アルベール王国の覚醒者
大変お待たせいたしました。
評価やブックマークして下さった方々、有難う御座います。
更新速度を上げたいと思いつつ予定を早めたのですが、結局スケジュールが合わずにいつもと同じ様に3週間掛かってしまいました。
予定より遅くなりましたが、今回も僅かでも気に入って頂けたら幸いです。
〇六七 アルベール王国の覚醒者
本体が昨日狩った獲物の解体を始めた頃、アルベール王国では現地の覚醒者が集まろうとしていた。
先ずはライルさんとフランシーヌさんが前世仲間だと告げる為に、僕は軽い服装に着替えたライルさんと共に旅館別荘に転移して、護衛の林太と共に皆が揃うのを少し待って貰う。
「他の方より先に会って貰いたい方がいるので、少し此処で待っていて下さい」
「他の者より先に?」
「ええ、既に何度も顔を合わせている筈なので、先に話しておいた方が良いと思ったのです」
「知っている者というのなら、先にその者の名前を聞かせて貰えないでしょうか」
「数分後には直接話せるので、それまで誰なのか楽しく想像でもしていて下さい」
「それはそうですが、シロウ様にそう仰られると、益々誰なのか気になりますな」
そう言って誰なのかを考え始めたライルさんを残して個室を出た僕は、ライルさんにだけ精密型を預けるのも不公平かと思い、シャリエさん用の精密型を用意する。
そして男性型には東斗、西斗、南斗、北斗の名を、女性型には東香、西香、南香、北香と仮の名前を付ける。
我ながら適当な名前だとは思うが、其々の髪色が暗い青・白・暗い赤・黒だったので、判り易い様に記号的に方位にしてみた。
後でシャリエさん達に正式な名前を付けて貰うとして、今は本日のお客の接待ができれば十分だ。
基本的な付与は風太達と同じだが、折角なので南斗には斬撃と気体操作を、北斗には爆裂魔術と魔術付与も付加で付与しておいた。
シャリエさんには意味が分らないだろうけど、フランシーヌさんなら元ネタも分るだろう。
フランシーヌさんの反応を想像しながら僕は二階の別室で待つ事にした。
北斗と北香は先に食堂で待機させて本日の客が来たら給仕をする様に命じ、他の絡繰りは玄関で招待客を待って食堂まで案内させる事にした。
そうして僅かに遊び心を満たしつつ暫く待っていると、一人、二人と招待客が絡繰りに食堂へ案内されて行く。
やがてフランシーヌさんが到着したので、僕は廊下に出て出迎える。
「いらっしゃい」
「お待たせ致しました、シロウさん」
「いえ、未だ時間まで余裕が有りますし、僕もつい先ほど来たばかりです。それに皆が揃う前にフランシーヌさんには先に会って頂きたい方がいます」
「先に、ですか?」
「ええ、此方に」
僕はフランシーヌさんにそう言ってライルさんの待つ部屋の呼び鈴を鳴らすと、林太が襖を開いて迎えてくれた。
「ああ、シロウ様、此処は何処か懐かしくて良いですなー。これで窓の外の景色が荒野でなければ完璧だったのに」
部屋に入るとライルさんは足を延ばして時折お茶を啜る為に上体を起こしながら、座椅子に背を預けて座り、すっかり寛いでいた。
「気に入って頂けた様で何よりです。そしてお待たせしました。此方の方が僕達と同じ様に前世知識を持った方です」
そう言って僕が身体を横にずらすと、此方を見ていたライルさんと、僕の後ろに居たフランシーヌさんの目が合った。
「「……ええーっ!」」
暫く見つめ合ってから、二人は同時に声を上げて驚く。
「一寸したどっきりの心算だったのですが、どうやら成功の様ですね」
「え、いや、シロウ様、本当に、フランも前世知識を持っているのですか?」
「ええ、本当です。前世知識を持っていない者には意味が分からないでしょうから、原則、信用できる同類以外には話さない方が良い能力ですからね」
「それもそうですが…」
ライルさんは渋々といった感じだが一応は納得してくれた様だ。
「その、私はライル様がそうではないかと、少し考えていた時期が有りましたので、確証が得られて少し安心いたしました」
フランシーヌさんも驚きはしたものの、問いもせずに素直に納得してくれたのは、以前に疑っていた事があったからだという。
「フランは何時何処で私が前世知識を持っていると思ったのだろうか?」
「えっと、ライル様と私の婚約が決まったライル様の十歳のお誕生日のお祝いの席で「ラーメンかカレーが食べたいな」と呟いたのが隣に座っていた私には聞こえたので、この日婚約が決まったライル様が求めている物ならと、頑張って調べました。
当時の私は未だ前世知識に目覚めていなかったので知らなかったのですが、前世知識を取り戻した後で少しだけ不思議に思っていたのです。
ただ、ラーメンは共和国の東部に有るらしい事は先の調査で分かっていましたし、それで興味を持ったのだろうと、少し強引に納得させていました。問い質すにも、私が前世知識を持っている事を話す必要がありますから、聞けなかったのです」
成程、ライルさんの迂闊な発言から、フランシーヌさんに不審に思われていたらしいが、十歳では仕方がないのかな?
