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女生徒

お待たせいたしました。

今回、後半にグロ表現が含まれます。

苦手な方は治療シーンは読み飛ばす事をお勧めします。

今回も僅かでも気に入って頂けたら幸いです。

 〇七一 女生徒


 平民組が帰った時点で現地時刻は二十二時過ぎ、日付が変わるまで二時間を切っている。


 アルベール城が有力貴族の捕縛に由って予定外に騒がしくなっている事もあって、盗賊に捕らわれていた学院の生徒達の開放は此方でする事にした。


 北香に連絡し、何度も行き来させて悪いと思いつつ、フランさんに此方に来て貰う様に頼む。


 フランさんに無限倉庫から人を出すのを見せる訳にはいかないので、フランさんが到着する前に、靴を履いていても問題無い様に防汚効果の有る板張りの更衣室に向かい、そこで五人の女生徒達を無限倉庫から解放する。


 一応、体内の毒素と一緒に、身体や服の汚れは無限倉庫内で分離しておいたので、皆清潔な状態だ。


「何? 眩しいっ!」

「なんで、急に?」

「皆さん伏せてっ! 何かの攻撃かも知れませんわっ!」


 皆が慌てて床に這い蹲っている内に此処の対応は南香に任せて、僕は更衣室から出て丁度到着したフランさんを迎えに玄関に行く。


「何度も移動させて申し訳ないのですが、学生達への説明の手助けをお願いします」

「はい、お任せください。それは私の望みでもありますから、寧ろありがたいくらいです」


 快く承諾してくれたフランさんを連れて、僕達は食堂に向かった。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 僕が去った後の頃更衣室では。


「皆様落ち着いて下さい。貴女達は我が主様の手に由って盗賊共から救助されました。此処は安全な場所ですのでご安心下さい」


 女生徒達は南香の説明にゆっくりと顔を上げ、周りを見回し始める。


「何時の間に!?」

「そういえば、床が板だわ」

「ええ、先程まで居た天幕とは違いますわね」


 女生徒達も次第に先程と場所が違う事に気付き始め、更に混乱を深める。

 月明かりが僅かに有るだけの薄暗く汚い場所から、突然明るくて清潔な部屋に移り変わったのだから無理もない。


「皆様、状況がお分かり頂けた様ですので、主様の元にご案内致します。建物内は土足厳禁ですので、此方の履き物に履き替えて下さい」


 南香が部屋の入り口前に並べられた内草履スリッパを手で示し、皆に履き替えを促す。

 まだ混乱があるものの、女生徒達は土足厳禁と言われて素直に靴を脱いで履き替えると、南香が履いていた靴を異界倉庫に片付けた。


「貴女達の靴は玄関に移動させておきます。建物を出る時に履き替えて下さい。それでは私に付いて来て下さい」


 南香は反論の隙を与えずにさっさと更衣室を出て行く。

 女生徒達は今だ詳しい状況は飲み込めていないが、それは盗賊の元に居た時と大差は無い。


 それに、汚い盗賊共より綺麗な女性の方が多少は安心感が有ったのか、女生徒達は素直に先導する南香に従って部屋を出る。


 やがて女生徒達は四狼とフランの待つ食堂に辿り着いた。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「えっ、フランシーヌ様っ!」

