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救援要請

お待たせ致しました。

ブックマークや評価をしてくださった方々、ありがとうございます。

今回も楽しんで頂ければ幸いです。

 場面は和富王国に戻る。

 自称分体二号が一号に、監獄惑星に仮の宿舎を作る事を頼んだのを記憶統合で知った僕は、二号の行動力に少し戸惑っていた。

 丁度良い具合に政治的知識を持った者を助けたとはいえ、二号頑張りすぎじゃない?

 いや、監獄とか頼んだ僕が言える立場じゃないかもしれないけど、展開が早過ぎる気がする。

 しかし、既に移民計画が始まってしまっていては、今更止める事もできない。尤も、止める気も無いのだが。

 そう考えている内に記憶が自分のものと定着したのか、あの状況ならそうするかと納得する。


 そうして今後の事を考えながら荷車のある拠点に戻るが、来た時と同じ道程を戻っても獲物との遭遇率は低くなるので、帰りは先に西に向かって走りつつ、時々遭遇する魔物や狼を撃退する桜花様達の補助を(こな)す。

 暫くすると、視界のずっと向こう、左側に特徴的な植物が多く生えているのを見付けた。

 地図で確認すると、やはり薬草類の群生地の様だ。


「伊吹さーん、進路を少し左に修正して下さーい!」

「了解で御座るー!」


 やがて薬草の群生地に着いた僕達は、皆に説明して採取を行う。


「五郎は薬草の種類とか、大丈夫だよな? 三刃に教えながら採取してくれ」


 そう言いながら五狼に採取用の袋や壺を渡しておく。


「分りました、四狼兄上。三刃、行くよ」

「はい、五狼兄上」


 三刃は五狼に任せておけば良いだろう。


「伊吹さんには今更説明はいりませんね。桜花様はどうしますか?」


 二人にも袋と壺を渡しながら訪ねる。


「私は大丈夫で御座る」

「童は知識はあっても実際に採取するのは初めてじゃからの、少し自信が無いのじゃ」

「分りました。それでは桜花様には僕が教えます」


 そうして三つに分かれて薬草の採取を行う。


「この花は上から見るとひょっとこの様な、変な顔にも見えるので奇顔花(きがんばな)と呼ばれているのですが、この口の様になっている部分に溜まっている蜜が、魔道薬調合の素材になるそうです」

「確かに変な顔みたいじゃな」


 桜花様は僕の説明を聞きながら、上から覗き込んで確認した後、茎を折らない様に気を付けて蜜を壺に回収する。


「この天辺の二枚の白い葉が兎の耳の様に見える草は兎草(うさぎそう)、この白い葉が傷薬の材料になるそうです」

「ふむふむ」


 そうして他にも、鎮痛剤や胃腸薬の素材になる植物等も説明しながら一緒に採取していると、いくつもの袋が薬草でいっぱいなる。


「伊吹さーん、取り過ぎてもいけないので、この辺りで止めてそろそろ戻りましょう」

「そうで御座るな、採り尽くすと次から採れなくなるで御座るからな」

「五狼も、撤収の準備をしてくれー」

「分りました-」


 十分に採取できたので撤収作業に取り掛かっていると、南西の方角から赤い信号弾が飛び上がった。


「四狼! あれは救援要請じゃな?! 行くぞ!」

「分りました! 皆! 採取した物は各自異界に! 至急救援に向かいますっ!」

「「はい!」」「了解で御座る!」


 採取した物を各自で異界に収納し、今までよりも早く走って現場に向かう。

 やがて、信号弾を打ち上げただろう場所に辿り着くと、そこには二頭の赤熊(あかぐま)と、それぞれと戦っている二人の男達、更に奥には倒れている男と、それを庇っている女の四人が居た。

