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勧誘

大変長らくお待たせいたしました。

一度データが飛んでしまいまして…こまめな保存が大切ですね。

色々大変な状況ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

 時間は四狼達が狩場に着いた頃にまで遡る。

 東端担当の分体である僕の事は仮に分体二号とでも名乗っておこう。一号は複製世界の主人格だ。

 僕はこの地方に来てからの日課の様に、盗賊行為をしている者を見つけては雷を落として行動不能にして回っていた。

 今日も午前中に四組の盗賊を麻痺させて被害者を助けていたので少し遅くなってしまったが、そろそろお昼にしようかと考え、良さそうな場所を探す為に地図を確認してみると、そこそこ近い場所に大勢の人が集まっていた。

 また盗賊の類なのかと気になった僕は、近くに転移して様子を窺う。

 そこには馬に乗った暗い金髪をした顔色の悪い若者を先頭に、武装した騎馬軍団と、どう見てもトラックにしか見えない乗り物を複数従えた、恰幅の良い三十代位の男が護衛らしき二人の男を引き連れて対峙していた。

 騎馬軍団の着けている鎧は、最近この辺りでよく見かける盗賊の物と酷似している。おそらく彼らも敗戦国側の騎士だったのだろう。

 やはり盗賊なのかと観察を続けていると、集団の会話が聞こえてきた。


「やっと見つけたぞ、キンス。貴様の罪、その命で(あがな)って貰うぞ!」

「はて? 私にどのような罪が有ると言うのですか? 言掛かりは止めて頂きたいものです」


 少し汚れてはいるが、装飾の多い高価そうな鎧を着た顔色の悪い若者が、これまた高そうな服を着た中年男に今にも斬り掛かりそうな勢いで叫んでいる。

 しかし、言われている方は全く気にした素振りも見せずに涼しい顔だ。


「私は食糧が不足していると言う貴方の国に、品質が悪くても良いと言うので食糧をお売りしただけで御座いますよ。感謝される事は有っても、恨まれる筋合いなど、御座いませんでしょう?」

「何をぬけぬけと、毒を盛った食糧を品質が悪いで済ませられる訳が有るか! そのせいで幼い弟妹をはじめ、大勢の国民が死んだのだぞ!」


 若者は盗人猛々しいと言わんばかりに怒鳴り付けるが、中年男は太々しく言い返す。


「ならば食べなければ良かったのです。質の悪い食糧を食べて死ぬのも、食べずに餓死するのも、それぞれ自ら選んだ事なのですから」

「ふざけるな! 食べたら死ぬ物を食糧とは呼ばないし、それを隠しておいて選んだとも言わないっ!」


 若者は苦痛の滲む顔で声を荒げて言い返す。

 なるほど、これでは恨む気持ちがあるのも当然だ。

 ここは邪魔をしない方が良い気もするが、若者や一緒にいる者達もそろって顔色が悪いのは、彼らも毒に侵されているからなのだろう。

 さて、どうしようかと迷っていると、天照達が話しかけて来る。


『ご主人様、あの者達を鑑定する事をお勧めします』

『あの若者を勧誘するのですよ』

『勧誘?』


 二人の言っている意味は分からないが、鑑定しろというのでやってみた。

 まず、若者の方が。


 名前:ライルハイト アルベール

 生年月日:アルベール歴424年1月12日 h10歳(16歳)

 種族:人族

 身長:168センチ

 体重:54キロ

 状態:中毒(カドミウム、鉛、ベンゼン)

 性交:無し

 

 霊格:h80

 レベル:h08

 腕力:8

 握力:7

 脚力:7

 知力:10

 記憶力:8

 体力:7

 魔力:4


固有能力:前世知識

能力:異界収納1、無生物鑑定2、錬金術4、算術4、礼儀作法1

称号:亡国の王子、逃亡者、指導者

職業:第三王子


 なるほど、彼も覚醒者だったのか。

 そして反対側の中年男の方は。


 名前:キンス グランド

 生年月日:アルベール歴405年9月4日 h22歳(34歳)

 種族:人族

 身長:171センチ

 体重:81キロ

 状態:良好

 性交:23人

 

