自己紹介
お待たせいたしました。
ブックマークして下さった方々、有難う御座います。
今までで最大の増え幅に頑張って、目標通りに何時もより少し早く更新できました。
今回も僅かでも気に入って頂けたら幸いです。
〇六八 自己紹介
「うふふっ、やはりライルハイト王子も前世知識を持っていらしたのね」
「ふっ、そういうグラニエ子爵夫人も、やはり同類だったのだな」
黒髪の女性がライルさんに話し掛けるが、王子と子爵夫人なら今までに何度も顔を合わせていても不思議ではないだろう。
そして、お互いに同類では、と疑っていた様だ。
「王族一の賢人と呼ばれるライルハイト王子ですもの、前世知識を持っていれば、同類と疑うのは当然の事ではなくて?」
「よしてくれ。賢人と云う呼び方は共和国の様で好きではない。彼の国は私から家族も部下も、多くの者を奪っていったのだぞっ! あれと同類扱いされては堪らん。
そしてグラニエ子爵も、貴女と結婚してから急激に頭角を現したではないか。貴女が入れ知恵しているであろう事は、他領であっても城では有名な話だ」
「まぁ、今のアルベール王国に共和国に好意を持っている者も居ませんものね。序でに余り出しゃばらない事も含めて、以後は気を付けますわ」
「主様、お飲み物は如何致しましょう?」
僕を挟んだ二人の会話が途切れた処を見計らって、絡繰りが僕達にも飲み物を尋ねて来る。
「僕は林檎の炭酸水を、ライルさん達は何にしますか?」
「炭酸水があるのですか? もし葡萄の炭酸水が有ればそれを。無ければ私も林檎の炭酸水を頼む」
「えっと、柑橘系の炭酸水は有りますか?」
「何方も御座います。準備致しますので、少々お待ち下さい」
絡繰りが飲み物を準備する間にも僕は話を進める。
「えー突然の呼び出しにも関わらず、集まって下さった皆さんに感謝します。僕達は今はまだ、同じ能力を持っている、同類という意味での仲間でしかありませんが、本日は身分を気にせず、普通に話して下さい。そして本当の仲間になって頂ける事を期待しています。
一部、顔見知りの方もいらっしゃる様ですが、先ずは各自、自己紹介から始めましょう。
僕の名はシロウといいます。アルベール王国から見て、ずっとずっと西の国から来ました」
「ずっとって、どの程度の距離なのかしら?」
グラニエ子爵夫人が訝しそうに訊ねて来る。
「軽く万キロ単位ですね」
「それが真実ならば、確かに随分と遠いですな。しかも、あの襖がそんなに遠くまで移動出来るとなると、凄まじく羨ましいのですが、我々にも手に入れる事はできるのだろうか?」
金髪の男性が襖の魔道具の能力に驚愕して欲する。
「いえ、あれは特別な物で、詳細は僕にも説明出来ませんし、売ってもいません。値段を付けようとしても、素材自体がとても高価なので、とんでもない額になるでしょう」
「たしかに値は張りそうですな、残念です」
当然、他者に譲れる物でも無いので誤魔化しながら断るが、元から手に入るとは思っていなかったのだろう。男性はあっさりと諦めた。
それに、皆は勘違いしている様だが、あの襖で一度に移動できるのは一万キロ程度なので、和富王国までは直接移動できない。例外として監獄惑星の仮町を限定的に移動先に追加してあるにすぎないのだ。
「でも、そんなに遠いと逆に反対周りで数えた方が近いのではないかしら?」
そして、グラニエ子爵夫人はこの星の大きさを知らないらしい。
「貴女は転生前に、女神様にこの星の大きさを聞かなかったのでしょうか? この星は赤道周囲が八千万キロも有るそうですよ」
「「「八千万キロッ!?」」」
「私は聞きましたよ」
「いや、俺は聞いてないぞ」
どうやら聞いていた者と、聞いていない者が居たらしい。
