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犯罪者の称号

お待たせいたしました。

ブックマークして下さった方、有難う御座います。

今回も無事に、予定期間内に更新できました。

僅かでも気に入って頂けたら幸いです。

 〇七〇 犯罪者の称号


「あの、もしかして私のスリーサイズも見えてたりします?」


 今度はフランさんが心配そうに訪ねて来た。

 フランさんもそういう事を気にするのだなと、考えながら僕も気を付けて返事をする。


「えっと、確かに昨日の時点でのサイズは見ましたが、既にサイズが変わっている筈なので、今のサイズは分りません。調べ直した方が良いですか?」

「いえ、今のサイズは調べなくて結構ですっ! でも、たった一日で変わるものなのでしょうか?」

「昨日の治療後、衰えた筋力を回復させる為に持続型の治癒術も掛けてありますから、後三日程は筋肉が付き易くなっています。なので既に昨日より筋肉量も増えている筈なので、当然、体重も身体のサイズも変化している訳です」


 昨日のフランさんは本当に骨と皮といってもよいくらいの状態で、歩く処か立つ事もできなかったのに比べ、今は普通に歩き、未だかなり痩せてはいるが、昨日の末期的な状態とは段違いに良くなっている。


「治療後の事も考えて下さっていたのですね。ありがとうございます」


 フランさんは少し恥ずかしそうにしながらも、お礼を言ってくれた。


「シロウ様、その称号とやらが犯罪行為でも得られるという事は、犯罪の摘発や、冤罪の防止にも使えるのでしょうか?」

「成程、犯罪者の称号を持っていれば、その犯罪を犯した事が確定できますな」


 女性陣が身体のサイズを気にしていた間も、ライルさんは早くも鑑定の有効利用を考えていた様だ。それにダニエルさんが追従する。


「残念ながら、大半の称号を得るにはそれなりの回数、同じ事を繰り返す必要がある様です。余程の事でないと一度や二度の犯行では称号を得るのは難しいので、完全な冤罪防止には使えません。それなら嘘看破を鍛えた方が有用だと思います」

「成程、鑑定は犯罪者の摘発には使えぬか」


 ライルさんは折角の案が使えず、少し残念そうだ。


「いえ、全く使えないという事ではありません。何度も犯行を繰り返していれば称号になりますから、常習犯や重罪人の発見には有効かもしれません。実際、今回この場に呼んでいない、この国の覚醒者が六人居ますが、内五人は僕の故郷では犯罪に当たる称号を持っていたので、招待しなかったのです」

「「「えええっ!」」」


 やはりこの情報にも皆が驚きの声を上げる。

 まぁ、今まで他の覚醒者に会った事が無い者が殆どだ、それが一日で二桁の存在を知り、しかも半数近くが犯罪者だなんて言われれば、驚くのも無理は無い。

 偉そうな感想を抱いている僕さえも、和富王国で直接知っているのは桜花様だけなのだから。


「今まで他にも前世知識を持っている者がいる可能性を考えていなかった訳ではないが、国内だけで十人以上も居たとは、思っていた以上に多かったのですね」

「しかも半数近くが犯罪者の可能性が有るとは、流石に考えの埒外だ」

「それで、その者達の名前と罪状は教えて頂けますの?」


 ライルさんはその人数に、ダニエルさんは同じ前世知識持ちの犯罪関与率に驚き、リーズさんは容疑者の罪状に由っては処罰を望んでいる様だ。


「先ず、モルガン・オーブリーとシュザンヌ・ぺルシエですが、二人とも色欲の脅迫者という称号を持っています。これは文字通り、相手を脅迫して性的行為を強要した場合得られる称号です」

「脅迫はアルベール王国でも犯罪ですっ! ましてや性行為を強要するだなんて汚らわしい。ライル様、即刻拘束致しましょう」

「待て、リーズ。オーブリー伯爵は兎も角、ぺルシエ伯爵夫人はそれなりの年齢だ。犯行も最近では無く、昔の事かもしれん。相手が伯爵ともなると皆が分かる証拠も無しに拘束はできん。シロウ様、彼らの犯行時期は分りますか?」


 ライルさんの質問に答える為に、思考加速して天照に確認する。

 すると其々の屋敷の地下牢に何人か、罪人と同じ様に被害者が捕らわれて居ると教えてくれた。


「残念ながら現在進行形で犯行は続いている様です。被害者が今も捕らわれて居ますし、ぺルシエは罪造り職人、オーブリーは破綻に(いざな)う者と人売り商人の称号を持っています」