前世知識で若干精神年齢も上がるみたいだけど、戻るのは知識で有って記憶じゃないからね。
寧ろ当時七歳で拉麺の在りかを突き止めたフランシーヌさんの方が凄いと褒めるべきだろう。
「まさか、そんな事でばれ掛けていたなんて……」
ライルさんは自分の迂闊な発言でばれそうになってた事に衝撃を受けている様だ。
「ライル様、前世知識が戻った当日は私もそうでしたが、色々混乱してますから仕方がありませんよ。それ以降はおかしな事は言っていないので、私も今まで忘れていた程ですから」
「そうですね、それに聞かれたのが前世知識が蘇ったフランシーヌさんだったから不審に思ったのであって、前世知識を知らなければ他国の珍しい料理に興味を持っていると思われただけで、問題にはならなかったと思います。
それに今となっては仲間だと分かったのですから、遠慮なく前世の話ができるじゃないですか。それに僕の故郷には拉麺と略同じ料理がありますし、機会があればご馳走しますから、前向きに考えましょう」
「「ラーメンが有るのですか!?」」
フランシーヌさんと僕の言葉に、少し落ち込み始めていたライルさんがあっさり復活したけど、フランシーヌさんもライルさんと一緒になって拉麺に反応するなんて、やはりアルベール王国の食事事情は相当に厳しいらしい。
「ええ、僕の故郷では中花蕎麦と言って、焼豚等で丼の中央に花を描いたのが始まりだそうです。尤も僕も前世知識を取り戻した今だから分りますが、間違いなく開発者も前世知識を持っていたのでしょう。百年以上も前の話なので、当然当人は既に居ませんから確認のしようが有りませんけど」
僕の故郷にも、その周辺の国にも中華といわれる国や地域は無いので、それっぽい名前と理由をでっち上げたのだろう。
その辺りも二人に説明すると、色々考えているのだなと感心された。
そして移民後になるが、今度二人に中花蕎麦をご馳走する事も約束させられた。
ちなみにカレーは香辛料が揃っていないのか、僕の故郷では再現できていないと二人には説明したのだが、実際は僕の無限倉庫には日本産以外にもこの世界産の物が入っていたので、何処か別の国では再現できている筈だ。
無限倉庫を説明できないので今は提供もできないが、時間ができたら探しに行こうと思う。
ラーメン談義を始めた二人に、「他の皆が揃ったら連絡するので、それまでゆっくり話していて下さい」と断り、林太を部屋の前で護衛させて僕は一階の食堂に向かった。
食堂には朝のコの字に組んだ卓を片付け、今は円卓を一つ部屋の中央に設置して、その周りには今回の参加者の人数分の椅子が並んでいる。
その椅子の二つに赤髪の十代前半程の少女と、濃い茶髪の十代後半程の男性が並んで座っていた。
「お待たせして申し訳ない。皆が揃うまで今暫く待って下さい」
「あああ、貴方様が、きゅっ、救世主様でしょうか?」
男性が立ち上がって言葉をつっかえながら質問してくる。
「落ち着いて、普通に話して下さい。えっと質問の答えですが、救世主かどうかは分りませんが、ライルさん、いえ、王子を助けた者というなら確かに僕の事です」
「あ、あの、母を治してくれて、有難う御座いました」
女の子の方も立ち上がって、頭を下げてお礼を言ってくる。
詳しく聞くと、どうやら家から食事配布の場所に来られない程に弱っていた家族を治療した者の一人が女の子の母親だったそうだ。
「無事に元気になったのでしたら何よりです」
「はい、お蔭でまた一人で歩けるくらいに元気になりました。魔術の治療って凄いんですね」
女の子は笑顔で答えてくれる。
「お客様をお連れ致しました」
そこへ案内の絡繰りが、新たに二十代後半程の明るい金髪の男性を連れて現れた。
男性に少し遅れて玄関に到着した最後の二人は、化粧を直す為に更衣室に移動中の様だ。
アルベール王国の化粧品には鉛が僅かに混ざっていたから、早めに落とした方が良いだろう。
「そちらの男性の隣の席にお座り下さい。お飲み物のご希望は御座いますか?」
「ああ、そうだね。コーヒーは有るかね?」
