狩りの成果
大変お待たせ致しました。
今回も僅かでも楽しんで頂ければ幸いです。
〇五二 狩りの成果
熊之介を担いで拠点に戻りながら僕は考える。
何故、熊之介は一人で狩りに参加していたのだろうか?
立花家も八神家と同じ様に道場をやっているのだから、兄弟か道場仲間と一緒に参加すればこんな事にはなっていなかった筈だ。
やはり試合に負けたのが原因で無茶をしたのだろうか?
一応、熊之介が一人で狩りができる程に強くなっている可能性も考えて鑑定してみたのだが。
名前:立花 熊之助 (たちばな くまのすけ)
生年月日:和富歴1038年5月12日 h0E歳(14歳)
種族:人族
身長:5尺6分(約152センチ)
体重:12貫(約45キロ)
状態:昏倒
性交:無
霊格:h80
位階:h10(16)
腕力:13
握力:14
脚力:16
知力:24
記憶力:23
体力:16
呪力:26
能力:異界収納2、算術3、知力上昇1、呪力上昇1、太刀術1、槍術1
称号:無
役職:無
やはり思っていた通り、一人で狩りができる程に強くなっていた訳でも無く、更にいえば彼の基礎能力は呪力が最も高く、武術向けというよりは術士向けだった。
武術を修行するにしても、これでは効率が悪い。
まずは呪力を強化して、術による身体強化を身につけてから、武術の修行をした方がもう少し効率良く強くなれるだろう。
問題は立花流は八神流の様に強くなる為には何でも有り、という考えとは違って肉体重視という点だが、僕にできるのは助言までで、それ以上は家の問題になってしまうし、僕が責任を持つ事でも無いかと割り切る。
そうした事を考えながら拠点に戻ると、桜花様達と一緒に組合職員も待っていた。
「おお、待っていたぞ。八神門の今日の成果を確認していなかったのだが、その前に肩の彼はどうしたんだ?」
「狼の群れに囲まれていたので、助けてきました」
「なんじゃ、熊之介ではないか。こ奴は試合の結果といい、最近良い処無しじゃのう」
「一人で狩りなんて無謀です」
桜花様と三刃の無慈悲な感想が熊之介に突き刺さる。
僕はそっと荷車に熊之介を乗せると、職員が聞いてくる。
「その囲っていた狼を、八神殿がお一人で倒されたのですか?」
「いえ、既にそれなりの手傷を負わせていた様で、僕が近付くと人数が増える不利を悟ったのか、狼達は逃げて行きました」
「そうか、それで彼の容態はどうなんだ?」
「治療は終えていますが出血も多かったので、暫くは目を覚まさないでしょう」
「治療が間に合ったのなら何よりだ。彼も命が助かったのだから文句もあるまい。それで、成果の方は報告できるか?」
組合職員は熊之助の無事を確認すると、安堵したのか自分の仕事を再開した。
集団狩猟の参加には、狩りの成果の四分の三以上を組合に売却する義務が発生するので、撤収時に狩った獲物の報告をしなければいけないのだ。
「ええ、大丈夫です。えっと、一角鼠が四十二匹、足狩り兎が三十六羽、槍猪が三十二頭、草原蜥蜴が八匹、大鹿が六頭……」
「一寸待て! それは今日一日の狩りの成果だよな?」
「勿論です。他には灰色狼が二百四十六匹と赤熊一頭に灼熱熊が一頭の、計三百七十二頭です」
「狼が二百……」
職員が呆気にとられていると、僕達の会話を聞いていた周りの者達が騒ぎ出す。
「三百?!」「八神門は噂通りか」「うちの何十倍だ?」「姫様つえー」「あんなちっこいのもいるのに?」
そんな驚きや称賛の声が聞こえて来る。
「おい、八神殿。さっきは赤熊が二頭と言ってなかったか?」
「ええ、僕達が駆け付けた時は赤熊が二頭でした。戦っている途中で成り上がってしまったのです」
「はーっ、そういうのは赤熊が二頭とは言わん!」
阿迦井さんに溜息を吐かれた後、怒られてしまった。
「それにしても前に八神門が参加した時はそんなに狩っていなかったと思うが、今回はどうしたんだ?」
何故か前回の成果も知っていた阿迦井さんが僕に尋ねてくる。
「前回も参加したのはこの中では僕だけです。今回は索敵の得意な伊吹さんもいましたから、獲物を探すのが楽でした。それと灰色狼が群れずに数頭ずつ、次々に襲ってきたのを各個撃退していった結果です。纏めて一度に襲って来なくて助かりました」