 霊格:h80

 レベル:h0A

 腕力:8

 握力:7

 脚力:8

 知力:9

 記憶力:9

 体力:7

 魔力:5


能力:算術4、話術4、礼儀作法2

称号:嘘吐き、金の亡者、強欲商人、裏切り者

職業:商人


 こちらの方は若者が言ってる事を裏付ける様な称号を持っていたが、それだけの様だ。


『それで、若者の方を勧誘ってどういう事?』

『彼は敗戦国の王族唯一の生き残りなのですよ。元王族なので主様が国を運営するのに有益な知識を持っている筈なのですよ』

『それに彼は元日本の前世知識保有者でもあります。前世を持たない者よりも、話が通じ易いと思われます』

『つまり彼を、僕が作る国の管理職に勧誘するって事?』

『そうなのですよ。まずは町の代官などをして貰い、ついでにこの国の民も移民として引き受ければ、主様は管理者と国民を手に入れるのと同時に、彼に恩も売れるのですよ。一石三鳥なのですよ』


 月詠の言い分は分かるけど、そんなに上手く話が進むだろうか?


『ご主人様がお助けしなければ、あの若者達は一月持たずに力尽きますので、そこでも恩を売れるかと思われます』

『体調だけでなく、食糧も不足しているのですよ』


 そうか、この(いさか)いはそもそも食糧不足から始まったと言っていた。

 そうすると、この国は今も食糧が不足している筈だが、こちらの国は荒れていたので、夜は戦勝国側の町の宿を使っていた。そのせいで僕はこちらの国の食糧事情に気付いていなかったのだ。

 このまま放置すれば大勢の人が餓死するだろうが、それは僕も望まない。

 彼が僕の話に乗ってくれるかはともかく、同じ国の前世知識を持った仲間としてこの若者は助けてあげたいと思う。

 それに商人の後ろにあるトラックの様な物にも興味が有る。

 その後いくつか天照達に方針や案を貰っている内に、若者の我慢が限界に達しそうな雰囲気になったので、直接介入する事にした。

 僕は早速術を使い、両者の間にある地面を隆起させると、若者の方は少しふらつきながらも馬を上手く操って後ろに下がらせたが、商人の方は姿勢を崩して後ろにひっくり返り、そのまま少し転がっていった。


「何事だっ!」

「うぎゃーっ」


 若者は辺りを見渡して警戒しているが、中年男は未だひっくり返ったままだったので、護りを固める為に護衛が駆け寄っていた。

 二人の距離が十分離れた処で隆起した地面を元に戻し、間に土壁を作って両者を分断させ、更に次々に壁を作って双方を逃げられない様に壁で囲ってやる。

 準備が出来たので僕は多重思考を四つ渡した分体を作って商人の方を監視する為に送り、僕は若者の方に転移する。


「突然申し訳ないのですが、お話を伺っても構わないでしょうか?」

「着物? 子供? いつの間に? いや、貴様は何者だ!? この壁は貴様の仕業か!?」


 当然だが、突然現れた壁に驚いていた処に、更に不意に声を掛けた僕に若者は警戒して剣を抜く。


「驚かせてすみません。僕は貴方と取引をしたいと思い、声を掛けました。貴方は前世を信じますか?」


 我ながらとても胡散臭い言葉だが、実際に前世を知っている者にはそれなりに意味もある筈だ。


「前世だと! 貴様、何者だ?」

「僕も前世を持っていますので、同じ前世を持っている貴方をお助けするついでに勧誘したいと思ったのです。まずはお話だけでも聞いて頂けませんか?」


 子供に勧誘なんて言われても信じられないだろうけど、前世知識があれば精神年齢は肉体年齢と直結しなくなるのを自分の経験で理解しているのだろう。僕の話に耳を傾けてくれている様だ。


