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言霊術

初めての感想、誤字報告、ありがとうございました。

ご報告のあった誤字は修正しましたので

今後も楽しんで頂けると幸いです。

 僕達は居間で呪力操作の修行をしながら桜花様が来るのを待っていると、十分程で桜花様が到着したので術の講義を始める。


「今日は術についての説明から始めます」

「今更術の説明なぞ必要があるとも思えんのじゃが?」

「桜花様には復習は面倒かもしれませんが、意識する事で術の方向性を決定付けし易くなるので、覚えていた方が術は発動しやすくなりますよ」


 そう説明すると桜花様も反論出来ない様で、素直に聞く事にしてくれた様だ。

 前もって天照に授業内容を検討して貰ったので、その内容に沿って解説する


「まず、術の発動には大きく分けて詠唱型・象徴型・儀式型の三種類がありますが、和富王国で主流の術は文字を媒介するので象徴型になります。文字の言葉に合わせた術を発動させるので言霊術という名を付けたそうです」

「言葉というなら詠唱の方があっている気がするのじゃが?」


 桜花様の疑問は僕も感じたのだが、それは昔の人が考えた事なのでその経緯を説明する。


「僕もそれは考えたけど、もっと昔にはこの辺りでは詠唱型の呪術が主流だったらしいのですが、その呪文の文章が短文化された言葉になり、更に文字に置き換わっていって今の形になったそうです。その名残が呪力という言葉に残っている様です」

「つまり、呪術より言霊術の方が優れていたという事なのじゃな?」


 一応間違ってはいないのだが、正確では無いので訂正する。


「いえ、呪術は主に精神に作用する術なので生物以外には効果が低く、対象が無生物でも効果のあまり変わらない言霊術の方が、呪術より汎用性が高いというだけで、呪術の精神攻撃は言霊術より遥かに強力らしいので一概には言えません。そして現在の和富王国で多く使われている言霊術は五行思想と三概念を足した八属性で出来ています」

「五行は木火土金水ですね、四狼兄上」


 流石に術に興味のあった五狼はしっかり基礎も勉強している様だ。


「五狼、ではその五行以外の三概念は分るか?」

「はい、心、空、無です」

「正解だ、良く勉強しているね」


 褒められた五狼は少し嬉しそうにしている。


「じゃあ、まず五行の説明だけど、木は燃えて火を発生させ、燃えた灰が土を養い、土を掘ると金属が発掘され、金属の表面に水が付着し、水は木を育てる。これが陽の関係で、次に続く様に循環している様を表している。そして、木が土から養分を奪い、土は水の流れる川をせき止め、水は燃える火を消し、火は金属を溶かし、金属で出来た斧は木を切る。これが陰とされる関係で次を断ち切る力を表している。つまり属性毎に相手を強くする相性と、弱くする相性がある訳だ」


 地球ではもっと細かい分類が有った気もするけど、この世界とういか、この国では術にしか適応させていない様なのでこれで問題無いだろう。

 おそらく初代国王か、その後の日本からの覚醒者達が知ったか知識で作った概念だし、そもそもこの概念すら術を使い易くする為の後付けなのだから問題にもならない筈だ。

 問題が起これば三概念の様に後から付け足せば良いだけの話なのだから。

 結局はじゅつというのは術者の想像力を補完、補強する為のすべでしかないので、より多くの人が使い易い方法を体系化したに過ぎず、最終的には信じる事で発動の可能性を上げ、威力も上昇させるのが目的なのだから疑う意味が無く、信じた方が術が使い易くなり得なのだから、正に信じる者は救われる世界なのだ。

 そう自分に言い訳しながら、残りの三概念をを説明する。


「次に三概念だけど、心は精神干渉術とも言い、文字通りに精神に干渉する術で、空は時空干渉術とも言い、時間や空間に干渉する術、無は無属性とも言い、五行や他の二概念以外の術を細かく分類するとややこしくなるので、他には分類出来ない全ての術を差しています」

