準備完了
今回は短めですが
楽しんで頂けたら幸いです。
四狼が丁度寝床につき、眠ろうとしていた頃、桜花はここ数日の習慣の様に国王に今日の報告を行っていた。
「それで、今日も報告が有るのか?」
「今日の報告は童にとっては最高の出来事じゃが、言葉にするより正確に伝える為にこれで童を見て欲しいのじゃ」
桜花はそう言うと、異界倉庫から上に水晶玉が付いている魔道具を取り出して国王に渡す。
「能力鑑定水晶を用意しているという事は、能力が増えたか熟練度が上がったのじゃな」
国王は結果予想を口にしながら水晶を桜花に向け起動させると、以前に見た能力に加えて言霊術がある事が分かった。
「成程、言霊術を獲得したと言いたい訳じゃな」
「父上はあまり驚かれぬのじゃな」
「桜花がそれだけ嬉しそうにしておれば、余程の事でない限り驚きはせぬよ。どうやって獲得したのかは分らぬがな」
国王は半ば呆れ顔で桜花に答える。
その反応に少しつまらなさそうな顔で桜花は追加の情報を伝えた。
「四狼の話じゃと、五行の術を全て使える様になれば言霊術が獲得出来るらしいのじゃ」
「なんじゃと! 城の術師達は得意属性を伸ばす方向で修行しておった筈じゃが、一通りやらせた方が良かったとは、盲点じゃった」
「他にも木火土金水の順で連続して修行すると、次の術に補助的な効果が有って良い様な事も言っておったのじゃ」
補助効果については前から言われていたが、苦手な術を克服する方が難しいとの意見が多かったので、得意属性を伸ばす方向で修行するのが普通だったのだが、能力を獲得出来るのなら話は変わってくる。
言霊術の能力を持っていれば苦手な属性も効果は落ちるが発動はし易くなるのだから、能力の獲得を優先させた方が後々有益だろう。
やはり四狼は術の知識も豊富な様だが、他の覚醒者からは前世の世界は基本的に術の様な物の無い世界だと聞いていた。
「桜花の話を聞いていると、四狼の前世の世界にも術があった様に思えるのだが、その辺りは聞いておらぬのか?」
「はい、四狼も童と同じで、前世は日本だと言っておったから、術の様な物のある世界では無かったのじゃ」
実際にこの国に産まれる覚醒者は桜花と同じ世界の日本という国からの者が多いのだが、中には他の国からの者も居たし、更に別の世界からの者も極少数居たが、桜花の話では四狼の前世も大半の物と同じで日本という国らしい。
国王は少し残念に思いながらも、今までとは違った新しい技術や知識を和富王国にもたらしてくれれば、どちらでも良いかと考えを改める。
「日本は実際には術などは無かったのじゃが、創作物の中でなら多くの術が有ったのじゃから、そちらからの知識かも知れぬのじゃ」
「空想話の術が、この世界では実際の術として使えるという事なのか?」
「あくまでも可能性の話なのじゃ」
「そうか、ならば今後も検討していけば、いずれ真偽も分るじゃろう」
国王はそう答えてこの問題を後回しにする。
「後は、この練習用の武器位かのう」
そう言って桜花は異界倉庫から木刀を一本取り出して国王に見せる。
「この木刀は生き物を素通りするので、当たっても怪我をせずに修行が出来るそうじゃ」
桜花は効果を見せる為に、自らの腕に木刀を振り下ろして見せる。
当然木刀はその痕跡を淡い光で残して、桜花の腕をすり抜けていった。
その光景を見た国王は、何処か諦めた顔をして感想を述べる。
「もはや四狼は何でも有りなのじゃな。出来れば軍の訓練用に幾つか欲しい処じゃが、桜花が持って来ておらぬのなら、それも難しいのじゃろう」
「そうじゃな、道場の方にも譲る事は出来ないと言って、持っている物を貸していた位じゃから、買うのも難しいのかもしれないのじゃ」
「無理なら致し方ない。諦めるとしよう」
「報告は以上じゃが、最後に一つお願いがあるのじゃ」
「桜花がわざわざお願いとは珍しい。言ってみよ」
国王は珍しい物を見たといった顔で先を繋がす。
「はい、四狼が明日は狩りに出掛けるそうなのじゃが、童も参加したいと頼んだ処、父上の許可が無ければ連れて行けないと言うのじゃ。じゃから許可証を一筆書いて欲しいのじゃ」
桜花の珍しいお願いに少し身構えていた国王は、意外と普通のお願いだった事に拍子抜けした。
「その程度の事ならば問題は無い。今後も桜花を好きに連れまわす許可も与えておこう。その方が桜花も助かるのじゃろ?」
「おおっ、ありがとございます父上。今後の許可も頂ければ、四狼もこの手の方法で誤魔化す事が出来なくなるのじゃ」
「その代わり、しかと見定めるのじゃぞ」
「勿論じゃ」
桜花はそう答え、許可証を明日の朝までに用意すると言う国王の前を嬉しそうに退去した。
「伊吹」
「はっ」
何時もの様に国王が呼ぶと、何処からともなく伊吹が部屋の隅に現れる。
「明日は桜花を頼むぞ」
「心得て御座います」
「うむ、下がれ」
伊吹は国王の退室命令に、現れた時と同じ様に音も無く姿を消す。
「明日は何事もなければ良いのじゃが」
国王は相変わらず心配性の様だった。
自室に戻った桜花は、気になっていた四狼の作った桜花の石像を確認していた。
鏡台の引き出しから巻き尺を取り出すと、石像の各部を測って記録しておき、更に自分の身体も測る。
「何できっちり六分の一なのよ」
桜花が懸念していた通り、四狼の作った石像は測ってから作ったかの様に身長から胸や腰回り迄、完璧に桜花の身体を六分の一の大きさで表していた。
「これじゃあ、四狼に私のサイズが全部知られているみたいじゃない」
色々知られている事が恥ずかしい反面、それだけ良く見られていたのかと思うと少し嬉しくもあり、桜花は複雑な気持ちになる。
そもそも、どうやって調べたのかも分らないし、やはりこれも四狼の変な能力の一つなのだろうか?