 赤熊は小型の魔物の中ではほぼ最強の強力な魔物だ。桜花様達には厳しいかもしれないと思い、鑑定してみると赤熊の位階は十五、最大まで上がっていた。


「伊吹さん! 成掛けです! 桜花様! 格上ですが、戦いますか?」

「無論じゃ!」


 僕達が参戦しなければ彼らは高い確率で死ぬだろう。そんな状況で桜花様が引く訳が無い。

 僕は半ば諦めて、それぞれの赤熊の目の前に土壁を作り出し、振り下ろした腕を土壁で受け止めながら指示を出す。


「伊吹さんは左の赤熊を牽制して下さい。他の皆は右の牽制を! 僕は怪我人を見ます! 応急処置が終わったら僕も参加しますから、それまで無理はしないで下さい」

「ふっ、倒してしまっても構わんのじゃろ!」

「姫様と熊狩り!」


 桜花様と三刃が調子に乗っている様なので注意しておく。


「僕が合流するまで、無・茶・は・しないで下さいねっ! 桜花様っ!」

「何故童だけっ?!」


 桜花様が無茶すれば、三刃もついて行くのが分かっているからだが、今は怪我人をさっさと治療して、合流を急いだ方が良さそうだと考えて足を速める。


「助太刀致す!」

「すまん、助かる」


 伊吹さんが勇ましく声を掛けながら左の赤熊に斬り掛かり、右の赤熊を他の三人で取り囲むと、右の赤熊に対峙していた男も左の赤熊に向かう。

 これで赤熊一頭に三人ずつが対応できる。

 その隙に僕は土壁を回り込み、倒れてる人に駆け寄って声を掛けた。


「薬か治癒術は使えますか?」

「ここまで酷い怪我だと手持ちの薬では対応できないし、治癒術も初級しか使えないの! 代金は必ず払うから、魔道薬を持っていたら譲って頂戴!」


 怪我人は、思っていたより重症の様だ。


「代金は熊の素材を譲って頂ければ、それで結構です」

「それだけで良いの? 勿論その程度で良いなら全然構わないわ」


 了解を得た僕は鑑定で怪我の状態を確認すると、男は肋骨に複数のひびが入っていて、左腕は手首の手前から二の腕まで、肘を含めて複雑骨折していて更に裂傷まである。


 僕は無限倉庫から取り出した青い内服の魔道薬を女性に渡して飲ませる様に言い、左腕の傷口に赤い外傷用魔道薬を吹き掛ける。

 更に回復を速める為に、小さな不可視の手を大量に使って骨の位置を修正し、見つからない様にこっそり身体の内部に向けて治癒術を掛ける。


「うぐっ!」


 骨の位置を整える痛みに男が声を上げるが、女性がそれを窘める。


「大の男が治療の痛みぐらい我慢しなさい! ほら、高い薬なんだから、零さないでよ」


 そう言って、女性は男の身体を少し起こして薬を飲ませる。

 その間にも桜花様達は赤熊に刃を振るうが、前足で払われ、爪で弾かれる。


「三刃、修行を思い出せ! 五狼はもっと注意を引き付けるんだ!」


 僕の指示に五狼の動きが大胆になり、上手く赤熊の注意を引き始める。

 その隙を桜花様が攻めるが、赤熊の防御を抜くにはまだ少し足りない。

 しかし、二人の動きを追っている赤熊の意識から外れた三刃が、赤熊の背中に飛び乗り小太刀を突き立てる事に成功すると、風向きは大きくこちらに傾く。


 赤熊が後ろの三刃を排除しようと後ろ足で立ち上がり、身体を揺さぶって三刃を払い除けようと前足を振り上げる。

 三刃は小太刀を手放し素早く飛び退くが、赤熊は三刃に気を取られた事で今度は前方の注意が疎かになる。

 その隙を突いた桜花様の斬撃が赤熊の首元を切り裂き、更にその傷口に五狼の槍が深く突き刺さる。

 赤熊は槍を刺した五狼を払い除けようと、上げた前足を叩き付けようとするが、今度は標的から外れた三刃が土壁を利用した三角飛びからの蹴りで赤熊の後頭部を蹴り付けると、前に出ようとした赤熊の動きに蹴りの威力が加わり、槍に力が集中した結果、槍が赤熊の喉を貫通した。


 僕は鑑定能力が上がった事で知ったのだが、三刃の稀に出る超攻撃は特殊能力の武神の一撃といって、極稀に攻撃力が八倍になるという能力だったのだが、今回の蹴りでその能力が発動した様だ。