「「ええっ!」」


 女生徒達がフランさんを見て驚く。


「皆さんご無事で何よりです」

「あ、ありがとうございます? いえ、それよりも何故フランシーヌ様が此方にいらっしゃるのでしょうか?」


 女生徒の一人が代表でフランさんに問い掛ける。


「それは現状の説明をする為です。知人の私からの話の方が、信憑性が増すでしょ?」

「それはそうかもしれませんが、それは此処にフランシーヌ様がいらっしゃる理由にはなりません」

「アンリエット様は私が何故休学していたか、理由はご存知でしょう? 私も彼に助けて頂いたのです」


 フランさんが僕を目線で示すと、女生徒達は今初めて僕を認識した様だ。


「先ずは席に着いて話しませんか?」

「あ、はい、失礼致しました」


 アンリエットとフランさんに呼ばれた女性は僕に頭を下げると、コの字に並んだ卓を回り込んでフランさんの横の椅子に座った。

 他の者もそれに釣られた様に空いている椅子に座る。


 給仕の絡繰り達が皆にお茶を配り、フランさんが現在の状況を話し始めた。


「簡潔に言いますと、彼に由って共和国兵は退去させられ、怪我人や病人の治療や、盗賊の捕縛等、現在のアルベール王国の状況は数日前よりもかなり改善しています」

「それは本当なのですか?」

「家に帰れば直ぐに分る事ですから、嘘を吐く理由がありません」


 それもそうかと女生徒達は頷く。


「最後に残った問題の食糧不足解消の為、彼の国に移民も計画しています。私も移民に参加する予定ですので、皆さんも宜しかったら移民への参加を考えて下さると、私も心強いです」

「彼の国と仰ると、彼は国王なのでしょうか?」


 アンリエットさんの質問に僕が見習いです、と付け加える。

 そうしてフランさんから更に詳しく自身の病状や治療の経緯、アルベール王国の現状の説明がなされていくが、所々で無理に僕を持ち上げなくても良いんですよ、と言っておく。


 此方の説明が終わると、今度はアンリエットさんが経緯を話し始める。

 概ね侯爵が語っていた事と同じで、学院の閉鎖と共に地元に帰る途中、盗賊に遭遇したという事らしい。


 戦争で人員を取られて減った、僅かな護衛だけでは大勢いた盗賊に太刀打ちできなかった様だ。


「それで、此処にいらっしゃらないという事は、やはりエステル様は助からなかったのですね」

「うっ、うううっ……」


 アンリエットさんの言葉に泣き出す者が現れる。


「エステル様は、婚約者が戦死したわたくしが犠牲になれば、まだ婚約者の生死が分からない私達は助かるだろうと、お一人で盗賊に連れていかれたのです。

 慣れているのでしょう。貴族女性が身を汚されれば、身代金を払う価値が略無くなるという事を、向こうも知っていた様でした。

 暫くすると凄い悲鳴が数回聞こえて来て、私達がエステル様を生贄にしたんだと、そこで初めて実感しました」


 成程、身代金目的で彼女達は他の女性とは別にされ、無事だったという訳だ。

 理由も分ったし、何時までもエステル嬢を生贄にしたと、彼女達を落ち込ませている理由も無いので、エステル嬢の無事を知らせる。


「問題ありません。エステル嬢も救出済みです」

「本当ですか?」

「ええ、本当です。救出が間に合ったと言って良いのか分りませんが、彼女に性的暴行を受けた痕跡は残っていません(・・・・・・・・・・)でした。しかし相当に酷い怪我をしているので、現在は別の場所で治療中なのです」


