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後始末

大変待たせいたしました。

更新予定日を勘違いしていた為、遅れてしまい申し訳ありません。

評価やブックマークして下さった方々、有難う御座います。

今回少し暗い話ですが、僅かでも気に入って頂けたら幸いです。

 〇六五 後始末


 食事の配布が始まってしまえば僕達が直接する事は特に無いので、残っている問題に取り掛かる。

 ライルさん達は軍務卿の供述を元に、彼の罪状や関係者の洗い出し等を行っていた。

 更に町中に残っている銃火器の場所を記した地図を僕が提供したので、マクシミリアンさん達が部隊を率いて回収に向かっている。

 一応、相手が所持している銃器を使われる可能性を考慮して、彼らにも女性騎士達に渡した物と同等性能の鎧も渡しておいた。

 但し、此方は女性騎士用の鎧と違い、素材は軽銀(けいぎん)(アルミ)と銀の合金なのだが、素材を変えた理由は単純に値段が安い事で、聖銀は銀の六十倍以上も値段が高いのだ。

 男性騎士は女性騎士よりも遥かに人数が多いので一応節約しておいた。

 銀は魔道金属としては最下級で、その分性能は劣るが量を増やす事で性能を揃えてみた。お蔭で重さは随分と増えたが、それでも今まで使っていた鉄鎧と比べれば圧倒的に軽いので男性なら特に問題も無く、マクシミリアンさん達からは凄く感謝された。

 更に護衛兼・捜索用に検索能力を付与した絡繰りも同行させているので、例え所持者が抵抗したり銃器を隠していても問題無く回収・捕縛できるだろう。


 そしてフィルマンさんは王族の持つ、城の宝物庫の目録には記されているのに、宝物庫からは消えていた宝物を回収しに行っている。

 財務卿も初めは共和国兵に持ち去られたと言っていたが、共和国兵が持ち出した物は全て回収済みである事を知らせると、顔を真っ青にして部下に確認の命令を出していた。

 関与が疑われたら軍務卿みたいに腕を飛ばされるとでも思っているのだろうが、財務卿が関与していない事は天照から聞いて知っているし、僕は恐怖政治を進める心算も無い。

 但し、犯罪に対する罰則は和富王国基準で日本よりも厳しくする予定だ。地球の様に時々被害者の命より加害者の人権を尊重する様な、本末転倒な事態は起こさせない。

 この世界には嘘を見抜ける能力というものが有るので、冤罪が発生する事もわざと狙わなければ起こらないからだ。

 この辺りも含めて、基本的に和富王国に見習えば早々問題は起きないだろう。

 後はアルベール王国との差異をライルさん達に確認して、可能な範囲で調整していくしかない。問題があればその都度修正すれば良いだけの話だ。


 少し思考が逸れてしまったが、こうしてライルさん達はアルベール王国を去った後にも問題を残さない様に後始末をしている。

 僕が今アベルの町でするべき事も特に無さそうだと考えて、残っている問題を解決する為にアニエスさんに付けていた絡繰りに連絡し、アニエスさんの手が空いている時間に相談したい事が有ると伝えて貰うと、何時でも大丈夫だと返事が来た。

 ライルさん達には僕に用事がある場合は絡繰りに伝言すれば伝わると説明してから部屋を出て、僕はアニエスさんの居るサウベルに転移する。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 場所はアニエスさんの住む寮の部屋だったが、二人部屋だそうでベッドが二つと小さなテーブルが一つに椅子とクローゼットが二つしかない簡素な部屋だ。