「その心の概念と呪術は何が違うのじゃ?」


 初めは渋っていた桜花様も興味が出て来た様だ。


「先程も言った様に呪術は詠唱型ですが、心の概念は言霊術ですから文字で発動させますし、呪術は精神面からの攻撃で肉体をも破壊出来ますが、心概念では余程の術者でないと肉体にまでは影響出来ません」

「それでは呪術が主流だった頃より弱くなっているのではありませんか?」


 五狼は弱い術が主流になったのが不思議な様だ。


「五狼、視野が狭くなっているよ。そもそも目標を破壊するなら他の五行の術で事足りるのだから、問題にもならないんだよ」

「ああっ、そうですね、心概念は心にさえ作用すれば良いし、出来ない事は他の概念で補えるから問題無いんだ」


 五狼も理解した様だ。


「む、難しいお話ばかりです…」


 三刃はあまり理解出来ていないのかもしれない。

 最年少だし、難しい話はまだ苦手なのだろう。


「時空干渉術は一番難しいので今は考えなくて良いとして、最後の無属性は他の概念以外は全てと少し大雑把ですが、桜花様が先日使った光の術もこの無属性に含まれます」

「なるほど、確かに光は五行や心では無いな」

「他に分類出来ない術が纏められているので、人によっては無ではなく、混沌ではないかという意見もある様ですが、この場合名称にはあまり意味が無いので僕は無属性のままで良いと思います」


 皆も納得してくれたのか無言で頷いてくれた。


「ただ、この三概念は光の様に簡単な術も有るけど、大半は扱いが難しいのでもっと術が上達するまでは考えずに、今はそういう分類が有ると覚えておくだけで十分なので、まずは基本の五行から始めようと思うんだけど、皆は既に使える術ってあるのかな?」


「童は四狼に習った光の術だけじゃな」

「僕も光の術位しか使えません」

「三刃は、何も使えない…」


 三刃以外は光の術だけは使える様だが、一つだけなら皆大した差はないだろう。


「皆、術に関しては同じ程度の様だけど、覚えたい術とかは有るかな?」

「術といえばやはり攻撃系の術が使いたいのじゃ」

「僕は春菜母上の様な治癒術が使いたいです」

「三刃は術より体を動かしたいです」


 等と三刃以外は興味は深々だ。


「じゃあ、順番に説明するけど、まず攻撃系の術についてだけど、攻撃系には主に直接相手のいる場所に作用させる座標型と、火や石等を飛ばしてぶつける射撃型が有るけど、座標型は呪力を離れた場所で作用させる技量が必要だし、射撃型は飛ばすという術を同時に行う必要が有りますが、飛ばす速度が遅いと躱されてしまうので目標によっては更に、多くの魔道弓にも付与されている加速門等の術も使っての強化が必要になるので、どちらも難易度は高くなりますから、まずは基本をこなせる様になってからですね」


 そんな僕の説明に桜花様も少し残念そうにしながらも目標をしっかりと定めた様で「刀と攻撃術が使えてこそ侍なのじゃ!頑張るぞっ!」っと意味は分からないが、やる気を上昇させている。


「次に治癒術は無属性なのでこちらももっと基礎を頑張らないと使えないし、同時に医術の知識も必要になるので、習うのなら専門家の春菜母上に教えを受けた方が良いと思う」


 五狼も「それもそうですね」っと納得した様子だ。


「最後に三刃、術には身体強化術っていうのもあって、この術が使えると力や速度を上げたり出来るから、より素早く、より力強く戦う事が出来る様になるけど、目指してみないか?」

「おおーー、それ良いです。三刃は身体強化術を目指します」


 三刃も少しは術に興味を持てた様子で、何とか全員の目標が定まった。


「これで皆が最初に目指す方向が定まったので、その目標に向かって基礎訓練を始めよう」


 僕はそう言いながら、無限倉庫から桶を取り出し皆に配る。


「まずは室内でも出来る水の術から練習するけど、水が呪印の位置から湧き出すのを想像しながら、指先に呪力を籠めて呪力で文字を描くんだ。文字を書き終えたら文字の呪力を開放しながら文字全体に更に呪力を集中させる事で術が発動し、水が出る筈です。では各自、自分で水を出して桶に水が半分溜まるまで頑張ってみて。出来なければ後で補助するから」