「んんっ、失礼致しました。先に自己紹介をしますが、私の名前はリーズ・グラニエ。ライルハイト王子との会話にもあった様に、グラニエ子爵家に嫁いでいますが子爵夫人と呼ぶのも長いですし、身分を気にしないという事ですので、この場ではリーズと呼んで下さって構いません。そして、この星がそんなに大きいとは知りませんでした。教えて下さった事に感謝致します」
リーズさんが頭を軽く下げて謝意を表すと、僕達も頷いて答える。そしてそのまま反時計回りに自己紹介が続いた。
「私はメラニーと申します。現在はグラニエ家に仕えておりますが、元々奥様が幼い頃から奥様に仕えているメイドで御座います」
灰髪の女性はメラニーさんというらしい。
メラニーさんはリーズさんが結婚する前から使えていて、結婚後も旦那さんと一緒に嫁ぎ先に付いて来て、ずっとリーズさんに仕えているそうだ。
「メラニーは前世知識に目覚めて戸惑っていた私を助けてくれたのよ。それ以来、最も信用する従者であると同時に、親友でもあるのよ」
「奥様、過分な評価、勿体無いお言葉で御座います」
「メラニー、此処は屋敷ではないし、皆、私達の同類だそうよ。二人きりの時の様に名前で呼んで頂戴」
「畏まりました、リーズ様」
穏やかに微笑みながら答えるメラニーさんとリーズさんは幼馴染だという。
二人はお互いの言葉遣いを除けば、姉妹の様にも見える程に仲が良さそうだと思った。
「幼い頃から仲間が居たというのは素直に羨ましい事だ。おっと、失礼しました。私の名はダニエル・ベルレアン。ダニエルと呼んでくれ。ベルレアン男爵家の長男で、今は領主様の補佐官である父の助手をしている」
此方は色の薄い金髪の男性で、モナベル領主の元で働いているそうだ。
モナベルといえば、今はエステル嬢の事でも大変だろう。後で保護している事を知らせて、安心させてあげよう。
「俺は、ジスラン。只の、農民です」
茶髪の男性は周りの者との身分差を気にして緊張しているのか、少し元気が無い。
「私はペリーヌといいます。未だ十三歳なので家の手伝い程度で、特定の仕事はしていません」
赤髪の少女は僕の一つ下で家事手伝い、なのかな? 和富王国の農村なら普通に働いている年齢だが、アルベール王国ではどうなのだろう?
和富王国でも人口の多い町程、仕事を始める年齢は高くなる傾向に有るから何とも言えない。
「私の名はフランシーヌ・シャリエ。私の事はフランと呼んで下さい。シャリエ侯爵家の長女ですが、シロウさんに助けて頂くまで長く臥せっていたので、今は学院を休学中の身です。此方のライル様の婚約者でもあります」
「そういえば、王子が婚約者も救世主様に命を助けられたと仰っていましたよね? 病気って、そんなに重い物だったのかしら?」
リーズさんはフランさんの命に係る病気が気になった様で、本人に訊ねる。
「はい、私は複数の有害物質に侵され、更に二種類の癌にもなっていたそうなので、余命一日足らずだったそうです」
「「「ええーっ!」」」
流石に余命一日は吃驚するよね。
「色々と幸運が重なった結果ですが、僕としても間に合って本当に良かったと思います」
「あの、そもそも余命一日とか、そこまで正確に分るものですの?」
僕は運が良かったと答えたが、リーズさんが胡散臭そうに訊ねて来る。
「ライルさんと出会った時に気付いたのですが、皆が有害物質に侵されていたので、他にも多くの方が体調を崩しているのではないかと思い、特別な魔道具を使用して、先ずは早急の治療が必要な、命の危険が有る病人を探した結果、見つけた者の内の一人がフランさんだったのです」
「そんなに便利というか、都合の良い道具が有るのですか? いえ、そういえば此方に来る時に使った襖も大概でしたわね」
少し呆れ気味に答えたリーズさんの言葉に、皆も頷いて納得を表す。
そこは呆れる処ではなくて、感心する処だと思いたい。