「勧誘だと? 既に命運尽きた私を勧誘した処で、何も出来ぬぞ」

「ならばまずは、その体調不良を治しましょう」

「この毒を解毒出来るのか!?」


 若者は僅かに期待の籠った視線で問い掛ける。


「小僧、いい加減な事を言うな! 我が国のどんな高名な医者も知らぬ毒を、貴様の様な子供に何が出来る!」


 しかし側近の者は前世知識を知らない為に取り付く島もない。

 まあ、確かにまだ十四歳の子供に言われても普通は信じられないだろう。


「治療しないと皆さん一月と持たずに死にますよ。貴方はそれでも良いのですか?」

「うっくうっ」


 僕に反論した騎士は悔しそうな顔だが、更に反論する言葉が出てこない。

 当然だろう、このままでは直接中毒で死ぬ前に、動けなくなっては獣の餌になるのは明白だ。たとえ町に辿り着いても食糧不足では、いずれ力尽きてしまう。それが分かっているのだ。


「僕なら貴方達を治せます。ご心配なら貴方から試してみますか?」

「いや、よい。私から試して貰おう」


 前世知識の話に興味を惹かれたのか、若者は素直に応じてくれる様だ。


「王子!」

「周りを見てみろ。彼はこれだけの術を使える術者だ。害意が有るのなら、わざわざ罠を仕掛けずとも我らなど容易く蹴散らせるだろう。少し気になる事も言っていたし、この死にぞこないを勧誘したいらしいからな。もし治せるものなら勧誘とやらも話くらいは聞いてやろう」

「僕の話に応じてくれた事に感謝します。それでは、小手を外して素手で僕の手を握って下さい」


 王子と呼ばれた若者は剣を鞘に戻して馬から降り、素直に小手を外して右手を僕に差し出してくる。

 僕はその手を取って王子の体内の毒物を検索し、検索に掛かった物を纏めて無限倉庫に収納する。


「んっ」

「王子!」


 更に損傷した臓器や骨などを治す為に治癒の術を掛けて癒していくと、王子の顔色が見る間に良くなっていく。


「おお、痛みが消えた。しかもなんと身体が軽い事だ」

「おおおーー」


 驚きながらその場で軽く跳んだり手足を動かす王子と、それを見て部下達が喜びの声を上げる。

 一応もう一度鑑定してみると、状態が中毒から栄養失調に変わっていた。


「感謝する。まさか本当に治るとは思ってもいなかったのだが、もし可能なら私の部下達も治しては貰えないだろうか?」

「初めからその心算ですよ。皆さん、小手を取って隣の人と手を繋いで下さい。そして一番端の貴方は僕の手を握って下さい」


 皆は僕の指示を聞き、馬から降りて次々と手を繋いでいき、僕は先程僕の提案を拒否していた騎士の手を取る。

 全員の手が繋がった所で王子と同じ様に毒物を纏めて無限倉庫に収納し、体内の損傷を治癒していく。


「身体が軽い」

「痛みが消えた!」

「折れてた腕も治った?」

「二年前に潰れた右目が、見えるぞ?!」


 中毒症状が回復しただけでなく、他の怪我迄治った兵士達が声を上げて喜ぶ。

 少しやり過ぎた気もしたが、纏めての治療だと微調整が面倒だし、わざわざ治さない理由も無いだろう。


「私だけでなく、部下の治療までして頂いて感謝する。話があるという事だがその前にキンスの方はどうなっているのか聞かせて欲しい」


 王子は僕に頭を下げて感謝の意を表し、家族の仇の現状を聞いてくる。


「キンスというのは貴方が対立していた商人ですね? 彼もその壁の反対側にここと同じ様に壁で囲っていますので、逃げられませんから安心して下さい」

「そうか、奴も逃げられぬのなら問題はないが、それでも時間には限りがある。早速で悪いが貴方の話とやらを聞かせて貰おうか?」

「急ぐ気持ちも理解出来ますが、まずは丁度お昼時です。食事をしながら話をしましょう」


 食事はまだでしょう? と僕が問い掛けると、王子は暗い顔で答える。


「悪いが我らの食糧は既に尽きている」

「御心配には及びません、僕が全員分用意致しますよ」

「良いのか? すまない。重ね重ね感謝する」


 頭を下げる王子に頷くと、僕はテーブルと椅子をいくつも無限倉庫から等間隔に取り出して並べていく。

 人数分のテーブルと椅子を並べ終えると、テーブルの中央に鍋敷きを出し、その上に肉団子入りの豆と野菜のスープの入った鍋を出し、白パンの入った籠と果汁水のビンや皿スプーンおしぼりと並べていく。

