其々の夜
お待たせいたしました。
最近の寒暖差に少し体調を崩してしまいましたが、皆さんはお元気でしたか?
今回も僅かでも楽しんで頂けたら幸いです。
時間は少し遡って四狼達が町に帰ってくる少し前、草薙識は自身の執務室で行われた部下の報告に戸惑っていた。
「狩人達に狼を嗾けに行った部隊が行方不明だと?」
「はい、会頭。時間になっても誰も戻って来ず、現場を確認に行った者によると、僅か数匹の子鬼しか残っておらず、それらも進行中に皆と逸れたり、用を足しに行っている間に皆が居なくなったと騒いでおり、原因は分っておりません」
四狼が姉弟と共に狩りに出たと知った草薙は、誰か一人でも仕留められれば少しは溜飲が下がるだろうし、更に狩人達にも被害が出れば魔石供給にも支障が出て一石二鳥と考え、配下の子鬼達に狼を嗾けさせたのだが、結果は部隊の行方不明。つまりは全滅報告だ。
「狩人組合の方はどうなっている?」
「そちらの方も普段と然程変わりは無く、東北方面の狩りは大成功だと連絡が来た模様です」
仮に三千を超える子鬼の大群が発見されれば狩人組合は大騒ぎの末、国に報告されて軍にも討伐指令が出るだろう。
その兆候が無いとすれば、子鬼共が見つかった可能性は低い。
そして、狼の大規模な群れに遭遇すれば、狩人達にもそれなりの被害も出る筈だが、その報告も無いという事は狼を嗾ける事にすら失敗した可能性もある。
分らん。情報が足りなさ過ぎる。
「現在も現場での捜索は続けさせており、誘導済みの組合職員や狩人が帰還すれば、新たな情報も得られるでしょう。今暫くお待ちください」
「子鬼や狼の死体も見付かって居ないのだな?」
「はい、現場に一番近い戦闘跡付近には、土でできた卓や椅子と便所の様な建物が発見されておりますが、死体は一切発見されておりません」
慌てて迎撃したのであれば、例え異界持ちが居ても死体を回収している余裕が無かったり、収納出来る量にも限りがあるのだから、全ての死体を持ち帰る事はできないだろう。
ならばその戦闘跡も普通の狩りでできた可能性が高いが、この程度の情報では想像しかできん。
少ない情報でいくら想像しても埒が明かないと、草薙はこれ以上考える事を諦める。
「続報が入り次第、報告しなさい」
「はっ!」
部下が返事をして執務室を出ていくと、草薙は座っていた椅子に一度背を預けて深く座り直し、気持ちを切り替えて仕事の続きを始めた。
今日の仕事を終え、夕食も終えた頃に漸く待ちわびた新たな情報が入って来たが、それは草薙の望むものではなかった。
「つまり、行方不明の子鬼共は依然見付からず、狩人達にも被害がほぼ無く、それどころか久々の大猟に浮かれている、という事ですか」
「はっ! 会頭の仰る通りです」
散々待たせた挙句に成果無しとは、俺の部下のくせに無能共め。
しかし、夜の町の外は危険だ。流石に暗くなれば捜索も止めるしかない。
「明日は規模を増やして捜索を続けろ。明日見付からなければ諦めるしかないだろうが、せめて部隊が消えた手掛かり位は見付けてみせろ!」
「はっ!」
部下は返事をすると、そそくさと部屋を出て行く。
それを見送りながら草薙は渡された資料に目を通す。
狩人組合が大手商会向けに発行している、今日の狩りの成果報告だ。
狩られた獲物の内訳や、多く狩った組の情報が載せられている。
いつもは一番多く狩っている赤実猟団が今日は二番手で、一番はあの八神だという。
赤実猟団の普段の成果から、一度に運べる獲物の限界数は予測できていた。
今日の成果は普段よりも僅かに多いが、それよりも八神の成果の多いのは予想外だった。
しかも大半が灰色狼だという。
これは狼を嗾ける処までは計画が成功していた事を意味するが、その大量の狼を撃退し持ち帰ったという事は、八神の戦力と収納力を見縊っていた証明に他ならない。