 僅かな時間、動きを止めた赤熊はそのまま前のめりに倒れ込む。

 押し潰されない様に五狼が槍を手放して躱すのを確認すると、少し安心して僕は男の治療を続ける。

 しかし事態は僕の思惑を超えて更に加速した。


「よし! 次じゃ!」


 桜花様の威勢の良い声が聞こえてきたのだ。


「桜花様! 二人と連携を取って下さい!」

「大丈夫なのじゃー」


 全然大丈夫じゃないから言っているのだが、五狼達は突き刺した武器が中々抜けずに桜花様を追えないでいる。


 もう一度男に傷薬を吹き掛けると、状態は切り傷・軽傷になったので後は彼の仲間に任せる。


「後は初級の治癒術でも大丈夫でしょう」

「ありがとう。助かったわ」

「ああ、随分楽になった。感謝する」


 こちらの処理が終わったので桜花様の様子を確認するが、やはり別組の男達との連携が上手くいっていない。

 五狼達も武器が抜けずに焦っているのか、こんな時の対策を忘れている。


「五狼! 使っていた武器が使えなくなった時の対応を忘れているぞ!」


 僕の指摘に対処法を思い出した五狼は槍を抜くのを止め、異界収納から別の槍を取り出して生き残っている赤熊に向かって行く。

 それを見た三刃も、同じ様に新しい武器を出して五狼について行った。

 これだけの戦力が居れば向こうは大丈夫だろうと、僕は倒した赤熊を無限倉庫に回収し、刺さっている五狼達の武器を分離しておく。

 通常の異界収納では、刺さった武器も獲物と同じ一つの物体として扱われるから、こういった事が出来ないんだよね。

 無限倉庫になって便利になったなぁと、しみじみ思っていると激突音と共に悲鳴が上がる。


「きゃーーーっ!!」

「姫様っ!!」

「ひっ、姫様ーーっ!」


 声の方向を見ると、結構な速度で桜花様が吹き飛んで行く。

 僕は慌てて追いかけて前に回り込み、勢いを殺しながら桜花様を受け止める。


「桜花様、大丈夫、ではなさそうですね」


 桜花様の左肩の防具が取れ、二の腕が爪で切り裂かれていた。

 幸い出発時に体内に結界を張っていた為、骨折や出血多量の恐れはないが、それなりに重傷だ。


「うぐぅっ! い、痛い…」

「だから、無茶はしないで下さいと、お願いしたのですが?」

「わ、悪かった、のじゃ。中々、攻撃が当たらずに、焦っておった、様じゃ…」

「分っているなら良いです。直ぐに治療しますが、その前に、伊吹さーん、こちらは大丈夫です!」


 伊吹さんは僕の声に肯きだけで答え、視線は赤熊から外さない。今も赤熊との戦闘は続いているからだ。

 伊吹さん達が赤熊を抑えている間に僕は桜花様に魔道薬を飲ませ、外からも直接魔道薬を吹き掛けながら、治癒術も使って急いで桜花様の怪我を治療する。

 治療が粗方終わって赤熊を確認すると、赤熊は前足を振り回して男を攻撃していたが、次の瞬間、突如として一回り大きくなった前足の攻撃に回避が間に合わず、男は盾で受け止める。

