共和国の戦力
大変長らくお待たせいたしました。
今回、上手く文章に出来ず、何度も書き直した為、時間が掛かってしまいました。
前話の方も内容の変化はあまりありませんが、補足を追加しました。
興味のある方は再読して下さると嬉しいです。
まだまだ稚拙な部分も多々有るかと思いますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
その後もライルさんに和富王国の名前は出さずに、生まれ故郷にはそれなりに覚醒者が居るらしいと話すと、そんなに多くの覚醒者が居るのかと驚いていた。
更に少し懐かしい前世の話を交えた食事を終えた事で、ライルさんの僕への警戒も多少は解けたと思う。
そこで気になっていたアルベール王国とは桁違いという、共和国の戦力についての詳細を聞いてみた。
「ライルさん、共和国の戦力ってそんなに強かったのですか?」
「ええ、シロウ殿も地球の知識をお持ちなら想像出来るかと思いますが、共和国は自動車に大砲や機銃を載せた兵器を持っているので、剣や槍が主体の我が国では攻撃が届く距離まで近付く事すら出来ませんでした。結果は予想出来るでしょうが、我が国の兵は一方的に蹂躙されるだけで、我が国は共和国には一矢報いる事すら出来ませんでした」
なるほど、隣に閉じ込めている商人も自動車を持っていたけど、こちらの世界にも機械文明の発達した国が在った様だ。
ライルさんは悔しそうに語るが、中世と近代の戦争だと思えば、戦闘力に差があり過ぎて勝負にもならないのは当然だろう。
『天照達はどう考える?』
『はい、共和国の武器は第一次世界大戦時の地球より少し下くらいです。今回はアルベール王国と隣接する地方領主の私兵だった為、戦闘用の航空機を所持していなかったのですが、それでも自走砲や機銃等の飛び道具を多数使用しておりましたのでライルさんの言う通り、剣や槍主体のアルベール王国軍では勝負にもなりませんでした』
『領主兵が遠くから砲撃するだけで、アルベール王国軍は文字通りに吹き飛ばされたのですよ』
確かに、近接武器しか持たない相手に飛び道具は有利過ぎだろう。僕は前世のテレビか何かで見た、戦争映画を思い出して考えたが少し変だ。この世界には術や魔道具等の地球には無い、不思議な技や道具もあるのだから、土壁の術程度でも機銃くらいは防げる筈なのだ。
「アルベール王国には大砲に対抗出来る武器や、防げる術者は居なかったのですか?」
「残念ながら我が国は資源も技術も無い弱小国でしたからね。そんな強力な武器等は有りませんでしたし、シロウ殿の様な強力な術者は、我が国処か共和国にも居ないと思いますよ。この辺りの術師が出来るのは樽を水で満たしたり、薪に火を点ける程度の事が精いっぱいです」
なるほど、術も技術だからある程度使える人が居ないと発展もしないし、共和国に至っては機械文明に傾倒していたせいで、術の発展が無いのも致し方ないのかもしれない。
近代兵器も術も無いんじゃ確かにお手上げだけど、もっと位階が高ければ何とかなった気もする。
『位階を上げて対抗って出来なかったのかな?』
『はい、ご主人様の仰る通り位階が高ければ当然撃退も可能でしたが、この辺りには強力な魔物も少ないため、アルベール王国はもとより共和国に住む者も位階は低く、身体能力や術力も和富王国ほど高くはありませんから大砲の砲撃を躱す事も出来ません。結果、攻撃可能な距離も威力も高い共和国の機械兵器にアルベール王国は負けたのです』
『剣や槍が主武装でも、アルベール王国軍の兵士達が主様の兄上達やお父上の様に位階が高ければ、今回投入された共和国軍程度には負けていなかったのですよ』
いや、和富王国にも兄上達程に強い者はそんなには居ないし、父上は和富王国で最強って言われてるくらいだからね。その父上が複数なんて無理にも程がある。それに。
『父上ならともかく、兄上達が大砲に勝てるとも思えないんだけど』
『いえ、お父上は勿論、一狼兄上と二狼兄上でしたら加速門で加速させた投擲槍で機銃の射程外から自走砲や機銃を狙い撃つ事が出来ますし、遅い大砲の弾程度なら躱せますから問題ありません』
確かに、加速の術を使った兄上達の投擲槍は音速を超えるし、射程も二キロ以上あるから可能だろう。
機銃の弾も兄上達なら盾が有れば防げそうだし、父上ならそれすら躱せる筈だ。
『一応聞くけど兄上達で勝てるなら、僕でも勝てるんだよね?』
『当然です。ご主人様でしたら撃退だけでなく、共和国の首都や都市などの特定の目標を狙うのも共和国全土でも、ご主人様の望まれるだけの損害を共和国に与える事が出来ます』
『共和国全土を更地にするのも、窪地にするのも、山岳地にするのさえ、主様の思うがままなのですよ』
更地や窪地は吹き飛ばすって意味だろうけど、山岳地って、地面を隆起させるって事だよね?