「ああ、それでか。家の近所に住む女性も昨日まで病で臥せっていて、もう時間の問題だって聞いていたのに、今日の朝に突然元気になってた。本人も理由が分からないと言っていたが、原因はあんただったのか?」
ジスランさんを案内した絡繰りに彼の住所を念話で確認すると、確かに近所に治療した女性が住んで居たので、僕は頷いて答える。
「それにしても癌まで治せるなんて、貴方の国の医療は凄いのね」
「この世界には治癒の魔術が有りますからね」
実際は僕の能力でごり押しした感じだが、説明するのも面倒なので適当に誤魔化す。
「折角ですからペリーヌさんから僕まで、隣の方と手を繋いで貰えませんか? 皆さんの身体にも僅かですが有害物質が残っていると思われるので、今の内に治療したいと思います」
「フラン様は兎も角、ライルハイト王子は宜しいのかしら?」
「ええ、此方の二人は既に治療済みです」
僕の説明に二人も頷いて答える。
そうして二人以外に手を繋いで貰うと、全員の体内の有害物質を検索して無限倉庫に収納し、更に治癒術で傷んでいる身体を修復してやれば治療の完了だ。
「んっ、本当に効くのね。時々あった関節の痛みが消えたわ」
「はい、リーズ様。私も節々の痛みが消えました」
「おおっ、なんか、身体が軽くなった気がするぞ」
「確かに、身体が軽くなったというか、背負っていた荷物を降ろした感じがするな」
「怠さが消えましたっ! 母だけでなく、私も治療してくれて、ありがとうございます」
「どういたしまして。皆さんが元気になったのなら何よりです」
皆、軽症だったものの、身体の不調が治って嬉しそうだ。
「私も治してくれてありがとう、お礼を言うわ。それで、フラン様には説明したのに、彼のご近所の方に説明していないのは、やはり前世知識の有無なのかしら?」
リーズさんがジスランさんを目線で示して質問して来る。
「ええ、そうです。前世知識を持った協力者が欲しかったという事情もありますが、そもそも前世知識の無い者には説明しても理解できるか疑わしいですから、初めから声を掛けませんでした」
「それもそうだな、私が声を掛けて頂けたのも、前世知識を持っていたからだと聞いているし、フランも前世知識が無ければ癌と言われても意味は解らなかっただろう。
そして癌が嘘でないと分かれば、治療を受けなければ死ぬというのも理解できるのだから、受ける以外の選択肢も無い。フランを治して頂けた事には私も感謝しかないが、シロウ様は私とフランの関係を知った上で、治療して下さったのだろうか?」
リーズさんの質問に僕が答えると、ライルさんが納得と感謝の後に疑問の言葉も発する。
「いえ、先ずは早急の治療が必要な者を探して治療しただけで、ライルさんとの繋がりは知りませんでした」
「そういえば、私の婚約者がライル様だと説明した時、シロウさんは驚いていましたものね」
「そうか、本当に偶然が重なっての幸運だったのだな。なんだか既に一生分の運を使い果たした気がするよ」
「まだ僕達の国は未だ始まってもいないのですから、この程度で使い果たされても困ります」
「そうですな、まだ、これからでしたな」
僕の言葉にライルさんも気合を入れ直した様だ。
随分と話が逸れてしまったが、まだライルさんの自己紹介が残っていたので、気を取り直してお願いする。
「既に皆が知っている様だから今更だが、ライルハイト・アルベール、この国の第三王子だが、その身分ももう暫くの物だ。このメンバーだけの時はライルと呼んでくれて構わない」
ライルさんが言った様に既に知っていたので、皆も頷きで答える。
僕は自己紹介の間に用意された炭酸水で喉を潤してから、お茶会の本題に入る。
「さて、今更ですが今回皆さんに集まって貰った理由は当然、移民への勧誘と相互協力のお願いです」
「移民の勧誘は分るが、相互協力とはどういった事だろう?」
ダニエルさんが代表で僕に詳細を訪ねる。