 しかし、今までよりも大きく、重くなった前足の強い一撃に耐え切れず、男は吹き飛ばされてしまう。


「ウガッ! ウガァッ! ウッガァーーーッ!!」


 赤熊は男を吹き飛ばして高ぶっているのか、その場で威嚇し、吠える度に僅かに周囲の温度が上がっていく。

 やがて赤熊の周りを熱気が渦巻き始めると、ボコッっという音が聞こえそうな勢いで赤熊の肩が、背中が、後足が、前足の様に膨れ上がり始める。


「不味いで御座る。四狼殿ーっ! 成り上がりが始まったで御座る!」


 成り上がり、それは一部の魔物は位階が十六、つまりh0fからh10に桁が上がる事で進化する事を言う。

 成り上がった魔物はそれまでとは文字通り、桁違いに強くなってしまうのだ。

 そして、赤熊の場合は灼熱熊に進化し、火の下位である熱の属性をも持つ事になる。

 更に元から九尺(270センチ)近かった体長が十七尺(510センチ)程にまで大きくなる為、通常は最低小隊以上、安全性を高める為には小隊二つで討伐する程の魔物だ。

 当然今の戦力では倒すのは難しい。但し、通常ならば、だ。ここに居るのは武力の高さで名高い八神の教えを受けた者達なのだ。


『月読、桜花様達でも倒せると思うか?』

『主様が補助するのであれば、十分可能なのですよ』


 よし、桜花様達でも対応可能なら、進化後の熊も皆の修行相手になって貰おう。

 その為に、僕は思考加速を使って素早く月読達との作戦会議をした。


『この作戦の成功率は八十六%程です。仮に失敗しても結界がありますから、誰かが死ぬ事もありません。失敗した時点でご主人様が倒してしまえば良いだけです』


 天照の誰も死なないと言う言葉に、僕は安心して作戦を実行できそうだ。


「桜花様はもう少しだけ休んでいて下さい」

「そんな、童も戦えるぞ」

「分っています。止めは桜花様に任せますので、時期を待って下さい」

「む、絶対じゃぞ」


 桜花様には待機を頼み、熊が進化の最中で動きを止めている内に、他の皆にも作戦を伝える為に前に出る。


「流石に、これは死んだな」

「せめて、結婚したかった」

「お前だけでも逃げろ!」

「何言ってるのよ! 一番攻撃力のある私の術無しで何ができるって言うのっ!」


 近付いてみると、何やら寸劇が始まっていた。


「貴方達は先に帰っていて下さい。連携が上手くとれない者が居ても、足の引っ張り合いにしかなりません」

「そりゃあ、八神門と比べられると、俺達は何段も落ちるだろうけどよ、姫様を置いて逃げてしまったら後で同業者に馬鹿にされちまう。そうなりゃ廃業するしかない」


 彼らの言い分も分るが、足手纏いが居ては作戦に支障が出てしまう。


「一緒に居る女性は近衛の者です。そしておそらく僕も来年近衛に入ります。そんな二人が付いていて、姫様に万が一があると思いますか? 当然、勝算が有るから言っているのです」


 男達が僕をじっと見て、溜息を衝きながらも納得してくれた。


「はーっ、分った。足を引っ張って姫様に何かあったら、それこそ大問題だ。足手纏いは去る事にする。だから、絶対に無事に戻って来いよ」

「勿論です」

「撤収だ。熊が動き出す前に離れるぞ」


 班長らしき男がそう言い、その指示に「本当に良いのかよ」と返しながらも他の者も従って撤収して行く。

 後顧の憂いが無くなった僕は、皆に作戦を伝える。


「五狼と三刃は攪乱だ。攻撃は聞かなくても良い、牽制程度で、ひたすら躱しまくって気を引くんだ」

「分りました、四狼兄上」

「分った、四狼兄上」


 五狼達は頷いて了承する。


「伊吹さんは隙を見て、この小太刀を熊の首から上に突き刺して下さい」


 そう言って無限倉庫から取り出した聖銀合金の小太刀を渡す。


「これは良い小太刀で御座るな。首から上で良いで御座るな? 心得たで御座る」

「最後に桜花様ですが、僕と伊吹さんが熊の動きを止めます、その隙にこの刀で斬って下さい。使い方は…」


 桜花様にも無限倉庫から取り出して刀を渡し、使い方を説明する。

 この刀は複製世界で暇を持て余していた分体が作った、前世の創作物から考えたネタ武器だが、今回は都合が良いので使う事にしたのだ。


「おおーっ、何かで見た気がするぞ! 浪漫武器という奴じゃなっ」


 桜花様は新しい玩具に大喜びだが、本当なら命の掛かった戦いなので、しっかり注意しておく。


「桜花様がこの作戦の肝なので、気を引き締めて、真面目にお願いします。でないと本当に誰か、或いは全員が死にます」

「分っておる。童に任せるのじゃ」


 桜花様がやる気になった処で、灼熱熊の進化が完了した様だ。


「ウガアァーーッ!!」


 灼熱熊を中心に渦巻いていた熱風が辺りを駆け抜け、僕は一瞬周囲を覆った不快な温風に顔を顰めるが、五狼達は少し息苦しそうに灼熱熊に対峙している。

 僕はあまり気にならないのだが、皆は若干苦しそうなので天照に確認する。


『周囲の温度が多少上昇していますが、この程度なら問題ありません』

『この程度の負荷ならば、逆に修行には最適なのですよ』


 問題が無いらしいので、作戦を続行する。

 進化を終えた灼熱熊が周囲を見渡し、一番近い五狼に前足を叩き付けるが、五狼は後ろに下がって躱す。

 そこに伊吹さんが攻撃を繰り出し、続いて三刃も動き始める。

 しかし、伊吹さんは上手く立ち回っているが、灼熱熊はその巨体から来る力強い一撃で、地面を叩けば周囲を陥没させ、地面を引っ掻いては土砂を吹き飛ばしてくるので攻撃範囲が広く、五狼と三刃は灼熱熊の大きさに対応しきれていないのか、時々危なっかしい。