 そして皆から少し離して天幕を出し、そちらにもテーブルや料理を並べ終えると、今度は天幕の反対側に大きなたらいに水を満たして並べて馬用の水飲み場も作り、おやつの林檎や人参も浮かべておいた。

 更にたらいの横に餌の乾草を出し、馬達に『仲良く食べてね』と念話を送っておく。動物でも念話の意味は理解は出来なくても、雰囲気は伝わると天照達に聞いたからだ。

 綺麗に分かれて餌や水を口にし出した馬を見た騎士達も驚いている。


「何もしていないのに、何で馬達が綺麗に整列して餌を食べてるんだ?」

「何かの術なんだろ、俺にも理由は分からんが楽で良い。あの術者に感謝だ」


 そんな会話を聞いていた他の騎士達も「それもそうか」と納得して席について行く。


「さあ皆さん、おしぼりで手を拭いてから、しっかり食べて栄養を補給して下さい」

「「「感謝します」」」


 皆が一斉に頭を下げ、礼を言って食事を始める。


「うめぇーー」

「柔らかいパンなんて、どれだけぶりだ?」

「スープが温かい」

「俺達はまだ生きてるんだな…」


 反応は様々だが、皆喜んでくれた様だ。


「それでは僕達はこちらで昼食を頂きながら、お話をしましょう」

「重ね重ね感謝する」


 僕と王子は天幕に入り、昼食を食べながら会談を始めた。

 改めて王子の様子を確認すると、少し暗い金髪を短く刈り上げていて、病み上がりのせいか少し痩せていたが、体調が回復した為先程迄とは違って顔色や姿勢も良くなり、鎧を着ているせいか新人軍人の様だと思った。

 そして何度かパンやスープを口に運んだ後に王子が質問してくる。


「それで、貴方は私に何をさせたいのですか?」

「その前にまずは少し自己紹介をします。僕はここからずっと西の国から来ました。僕の事はシロウと呼んで下さい」

「ああ、私は元アルベール王国第三王子、ライルハイト・アルベール、ライルとお呼び下さい」

「王子様なのに敬称も付けずに宜しいのですか?」

「王子といっても既に滅んだ国の事だ。今はただの逃亡者に過ぎない」


 国が滅んだ事で少し自虐的になっている気もするが、僕が気にする事でも無いだろうから確認と今後の予定について聞いていく。


「まず、前世知識についてですが、前世は日本で間違いありませんか?」


 王子は少し訝しげな顔をしながら答える。


「その前に、何故私が前世知識を持っていると知っているのかを、答えて頂けるのでしょうか?」

「それは単純に僕の鑑定能力が高いから分かる、としか答えられません」


 実際にそれ以外の理由が無いので正直に話した。


「なるほど、鑑定のレベルが高いと通常見えない能力も見える様になるのですね。今まで鑑定持ちにも気付かれなかった理由が分かりました。確かに私は前世で日本に住んでいた事が有りますが、日本を知っているという事は、シロウ殿も前世では日本に住んでいたのですか?」


 王子は一応の納得はしてくれた様で、僕の質問を肯定してくれた。


「はい、僕の前世は日本人でした」

「なるほど、しかし前世知識を持っているのが分かったとしても、何故私の前世が日本だと分かったのでしょう?」


 王子の疑問も当然なので、前に天照達に聞いていた話で誤魔化す。


「それはこの世界で前世知識を持っている人の中で一番多いのが日本からの転生者らしいので、ライルさんもそうじゃないかと思ったのです。それに、元日本の方が話が通じ易いだろうとの希望も籠めて、ですね」

「そうなのか、他の前世知識所有者と話すのは初めてだから、日本からの転生者が多いと言うのも初耳だ。国が在る内にもっと探してみるべきだったのかもしれないな」


 そう答える王子は何処か寂しそうだ。


「ライルさんは隣国が攻めて来た理由をご存じなのですか?」

「いや、元から我が国は3割がこの辺りの様に不毛な地で、食料も不足がちだ。鉱物も少ないからわざわざ侵略する意味も無い筈なのだ。なのに奴らは自動車で兵や物資を大量輸送し、大砲まで持ち出して弱っている我が国の首都を制圧してしまったのだ」