 女生徒達は性的暴行を受けていないという朗報と、酷い怪我という悲報に、喜んでいる者と落ち込んでいる者に分かれる。


「その酷い怪我というのは、治せるものなのでしょうか?」

「上級の治癒術が使えなければ後遺症が残ったのでしょうが、使える者が居るので問題無く完全に()に戻ります」

「完全に治るのですね?」

「彼に任せておけば問題ありません。先程説明した通り、彼は私の病気も完全に治して下さいましたから」


 フランさんの言葉に僕が頷いて答えると、アンリエットさんは涙を流しながら「良かった。ありがとうございます」と頭を深く下げた。


 情報の共有が終わり、仲間の無事も確認出来て安心したのか、そこで女生徒の一人のお腹が「くぅ」と鳴り、皆の視線が彼女に集まる。


「ご、ごめんなさい」

「いえ、生理現象ですから気にしなくて良いですよ。僕も気付かずに申し訳ない。皆さんに食事を」

「畏まりました」


 僕の命令を受けて、給仕の絡繰り達が皆に雑炊を配り、お茶も新しく冷たい物に交換する。


「やっぱり最初は雑炊なんですね」

「ええ、消化に良さそうですからね」

「雑炊!?」


 アンリエットさんが雑炊に反応する。


「えっと、見た事の無い料理で戸惑うかもしれませんが、私も頂きましたがとても美味しいので、皆さんも食べてみて下さい」


 フランさんが促すと、皆も恐る恐る食べ始めるが、一口食べれば味に納得したのか、黙々と食べ始めた。

 アンリエットさんも一口一口味わいながら食べている。


「ありがとうございます。とても美味しかったです」

「久し振りの温かい食事、感謝致します」


 問題無く口に合った様で何よりだ。


「今日はもう遅いですし、このまま此方で休んで頂いて、明日、其々の家にお送りします」

「其々の家に、ですか?」

「方法は明日のお楽しみという事で、今日は風呂でも楽しんで下さい」

「いえ、この人数の風呂を沸かすのは大変ですから、お気遣いは結構です」

「アンリエット様、此処のお風呂は一々沸かしたりしないんです。私も朝方使わせて頂きましたが、とても広いので皆さん全員で入れます」


 フランさんが泳げるくらいに広いんですよ、と付け加えると、皆は半信半疑ながら、それならばと南香に風呂に案内されて行った。


 食堂に残った僕とフランさんにはお楽しみでは無く、憂鬱な作業が残っている。

 そう、エステル嬢の状態確認と治療だ。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 僕達は二階に上がり、一つの部屋の前で準備をすると言って、フランさんを待たせる。

