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あけましておめでとうございます。

本年も楽しんで頂けると幸いです。

 他の術は室内で試すのが難しかったり、部屋が傷んだりするので屋外修練場の奥、わざと草木を残してある場所に移動して続ける事にした。


「次は木の術を練習するんだけど、まずはどういった術なのか見せるから参考にして欲しい。三刃、そっちの草むらの方に立ってくれるかな」

「はい? 四狼兄上、この辺りで良いですか?」

「ああ、そこで良い」


 僕はそう言うと指先に呪力を籠めて『縛』の呪印を手前の空間に描き呪力を開放すると、三刃の足元の草が伸び始めて三刃の手足に絡みつき、そのまま身体を持ち上げて拘束した。

 三刃も初めは驚いていたが直ぐに身体を動かして拘束から逃れようとするが、僕が体術の応用で力の方向を上手く制御する事で三刃はどんどん抵抗が出来なくなって行き、最後には全く身動きが出来なくなってしまう。


「四狼兄上、全然動けないのです」


 三刃は手足を草に捕らわれ、身体をほぼ水平に持ち上げられたまま僕に文句を言う。


「これが木の術の中でも効果的な術として良く使われる、草縛りとも言われる捕縛・拘束の術だ。木の術の目標として欲しい」

「おお~~」


 僕の術の実演に五狼は目を輝かせて喜んでいたが、桜花様が「これは、触手攻め?」っと呟いていたのは無視する事にして、僕は身動き出来ない三刃に近付き、手刀を三刃の首に当てて術の実用性を説明する。


「こうして拘束してしまえば、後は簡単に仕留める事が出来るので、草原での狩り等ではとても重宝する術なんだ」


 僕の説明に桜花様と五狼は頷いていたが、拘束中の三刃は少し不満そうだったので、拘束を解いて地面に降ろしてあげ、「手本を手伝ってくれてありがとう」と労っておく。

 三刃も皆の所に戻ったので修行する術を説明する。


「この術は皆にはまだ早いので、今回皆が練習するのは草を動かす術です」


 そう言って僕は今度は『踊』という呪印を描くと、先程三刃を拘束していた草が起き上がり、くねくねと踊り出した。


「草なのに随分器用に動きますね」

「少し気味が悪いです」


 五狼は不思議そうに、三刃は先程の拘束で苦手意識を持ったのか、嫌な物を見たといった表情だ。


「何か、こんな感じの玩具おもちゃが有ったわね~」


 っと桜花様は何処か懐かしそうに見ている。


「見本だから少し大袈裟に動かしてみたけど、こんな感じで草を適当に動かして見て欲しい」

「「「はい」」」


 皆は元気に返事をしてから立ったまま呪力を練り始める。

 しっかりと先程の修行を覚えていてくれた様で、僕は少し感心した。

 そうして暫く呪力と高めると、順番に呪印を描き出し、僕が始めに術を掛けた、他より伸びた草を揺らし始める。

 呪力量が少ない三刃の術は他の二人に比べて若干動きが鈍いが、自然では有り得ない動きをしているので術の発動には成功したといって良いだろう。


「皆、成功した様で何よりだ」

「はい、四狼兄上、ありがとうございます」

「童が術を三つも、ふふふっ」

「一人で、出来た…」


 術を成功させた皆もそれぞれ嬉しそうにしているが、初めて自力だけで術を発動させた三刃は他の二人以上の感動を味わっている様だ。

 この勢いに乗って少し難しい火の術に行ってしまおう。


「次は少し難しいと言われている火の術に繋げる訳だけど、皆は火が燃えるのに必要な物を知っているか?」

「燃える物でしょうか?」

「?」

「簡単じゃ、可燃物と酸素と熱なのじゃ」


 五狼は自信なさげに答え、三刃は分らないと首をかしげている中、桜花様は前世知識から正解を答える。


「五狼も間違っていないけど、正確には桜花様の答えが正しいです」


 僕の答え合わせに他の二人が桜花様を尊敬の目で見つめる中、僕は続きを説明する。


「つまり、火の術には三つの要素が必要なので、難易度が上がる訳だけど、先程の術に連続させる事で可燃物を用意する必要が無くなり、難易度が下がるんだ」


 そう説明した後、僕は『火』の呪印を描き、先程伸ばした草の一本を燃やして見せると、今度はわざわざ説明するまでもなく、皆が呪力を高め、呪印を描いて草に火を付けた。

 やはり若干三刃の火は弱かったが、目標として使った草は油分が多く燃えやすい種類の草を選んでいたので、少し皆に遅れていたが、無事に標的にした草を燃やし尽くす事に成功した。