「皆さんも、前世知識で女神様に転生の仕組みを聞いていると思いますが、お互いに功績を積む為に協力できる事が有れば協力し合いませんか? というお願いと相談です。勿論功績に関係無くても協力できる事は助け合えればと思います」
「私はシロウ様に既に助けて頂いた身です。要望が有るならば何なりと仰って下さい」
「はい、私もシロウさんに助けて貰わなければ既に死んでいますから、私にできる事が有るなら遠慮なく言って下さい」
「ええ、ですからライルさんには移民を纏める代官をお願いしていますし、ライルさんと結婚なさるフランさんには、できる範囲でライルさんを支えて貰えればと思っています。そして無理のない範囲で子供を沢山作って、人口を増やして頂けると、なお助かります」
「こ、子供はまだ早いかと思いますっ!」
少し直接的過ぎたか、フランさんとライルさんの顔が赤い。
「勿論今直ぐという話ではありません。未だ病み上がりですし、筋肉も脂肪も足りていません。もっと体調を整えてからでないと子造りは危険なので、寧ろもう暫くは控えて下さい」
「と、当分、予定は、ありませんからっ!」
「あらぁ、若いって良いわねぇ」
フランさんの顔が益々赤くなるが、そんなフランさんをリーズさんが更に煽る。
「リーズ様、その言い方は少々年寄り臭いかと」
「私より年上のメラニーに言われたくないわっ!」
メラニーさんの言う通り、リーズさんの言い方は少し年寄り臭い気がするが、リーズさんは未だ二十代だ。この辺りは既に子供を二人産んでいる余裕なのだろう。
「うちは子供が出来ないのだが、私か妻に何か問題が有るのだろうか?」
話の流れに乗ったのか、ダニエルさん夫婦は子供が出来ずに悩んでいる事を告白する。しかし、何故どう見ても十代半ばの僕に聞く?
「えっと、流石にそれは直接調べてみないと分かりません。移民が落ち着いた後になりますが、望まれるのでしたら移民の参加不参加に関わらず、僕が診察しましょうか? 約束通り、協力は惜しみませんよ」
「そうだな。癌すら治療できるお医者様のシロウ殿なら、何が原因か分るかもしれませんな。頼めるのでしたら、よろしくお願いする」
成程、彼の中では僕は医者という事になっているみたいだ。
そして、此方の世界でも日本と似た悩みは有るらしい。
「少し休憩にしましょう。お菓子を食べながら、何か皆に聞きたい事は無いか、協力して欲しい事は無いか、少し考えてみて下さい」
何故か話が逸れて産婦人科の相談の様になってしまったので、仕切り直す為に僕は絡繰りに指示を出して皆にお菓子を配って貰う。
「これって!」
「うわぁーっ♪」
「これは、随分と懐かしいな」
「苺のショートケーキっ!」
リーズさんとペリーヌさんは露骨に喜びの声を上げ、ライルさんも嬉しそうに話し、フランさんがお菓子の名を叫ぶ。声を出さなかった者も期待の目で見ている。
「日本の物とは若干違うかもしれませんが、フランさんの言う通りのお菓子で、僕の故郷では苺の焼菓子と呼ばれています」
他の果物の例に漏れず、この世界の苺は大きく、上に乗っているのは苺の先端だけだが、他の部分は薄く切ってたっぷり中に挟まれている。
僕は飲み終えた水飲みを下げて貰い、今度は代わりに冷えた紅茶を頼む。
それを見た皆も紅茶や珈琲のお代わりを頼んで、お菓子を堪能し始める。
「おいしー、それに懐かしー」
「本当に、懐かしい味だわっ」
「はい、この世界で食べれるとは思いませんでした」
「生きてて良かった…」
女性陣が嬉しそうに焼菓子を食べて感想を言っているが、フランさんの感想が重い。
そして男性陣は言葉を発せずに、黙々と味わいながら食べているのが対照的だった。
読んで下さった方々、有難う御座います。
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