「五狼、三刃、効かなくても良い! 回避優先で呪力斬も使え!」


 呪力斬は坂本殿も使っていた、呪力の刃を飛ばす技だ。五狼達も一応使えるのだが、発動に時間が掛かり、威力もまだ弱い為、実戦での使用を禁止していたが、今回は注意を引ければ良いので使用を許可する。


 五狼は僕の指示に従って、時々呪力斬を放つがやはり灼熱熊には効果は無さそうだ。

 三刃は初めに作った土壁を駆け上がると、三刃を狙った灼熱熊の爪が土壁を貫いてしまう。

 崩れる土壁の上から飛び上がった三刃も、空中から呪力斬を放つが損傷は与えられていない。

 しかし、顔に当たったのが鬱陶しかったのか、灼熱熊は空中の三刃を狙う為に後ろ足で立ち上がった。

 これを待っていた僕は、作戦通りに土の術を使って土を操作し、灼熱熊の足元に空洞を作る。

 当然地面は灼熱熊の重さに耐えきれずに崩れ、灼熱熊は胸の下まで穴に落ちてしまう。

 すかさず更に土を操作して隙間を埋めて、灼熱熊が抜け出せない様に地面に固定する。


 大鹿の時の様に草縛りを使わなかったのは、木の術では火を強化する為、熱の属性を持つ灼熱熊には効き難いが、逆に火は土を強化するので、他の属性より効果を強く出来るからだ。

 灼熱熊は地面から抜け出そうと、前足を振り回したり地面を叩いたりしているが、自らの属性で強化された土の束縛からは抜け出せない。

 五狼達は移動できなくなった灼熱熊に、前足の届かない距離から呪力斬を放って注意を引き続ける。

 損傷が無いとはいえ、顔にぺちぺちと当たる攻撃に灼熱熊は苛立ちながら右前足を振って二人を牽制し、左前脚で顔を守っているので、注意を引くという目的は十分に達成できていた。

 そこに灼熱熊の意識から逸れた伊吹さんが、好機とばかりに低くなった灼熱熊の頭上に飛び上がり、刃に呪力を纏わせ攻撃力を上げる技、呪力刃を使い、更に落下の勢いも利用して灼熱熊の首の後ろに小太刀を突き立てる。


「ウガァッ! ウガーーーッ」


 伊吹さんは、痛みに暴れる灼熱熊から距離を取る為、刺した小太刀の柄尻を蹴って更に深く差し、刃を背骨に食い込ませながら後方に跳躍する。


「ウガガァーーッ!」


 灼熱熊は更に強くなった痛みに激しく前足を動かすが、胴を固定されている為に体を捻る事ができず、刺さっている小太刀に前足が届かない。


「桜花様、準備をお願いします」

「了解なのじゃ」


 僕の合図に待ってましたと、桜花様は先程渡した刀の柄尻にある突起を小指で押し込む様に握りながら柄を引くと【カシャーン】と柄が伸び、柄から半ば強制的に呪力が刀身に流れ出す。

 この刀は、刀に呪力を上手く流せない人に感覚を覚えて貰う為の練習用に作った武器で、この状態で刀を振るうと、呪力斬と同じ事が出来る。


 桜花様は伸ばした柄を、同じ様に突起を握りながら元に戻す。

 この状態では呪力刃として使えるのだが、桜花様はもう一度柄を伸ばし、動作を繰り返す事で刃に纏う呪力を上乗せさせる。

 桜花様が準備を始めたのを確認した僕は術を使い、伊吹さんが刺した小太刀の柄尻を狙って威力を調節した雷を落とす。

 当然、背骨に直接電流を流された灼熱熊は神経を麻痺させられて、動きを止めてしまう。


「今です! 桜花様っ!」

「任せるのじゃーっ!」


 返事をしながら桜花様が走り出し、灼熱熊の手前で最大の四回分の呪力を充填させた刀を振るい、呪力斬を見事に灼熱熊の首に命中させた。

 少し遅れて灼熱熊の首がずり落ち、そのまま地面にドシンと落ちる。

 作戦が無事に成功し、桜花様達は灼熱熊を倒す事に成功したのだった。

 


読んで下さった方々、有難う御座います。

次回も今回と同じ位の日数で更新できる様、頑張ります。

気に入って頂けましたら、ブックマークや評価等もして頂けると、とても励みになります。

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