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初めての狩り

誤字報告ありがとうございました。

前話で異界と位階で変換ミスが有ったので訂正いたしました。

また、前々話で桜花が四狼の前世を聞いていないと言っていましたが、最初に答えていたので訂正しました。


今回も楽しんで頂けたら幸いです。

「気合い入れてる処に悪いが出発前に忘れ物と、もう一つ確認させてくれ」


 早速振り分けられた分担区域に向かおうとした僕達を、組合の職員が止める。


「必要無いとは思うが一応緊急用の信号弾を遠出の班毎に渡している。使わなかったら返して貰うが、対処出来なくなりそうだったら遠慮なく使え。死んでしまっては何にもならないからな」

「はい、お気遣い感謝します」


 僕はお礼を言って職員から信号弾を受け取る。


「逆に近くで信号弾が上がった場合は、余裕があるなら助けに行って欲しい」

「はい、心得ております」

「最後に全員が異界持ちって事だが、今日頼める運搬量を教えてくれ。他の者が狩った獲物が運べなかったら無駄になるからな」


 職員の質問に皆が順番に答える。


「三刃の異界収納は家の道場位の空きが有ります」

「僕は道場だと一つ半位かな」

(わらわ)の倉庫なら道場三つ弱といった処かのう」

「流石は姫様ですな。皆さんも素晴らしい容量の異界をお持ちの様で、それだけあれば獲物の数を制限せずに済みそうです」


 全員、平均を大きく上回る異界の容量だった事に組合職員も喜びを隠せない様子だ。


「四狼の異界もそれなりに容量は有るのじゃろう?」

「はい、僕の倉庫もお城の敷地分位は入りますよ」


 実際には理論上容量は無限らしいのだが、それを教える訳にもいかないので嘘をつかない言い回しをしつつ、皆に分かり易そうな大きさを申請する。

 但し、大容量を完全に隠すのは後々返って面倒な事になりそうなので、皆が残りの空き容量を予想出来ない程度に大容量だと開示しておいたのだ。


「いや四狼、城の敷地位はって、城の敷地は一辺が半里もあって、道場の何十倍もあるのじゃぞ」


 異界容量を敷地や面積で表現する場合、小さい辺を高さとしとて計算する為、異界容量の少ない人で一畳程と表現される人は、九十×九十×百八十センチ位しか入らなかったり、多くの異界持ちの容量は精々六畳程度なので、二百七十×二百七十×三百六十センチ位の為、僕の通常より圧倒的に多い異界容量に桜花様は呆れ顔で答えるが、桜花様だって通常より遥かに多いのだから、他の人から見たら誤差の範囲だと思うよ。家の道場は千二百畳もあるからね。


「と、とにかく、全員とんでもない量が入るのは分かった。それ程の容量があるのなら、本当に制限は必要無いな。恐らく相当量を運んで貰う事になるが、よろしく頼む」


 城の敷地の正確な大きさが分からなかった職員も、桜花様の説明で僕の異界の空きを何となく理解した様で運搬を頼んでくる。


「はい、了解しました。お任せ下さい」


 僕が了承すると、職員は頭を下げて去って行き、皆に報告する。


「野郎ども! 今回は大勢の異界持ちが参加している! よって、狩りの数制限は無しだ! 好きなだけ狩って来い!」

「「「おおおーーーーっ!!」」」

「「よっしゃーーーっ!」」


 皆やる気十分で気合を入れる掛け声を上げて、各自自分の担当地域に向かって進み始め、その後ろには採取専門の人がゆっくり採取対象を探しながらついて行き、更に後ろにここまで荷車を引いていた絡繰り人形が採取者を護る為に大盾を持ってついて行った。


「それじゃあ今度こそ僕達も、初めての狩りに出発だ」

「「「はい」」」


 伊吹さんを先頭に、僕達は南東の担当地域に向かって膝下まである草むらを駆け足で進む。

 僕は常に拡張視覚に展開されている地図を頼りに、途中で発見した獲物はその辺りの担当者に任せる為に上手く回避する様皆を誘導しながら進み、二十分程で七キロ程離れた目的の地域の少し手前に到着した。

 軽装とはいえ鎧を付けた格好で、舗装どころか全く整備もされていない起伏に富んだ草むらをフルマラソンの選手並みの速度で走って来たのに、三刃でさえ息切れ一つしていないのだから、やはりこの世界の人は身体能力が地球とは段違いだ。

 ここからは隊列を組んで狩りをしながら進むが、周りには結構な数の動物や魔物が潜んでいるので、後は近い獲物から順番に狩って行けば良いだろう。


「皆、ここからの獲物は狩って行くから周辺警戒を怠るな」


 皆が一度頷いて警戒しながら暫く進むと、三匹の一角鼠が近付いて来ているのが地図で分かる。


「伊吹さん、前方やや右の木陰から鼠が三匹です。三刃は伊吹さんの動きを良く見ておけ。桜花様、生き物は斬れますね?」

「了解で御座るよ」

「うん、分った」

「大丈夫なのじゃ。朝食前に調理用の鶏を試し斬りしてきたのじゃ。問題無い」


 三人は頷くと武器を抜く。

 桜花様はしっかりと事前に試してきた様で、その顔にも不安は無さそうだ。


「分りました。一匹お任せします。五狼は桜花様の援護を」

「はい、四狼兄上」


 皆の準備が整った処で体長が八十センチ程もある一角鼠がこちらの突っ込んでくるが、伊吹さんは難なく躱しながら一角鼠の首に小太刀を斬り下ろすと、一角鼠は地面を転がりながら進み、止まると同時に息絶える。