 ライルさんは隣国が攻めて来た理由を知らないそうだが、分らないと少し不安だし、今度調べておこう。

 自動車と大砲も気になるしね。


「理由は機会が有ったら調べるとして、今後の予定を聞いても良いですか?」


 ライルさんは少し困った顔で答えてくれた。


「正直私はもう助からないと思っていたから、最後にキンスと刺し違える覚悟だったのだ。なのでこの後の予定は無い。シロウ殿のおかげで拾った命だ、私に出来る事なら協力しよう」

「ありがとうございます。ライルさんも前世知識を持っているのなら、女神様の言葉も覚えているでしょう? 僕の望みは功績を積む事です。なので新しい国を作る協力をして欲しいのと、この国から移民を迎えたいのです」

「なるほど、理解はしたが納得は出来んな。勿論協力する事に納得した以上、力を惜しみはしないが国を作るなどという巨大な事業を、その歳で始めるのは些か性急ではないか? 今はもっと色々な経験を積んだ方が良いと思うのだが?」


 僕は基本的に国を作るだけで、口出しは最小に抑えて方向性だけ示した後の本格的な運営は専門家を勧誘して任せる心算なのだが、流石に虫が良すぎるかな?


「僕達には前世の知識も有りますから、見た目よりは経験も有りますし、転生特典の能力もありますから相応に融通も利きます。僕に足りない部分として、王族としての経験で政治にも理解のあるライルさんに協力をお願いしているのです」

「私の事を高く評価して頂けるのはありがたいが、国造りには当然だが相当な資金も必要だろうし、何より住む土地も必要だ。そして我が国には出来なかったが民を飢えさせないだけの食糧が取れる事や、隣国から国民を護れる武力も必要になる。それだけの物を用意するには相応の時間も掛かるだろう?」


 流石元王族だけあって色々と問題点を指摘してくれるが、土地は正式に決まるまでは仮に複製世界を使えば良いし、あそこには隣国も無いし魔物もいないから強力な武力もいらない。食糧も複製世界で回収した分があるから問題にならない。


「土地は仮の物なら直ぐに用意出来ますし、食糧も武力もたぶん問題ありません。足りないのは国民とそれを管理する者なので、ライルさんには一先ず移民の管理、つまり町の代官をして貰いたいのです」


 僕の提案の意味を知ったライルさんは驚いて質問する。


「それではある意味我が国の再興に近いではないか!? それだけの事をして、シロウ殿に利益が有るとは思えんのだが?」

「いえ、人助けも功績になりますし、その町も僕の国の一部になりますから、僕にも利益は有ります」


 ライルさんはあくまで代官ですよ、と伝えるがライルさんは更に続ける。


「町が軌道に乗った後に、私がシロウ殿を裏切るとは考えないのですか?」

「そこは誰が町を管理しても同じなので、信じるしかないと思います。それに仮に裏切る準備が出来たとしても、その頃には他の町も十分大きくなっているでしょうから、いくらでも対応は出来ると思います」

「なるほど、元から戦力は比べ物にならないのだから、土台無理な話でしたな。申し訳ない、今の話は忘れて下さい」


 ライルさんは僕の説明とは少し違った方向だが納得してくれた様だ。


「後は他の国からも移民を受け入れていく予定ですから、その国は多民族国家になると思うのですが、ライルさんは獣人族や山人族などの亜人族に偏見などは有りませんか?」

「いや、獣人族や空人族以外はあまり見た事は無いが、特別な隔意は無い。寧ろ共和国やキンスの様に簡単に裏切る人族主体の国の方が今は余程に恐ろしい」


 なるほど、あまり知らない亜人よりも、自国を滅ぼした同族の方が今は恐ろしいというのも納得出来る。

 隣にいるキンスの様にやはり復讐とかもしたいのだろうか。


「ライルさんは攻めて来た隣国に復讐したいですか?」

「確かにそういう気持ちはあるが、実際に戦力が桁違いだから不可能だ。それよりも今は生き残っている者を助けたい」


 ライルさんの過去に囚われ過ぎずに未来を大事にしたいという気持ちを、僕も協力したいと思った。

 

 

読んで下さった方々、有難う御座います。

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