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遠征に出発

今回は少し短めですが

楽しんで頂けたら幸いです。

 皆が寝静まった深夜、今日も二人の案内人の密談が始まる。


「昨日のご主人様の行動は、試合も上手く実力を隠しながら勝利して皆の評価も上がりましたし、良い方向に向かっていると感じましたが、月詠はどうでしたか?」

「そうなのですよ、桜花様との婚姻にも前向きになられたのが一歩前進なのですよ。次は複数の妻を娶る事を了承して下されば完璧なのですよ」


 どうやら月詠は一定の成果を確認しつつも、まだ不満がある様だ。


「そちらの方は急かすと逆効果になると思います。慎重にいきましょう」

「月詠は主様の様に、前世知識が有ると何故か複数の妻を娶る事に妙に否定的か、喜んで実行するかで二極化するのが不思議なのですよ」

「おそらく前世の世界での常識に引きずられているか、前世で臨んでいても出来なかった事が肯定されて欲望のタガが外れたかのどちらかなのでしょう」

「つまり、主様にもこの世界の常識を受け入れて頂ければ問題は解決なのですよ」

「そうですね、先ずはご主人様にも前世とこの世界の違いをより深く実感して頂くのが良い様ですね」


 二人の意見は四狼の意識改革を優先させるという事で一致した様だ。


「次に例のあれですが、予想通り此方に接近中です。この国に到達する確率は三分の二まで上昇しました」

「もう少し北か南に向かってくれれば、この国を逸れるのですよ」

「此方に来るようでしたら、彼にも起きて頂く必要が有るかもしれません」

「む~必要無いのですよ。私だけで十分なのですよ」

「必要が有れば勝手に起きるでしょう」

「主様がやる気になられれば問題にもならないのですよ」

「それはそうですが、結果は変わらなくても準備不足は否めません。此方に来るにしても、もう一年程眠っていて、来るのは後一年位後にして欲しかったと思うのは致し方ありません」

「その件は既に終わった事なのですよ」

「そうですね、最悪は回避したと前向きに考える事にして、今はまだ様子を見るしか手が無い様です」


 二人には何やら他にも心配事が有る様だったが、今は静観する事に決めた様だ。

 更にこの後も二人は北西の森人もりひとぞく族や南東の空人族そらひとぞく等の情報等、様々な事を話し合い、四狼の分体が盗賊化した敗残兵を行動不能にし、結果的に助けた東の戦勝国の話等を含めて現在の世界情勢を朝方まで密談していた。



    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 朝になり、四狼は起きると他の分体との記憶統合に気怠さを感じながらも、昨日配って減っていた魔石柱や設置装置、魔道焜炉や魔道焼鍋がそれぞれ千二十四・二百五十六・八・八個複製世界の分体が追加してくれた様だが、記憶が統合されたことで結局自分でやった気分になり、寝ていた筈なのに少し気疲れしてしまう。

 他には特別な問題は無かった様なので、着替えを済ませて水場に向かい顔を洗い、厠に行って用を足す。

 今日は昨日と違って下着は汚れていなかったので良かった。

 ちなみにこの国の男性用下着はふんどし派と猿股派に分かれるが、武闘派の者はふんどしを選択する者が多い。

 やはり戦っている時にしっかり固定されている方が落ち着くという気分の問題なのだが、女性でも武闘派にはふんどし派が多いらしく、我が家は男女に関係なくふんどしだ。

 やはり女性でも気分も引き締まるのだろうか?

 それ以外の女性は護謨ごむが魔物素材で高い為に現代風の下着は作られておらず、横で縛る紐下着が多いらしい。

 そんな事を考えながら厠の水を流し、便器が高くなっている段差のある和式ではあるが、この国にも水洗トイレが有って良かったと思う。

 下水工事には時間もお金も掛かる為、中央区と一部の商業区にしかまだ下水は通っていないが、水洗便所が使えるこの国はこの世界でも有数の先進国なのだ。

 この国を選んで転生して良かったとつくづく実感する。

 そうして朝の身支度を終えた僕は食堂に向かい、皆の到着を待つ。

 暫く待つと皆が揃い、秋穂母上と二刃姉上が皆の膳を持ってやって来たが、何故かご飯が二つあったので秋穂母上に理由を聞いてみたら、昨日の夜に渡した魔道電磁炊飯器と、失敗した時の為に従来の窯で炊いた物と二つ用意したそうなので、折角だから皆で食べ比べてみて欲しいとの事だ。


 「いただきます」

 「「「「「いただきます」」」」」


 父上の挨拶に復唱する様に皆も挨拶し、朝食に取り掛かる。

 今日の朝食はご飯が二つに納豆、魚の煮物、具沢山味噌汁だ。

 この国では生野菜は略食べないので味噌汁や鍋、炒め物等にする事が多い。

 日本でも明治以前は生野菜はあまり食べなかったらしいが、肥料の元が糞なので衛生的にも仕方が無いし、僕は熱を通した方が好きなので問題も無い。

 ご飯の方は窯炊きのは少し焚きむらが有ったが魔道電磁炊飯器の方はむらが無く、均等に炊けていて甘みも強い気がしたが、おこげが好きな人には不満もあるかもしれないと思った。