 同室の女性は丁度席を外しているそうで、今部屋に居るのは僕とアニエスさんと絡繰りが一体だけだ。

 絡繰りも一緒に居るといっても女性の部屋に長居する気はないので早速相談を始める。


「アニエスさんに相談したいのは、この国の性倫理についてです」

「あら、シロウさんも男の子なのね、あたしで良かったら喜んでお相手するわよ」


 アニエスさんに相談したのは彼女の職業が娼婦だったからだが、そのせいかアニエスさんは盛大に勘違いして、妖艶に微笑みながら僕に少し身体を寄せてきた。

 僕の頭に一瞬桜花様の怒った顔が(よぎ)り、慌てて説明し直す。


「いえ、そういう事ではなく、単刀直入に言うと盗賊に襲われた女性の扱いについて相談したいのです」

「え? それって、あたしたちみたいに攫われてた人達が他にも居るって事?」

「ええ、盗賊達に捕まり肉体や性的に暴行を受けた人達を大勢保護しています。今は怪我の治療の為に眠っている様な状態です。

 しかし、肉体的な損傷は幾らでも治せますが、性的暴行による精神的な影響までは僕には分らないので、この国の性的倫理感がどういったものか教えて欲しいのです」

「んー、性的、倫理? 難しい事はあたしには分らないし、助けてくれたシロウさんの頼みには答えてあげたいんだけど、あたしは十で親が死んじまって此処のボスに拾われたんだ。ボスに会えなかったそのままのたれ死んでいただろうね。

 それで娼館の雑用の仕事をしながら姉さん達に夜の仕事の仕方を習って、十二の頃から身体を売って生きてきたんだ、普通の人の事は分らないかな。あたしが同じ立場だったとしても、痛いのは嫌だってのと、するんなら金払え、くらいにしか思わないしね」


 アニエスさんは僕の想像以上に大変な人生を送っていた様だ。

 そして、若い頃から娼婦として働いていた自分は参考にならないという。


「それじゃあ参考になりそうな人に心当たりは有りませんか?」

「そうねえ、結婚してた事の有る姉さん達なら分るかもしれないから、呼んでこようか?」

「意見が聞けるのならお願いしたいのですが、事が事だけにその方は口の堅い方ですか?」

「勿論よ。皆仕事がら身体は柔らかいけど口は堅いのよ」


 確かに仕事は秘め事とも云われる行為だし、色々と客の秘密もあるだろう。当然口が軽ければ客も付き難いのかもしれない。

 同じ寮に住んでいるという事なので、早速呼んで来て貰って意見を聞く事にした。


「なあに、若い彼氏自慢?」

「アニエスは年下が好みだったの?」

「違うから! 彼があたし達を助けてくれた人、二人に聞きたい事があるって言うから二人を呼んだの、男を連れ込むのに他の女を呼ぶ訳が無いじゃない!」


 アニエスさんの弁明に、それもそうかと二人は納得してくれた。

 そして、アニエスさんが二人の女性を連れて来てくれたが、女性が三人揃うと此方の国でも騒がしくなる様だ。

 灰髪を肩長さで揃えた薄い青眼の女性がアメリーさんで、短いくすんだ金髪に碧眼の女性がフラヴィさんだそうだ。

 早速質問してみると、二人は少し嫌な顔をして答えてくれた。


「私はもう慣れちゃってるから暫く落ち込む位で済んじゃうだろうけど、それが初めてだったら尾を引くかもしれないわね。最初から乱暴にされちゃったら怖くなるもの」

「そうね、あたしの初めてはボスだったから、優しかったよ」

「やっぱり盗賊は屑ね。それに私は盗賊の相手は嫌だな。フラヴィ姉さん程割り切れないと思う。やっぱりするなら納得してからしたいし優しい人の方良いもの。女性が一人で町の外に出るなんて滅多にないんだから、きっと家族や恋人も一緒だった筈よ。その人達がどうなったのかにも寄ると思う」