 一人で準備をするのは無限倉庫から生きた人(・・・・)を出すのを見られない為だ。


 布団を引き、その上に錬成空間を展開し、中にエステル嬢の身体をそのまま(・・・・)無限倉庫から取り出す。

 準備ができた処でフランさんを部屋に入れる。


「エステル様っ! こんなお姿に……」


 フランさんはエステル嬢の有様に声を上げて悲しむが、状態が状態だけに致し方ない。


 エステル嬢の状態は、全身に汚れと擦り傷や打撲痕が有り、手足は折られ、股間は前も後ろの裂傷だらけ、右胸の先端と右耳の上半分は噛み千切られた様に喪失していた。

 更に左の鼓膜は破れ、左眼球も破裂、鼻骨と左頬骨も骨折し、前歯は上下共に圧し折られていて、頭皮も一部剥がされている様だ。

 最早真面(まとも)な部位が無い程に痛めつけられていて、正直よく生きていると思える程だ。


「あ、あの、シロウさん、エステル様が息をしていない様なのですが、本当に生きているのでしょうか?」


「ええ、この僅かに光る空間内は時間が止まっています。なので呼吸をしていなくても問題ありません。フランさんの治療にも使ったんですよ」

「そうだったんですか。時間まで止めれるなんて、本当にシロウさんは何でもありなんですね」


「何でもはできません。僕達はできる事を一つずつ片付けるしかないんです」


 そもそも何でもできているのなら、こういった事態その物を防げていた筈なのだ。


「そうですね、できる事を精一杯、するしかないんですよね」


 何故かフランさんも気合を入れ直している様だ。


「これから治療を始めますが、終わるまでフランさんは部屋の外で待っていても構いませんよ」

「いえ、お邪魔でなければ最後まで同席させて下さい」

「分りました。では治療を始めます」


 フランさんに開始を伝え、エステル嬢の治療を始める。


 先ずは再生術を掛けて、欠落ヵ所の胸や耳を再生させる。

 続いて眼球も再生させ、頭皮や髪の再生も始めるが、髪はそれなりの長さが有るので少し時間が掛かった。


 次に不可視の手で位置を修正しながら、骨折箇所を治す。

 顔が変わってしまうと大変なので、特に鼻や歯の治療はに気を付けて形を整えた。


 此処で一番の問題点でもある、股間周りの治療をする。

 体内の他者の体液や雑菌、(ごみ)等を含めて不純物を全て無限倉庫に回収し、(ついで)に妊娠を防ぐ為に可能性の有りそうな卵子も幾つか回収しておく。

 暫く生理に問題が出るかもしれないが、盗賊共の子供を妊娠するよりは良いだろう。


 後日、エスエル嬢は生理不順を医師に相談する事になるが、今の僕は知らない。


 体内の洗浄を終えると、此処では通常の時間を加速する再生治療術ではなく、時間を戻す再生術を試す。

 身体の時間を戻すという天照の言葉を参考にしてみたが、無事に成功した様で周囲の傷や膜までもが再生した。

 内部を透視して確認したが、痕跡は一切見当たらなかった。完全に元に戻った様だ。


『お見事ですご主人様。行動履歴も性的暴行が無かった事に変わりました』


 予想を上回る成功の様だ。

 最後に全身に治癒術を掛けて打撲や擦り傷等も治し、治療を終えた。


 一応鑑定で調べてみたが、状態が精神不安定、栄養不足・空腹になっていた。

 始めの症状が気になるが、起きてから状態を確認するしかない。


 そして体内の不純物を取り除いた時に、胃や大腸の中も綺麗にしたので、空腹なのも当然だろう。

 一応の為、直接胃の中に栄養剤を送り込んでおく。


「無事、治療が終わりました」

「はい、見ていて次々と身体が治って行く姿が不思議というか、特に胸や髪の毛が再生される様子は、何処か幻想的でした」


 フランさんの、何処かずれた感想を聞きながらも、フランさんも喜んでいる様だし良いかと考える。


「それではエステル嬢を覚醒させますので、精神状態の確認をお願いします」

「はい、お任せ下さい」


 錬成空間を解き、不可視の手を使ってエステル嬢の身体を優しく布団に降ろす。


「意識はある筈なので、お願いします」

「はい」


 フランさんは返事をすると前に出て、エステル嬢に声を掛ける。


「エステル様、聞こえていらっしゃいますか? フランシーヌです」


 フランさんが声を掛けると、エステル嬢は視線を此方に向け、次の瞬間。


「うわぁぁぁぁーーーーーっ!」


 叫び声を上げながら壁に向かって頭を抱えて(うずくま)る。

 自然と此方には上がったお尻が向くので、大事な部分が丸見えだ。


 僕は怪我が治っている事だけ確認すると、後ろを向く。

 しかし拡張視界で後ろも見えているので、間にフランさんを挟んでエステル嬢を見えなくした。


「エステル様、此処は安全です。落ち着いて下さい」

「うぁ、うぁぁ、あぁぁ」


 既に精神に異常を来しているのか、エステル嬢は真面な反応を返さない。

 このまま怯え続けさせるのも可哀想なので、睡眠の魔術で眠らせる。


「意思を確認できそうにありませんから眠らせました」

「はい、まさかここまで酷い事になっているとは思いませんでした」


「本人の承諾は取れそうにありませんが、このままという訳にもいかないので、差し障りの無い様に記憶の一部を消します」

「はい、それで元に戻るのでしたら、私からもお願いします」


 フランさんも納得してくれた処で、記憶捜査と記憶操作の術を使う。


 どうやらエステル嬢は先に手足を折られ、抵抗できなくされてから暴行を受けたらしい。

 その後顔を殴られた処で一瞬意識が飛んでいる様なので、そこから先の記憶を消す事にする。


 天照に方法を確認しながら慎重に記憶を消す。

 作業を終えた僕は、盗賊共の余りの所行に思わず怒りが漏れたのか、フランさんがビクンと反応する。少し怯えさせてしまった様だ。


「すみません。エステル嬢への盗賊の所行に腹が立って、怒りが漏れてしまいました」

「いえ、エステル様をこんな目に合わせた者を怒って下さったのですから、気にしないで下さい。私も同じ気持ちです」


 知人がこんな目に合わされれば、流石のフランさんも憤りを隠さない様だ。


 此処でできる事も終わったので、エステル嬢に布団を掛け、医療用の絡繰りを一体残して、部屋を後にする。

 無事に記憶が消えていれば、朝には元に戻っている筈だ。


 やがて風呂から上がって来た女生徒達は、寝間着用の浴衣を着て現れる。


「本当に広いお風呂で吃驚しました」

「気持ち良かったです。ありがとうございました」

「気に入って頂けたなら良かったです」


 休む部屋は一人や二人の部屋より、全員一緒の方が良いと言うので、フランさんも一緒に大部屋で、布団を並べて休んで貰う事にした。

 フランさんも、今夜は一人じゃない方が良いと思ったからだ。


 一人になった僕は二階の個室に戻り、盗賊共にどんな罰を与えてやろうかと考えながら、分体一号に明日の準備状況を確認し、問題が無い様なので僕も休む事にした。


 明日はよいよ移民の開始だ。



読んで下さった方々、有難う御座います。

次も一週間~三週間位でに更新出来る様に頑張りますので、また読んで頂けると嬉しいです。

また、気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みになりますので宜しくお願いします。


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