「「「はい」」」


 桶を配られた理由を理解した皆が返事をし、訓練を始める。


「水・水・水……」

「………」

「こう、こう、こう…」


 皆が何やら呟きながら指先に呪力を集中させて桶の上で水の文字を描いているが、上手く水の流れ出す様をを想像出来ていない様で何も起こらない。

 特に三刃は水の文字を書くのに精一杯といった感じだ。


「三刃、文字の正確さよりも、もっと水の出る所を頭に思い浮かべるんだ」

「水が出る所って言われても、良く分からないのです」


 やっぱりこの説明だけだと難しいのだろう、誰も成功しないまま半時はんときが過ぎた所で一旦休憩するよう声を掛ける。


「そろそろ一旦休憩にしよう」


 僕がそう言うと皆が脱力して各々楽な姿勢で休み始めた。


「全然水が出ないのじゃ」


 桜花様は空の桶の中を覗きながら呟いている。


「そうですね…何が悪いのでしょう?」


 五狼もどうして良いのか分からない様子だ。


「疲れた…」


 三刃だけは何時も通りで、あまり気にしていないみたいだ。


「とりあえずお茶でも飲んで一息ついてから続きをしますが、こんな感じで水の出る様子は何でも良いんですよ」


 僕はそう言い、無限倉庫からお茶の入った薬缶やかんと人数分の湯呑を出してお茶を注ぐ。


「水ではなく、お茶が出ているのじゃ」

「お茶ですね」


 桜花様と五狼はお茶が注がれる様子を見て、その様を記憶しようとしている様だ。

 先日の桜花様の様に一度成功出来れば、想像もし易くなるから次からは発動も楽になるのだが、このままでは三刃が飽きてしまいそうなので、一休みしたら皆に先日と同じ様に少し後押ししてみよう。

 そう考えながら皆で冷えたお茶を啜り、十分程休憩してから続きを始める。


「まずは昨日と同じ様に呪力操作を行って呪力を高めてから始よう。三刃は少し呪力が足りていない様なので僕が補助するから、もう少し頑張ろう」

「「「はい」」」


 皆の返事を聞いて僕は三刃の後ろから背中に掌を当てて呪力を流す。

 今日は正座した足を少し開いた間に桶が有るので、呪力を流すのは上半身だけだ。


「んっ…」

「さぁ、腕と肩で呪力を回して」


 僕の指示に合わせて皆も呪力を回し始め、それを数分続け、十分に呪力が高まった所で次に進む。


「皆、十分に呪力が高まったから、前を見て今まで高めた呪力を指先に集中させて呪印を描くんだ」


 皆が前を見て呪印を描き始めると同時に、僕は先日桜花様にした様に皆の意識に幻術で様々な水の出る様を誘導する。

 金属の板に水が浮かび流れ落ちて雫になる様や、地面から水が湧き出る様子、滝から水が流れ落ちる様子、最後に薬缶から水が注がれる様子を見せた後、呪印が完成したので発動の呪力を流すと、皆の呪印からちょろちょろと水が溢れ出した。


「出たぞ、水が出たのじゃ!」

「水が出ましたっ!」

「おぉぉー、水です」

「皆、落ち着いて、呪力が途切れると術も止まるから、ちゃんと桶に半分溜まるまで水を出し続けるんだ」


 僕が注意すると皆も折角発動した術が途中で失敗しては堪らないと、意識を術に集中させる。

 そうして十数秒程水を出し続けると、桜花様、五狼、三刃の順に無事、桶に水が半分溜まったので全員が水を出す術に成功した。


「はい、皆お疲れ様、これが水系の術の基本になるので、今後も練習をしてより早く、より多くの水を出せる様に頑張ろう。三刃も毎日呪力操作の修行を続ければ、二週間から三週間位で一人でも出来る様になると思うよ」

「「はい」」

「ん、三刃も頑張る」


 僕が手伝ったとはいえ、初めて術を発動させる事に成功したのが自信になったのだろう、三刃も術の修行に前向きになってくれた様で何よりだ。


読んで下さった方、有難う御座います。

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