 今のフラヴィさんは気にしないけど、それが初めてならばやはり相当に落ち込むと言い、アメリーさんは今でも嫌だと言う。

 ならばそれを忘れる事が出来るとしたら、忘れたいかと聞けば、当然だと答えてくれた。

 但し、旦那や彼氏を殺されている場合は、突然旦那が居なくなった理由迄忘れるのは問題だそうだ。

 旦那を殺した者を恨む事で気力をだす者も居ると、自身の体験をアメリーさんが語ってくれた。

 アメリーさんの旦那さんは、盗賊退治で亡くなった兵士だったそうだ。

 僕にはアメリーさんの過去には同情しかできないし、今は恨みは無く、只少し寂しいと、十分に参考になる意見が聞けた。


「ありがとうございます。参考にさせて貰います」

「ええ、被害にあった人達をお願いします」

「そうね、その女性達を此方の業界に来ないで済む様にして貰えると、私も嬉しいな」

「そうだね、キンスからあたし達を助けたみたいに、その娘達も助けてあげて欲しいかな」


 意見を聞いた三人は無関係な被害者の事を気に掛けてくれた。彼女達に相談して良かったと思う。

 そんな三人に、もし今の仕事をしなくても生活できるとしたら辞めたいかと聞くと、アニエスさん以外はしなくて良いならしたくないそうだ。

 唯一続けると言ったアニエスさんは初めから今の仕事をしていて、他の仕事も知らないので他の生活が想像できないとの事で、積極的に続けたい訳でもなさそうだ。

 そして三人の意見によると、自分たちは違うが好きでやってる者もそれなりに居るという。

 一応、彼女達は勿論、仕事仲間も殆どが移民に乗り気だそうなので、風俗に関する法律も考えないといけない様だ。病気とか拡散されても困るからね。

 最後にアニエスさん達にお礼として、甘い焼き菓子とお酒を数本渡すと、アニエスさんにはもう十分貰ってるから要らないのにと、少し困り顔で言われたが、他の二人はこの国では珍しい甘味に大喜びだ。

 意見を聞き終えた僕は部屋を出て、地図から千里眼で幾つかの食事会場を確認したが概ね好評の様で、問題も割り込み等、些細な範囲で収まっている様だったので、安心して相談の続きをする。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 次はフランシーヌさんに被害女性が貴族だった場合の話を聞く為、フランシーヌさんに付けた絡繰りに連絡して、今伺っても大丈夫かを確認する。

 問題は無いそうなのでクロスベルに転移し、フランシーヌさんからも意見を聞いた。


「最近は盗賊の被害も増えていると先程お父様にお聞きしましたが、そんなに多くの被害者が居ただなんて信じたくはありませんが、シロウさんの言葉で有る以上、真実なのですね」


 フランシーヌさんも同じ女性として、盗賊の被害にあった人に思う処が有るのだろう、悲しそうに答えた。


「現在は攫われた被害者の居た盗賊の住処は全て壊滅させてあります。当然、被害者も安全な場所で眠らせていますが、この方達への対応を相談したいのです」

「そうですね、貴族女性で盗賊被害にあった場合はとても大きな問題になります。先ず婚約中だった場合は略破談になりますし、当然相手が決まっていなかった場合も、今後は貴族との結婚は絶望的でしょう。更に既婚だった場合も離縁か、良くて屋敷の奥で監禁される事になるでしょう。要は各貴族家の面目に関わって来るのです」


 和富王国でも多少はその傾向はあるので、なんとなく想像はできていたけれど、アルベール王国ではもっと厳しい様だ。

 身分が高くなる程に面目も重要になってくるし、和富王国では強さも大きな基準になる為、盗賊等に負ける士族等は当然低く見られてしまうのだ。場合に寄っては降格する事すら有り得る程に。

 唯一の救いは和富王国では盗賊は略居ないという事だろう。

 職業が盗賊になると鑑定でばれてしまうので町には入れなくなり、町の外で生活する事になるが、魔物が蔓延る町の外での生活はとんでもなく厳しいからだ。

 特に冬を町の外で乗り切るのは二狼兄上でも略不可能だろう。最低でも一狼兄上くらいの実力が必要になる。そんな強者は和富王国でも精々数十人、三桁に届かない。

 そもそも冬の町の外で生活ができるだけの実力が有るのなら、狩人として一流の稼ぎが保障されている様なものなのだ。わざわざ盗賊に身を落としても収入が増える事も無いだろう。

 なので和富王国で盗賊になるのは、既に犯罪等で死刑確定の重罪人位だから極めて少ない事例で、数年に一軒あるかどうかという規模なのだ。


 またしても思考が逸れてしまったが、被害の痕跡を完全に消した場合はどうかとフランシーヌさんに尋ねてみた。


「痕跡を完全にですか?」

「ええ、身体は治癒の術で完全に元に戻せますし、更に当時の記憶も消してしまえば何も証拠は残りません。実行犯の盗賊さえ居なくなれば無かった事にできませんか?」

「シロウさんは記憶迄弄れるのですか? まさか私の記憶も?」

「いえ、フランシーヌさんの記憶を消したりはしていませんし、消す様な記憶も無いでしょ?」


 そもそも記憶を消す心算が有るのなら、最初に手術の概要を説明したりもしないと弁明し、更にその術を知ったのも今日で、今回の対策の為なので実際に試した事も無いとも付け加えると、フランシーヌさんも安心してくれた。