「つみづくりって、そんなにおモテになるのかしら?」

「いえ、この称号は罪を作り上げる、所謂(いわゆる)冤罪を押し付け続けた証拠です」


 フランさんは自分の勘違いに一瞬恥ずかしそうにしたが、この名称なら間違えても仕方が無いと宥める。すると直ぐに気を取り直し「冤罪なんて酷いです」と静かに憤慨する。


「フラン様の仰る通り、確かに酷い話ね。ライル様、被害者が屋敷に捕らわれて居るのならば直ぐにでも救出致しましょう。それこそが証拠になりますから、直ちに拘束もできましょう」

「確かに速やかに解決した方が良いのだろうが、現在我が国の兵士は激減している。捕縛に向かわせる兵を集めるのにも時間が掛かるのだ。直ぐには行動できん」


 (はや)るリーズさんの言葉に、ライルさんも行動したいが動員できる人材が居ないのを悔いる様に話す。

 其処に月読が解決策を教えてくれた。

 悪くない方法だと思った僕は早速皆に提案する。


「でしたら僕の部下をお貸ししましょう。序でにリーズさんとダニエルさんが其々の指揮を執って頂ければ、これを功績として市長に押す理由にできると思いますが、如何致しますか?」


 月詠の提案は、この二人に任せれば、評価できる活動をしたとして、市長に抜擢しても周りからの反感を押さえられる上、犯罪者も捕らえられて一石二鳥というものだった。


「確かに一石二鳥ですな。ダニエル、リーズ、やってくれるか?」

「お任せ下さい」

「私、荒事は苦手ですわ」

「問題無い。共和国兵をものともしないシロウ様の部下が付いて下さるのなら、安全は保障されている様な物だ。リーズはその部下に捕縛を命じるだけで良い」

「それはそれでなんだか手柄を譲って頂く様で釈然としませんが、早急に性犯罪者を捕まえられるのでしたらば任されましょう」


 リーズさんが早速と立ち上がるが、僕はそれに待ったを掛ける。


「気合を入れている処を申し訳ありませんが、その前に他の覚醒者についても話しておきましょう」


 僕の言葉に皆も、そういえばその話の途中だったと思いだす。


「失礼しました。しかし捕らわれてる者が居るのなら、急いだ方がよろしいのではなくて?」

「いえ、今はライルさんの宣言で何処も対応に手一杯になっています。今直ぐ何かされる事も無いでしょうし、勿論見張りは付けてあります」

「流石シロウ様、抜かりはありませんな」

「其処までするのなら、直接捕まえてしまえば宜しいのに」


 ライルさんは褒めてくれるが、リーズさんは手間を省けと不満顔だ。


「僕はこの国の者ではありませんから、この国の法も知りません。そして自分勝手な正義感だけで、他国の貴族を罰する事もできません。できるのは精々が盗賊の捕縛くらいです」

「確かにその通りだ。勝手に貴族を裁かれては、我が国の法と身分制度を否定している事になる」


 ライルさんの言葉にリーズさんも「そういう事なら仕方ありませんわね」と渋々ながら納得してくれた処で話を戻す。


「他の覚醒者ですが、カンタンというと盗賊、ヤンという商人、ロール・ロランスという貴族です」

「ロール夫人の方ですか? ロランス子爵といえば、先程の食事の配布にも協力しなかった領主家ですね。その行動とも関係が有るのでしょうか?」

「食事の配布に協力しなかった領主が居たのですか?」

「はい、居たのですよダニエルさん。どうやらロランスは領内に入ってくる食料に高額の課税を課して利益を得ていた様です。なので食事の配布は邪魔だったのでしょう」

「文字通り民衆を食い物にするとは、ロランス子爵は貴族としての矜持が無いのかっ!」

「そうですね、領民あっての貴族ですのに」


 ダニエルさんは同じ貴族としてご立腹だし、フランさんは悲しげに語る。


「続けますが、この国の盗賊はカンタンを含め、粗方拘束してありますから、此方(こちら)は問題はありません。カンタンは色欲の襲撃者、悦楽の殺戮者、同族殺し、同族喰いの称号を持っていましたが、同族殺しだけは一概に悪とは言えません。襲って来た盗賊を返り討ちにしていても得る事ができるからです」


 同族殺し等の○○殺しの称号は、その種族を多く殺したというだけで、例え同族でも盗賊や暗殺等の襲撃者の撃退や、戦争での武功、死刑判決を出した裁判官や、その執行人の様な職業等、理由は関係が無いので、全てが悪とは言い切れないのだ。