「一度に集団で襲ってこなかったのか? そいつは珍しい。本当に運が良かったな。しかも赤熊だけでなく草原蜥蜴も何匹も狩るとか、どうやって見つけたかは知らんが、たっぷり稼ぎやがって、正直羨ましいぞ」
阿迦井さんはそう言いながら僕の背中を叩く。
草原蜥蜴は草原に保護色で隠れており、狩りの範囲に入った者以外には沈黙を守る為、見つけ難くてあまり狩る事が出来ない。
体長に尻尾を含めないから小型に分類されているが、尻尾を含めると七メートル程にも成り、その長い尻尾の一撃は強烈だ。
しかし、基本待ち伏せの狩りをするので先に見付けてしまえば移動速度も遅く、熟練の狩人や武芸者には格好の獲物である。
「姫様がいなけりゃ皆をうちの団に勧誘したいくらいだぜ」
阿迦井さんは桜花様をちらりと見ながら僕に言う。
「悪いが四狼をお主に譲る心算は毛頭無いぞ」
その言葉が聞こえたのか、桜花様が即座に拒否する。
「成程、四狼殿は渡さぬか、よぉく分かりました。それじゃあ俺らは馬に蹴られる前に退散するとしよう」
そう言って、阿迦井さんはニヤニヤと笑いながら去って行った。
「悪い奴ではなさそうじゃが、少し失礼なのじゃ」
「そうですか? 僕はとても面倒見の良い方に見受けましたが」
「まあ良い、それより職員との話は終わったのかの?」
桜花様の指摘を受け、気を取り直した職員と話し合った結果、取り合えず狼を二百十四、鼠を三十四、兎を二十六、猪を二十一、蜥蜴を三、鹿を一、赤熊を一で一日百頭ずつ、三回に分けて丁度三百頭を売却する事になった。
なんでも血抜きができる場所が六十程しかない為、一度に全部は処理できないからだそうだ。
普通は狩った直後に血抜きをするのだから、普段は血も素材になる様な獲物にしか使わない為、多く処理できる必要もないのだそうだ。
更に僕は時間経過の無い倉庫持ちという事になっているので、時間が経っても獲物が痛まない事も有って、後日の売却でも問題無いというのも理由の一つらしい。
尤も、痛まないから血抜きもしていないのだが。
そうしている内に町に戻る準備が整った組から荷台に乗って出発して行き、やがて僕達も出発する。
町に着く迄の時間潰しに、皆の今日の修行の成果を確認してみた。
名前:徳田 桜花 (とくだ おうか)
生年月日:和富歴1039年2月6日 hD歳(13歳)
種族:人族
身長:4尺7寸3分(約142センチ)
体重:10貫(約37.5キロ)
胸囲:2尺5寸6分(約77センチ)
胴囲:1尺7寸6分(約53センチ)
尻囲:2尺5寸1分(約76センチ)
状態:良好
性交:無
霊格:h80
位階:h13(19)
腕力:18
握力:19
脚力:21
知力:23
記憶力:24
体力:26
呪力:28
固有能力:前世知識
特殊能力:優しい世界1
能力:生物鑑定4、異界倉庫3、直感2、幸運2、算術4、太刀術2、言霊術1、狩猟1
称号:王女、次期女王候補、狼殺し、狼の天敵、熊殺し
役職:和富王国第一王女
順調に位階が上がっているのは時々確認していたし、能力の熟練度もいくつか上がったが、狼殺しや熊殺し等の少し物騒な称号迄獲得してしまった様だ。
名前:八神 五狼 (やがみ ごろう)
生年月日:和富歴1040年3月5日 hC歳(12歳)
種族:人族
身長:4尺6寸(約138センチ)
体重:9貫60両(約36キロ)
状態:良好
性交:無
霊格:h80
位階:h11(17)
腕力:16
握力:18
脚力:17
知力:19
記憶力:23
体力:20
呪力:24
能力:異界収納2、算術3、太刀術1、槍術2、言霊術1、狩猟1
称号:狼殺し、狼の天敵、熊殺し
役職:無
五狼にも狼殺し等の称号が付いているが、殺しや天敵の称号はその対象に対して有利にならるらしいので、今後の狩りでも役立つだろう。
名前:八神 三刃 (やがみ みつば)
生年月日:和富歴1041年7月22日 hA歳(10歳)
種族:人族
身長:4尺2寸(約126センチ)
体重:8貫(約30キロ)
胸囲:2尺2寸(約66センチ)
胴囲:1尺7寸3分(約52センチ)
尻囲:2尺3寸3分(約70センチ)
状態:良好
性交:無
霊格:h80
位階:h0f(15)
腕力:14
握力:15
脚力:17
知力:16
記憶力:18
体力:18