しかも、八神の組に桜花も加わっていたという事を資料を見るまで知らなかったのだ。
最悪、桜花も巻き込まれて死んでいたかと思うと、桜花が同伴するという事を伝えなかった部下の無能ぶりに腹が立つ。
そして、ここ数日の計画の狂いには全て八神の餓鬼が関わっている。
恐らく今回の子鬼の部隊喪失も奴が絡んでいるに違いない。
次はもっと上手くやらなければ。
こうして、草薙の逆恨みによる悪巧みは今夜も続く。
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丁度、草薙が悪巧みをしていた頃、立花家では。
バギィッ! という音と共に屋敷の玄関口で熊之介が兄に鉄拳精査を受けていた。
「熊之介、又もや八神の者に迷惑を掛けたそうじゃないか! 少しは物を考えて行動しろ!」
「しかし、今回はたまたま四狼が関わっただけで、僕が意図した訳では……」
「黙れ! その、たまたまが無ければ、お前は死んでいたというではないか! それが恩人に対する態度か!」
狩人組合から帰る直前まで気を失っていた事もあり、帰りは職員が荷車で屋敷の近くまで送ってくれたのだが、それを仕事帰りの猪之助兄上に見られたお蔭で、今日の出来事が家族にばれてしまったのだ。
「猪之助兄上、少し落ち着いて下さい。熊之介も、助けてくれた四狼殿に感謝を忘れてはいけない。そして、どうして一人で狩りに行く等という無茶をしたのか、しっかりと考えて反省する方が今は大事だと僕は思うんだが、どうかな?」
「……確かに、兎之介兄上の仰る通りだと思います」
流石に一人での狩りは無謀だったと、熊之介も反省の意を示す。
「話が終わったのなら皆は夕食を食べてしまいなさい。熊之介は先にお風呂に入って、狩りの汚れを落としてきなさい」
千鶴母上の、文字通り鶴の一声に皆が従い、食堂に向かう。
熊之介は言われた通りに、狩りで付いた血や泥を落とす為に風呂に入った。
風呂に入りながら、灰色狼に半ばまで食い千切られた筈の腕を見る。
しかし、そこには傷一つ無い、綺麗な腕が有るだけだ。
職員の話だと身体の所々を噛まれていたが、四狼が赤魔道薬で治療してくれたらしい。
噛み傷程度ならば下級の赤魔道薬で回復するが、千切られてしまっては中級以上の赤魔道薬以上でなければ回復できない筈だ。
小手が引き千切られたのを、腕毎持って行かれたと勘違いしたのだろうか?
もしそうなら、自分の身体の損傷具合すら把握できていなかった事になる。
四狼に言われた、武術に向いていないという言葉が蘇るが、違う、まだまだ修行が足りていないのだと自分に言い聞かせ、見当違いの反省をして夕食に向かうと、玄関での経緯を聞かされて待ち構えていた鹿角母上の平手打ちを食らう。
その後も暫く鹿角母上のお小言が続き、熊之介が夕食にありつけた頃には、他の皆はとばっちりを避けてそそくさと食堂を後にしていたので、熊之介は一人寂しく冷えた夕食を食べる事になった。
鹿角母上は最後に、熊之介には暫く自宅謹慎を申し付け、明日は兎之介兄上に八神家に礼を伝えに行かせると言っていた。
熊之介は、謹慎も冷や飯も無謀な事をした罰だと自分に言い聞かせながら夕食を済ませる。
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熊之介が冷や飯を食べていた頃、桜花も入浴を済ませて食堂に入ると、普段より遅くなった為か菊花母上が食事をしており、珍しく母上と夕食が同席になった。
そして此方も珍しく食事を既に終えている筈の弟妹、清治と桃花が残って何やら話し込んでいる。
「あら、桜花、こんな時間に食事なぞ、珍しい事もあるものじゃな」
「はい、菊花母上、本日は遠出をしていた為に食事が遅くなってしまったのじゃ」
「桜花姉上、お帰りなのじゃ。ご無事に帰られて良かったのじゃ」