とりあえず、この石像が細部までそっくりだという事が確定しただけで、四狼の不思議さが増した以外に得る物は無かったが、明日は何時もより早起きしなければいけないのもあって、桜花は恥ずかしさを紛らわす為にもさっさと寝る事にする。
明日も四狼と一緒なのだ、きっと面白い事があるだろう。
そんな期待を胸に、桜花は眠りについた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝が来て何時もより早く起きた僕は、記憶統合によって分体の記憶を共有して得た新しい情報や知識に思いを寄せながら、朝の支度をする。
新しい情報の中から使えそうな術や能力、何の為の能力か分からない能力の事をぼんやり考えながら食堂へ向かうと、食堂には既に三刃がいて、朝食を食べていた。
「おはよう三刃、今日は早いね」
「んっ、おはようございます、四狼兄上。今日は待ちに待った狩りの日なのですから、当然です」
三刃は口の中の食べ物を飲み込むと、僕に挨拶を返してドヤ顔で答える。
そんな三刃に僕は「力み過ぎると返って危ないぞ」と注意してから台所に向かい、秋穂母上に朝食を頼んで来る。
僕が食堂に戻ると丁度五狼も朝食を頼みに台所に行く様で、挨拶をしてすれ違う。
暫くすると、五狼と一緒に秋穂母上がやって来て朝食が並べられた。
今日の朝食はご飯に肉串と具沢山味噌汁と少し簡単だが、朝から結構重めだ。
狩りの場所まで二から三時間程掛かるし、昼食は軽く済ます事になるので、その分朝食は多く取っておくのが狩りの基本だ。
そうして朝食を済ますと、秋穂母上から皆の分のお弁当を受け取って無限倉庫に収納し、ついでに一狼兄上に頼まれていた練習用の武器を秋穂母上に言付けと共に預ける。
「それじゃあ準備が出来たら玄関の外で集合だ」
「「はい」」
朝食を終えた僕達は、各自部屋に戻って防具を着込んだりと狩りの準備をする。
僕も部屋に戻り、以前から使っていた武者鎧を少し簡略化した防具を装備する。
この国の魔物との接近戦は基本、重装備で耐えるか、軽装で躱すかのどちらかになるのだが、僕達はまだ成人前で身体も小さい為に全身を覆う様な重い防具が使えない。
胴体全体を守る胴では無く胸だけを覆う胸鎧だったり、肩を護る袖や腰下を覆う草摺りも小さく動きを制限しない事を重視した物になる。
鎧の下には腹から首までを覆う鎖帷子を着るので胴が無くても問題は無い。
更に手の甲から肘の手前までを護る小手を付け、最後に足はしっかり護らないと刈られるので、臑当と言いながらも膝下全部を覆う防具を足に巻いてとめる。
兜は現地に行ってからで良いので、今は無限倉庫に仕舞っておく。
準備完了した僕が玄関に行き、狩り用の金属板で補強された靴を履いて暫く待っていると皆が揃う。
五狼の装備は僕とほぼ同じ物だが、三刃の装備は僕より更に軽装の帷子に胸当て、小手、臑当、鉢金だけなので、胸当てを付けた忍者の様な格好だ。
普通なら町の外に出すのは心配な程の軽装なのだが、三刃にこれ以上の重量は厳しいので仕方が無い。
そして七時まで後十数分という処で桜花様が自走車に乗ってやって来た。
「皆、おはよう。今日の狩りに同行させて貰うので、宜しく頼むのじゃ」
「「「おはようございます」」」
「おはようございます。皆、朝早くから元気で御座るな」
桜花様の挨拶に皆が答え、息吹さんも挨拶を返して皆で桜花様の自走車に乗り込むと、狩人組合に向かって自走車が走り出した。
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