呪力:18
特殊能力:武神招来2
能力:異界収納2、生物鑑定2、算術2、小太刀術2、言霊術1、狩猟1、立体行動1
称号:狼殺し、狼の天敵、熊殺し
役職:無
三刃にも殺しの称号が付いたが、それよりも立体行動の能力が気になったので天照に確認してみたら、空中での姿勢制御や空間把握力が高まる能力との事だ。
今日の三刃はよく飛び跳ねていたから、その成果なのだろう。
名前:春風 伊吹 (はるかぜ いぶき)
生年月日:和富歴1036年3月32日 h10歳(16歳)
種族:人族
身長:5尺2寸7分(約158センチ)
体重:13貫(約48.75キロ)
胸囲:2尺9寸1分(約88センチ)
胴囲:1尺9寸1分(約58センチ)
尻囲:2尺8寸(約84センチ)
状態:良好
性交:無
霊格:h80
位階:h24(36)
腕力:32
握力:36
脚力:40
知力:34
記憶力:34
体力:40
呪力:32
能力:異界収納3、生物鑑定4、算術3、太刀術2、小太刀術5、回避4、槍術1、狩猟5、言霊術1、苦痛耐性4、暗殺術3、隠形4
称号:天然素材、鼠殺し、狼殺し、狼の天敵、熊殺し
役職:和富王国近衛武士
序でに伊吹さんも確認してみたが、伊吹さんも二つ位階が上がっている。
前は無かった鼠殺しの称号は、今回の狩りで定数を超えた為に取得した様だ。
少し修行の成果が出過ぎな気がしたが、天照によると僕の指導の能力が皆の成長を促進しているらしい。
目的を逸脱している訳でも無いので、良かったと考えよう。
その一方、僕は一つも位階が上がっていなかったが、天照達の話によると、これは能力の補正で強くなり過ぎた為、必要な経験が極端に増えているからだそうだ。
皆に不審に思われない為に、偽装能力で皆に合わせて三つ上がった様に見せる。
能力で底上げされているからといって、位階が上がらないのって何処か損している気分だ。
そうして皆の成長を確認していると、桜花様が心配そうな顔で訪ねて来た。
「四狼、難しい顔で何やら考えておる様じゃが、そう心配せずとも熊之助の怪我は既に治したのじゃろう?」
どうやら僕が黙って考え事をしていたのを、熊之助の事を心配していると勘違いした様だ。
「いえ、違います。桜花様達の事を考えていたのです」
「え、わ、童の事を考えていたっ?!」
何故か桜花様は僕の返事を聞いて慌てている。
「ええ、今日の狩りで皆の位階が結構上がったので、今後の修行をどうしようかと考えていたのです」
「むーっ、どうせそんな事だろうと思ったのじゃーっ!」
桜花様は少し頬を朱く染めて喚いているが、何時もの事なので気にせずに続ける。
「皆の体術系の能力が初期の段階を超えましたし、元から桜花様と五狼は術師向けの基礎能力なので、次からは呪力操作系を重点的に鍛えようと思います」
「ふん、つまり、童達も成長したという事で良いのじゃな?」
桜花様は直ぐに気を取り直して僕の話に耳を傾ける。
「ご自分で鑑定してみて下さい。今日の狩りで位階が三つも上がりましたよ」
「何!? おおーっ、本当じゃ。一日で位階が複数上がったのは初めてじゃぞ」
「あーっ、三刃も三つも上がってますーっ!」
「三刃、僕も上がってるの?」
三刃達も桜花様との話を聞いていた様で、三刃は自分で確認して喜び、自分で確認できない五狼が三刃に尋ねている。
「心配しなくても五狼も三つ上がっているし、伊吹さんも二つ上がっていますよ」
「本当ですか? 四狼兄上」
「嘘をついてどうする? 三刃にも確認して貰え」
「おおっ! 四狼殿、本当に私も二つも位階が上がっているで御座るよ」
「おめでとうございます」
「ありがとうで御座るよ四狼殿。姫様の仰る通り、一日で位階が複数上がるとは珍しいで御座るな」
伊吹さんも珍しいと言いながらも嬉しそうだ。
「今日一日で四百近く狩りましたからね。後日、今日の売り上げも分配しますが結構な金額になりそうですよ」
「いや、童は金の方は要らぬ。最近は腕輪をはじめ、色々貰っておるからな。今日狩った獲物をそれぞれ一頭ずつ貰えれば、それで十分じゃ。ただ、家族に自慢する為に暫し熊を預けて欲しいのじゃが、構わぬか? 勿論、用が済んだら返すのじゃ」