案内の絡繰りが部屋の後ろに控え、代わって給仕役の絡繰りが男性に席を進めて注文を聞く。
男性は少し考えた素振りをすると、期待する目で希望を答える。
「はい、御座います。温かい物と冷たい物、何方が宜しいですか?」
「おお!、では、冷たい方で頼む」
「畏まりました」
男性が席に着くと、僕は三人の対面の席に座り、立ち上がっていた二人も席に着いた。
絡繰りが横の小卓に水飲み(ガラスのコップ)を置いて、その上で氷の術を使って氷を落とす。
カランという音と共に氷が落ちると、三人の顔に驚きが生まれた。
「これは、魔術ですか?」
「はい、そうですが、そういえばこの国では魔術は珍しいのでしたね」
そう答えて僕は光の術を使って光の玉をふわりと浮かべ、皆の頭上少し手前に移動させると、その場で弾けさせて小さな光を降らせる。
「綺麗…」
「「おおーっ!」」
特に効果の無いお遊びの術だが、術に免疫の無い三人は大喜びだ。
「あの、私でも魔術って使える様になる物なのですか?」
女の子が期待を込めた眼差しで質問する。
「ええ、才能に由っては使えるまでに相応の修行が必要ですが、誰でも習得できる技術です」
「それは何処かで習えるものなのでしょうか?」
今度は明るい金髪の男性が質問する。
「詳しい事は決まっていませんが、移民先に学校を作る予定ですが、一般教養以外にも魔術や武術を専門に教える学校も作る予定です」
「それは私でも入学できるのでしょうか?」
「希望者の人数と才能に由っては、お断りする可能性はありますが、先程も言った様に詳しい事は未だ決まっていません」
流石に希望者が多過ぎたら絞らざるを得ないから、そこは才能を優先させるしかないだろうと説明すると、男性も「それならば仕方ないですね」と引き下がる。
「しかし、皆さんは前世知識の影響で理解力が高まっているので、恐らく他の方より使える様になる可能性も高いと思います。希望するなら頑張ってみて下さい」
「はい、頑張ります」
女の子が元気に答え、男性達も頷いていた。
「牛乳とお砂糖はお好みでお加え下さい」
そう言って絡繰りが珈琲の入った水飲みと、牛乳と砂糖の小瓶を男性の前に並べるが、男性は「このままで結構」と答え、珈琲に口を付ける。
「おおー、僅かに記憶の中の味が違う気もするが、確かに珈琲だ」
男性が満足そうに飲んでいるが、珈琲豆は和富王国では見つかっていないので、これは何方かというと、たんぽぽ珈琲に近い物だ。恐らく珈琲豆もカレーの香辛料と同じで、もっと暖かい地域に行かないと手に入らないのだろう。
その後暫く魔術に付いての説明をしていると、女の子は治癒魔術と生活系魔術に、男性陣は戦闘系魔術により多くの興味を示した。
「お客様をお連れ致しました」
遂に最後の二人の準備が終わり食堂に到着したので、林太に念話を送ってライルさん達も此方に連れて来る様にと連絡する。
「お招き頂きありがとうございます」
「いえ、ようこそ来て下さいました。間もなく全員が揃いますので、此方の席に座ってお待ち下さい」
「飲み物の希望はありますか?」
最後の二人には僕の右隣の席を勧めて座って貰うと、給仕の絡繰りが二人に訊ねる」
「では、彼と同じ物を」
「私もそれで」
「畏まりました」
黒髪の女性が目線で珈琲を指して注文すると、一緒に来た灰髪の女性も同調する。
先に来ていた三人が珈琲を入れる姿を注目していたせいか、後から来た二人もその動作を眺めていると、氷を入れた時点で先程の三人の様に驚いていた。
明るい金髪の男性が「やはり魔術は憧れますな」と言うと、全員が頷いていた。
そこに林太に連れられたライルさん達も到着し、二人には空いている僕の左の席に座って貰った。
これでこの場にアルベール王国の覚醒者の大半が揃った事になる。
読んで下さった方々、有難う御座います。
次は10日~3週間後に更新出来る様に頑張りますので、また読んで頂けると嬉しいです。
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