 但し、彼の様に悦楽と付いている称号は、行為そのものに快楽を感じて行動している事になるので問題だと説明すると、皆も概ね納得してくれた。


「その、同族喰いというのは、やはり人を喰った、という事なのでしょうか?」

「残念ですが、ライルさんの言う通りです」


 食糧が不足気味とはいえ、やはり同族喰いは衝撃が大きかった様で、皆は声すら出せない。

 気分が変わるとは思えないが、時間にも限りが有るので他の覚醒者の話を続ける。


「最後のヤンは人身売買をしています。主な取引相手は盗賊と共和国ですね。盗賊から供給を受けて共和国に売却しています」

「売国奴共めっ!」


 今度はライルさんが憤慨する。


「以上が僕が呼ばなかった覚醒者達ですが、仲間にしたくない理由はお分かり頂けたと思います」

「確かに仲間とは考えたくもありませんわ」

「リーズ様に同意致します」


 主従揃って嫌悪感を剥き出しに語る。


「ライル様、こうなってはその者達も拘束した方が良いのではないでしょうか?」

「ダニエルの考えも分るが、結局は手も時間も足りないというのが現状だ。シロウ様はどう考えているのでしょう?」

「残っている二人ですが、ロランス家は既に封鎖してありますから向こうからは何もできません。この分だと領民も大半が移民してくれるでしょうし、領民が居なくなれば領主も自滅しますから放置で構わないと思います。ヤンの方も供給元の盗賊は既に拘束済みですし、二人の後始末はこの国に残った者に任せても大丈夫だと思います」


 この国の新しい政権にも功績は必要だろうと説明すると、どうせ手も足りないしと皆も賛成してくれた。


「とりあえず覚醒者の情報は以上ですが、他に聞きたい事が無ければお二人には予定通り、性犯罪者を拘束する為の準備に移って貰いますが宜しいですか?」

「今の処は無いと思うが、皆はどうだ?」


 ライルさんの質問に皆も問題無いと答え、今日のお茶会は一応の終了となる。


 僕は東西の仮名を与えた絡繰り達四体に三人を更衣室に案内させて、マクシミリアンさんや女性騎士達に与えた鎧で武装して貰う。

 三人なのは、当然の様にリーズさんに付いて行ったメラニーさんも含めたからだ。

 そして彼女らに付ける兵代わりの絡繰りも、幾つかの付与だけなので当然の様に準備は分体一号に任せる。


 捕縛組の準備をしている間にライルさんとフランさんには必要な書類を制作して貰う為、一旦城に帰って貰う。

 折角なので、貴族組の居ない内にジスランさんとペリーヌさんに、此方の平民の生活に付いて尋ねた。


「そりゃあ日本に比べりゃ滅茶苦茶大変ですよ。何処に行くのも歩きだし、畑を耕すのも人力だ。トラクターが懐かしいよ」

「凄く分ります。全部歩きって大変ですけど、それ程遠くに行くことも無いので何とかなっています。後はやっぱり洗濯が大変ですし、お料理も竈ですから火加減が難しいです。灯りもこの部屋みたいに明るくありませんから、夜は少し怖いです」


 現代日本では当たり前の物だが、洗濯機もガス焜炉も出来たのは人類の歴史から見れば、極最近の事だ。

 この辺りは前世の僕も産まれていないから聞いた話でしか知らないのだが、そもそも戦前は電気自体が一般家庭には通っていなかったという。

 つまり、日本でも百年前は全部手動だった訳だから、地球人より強靭なこの世界の人なら、地球人ができる程度の労働は、本来何の問題も無い筈なのだ。

 しかし、僕達は日本の便利な道具を知っている。人間、一度知った便利な環境から外れると、途端に不便だと感じてしまうのも、仕方がない事なのだろう。

 折角だし、貴族組が捕縛に行っている間にフランさんも連れて、少し仮町を見学して貰おう。ライルさんも気に入った様だし、二人も気に入る可能性は高い。


 やがて準備を終えた捕縛組にライルさんが用意した書類を渡し、別荘前に移動して食事配布の手伝いをさせていた簡易型絡繰りと同じ、騎士鎧姿の絡繰りを各三十二体と、準備を手伝わせた東西組の絡繰りも護衛として一緒に目的地に転移させる。

 戦力的には町ごと占拠できる程なので、後は捕縛完了の知らせを待つだけだ。


 そして残った四人に仮町を案内する。


「おおおおーーーっ!」


 ジスランさんは興奮しすぎだが、女性陣もキャッキャッと楽しそうだ。

 そうして先程にライルさんに案内した所を、少し簡易化して皆にも案内する。

 初見の三人は勿論の事、一度見学しているライルさんも含めて皆はとても喜んでくれた。

 やはり懐かしい部分が所々に有った様だし、未使用なのもあって清潔なのが好印象の様だ。

 見学が終わった後には平民組も、何とか家族を説得して移民すると言ってくれた。


 やがて捕縛が完了したと連絡が来たので、捕縛組とライルさん達は城に戻り、平民組は旅館の温泉に入ってから家に帰って行った。

 少し帰りが遅くなってしまったが、二人は転生後初の温泉にご機嫌だったのは言うまでもない。



読んで下さった方々、有難う御座います。

次も一週間~三週間程で更新出来る様に頑張りますので、また読んで頂けると嬉しいです。

また、気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みにもなりますので、良かったらお願いします。

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