確かに最近は色々贈っているが、大量に有る無限倉庫の初期配布的な棚ぼたな物だし、どうせ一人では使い切れないのだから気にしなくても良いのだが、当然桜花様がそんな事を知っている訳も無い。
「獲物は元から全員に一頭以上は分けられる様に売却数を調整してありますし、熊を預けるのも構わないのですが、お金の方も結構な額になります。これは皆で狩った成果なのですから、喜びも報酬も皆で分けるのが組を組んでの狩りの在り方だと、僕は思います」
「そうか? 腕輪だけでも十分な価値があるのじゃが、四狼がそう言うのなら、報酬もありがたく受け取るのじゃ」
仲間で分配という事に桜花様も納得してくれた様で、報酬を受け取ってくれる事に合意し、僕も一安心だ。
「今回は通常の狩りとは違って報酬も大きくなりますから、納得頂けて良かったです」
「そんなに儲かったのかの?」
「はい、普段は見つけるのが困難な草原蜥蜴を複数狩れましたし、僕達程度の位階では通常これだけの数の灰色狼に遭遇したら狩られるのは此方になりますから、今回は運が良かったです。更に赤熊が森から出てくるのも珍しい事です。灼熱熊は売却するかも決めていませんが、売れば更に利益は五割増し程になります」
「灼熱熊が一頭で他の獲物全部の半値とは、とんでもなく高価なのじゃな」
桜花様も灼熱熊の買い取り価格の高さに驚いた様だ。
「灼熱熊は通常は軍か依頼を受けた猟団が討伐しますから、狩人組合に売られる事が余りありません。当然その分値段も上がります」
「成程。して、その高価な灼熱熊を売却しない理由とは何じゃ?」
「素材として価値が有りますから、まずは身内で欲しい者が居ないか確認する為です。桜花様も魔石は欲しいんじゃないですか?」
「確かに、魔石は欲しいのじゃ」
「では、魔石は桜花様に優先させる事にしましょう」
「ありがたい話じゃが、四狼はそれで良いのか?」
「僕は白魔石の方が欲しいですね」
「分ったのじゃ。その辺りも含めて四狼に任せるのじゃ」
こうして桜花様との交渉が終わると、待っていた三刃が質問してくる。
「四狼兄上、三刃にも報酬は分けて貰えるのですか?」
「勿論、報酬は五人で均等に山分けにするけど、金額が大きいので一旦母上に預けて、三刃に幾ら渡すかは母上との相談になる」
「むー、それだとあまり貰えないのです」
「金額が金額だし、もう少し算術を勉強しないと大金は渡せないからね。ある程度は貰える様に僕からも頼んでおくから、それで我慢しなさい」
「算術……」
三刃は頭を抱えて少し恨めしそうに僕を見るが、数字に弱い内に高額なお金を持たせる訳にはいかないし、十歳で持って良い金額でも無い。
「四狼兄上、先程から高額と何度も仰っていますが、具体的に如何程になると考えているのですか?」
五狼も報酬金額が気になっていた様だ。
「正確には分らないけど、三百もの獲物を売るんだ、中には高価な獲物も居たから間違いなく百五十両は超える。更に灼熱熊も含めれば税を引かれたとしても、一人当たり三十両にはなるだろうし、個別配布分も売れば四十両は固い」
「「「四十両!?」」」
「あー、やっぱりそのくらいになってしまうで御座るか」
伊吹さんだけは経験者なので報酬額が分かっていた様だが、他の皆は初めての狩りだったのもあって、報酬額が分らなくても当然だ。
「狼や鼠は買取も安めですけど税が掛からなかったり安かったしますし、数が多いのでそれなりの金額になります。更に草原蜥蜴や大鹿は一頭で六両にはなりますからね」
「安くても狼は大量で御座るからな」
「今回はどうにかなったけど、僕が居ない時に狼と遭遇したら土壁で囲って守りに入るか、全力で逃げるんだよ。熊之介でさえ一人ではあの様なのだから」
今回は狩れたからといって、狼の群れは数の暴力に対する事になるので、熊之介を引き合いに年少組にはしっかり注意しておく。
「そうじゃな、童の剣術指南の座を四狼と争った熊之介でさえ油断をすればこの様じゃ、童も気を付ける事にするのじゃ」
桜花様の締めの言葉に五狼と三刃も頷きで答えた。
読んで下さった方々、有難う御座います。
少し桜花様と伊吹さんの能力を修正しました。
次は年内にもう一回更新出来るよう頑張ります。
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