「おおーーっ」


 その動きに、僕の指示に従って観察していた三刃が歓声を上げた。

 次に桜花様に向かった一角鼠の突進を桜花様が躱し様に斬り付けるが、刀は一角鼠の前足付け根の骨に当たったのか弾かれてしまう。

 しかし反対側から放った五狼の突きが一角鼠の身体に突き刺さり、心臓を貫く事で止めを刺した。

 その間に伊吹さんはもう一匹の一角鼠を仕留め、狩りの第一陣は呆気なく終わる。


「無事に終わったようですが、息吹さんは流石ですね」

「うん、伊吹さん凄かった」

「いやぁ、四狼殿に褒められると少し照れ臭いので御座るよ」


 僕と三刃に褒められた伊吹さんは、笑いながら答える。


「刀が弾かれたのじゃ。五狼、助かったのじゃ」

「どういたしまして、姫様。狩りは連携が大事だと四狼兄上が言っておりましたから、当然の事をしたまでです」

「そうですよ、狩りは皆で協力して行わないと、命がいくつあっても足りませんからね」


 そう言って少し落ち込み気味の桜花様を慰め、改めて何が悪かったのかを示す。


「こちらの伊吹さんが倒した鼠と、桜花様達が倒した鼠の切り口を比較してみて下さい。息吹さんが倒した方の鼠は首が綺麗に真っ直ぐ切られているのに対し、桜花様達が倒した方の切り口は首から前足の方に斜めに切れています」


 僕の説明に桜花様や三刃が「確かに」と頷く。


「突進系の獲物の首を斬る時は、相手の移動に合わせて斜めに刃を動かす必要が有るのです。そうする事で獲物の移動に合わせて切り口が真直ぐになりますし、今回の桜花様の様に獲物の骨に刃が弾かれる事も少なくなります」

「成程、奥が深いのじゃ」

「実際に伊吹さん程の腕になるのは相当の努力が必要ですから大変だと思いますが、一つの目標として精進して下さい」

「「「はい」」」

「四狼殿、それでは私が褒められ過ぎで御座るよ」


 皆は素直に返事をして何度か素振りをして動きを確認するが、伊吹さんは褒め過ぎと言うので僕は「そんな事は無いですよ」と答えて倒した獲物を無限倉庫に仕舞い、次の獲物を地図で確認する。

 この辺りには沢山獲物が居る様なので、適当に進んでも直ぐに次の獲物に遭遇しそうだと思い、伊吹さんに任せて進んで貰った。

 すると五分もしない内に足狩り兎が近付いて来たので伊吹さんに声を掛けると、視線を僕に向けて頷いた。


「皆さん次の獲物で御座る」


 伊吹さんは皆に警告すると前方の背の高い草むらに向かって跳び上がる。

 するとその草むらから体長六十センチ程の足狩り兎が一匹飛び出して伊吹さんの下を駆け抜けようとするが、息吹さんは身体を捻って足狩り兎に上から小太刀を振るい、延髄を切り裂いた。

 僕は倒れた足狩り兎を見て動きの止まった皆に「まだいるぞ!」っと警告して続ける。


「桜花様!」


 一瞬びくりと反応した桜花様に僕は「跳んでっ!」と叫ぶと桜花様はすぐさまその場で跳び上がり、その下を足狩り兎が通り過ぎる。

 桜花様は空中で刀を抜いたが、その時には既に足狩り兎は桜花様の下を通り過ぎた後だった。

 その足狩り兎の前に五狼が立ちはだかり、槍を突き出して顔面を狙うが足狩り兎は首を振って避けた為に、五狼の槍は足狩り兎の左前脚の付け根に突き刺さる。

 五狼は足狩り兎の突進の勢いで後ろに飛ばされそうになるのを踏ん張って耐えると、槍に刺されて速度の落ちた足狩り兎に三刃が駆け寄り、首元に小太刀を埋めて足狩り兎に止めを刺した。

 しかし動きの止まった三刃に最後の足狩り兎が刃の様に鋭い両耳を振りかざして突進してくるが、誰も動けそうにないので僕は術を使って三刃の前に土壁を出し、足狩り兎の突撃を受け止めた。

 突然目の前に現れた土壁に頭から突っ込んだ足狩り兎は軽く目を廻している様だ。

 そこに地面に着地した桜花様が斬り込み、足狩り兎の首を半ばまで切り裂いて倒した事で今回の狩りは終了した。


「桜花様、良い攻撃です。三刃はもっと周囲の状況を確認してから行動しなさい」


 桜花様は嬉しそうに頷き、三刃は申し訳なさそうに「はい、四狼兄上助かりました。姫様もありがとうございます」と頭を下げる。

 そこに周囲警戒をしていた伊吹さん戻る。


「どうやら今回の獲物は以上の様で御座るな」


 僕は伊吹さんの言葉に頷くと、倒した獲物を無限倉庫に仕舞う。


「少し危ない場面もあった様ですが、皆に怪我が無くて良かったで御座るよ」

「そうね、四狼は流石ね、良い補助だったのじゃ」

「ありがとうございます」


 僕は桜花様にお礼を言って桜花様と三刃を見るが、獲物を至近距離から刀で斬っているので所々に獲物の血が付いていた。

 対策が必要だろうと考えて、僕は複製世界の分体に洗濯機代わりの浄化装置を人がそのまま入って使える形で作る事を依頼しておく。

 血まみれの服で食事も嫌だし、お昼前に一度綺麗にした方が良いと思ったのだ。

 皆が血振りなどをして準備が整うと狩りを再開し、次の獲物に向けて僕達は更に進む。



読んで下さった方々、有難う御座います。

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