリエットさんは僕の意図に気付いている様で、頷きだけで答えてくれた。


 こうして女生徒達の帰還も無事に終了する。

 彼女達の未来が暗くならなくて良かったと思う。



読んで下さった方々、有難う御座います。

次も三週間以内に更新出来る様に頑張りますので、次回も読んで頂けると嬉しいです。

また、気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みになりますので宜しくお願いします。


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