「今回も無事皆が成功した訳だけど、この標的にした草は油分の多い草だったので簡単に火が付いたんだ。他の標的はこんなに簡単に火は付かないし、人や魔物等に直接術を掛けても呪力で抵抗されるので、余程呪力差が無いと燃える事はほぼ無いので注意してくれ」

「燃え易いって割には、周りの他の草に火が移ったりはせぬのじゃな?」


 桜花様は成功したのが燃え易い草だった事に少し残念そうにしながらも、周りに火が広がらなかった事が不思議な様だ。


「この草はある程度育たないと油分を蓄えないので、短い草は普通の草とほぼ同じなんですよ。育った草を磨り潰して薪等に塗る事で火が付き易くなりますよ」


 そう説明すると桜花様も納得してくれた。


「次は土の術ですね?」


 五狼は術が使えるのが嬉しい様で早く次の術をと急かしてくるが、三刃は少し疲れてきている様なので、集中力を上げさせる為に土の術で三刃の喜びそうな物を用意する為に桜花様をじっと見つめる。


「な、なんじゃ? 急にそんなに見つめられると童とて照れるではないか」


 桜花様はそう言って少し頬を赤く染めながら一歩後退する。

 僕はしっかりと桜花様の顔を観察し記憶に焼き付けてから『像』の呪印を描いて桜花様の六分の一程度の石像を作って見せた。


「いきなり何を作っておるのじゃ!」


 桜花様は突然作り出された自分の石像に少し恥ずかしそうだ。


「わ~っ、姫様にそっくりですね。流石四狼兄上です」

「姫様! 四狼兄上、これは三刃が頂きます!」


 五狼は何時もの様に素直に称賛してくれたが、三刃が速攻で奪い取って自分の異界収納に収めてしまった。


「三刃、せめて桜花様に許可を頂いてからにしなさい」


 僕の注意に三刃は速攻で桜花様に伺いを立てる。


「姫様、これは三刃が頂いても宜しいですか?!」


 三刃の鬼気迫る許可申請に桜花様も「あ、ああ」としか答えられない様子だ。

 桜花様に許可を貰った三刃は取り返されない様にか皆から少し離れた場所に移動し、異界収納から桜花様の石像を取り出して眺め始めた。

 五狼も興味が有ったのか、三刃に近付き桜花様の石像を見ている。


「本当にそっくりに出来ていますね」

「これは三刃が頂いたのですから、譲りませんよ」

「見るだけで取ったりしないから、安心して」

「それなら良いです」


 そんな様子を見ていた桜花様が少し羨ましそうに言う。


「童にも作って欲しいのじゃ。出来ればもっと色っぽいのが良いのう」


 更に頬を染めながらも何時ものからかい顔で、手を後頭部や腰に当て身体をくねくねと動かし、何処か昭和っぽいポーズをとっている。

 恥ずかしいのならやらなければ良いのに、っと思いながらもご希望通りに色っぽく石像を作って見せた。

 先程は今着ている袴姿で作ったが、今度は色っぽくとの指定だったので、桜花様のしていたポーズにビキニを着せた、前世で知人に見せられた水着フィギュアっぽく作ってみたら、先程の三刃よりも素早く異界倉庫に仕舞われた。


「流石四狼、助平なのじゃ!」


 顔を真っ赤にして抗議してくるが、これは桜花様の希望に沿っただけなのだから、流石に冤罪じゃないかと思ったので反論しておく。


「何処が流石なのか分かりませんし、ご希望通りに作ったのに怒られても困りますよ」


 そう答えると桜花様もこれ以上は文句を言えない様で、顔を赤く染めながら黙り込んでしまった。


「さて、少し話が逸れてしまいましたが、土の術を練習しましょう。三刃! そろそろ戻って来い!」


 僕の呼び声に気付いた三刃は桜花様の石像を異界収納に仕舞い、五狼と共にこちらに戻って来る。

 改めて皆が揃った所で土の術を説明する。


「土の術は今みたいに石像を作ったりも出来るけど、地面に穴を開けたり、壁を作ったりするのが一般的だし、そちらの使い方の方が戦闘以外にも使えて便利なんだ」


 そう言って桜花様の足元を三センチ程掘り下げて驚かせたり、三刃の目の前に九十センチ程土を盛り上げて壁を作ったり、更に五狼に右に一歩足を出して貰うと、その足元が数センチ地面に埋まる落とし穴を作ったりといった術を見せる。


「こんな感じで土の術は戦闘で直接攻撃しなくても行動阻害系も得意なんだ。今見せた地面に穴を開ける術か、壁を作る術の好きな方を練習してみてくれ」

「「「はい」」」


 流石に皆も慣れて来たのか、五狼は自分の前に六十センチ程の壁を、桜花様と三刃は自分の足元から数十センチ前の地面を直径三十センチ程で深さ数センチ程の穴を作る事に成功した。