「桜花姉上、お帰りなさい。お怪我は有りませんか?」
「桃花、清治、ただいまなのじゃ。怪我は…少ししたが既に治しておるから問題ないのじゃ」
家族には今日の狩りの事を事前に伝えていた為、心配して待っていてくれたみたい。
「もう痛くは無いのじゃな。良かったのじゃ」
「桃花、ありがとうなのじゃ。清治も心配を掛けたのじゃ」
「いえ、桜花姉上はお強いですから、僕は然程心配なぞしておりません」
そう言いながらも夕食後も待っていてくれた弟が、少し可愛かった。
「桜花、強さを求めるのは構わぬが、本業を疎かにしてはいないじゃろうな」
「勿論なのじゃ菊花母上。明日の午前は座学を、午後は仕事を行う予定なのじゃ」
菊花母上に「ならば良い」とお許しを受けた処で父上もやって来る。
「桜花、無事に帰って来た様で何よりじゃ」
「はい、父上、ただいまなのじゃ」
「しかし、多少無茶をしたとの報告も受けておる。上に立つものは常に冷静さを保たなければならない。精進しなさい」
私がお風呂に入っている間に、伊吹から報告を受けていた様だ。
「はい、父上、胆に銘じるのじゃ」
私の返事を聞いた父上は上座の自席、菊花母上の隣に座ると、同行していた父上の従者が部屋付きの者に指示を出し、私達の夕食を運ばせる。
指示を出した従者は自分も手早く食事を済ます為、部屋を出て行った。
私も定位置の桃花の隣に座って、食事が運ばれるのを待つ。
「狩った獲物を自慢する為に持ち帰ったと聞いておる。食事の後に見てやろう」
「勿論見せるのじゃ。大物過ぎて吃驚すると良いのじゃ」
父上の冗談交じりの挑発に、私も冗談交じりで答える。
「桜花姉上、桃花も桜花姉上が狩った獲物が見たいのじゃ」
「あ、桜花姉上、僕も見たいです」
「それは構わぬが、獲物と言っても所詮は只の魔物の死体じゃぞ、そう珍しい物でも無いじゃろ」
桃花と清治はまだ九歳と八歳だ、日本なら子供に血生臭い物を見せるな! と怒る者もいそうだが、和富王国の士族なら普通に狩りをするし、多少は動物の解体ができなければ遠出の狩りもできない。
何より血を怖がる様では、魔物の蔓延るこの世界では生きていけないので、和富王国では初等教育で獲物の解体も見学させている。
つまり、桃花達にとっても魔物や獣の死体等は珍しくも無いのだ。
「桜花姉上が狩ったというのが大事なのじゃ」
「そうです、桜花姉上の狩りの成果が見たいのです」
今生の弟妹は可愛い事を言う。
前世ではこんな事を言われた記憶が無いよ。よく覚えても無いけど。
「分ったのじゃ。童達の食事が終わったら見せるのじゃ」
「桜花姉上、ありがとうなのじゃ」
「ありがとうございます、桜花姉上」
「礼を言われる程の事でも無いじゃろう」
そうしている内に食事が運ばれ、私も食べ始める。
「いただきます」
今日の献立はかつの様だが、何の肉だろう。
夕食としては遅めの時間に食べるには少し重い気もするが、今日は十分過ぎる程に運動しているから構わないだろう。
早速かつ垂れを付けて一口。うん、美味しい。この味は鹿でも猪でも無い。
という事は、先日水揚げされたと報告にもあった鯨ね。
日本では小学校の給食で食べた記憶はあるけど、何時の頃からか食べられなくなっていたから味も覚えていないのよね。
覚えていなくても、これはこれで美味しいから問題無い。ご飯が進むわ。
おっと、美味しさのあまり、思わず早食いになり掛けていたけれど、気を付けて上品に食べないと目の前の菊花母上にお叱りを受けてしまう。
気持ちを切り替える為に味噌汁に口を付ける。
和富王国の味噌汁は具が多く、ここまでくると味噌味の鍋とか煮物といった方が近い気がする。
それも、和富王国では生で食べられる野菜が少ないせいらしいが、味噌味が染みた野菜も美味しい。歴代の覚醒者が頑張ってくれたお蔭なのだろう。
私も未来に何かを残せると良いのだが。
せめて今生では子を残したいものだ。