「痕跡が消せるという事はその、初めての証も元に戻せるという事なのですか?」

「ええ、身体の状態なら完全に回復可能です」

「そうでしたね。シロウさんは癌すら完全に治せるのですものね」


 フランシーヌさんは僕が自身の病気を治した事を思い出して納得してくれた。


「後は本人に記憶を消す事を希望するか、確認もした方が良いと思いますか?」

「ええ、略全員が希望するとは思いますが、記憶を消すというのは本人にとっても大事ですから確認はした方が良いと思います。それに中には変わり者も居りますから」


 フランシーヌさんは少し顔を逸らしてそう答える。拒否しそうな変わり者に心当たりが有るのだろう。

 そして此処からがフランシーヌさんに対する相談の本番だ。


「処でフランシーヌさんはエステル・アングラードという人物をご存じですか?」

「ええ、エステル様でしたら学院でもお世話になっていましたから、当然知っております」


 フランシーヌさんは何故此処でエステル嬢の名前が出るのかと、少し困惑顔で答える。


「それでは現在彼女が行方不明だという事はご存じでしょうか?」

「ええっ! エステル様が行方不明なのですか?」


 フランシーヌさんに僕が聞いた事を話すと、フランシーヌさんも心配そうに答える。


「私が休学した頃には未だ学院に居ましたが、あれから随分時間も経ちましたし、もう何カ月もお会いしていないのです。私が生き残れたのにエステル様が居なくなるだなんて、いえ、シロウさんが此処でエステル様のお話をされるという事は、もしかして先程の盗賊の犠牲者の中にエステル様も入って居るのですか!?」


 フランシーヌさんも流石は前世知識を持っているだけあって日本での教育が下地にあるせいか、この世界の普通の人よりも頭の回転は早い。当然の様に話の流れからエステル嬢が盗賊被害に遭った事を推理してみせる。


「ええ、現在保護している被害者の中でも最も状態が悪く絶対安静です。発見が数時間遅ければ間に合わなかったでしょう」

「そんな……」

「他にも被害者が多くて未だ治療はしていませんが、状態は固定されていますのでこれ以上悪化する心配はありませんし、苦痛も感じていない筈です。相談したいのは彼女の記憶をどうするのかと、家族に何処迄伝えるかです」


 知人が盗賊被害に遭ったという事にフランシーヌさんも初めは動揺していたが、僕が命の心配は無いと断言すると徐々に落ち着きを取り戻してきた。


「シロウさんがエステル様を保護している事を、エステル様のご家族は未だ知らないのですね?」

「ええ、状態が状態なので未だフランシーヌさんにしか話していません」

「そうでした、重傷なのでしたね」


 フランシーヌさんは少し考える素振りをしてから更に続ける。


「エステル様の怪我の状態を私が確認する事はできますか? ご家族に説明する時の補助ができるかもしれません。そして治療後にも私にエステル様と話す機会を頂けないでしょうか? 私が直接彼女に忘れたいか、確認したいと思います」

「宜しいのですか? あまり気分の良い役割では無いと思いますし、怪我の状態も相当に酷いものですからお勧めはできませんよ」

「シロウさんは勿論、エステル様にも恩が有りますもの。その程度の事で少しでも恩が返せるのなら喜んで引き受けますし、寧ろこれは私の願いでもあるので、許可して頂けると嬉しいです」

「そうですね、男の僕が話すよりも同じ女性のフランシーヌさんが話した方が、彼女も安心できるかもしれません。宜しくお願いします」

「はい、喜んで」


 こうしてエステル嬢の対応をフランシーヌさんに任せる事にし、更に同じ学院の生徒を複数保護しているが、此方は怪我も殆どなく無事だと説明すると、フランシーヌさんもほっとしていた。

 後は何時、何処で開放するかという問題だけだと説明すると、フランシーヌさんは一旦アルベール城で解放して纏めて説明してから各家に転移で帰してあげれば一度の説明で済、安全に帰れて恩も売れると提案してくれたので、その案に乗る事に決まった。

 なんだかんだでフランシーヌさんも優秀で、彼女に相談して良かったと思った。



読んで下さった方々、有難う御座います。

次は2~3週間後に更新出来る様に頑張りますので、また読んで頂けると嬉しいです。

また、気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みになりますので宜しくお願いします。

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