「流石に皆も慣れてきた様だから、そのまま続けるけど最後の金の術は金属といっているけど直接金属を扱わない術も含まれるから順番に説明するよ。五狼、三歩ほど後ろに下がってくれるか」

「はい、四狼兄上、これで良いですか?」


 僕に頼まれた五狼は素直に三歩下がって確認をする。


「十分だ。まずは直接金属の術を見せるから、五狼の作った壁を見ていてくれ」


 僕はそう言い『棘』呪印を描いて発動させると、五狼の作った壁から細い棘が三十センチ程飛び出した。


「これは、刺さると痛そうなのじゃ」


 桜花様の感想に三刃も「うん、うん」っと頷いている。


「なんで土の壁から金の術で棘なのでしょう?」


 五狼は土から金の術が不思議な様だ。


「それは土壁の中の砂鉄を集めて棘にしているから、金の術になるんだ」

「成程、そういう事だったのですね。確かに鉄の様です」


 僕の説明に五狼も納得したのか、棘を指で突いて確認しながら頷いている。


「これが直接金属を操る術で、次に直接金属を扱わない術を見せるけど、危ないので皆二十歩程後ろに下がってくれるかな」


 そう言って僕は棘を引き抜いて更に二十歩前に進み、地面に棘を突き刺す。

 その棘に向かって『棒』の呪印を発動させると棘が少し太くなり、更に地面から百五十センチ程の高さまで伸びる。

 準備が出来たので僕も三十歩下がり、皆の十歩手前で伸ばした棒に向かって『雷』の呪印を発動させた。

 すると呪印から光が空に向かって飛び、次の瞬間反転して棒に雷がピシャン!っと落ちる。

 一応、例え人に当たってもかなり痺れる程度に威力は抑えてあるので、それ程派手ではなかった筈なのだが、桜花様と五狼は目を輝かせて見ていたのに対し、三刃は雷が苦手なのか、かなり吃驚した様子で固まっていた。


「僕も理屈は分らないけど、雷も金の術に含まれるらしい。おそらく金属の多くが電気を通す為だと思うので一応覚えておいて欲しい。では皆は鉄の棘を出す練習をしようか」


 僕はそう言い、皆の前に砂鉄を多く含ませた土の壁を横向きに作ってあげる。


「この術を練習する時は前じゃなくて、横に出す様に練習するのが大事だ。前に出して長さを間違えたら自分に刺さってしまうからね」


 僕の注意に皆も想像してしまったのか、少し青ざめている様な気がする。


「今日は発動出来るだけで良いけど、最終的には自分の狙った長さで出せる様になるのが目標だ。長過ぎれば自分や仲間に刺さったりするかもしれないし、短ければそもそも標的に当たらないから、それだと実戦では危なくて使えないからね」

「「「はい」」」


 うん、相変わらず返事は元気で良い。

 早速術を試し始めたが桜花様はあっさりと発動させてしまったが、五狼は少し苦戦したが何とか発動出来、何故か三刃は発動出来ない様なので理由を聞いてみた。


「四狼兄上、三刃は砂鉄という物が良く分からないのです」


 三刃は砂鉄を見た事が無かったかなっと思いながら、無限倉庫から適当な袋を取り出し、中に磁石を入れて地面を擦ると、直ぐに袋に砂鉄がこびり付いてくる。

 それを三刃に「これが砂鉄だよ」っと見せてあげると指で摘まんでじっと観察し始めた。

 数分観察して納得したのか、土壁に向かって術の練習を始めると、数回の練習でなんとか十五センチ程の棘を出す事に成功した。


「おめでとう三刃、これで五行の術全ての発動に成功した訳だ」

「あ、ありがとうございます。四狼兄上」


 三刃もなんだかんだと言いながらも、術を発動出来たのが嬉しかったのか、少し涙ぐんで答える。

 先程僕が言った様に、全員五行の術を全て発動させる事に成功したので皆を鑑定してみたら、しっかりと能力を獲得していたのでそれを教えてあげる。


「三刃、自分を鑑定してご覧」


 僕が何を言っているのか分からなかったのか、三刃は少し間をおいてから僕の言う通りに自分を鑑定してみると、能力が追加されている事に気付き、声を上げて泣き出した。


「うわ~~ん!」


 突然泣き出した三刃に何事かと桜花様と五狼が近付いて来たので、桜花様にも自分を鑑定する事を勧めると一瞬目を見開き、そっと三刃を抱きしめながら涙を流して喜んでいた。

 未だに状況が飲み込めずに困惑している五狼に僕は理由を教えてあげる。


「皆、良く頑張ったね。全員無事に言霊術の能力を獲得出来たよ。おめでとう!」


 そう言って僕は皆を労い、祝福の言葉を贈ったのだった。


読んで下さった方々、有難う御座います。

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