そう考えていたら、四狼の顔が頭を過り頬が熱くなる。
慌てて顔を手で仰いでいると、桃花が心配そうに尋ねてきた。
「桜花姉上、どうかしたのじゃ?」
「なんでもないのじゃ。味噌汁の熱で顔が火照っただけじゃ」
適当に誤魔化しながら食事を終わらせ、手を合わせる。
「ご馳走様でした」
顔を上げると、父上は既に食事を済ませてお茶を飲んでいた。
私もお茶に口を付けるが、少し温い。
三割程飲んだ処で折角だから試してみようと指先に呪力を集め、茶碗の上で氷の呪印を描き、更に呪力を込める。
すると、茶碗の中にカランと音を立てて直径が一寸足らずの歪な形をした氷が落ちた。
「おー、桜花姉上が術を使える様になったというのは本当だったのじゃな」
「桜花姉上、凄い、凄いです」
術で生み出した氷をつまんで湯飲みに入れると、桃花が目を輝かせて湯飲みを覗き込み、清治も凄いを連呼して喜んでいる。
弟妹に称賛されるのが嬉しい反面、王族がそんなに純粋で大丈夫なのかと不安にもなる。
「確かに、術が使える様になったとは聞いていましたが、本当だったのじゃな」
「菊花母上、これも修行の成果なのじゃ」
「では、もう一つの成果、そろそろ狩った獲物を見せて貰うのじゃ」
そう言って菊花母上は立ち上がり、部屋を出て行く。
私は急いでお茶を飲み干すと、菊花母上に続いて部屋を出る。
その後ろに父上が続き、何時の間にか戻っていた従者と桃花達もついて来た。
厨房の外、解体工房に着くと、今日の作業を終えた職員達が後片付けをしていた。
菊花母上が責任者に話し掛け、獲物を出す場所を用意させる。
「では桜花、今日の成果を見せるのじゃ」
「はい、菊花母上」
私は菊花母上に答えて先ずは孤児院用の灰色狼を四頭、異界倉庫から出して見せる。
「おおーっ」
「これが桜花姉上が狩った獲物ですか? 思っていたよりも大きいのじゃな」
「灰色狼程度では自慢にならんじゃろ。次を出して見せるのじゃ」
清治と桃花は素直に喜んでくれたが、菊花母上は満足出来なかった様だ。
言われた様に一角鼠、足狩り兎、槍猪、草原蜥蜴、大鹿と順に異界倉庫から取り出して見せる。
弟妹達は凄いと喜んでいるが、大人達は結果を知っているせいか、反応は薄い。
「最後に、本日最大の獲物じゃ」
私はそう宣言して赤熊と灼熱熊を出して見せた。
聞いてはいても、その巨体に大人達も目を見張る。
「中々立派な熊じゃな。これだけの獲物を狩れたのは重畳じゃが、女子が狩りが上手くても素直に褒めて良いものか分らん。評価は菊花に任せる」
父上は成果を認めつつも、評価は菊花母上に丸投げする。
「桜花、女子が狩りをするなとは言わぬし武力を鍛える事も否定はせぬ。しかし、王族に必要なのは直接的な強さではなく、兵を使役する指揮官としての強さじゃ。今後はこの熊達を倒した指揮に重点を置いて学びなさい」
「分ったのじゃ、菊花母上」
無茶を怒られずに済んでほっとしながら熊を異界倉庫に片付け、他の獲物の処理を解体工房の者に指示を出して城に戻る。
「僕もいつか狩りに行ってみたいです」
「桃花も興味はあるのじゃが、やはりあの大きさで向かって来られると思うと怖いのじゃ」
清治は狩りに乗り気だが、桃花は興味より怖さを覚えたらしいが、赤熊の体長は私の倍を超える。私より小さな桃花だと更に差は広がるのだから無理もない。
「清治はもっと強くなったら機会もあるじゃろうし、桃花は無理に狩りに行く必要はないのじゃ。人には向き不向きがあるし、向かぬ者が無理に狩りに挑戦しても、逆に魔物の餌にされるだけじゃからな」
「はい、僕も桜花姉上の様に強くなれる様、頑張ります」
「桃花は狩りは怖いので、別の事を頑張りたいと思うのじゃ」
「今はそれで良いのじゃ。王位継承を辞退しておる二人には色々な未来が有るのだから、慌てずにじっくり考えるが良いじゃろう」