想像してみたけど串刺しや転落などの死体が残る分、見た目も残酷な事になりそうだから、その方法は却下だ。
やっぱり月詠の発想は何気に怖いと思う。流されない様にしないといけないと、僕は気を引き締めた。
おかげで元から無かった共和国に対する気持ちが、完全に萎えてしまった。
『いや、そもそもライルさんが必要無いって言ってるんだから、僕が報復とか筋違いだからしないよ』
月詠には報復しないとしっかりと言い聞かせた。
そんな訳で共和国の戦力が僕にとっては脅威にならない程度と判明したので、今直ぐに急いでどうこうする必要はないだろう。共和国を調べるのは移民が落ち着いた後で良い。おそらく生き残っているアルベール王国の国民の多くは引っ越す事になるだろうから、これ以上アルベール王国に被害が出ないというのもある。何かするとしても移民が完了した後で問題ない。
共和国の戦力分析はもう十分だろうと考えて、ライルさんと今後の打ち合わせを続けようと思っていると、食事が終わった騎士の一人、先程僕に警戒していた騎士がライルさんがこちらに近付いて来た。
「王子、皆の食事が終了致しました。我々は如何致しましょうか?」
「グラハイムか丁度良かった、隊長の二人をこちらに集めてくれ、今後の指針について二人の意見も聞きたい。残りの者は交代で休息を取ってくれ」
「はっ!」
王子の命令を聞いたグラハイムという名の騎士は直ぐ様仲間の元に戻り、更に二人の騎士を連れて戻って来た。
「お待たせ致しました、王子」
「それでは今後の方針についてシロウ殿と話し合うので、君達も疑問や意見が有ったら遠慮なく言ってくれ」
「「「はっ」」」
人数が増えたので人数分の椅子を無限倉庫から追加で出して僕は卓の端の席に移動し、ライルさん達旧アルベール王国の人達は僕の左右に二人ずつ、向かい合う様に座った。
「まずは軽く皆の紹介をしましょう」
ライルさんはそう言って報告に来た騎士を示して紹介を始める。
「彼は我が国の中隊長の一人だったグラハイムという。後の二人はその下に所属する小隊長達だ」
「はっ、先程は失礼致しました。自分は第4騎士団所属、第1中隊長のグラハイム・マンセルと申します」
短い赤みを帯びた茶髪の青年が一度座った席を立ち、僕に向かって敬礼をしながら自己紹介をする。
それを見た他の二人も立ち上がり、敬礼してそれぞれ自分の名を名乗った。
「自分はフィルマン・ティロルと申します。皆の治療、感謝致します」
「自分はマクシミリアン・ヴェルレーヌです。食事の方もありがとうございました」
「はい、僕はシロウと申します。よろしくお願いします」
フィルマンは明るい金髪の青年で、マクシミリアンは灰色の髪でグラハイム程では無いが、やはり二人も髪は短めだった。この辺りの風習なのかもしれない。
全員の自己紹介が終わると改めて座り直し、全員に飲み物を配ってから話し合いを開始する。
「改めて説明しますが、僕が新しい国を作るので、その国に皆さんも移民しませんか? という事です。僕からは食糧・家・防衛力を提供出来ますし、場合によっては仕事も用意します。他にも必要な物が有れば相談に乗りますよ」
僕の説明に騎士達はお互いに顔を見合わせてから、ライルさんを見て、その視線を受けたライルさんが答える。
「話だけ聞いていると至れり尽くせりなのだが、それだけの事をして頂いても我らには返す物が無い。しかし食料も尽きたままではどの道後が無いのだから、出来ればお受けしたいと思う。皆はどう考える?」
「流石に我らに都合が良すぎて逆に胡散臭い気もしますが、信じても宜しいのですか?」
「先程も言った様にシロウ殿は我らを騙す必要も無い程の圧倒的な強者だ。我らを害する心算なら治療などせずに、実力行使するだけで良いし、寧ろ治療の対価として強制しても良い位なのだ。更に我らに抵抗する力が無いのは、現にこうして緩やかに拘束されている事で証明されている」
ライルさんは皆と相談する振りをしながら、僕に皆の不安を代弁してくれている様だ。
「えっと、壁を作ったのは分散されると個別に接触して治療するのが面倒だったのと、外から邪魔が入らない様にしたかったのです」
共和国兵に見られると面倒でしょ、と説明するとグラハイムさんも納得したのか、警戒が少し弱まった気がする。
そこへマクシミリアンさんがあっさり賛成を表明した。
「はい、自分は移民に賛成です。ここに残っても食べ物が有りませんし、先程の食事は美味かったのでたまにでも良いのでまた食べたいと思いました」
先程の食事は味より栄養とか、消化に良さそうな物を選んでいたので、そこまで美味しい物では無かった筈なのだが、なにはともあれ、図らずとも一人餌付けに成功した様だ。
「贅沢を言ってはいけない、先程の食事は確かに美味しかったですが、交渉前の食事という事で奮発して下さったのでしょう」
マクシミリアンさんの発言に同じ小隊長のフィルマンさんが否を唱え、ライルさんも軽く頷いていたが、皆が先程の食事を誤解している様なので訂正しておく。
「納得している所を申し訳ないのですが、先程の食事は私の生まれ故郷では普通の食事と言いますか、皆さんの体調を考慮して孤児院等で食される消化と栄養を考えた食事だったので、移民して頂ければもっと美味しい食事も用意出来ますよ」
僕の訂正に皆が固まってしまったが、アルベール王国の食事はそんなに不味かったのだろうか?
マクシミリアンに至っては「もっと美味しい食事!」と鼻息が荒くなっている始末だ。
「我らの体調に配慮頂いた事に感謝致します。しかし、先程の食事が普通となると、我が国の食事は何だったのだろうという気持ちになりますな」
皆より早く復帰したライルさんが答えるが、流石のライルさんも少し遠い目をしているので、深く突っ込むのは避けた。
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