「今日のご飯は二種類なのか? 少し味が違う気がするが」


 父上は良く分からないらしい。


「此方の方が甘い気がします」

「三刃はこっちの方が好きです」


 年少組は魔道電磁炊飯器の方が好みの様だが、やはり子供は甘みが強い方が好きなのだろうか。


「どちらも美味いが、おこげがないと少し寂しい気もする」


 一狼兄上はおこげ派だった様だが、その他の者は黙々と食べているので皆それなりに気に入ったのだろう。


「これなら今度からは窯を使う必要は無さそうね。楽になるから助かるわ」


 秋穂母上は嬉しそうだ。


「私も嫁入り道具に持っていきたいわね。いくら位で買えるのかしら」


 二刃姉上はぼそっと呟くのが聞こえた。

 今までの様に窯でご飯を炊くのは火を見る必要もあるので結構面倒なのに対し、魔道電磁炊飯器は起動させてしまえば後は自動で炊きあがるのだから、味に問題が無ければ欲しくなるのも当然だろう。

 なので二刃姉上が実際に嫁に行く時には用意してあげようと思った。

 こうして何時もより少しだけ賑やかな朝食を終えると、父上と二狼兄上が春菜母上を伴って遠征の準備にと部屋に戻る。

 僕は秋穂母上と二刃姉上について行き、無限倉庫から魔道食洗器を取り出して使い方を説明する。


「なんでこんな便利な物を四狼が?」


 二刃姉上は困惑気味だ。


「四狼は昨日からやたら高価な魔道具をいくつも持って来るけど、本当に大丈夫なのでしょうね? 後で高額請求等は嫌ですよ」


 秋穂母上も流石に心配になってきた様だ。


「大丈夫ですよ。全て試作品でその実験を手伝う対価の品なのですから問題有りませんし、八神家を敵に回す程の馬鹿がこれほどの魔道具を作ったりは出来ませんし、桜花様にも渡しているのは向こうも了承しています。王家に詐欺行為等、間違いなく首が飛びますよ」

「確かに馬鹿に魔道具を作れるとは思いませんが、それでも少しは用心しなさい。馬鹿は凡人の考えを可笑しな方向に超えてくるものですからね」

「はい、肝に銘じておきます」


 秋穂母上は少し心配のし過ぎの気もするが、実際には僕が作っているので少なくともこれらの魔道具で請求が来る事は有り得ないのだが、その事を知らないのだから仕方が無いのだろう。

 そして魔道掃除機も出した事で二人は呆れ顔で何も言わなくなった。

 便利だから良いと思うのだが、今は使い方だけ説明してこの場を逃げよう。


 台所を出て食堂に戻るとまだ皆が残っていた、どうやら遠征に行く父上と二狼兄上を見送る為に待っていた様なので、僕も皆と一緒に待つ事にした。


「四狼兄上、今日はどの様な修行をつけて頂けるのですか?」


 五狼は今日も術の指導をして欲しいらしい。

 僕もその心算だったので今日の予定を話しておく。


「今日は今更と思うかもしれないけど、術の基礎講座の予定だよ」

「基礎ですか?」


 流石の五狼も少し残念そうだが基礎は大事だから我慢してもらうしかない。


「三刃はもっと身体を動かす修行がしたいのです」


 確かに昨日の修行は座っての呪力操作だったので、身体は殆ど動かしていないのが三刃には不満だった様だ。


「分かった。では座学の後で僕と手合わせでもするかい?」

「ん、昨日の試合は凄かったから、それで良いです」


 どうやら座学の後に僕が直接相手をする事で三刃も納得してくれた様だ。

 そうして今日の予定が決まった所で父上達の準備も終わり、皆で玄関で見送る。


「龍牙様、ご武運を」

「御無事の御帰還をお待ちしております」

「うむ、行って来る」

「「「「「いってらっしゃいませ」」」」」


 春菜母上、秋穂母上と順に挨拶し、父上がそれに答えた後、僕達兄弟姉妹も父上と二狼兄上に見送りの挨拶を送ると二人は頷き、城に向かって歩き出し遠征に出発した。

 その後姿を見て、そういえば桜花様以外の人を重要人物登録していなかったと思い出し、急いで父上を含めて家族全員を登録し印を付けておく。

 これで何処に居るか地図と連携させる事で正確な場所も分るし、何か問題が起これば通知が来るので安心だ。

 一応確認の為に地図を見たが問題無く全員が表示されていたのだが、一つだけ大きく離れている印がこちらに近付いてきているのを発見した。

 今の所、家族以外の印は桜花様のみなのでこの印は桜花様に間違いないのだが、此方に向かっているという事は今日も我が家に来る心算の様だ。

 どうせ一緒に修行するのなら纏めて始めた方が良いと考え、桜花様が参加するまでは昨日と同じ、呪力操作の修行をしながら待つ事にした。



読んで下さった方、有難う御座います。

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