「はい、桜花姉上」
「桜花姉上、ありがとうなのじゃ。」
「今日はもう遅い、二人はそろそろ眠る時間なのじゃ」
「「はい、桜花姉上、おやすみなさい」おやすみなのじゃ」
弟妹は私の言葉に従って就寝の挨拶をすると、自室に帰って行った。
私にはまだ今日の報告が残っているので、父上と一緒に父上の執務室に向かう。
「それで、今日も何かあったのか?」
「そうじゃな、一番は先程の灼熱熊じゃから、然程大きな事は起きておらぬのじゃ」
そう前置きしながら、術の連続使用や灼熱熊に止めを刺した刀の事を話す。
「若い割に随分と巧みな術の使い方をするのじゃな。それに、その刀も修行にならないと言うが、桜花の話を聞く分には普通に武器として使えそうじゃが」
「四狼はあくまで修行に使う事が前提だったからじゃろう。それに威力も高めな分、呪力消費も多そうじゃった」
捕鯨船に搭載されている魔道砲の様に、魔石を使った魔力供給もできれば使い道も増えるだろうが、あの刀は使用者の呪力を使うのが目的だった為、連続して何度も使える物でもなかった。
普段使いの武器より、たまたま遭遇した強敵用の保険、切り札としてなら使えそうだと父上に報告する。
「成程、実際に使用した桜花がそう考えるのなら、そうなのじゃろう。そもそも量産できるか分らぬ代物をあれこれ考えても仕方のない事じゃ。それよりも伊吹の報告に会った、自ら作った高台から、狼の数と時期を見事に調整した手腕の方が気になるのじゃが、桜花はどう感じた?」
そう言われれば、狼の群れは私達が倒すのに合わせる様に次々と現れていた。
まるでわんこそばの様に、わんこ狼が追加されていたのだ。
私達より高い視点で、遠くの狼が此方に来るのを制限して数を調整していたと考える方が確かにしっくりくる。
「言われてみれば確かに一頭倒す度に次が現れていたのじゃから、四狼が調整していたと考えてもおかしくないのじゃ」
「元より優秀だとは聞いておったが、覚醒で更に能力が上がったという事なら、いずれは父である龍牙をも超えるやも知れぬ、何とか手元に留めておきたいものじゃが、桜花、分っておるな?」
「勿論じゃ。必ずや四狼に婿にして下さいと言わせるのじゃ」
「いや、それはお互いの立場上、桜花から言わねば無理ではないか?」
「そんな恥ずかしい事、言える訳がないのじゃっ!」
私の言葉に父上は情け無さそうな目で見て溜息を吐く。
「その辺りは桜花が自分で決めれば良い。先ずは先程の刀や、この腕輪を四狼本人でなくても作れる者と繋がっておるのなら、付与の魔道具を作れぬか確認するのじゃ」
付与の魔道具は、能力付与や魔術付与の能力が無くても、自身の持つ能力や使える術を魔道金属や宝石に付与できる魔道具だ。
この魔道具の発明によって、付与能力者が持たない様々な能力や魔術も付与できる様になり、魔道具は一気に発展、ある程度の量産も可能にした。
しかし、付与できる能力の熟練度が付与の魔道具の熟練度に左右される為、年々性能が落ちてきているのが問題にもなっている。
もしこの腕輪に付与されている熟練度と同等の付与の魔道具が作れれば、付与できる能力の熟練度も上がる為、今後作られる魔道具の性能を上げる事が出来るだろう。
「分ったのじゃ。今度確認してみるのじゃ」
父上との話を終えた私は自室に戻り、寝間着に着替えて床に就く。
初めての狩りは大成功で、思っていた以上に楽しかった。
影で色々と手を回してくれていた四狼のお蔭もあったのだろう。
この楽しい日々が今後も続く事を願いながら、桜花は眠りに落ちて行った。
こうして其々の誤解と思惑の入り混じった其々の夜は更けて行く。
読んで下さった方々、有難う御座います。
次は2~3週間後に更新出来る様、頑張ります。
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