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団欒

少し調子が悪く遅くなりましたが

楽しんで頂けたら幸いです。

 巧義兄上に魔道電磁調理器類のお試しをお願いした後、今回のお礼の品として耐毒の腕輪も渡したら困惑しつつもとても喜んでくれた。


「此方は今回のお礼として頂いた耐毒の腕輪です。これらも試作品らしいのですが採算が取れないので販売の予定は無いそうです」

「採算が取れない程の魔道具をお礼に?」

「はい、素材費だけでもかなりの金額になるので売るのも難しく、それなら贈り物にした方が後々の利益になると言われましたが、実際の処は僕には分りません」

「成程、有力な商家に繋ぎの贈り物というのは良くある話だから分からなくもないけど、それにしても高価過ぎないかな?」

「それだけ巧義兄上が高く評価されているのではないでしょうか?」

「ふふ、そうだと嬉しいね」


 巧義兄上は言葉通り嬉しそうに答えるが、その瞳の奥には何かを考える様な光が灯っている辺りが、正に有力な商人の証拠なのだろう。

 最後に魔道焜炉と魔道焼鍋を二つずつと、魔石柱を九十九、設置装置を十九追加で渡して色々試して貰える様に頼んだ事で今日の用件の全てが終わったのでお暇する。


「巧義兄上、突然押しかけて申し訳ないのですが、本日の件、よろしくお願い致します」

「ああ、良い商売になりそうだし僕の方は大歓迎だよ。うちの錬金術師や魔道具技師にも確認して貰って、なるべく早く結果を伝える様にするよ」

「ありがとうございます」


 僕は巧義兄上にお礼を言ってお店を後にし、三刃に頼まれたお土産を如何しようかと考えながら町の中を散策する。

 三刃の好きな甘味等の食べ物にするか、それ以外にするか少し悩んだ末、結局甘味等の食べ物にすることにした。それ以外の物が思い浮かばなかったのだ。

 お土産は食べ物に決めたので三刃の好きな甘酒や飴等保存の利く物は多めに、たこ焼きやお好み焼き等直ぐに食べる物は晩御飯前なので少なめに買った。


 そうして買い物をしながら街を歩いていると大きな建物、狩人組合の前に出た所で前世知識に覚醒した事で色々考えてしまっていた為にすっかり忘れていた三刃との約束を思い出した。

 覚醒の一日前に三刃に半ば強引に約束させられたのだが四日後、つまり明後日に三刃を狩りに連れて行くという事だった。

 一応、狩人組合での狩りは数日前からその日の狩場と目標の獲物の発表があり、参加したい者はその日の早朝八時から九時迄の募集に登録して参加する。

 その後分担の組み分けをして出発するのだが、元から組を作っている者はその組で、個人や少人数の組は纏められて狩りをする事になるので、全体では百数十人から多い時は三百人位での団体行動になる。

 これは中心に薬草や山菜等の採取専門の者を配置して守るのと当時に、狩り専門の者が八方に向かって外に狩りをする事で後ろの安全がある程度確保出来るので狩りでの事故を防ぎ易く、極稀にある強力な魔物と遭遇した場合でもそれほど遠くない場所に他の組が存在する為、救援を呼べる事で助かる確率も上がるので狩りに行く者の大半が参加している。

 なので三刃を狩りに連れて行くのには狩人組合を通す事になるのだが、通常十歳では採取専門での参加しか認められず、狩りの方での参加は十二歳からでしか出来ないのだが、我が家の様な武家の者だと戦えて当たり前になるので、十歳でも狩りにも参加出来てしまう。

 あの時とは状況が違うので今はあまり屋敷から出させたくないのだが、約束を破ると後が面倒だし、僕も嘘をつくのも嫌なので身体に個別の結界でも張って重傷以上の怪我は防ぐ事にしようと考えて妥協する。

 先日確認した明後日の獲物はこの辺りでは最弱の一角鼠だったからこそ三刃の頼みも受け入れたのだし、襲撃さえされなければ問題は無いだろうと無理矢理納得させる。


 そうして屋敷に戻ると皆が先程迄作っていた双六を試しに遊んでいたのだが、やはり桜花様の作った人生双六は難易度が高い様であまり進んではいなかった。


「えっと今までの合計が十二で今回が四だから十六でまだ足りない…」

「学術書を買う為お金を八分貯める。手持ちに無ければお金を稼ぐ為に三回休み。またお金掛かるの? お金稼ぐの大変で進めない…」

「これは、思っていた以上に進まぬのじゃ」


 そんな場所に僕は帰った挨拶をして皆を労う。


「ただいま戻りました。皆もお疲れ様」


 桜花様は僕から見て背中を向けていた為、桜花様の頭のやや後ろで左右に留められた髪の房ごと長い黒髪を翻しながら振り返る動作が良く見る。

 振り返った桜花様が難しい顔をしながら挨拶を返してくれると、他の皆も同様に挨拶を返してくれた。


「おお四狼、戻ったか。こちらは思った以上に時間が掛かっておるのじゃ」

「四狼兄上、お帰りなさい」

「四狼兄上、お土産は有りますか?」

「四狼殿、お帰りで御座る」


 若干、三刃だけは僕よりお土産の方を待っていた様だったので、おやつを買ってきたと告げると喜んでいた。


「双六の方はあまり上手くいっていない様ですね」

「そうじゃな。わらわが作った物は中々進めぬので誰も上がれぬのじゃ」


 先程見た時も思ったが、桜花様の作った双六は骰子さいころを振る回数が多過ぎるのだ。一回骰子を振るのに三十二秒掛かった場合でも、四人で一巡するのに二分掛かるので、三十回で上がれても一時間近く掛かる計算になるのだが、桜花様の作った双六はどう見ても一人二百回は骰子を振る必要が有りそうだった。つまり、四人で一回遊ぶのに六時間以上掛かってしまう。

 この計算結果を桜花様に伝えたら、流石に桜花様も肩を落としていたので、業種で複数に分解して条件を緩和させれば大丈夫だと伝えたら少し元気になった。後で複製世界担当の分体にも手伝って貰って分割と修正をしようと思う。

 そこで皆の気を逸らせる為にもお土産の甘酒と湯呑を出し、たこ焼きやお好み焼きを小皿に取り分けて皆に配る。

 今は夏真っ盛りなので当然甘酒は収納前に術でしっかり冷やしてから倉庫に入れていたおかげで、暑い部屋で冷えた飲み物に皆嬉しそうだ。

 おやつ用なので量は多くないがたこ焼きやお好み焼きも好評の様だ。そういえばこの世界にはマヨネーズが無いので上に掛けられている調味料は惣酢そーすだけだが、日本でも昔はマヨネーズは掛かっていなかったのに、いつの間にかマヨネーズが掛かっているのが当たり前になっていて不思議だったのを思い出す。

 まあ、今となってはどうでも良い話だし、このままでも十分美味しいので問題は無いなと頭を切り替えて皆でおやつの時間を楽しんだ。


 おやつを食べ終わり、そろそろ帰るという桜花様に少し僕の部屋に来て貰う。


「なんじゃ、急に童を部屋に連れ込んで何をする気なのじゃ?」


 何時もの様に桜花様はからかい顔で僕に問い掛けてきたので要件を話す。


「追加で新しい魔道具を頂いて来たので、桜花様も興味が有るかと思ったので、こちらも試験を手伝って頂けたらと考えたのですが、無理なら遠慮なくおっしゃって頂ければ…」

「無理じゃない! 意地悪をせずに追加の魔道具を見せてよっ!」


 桜花様は僕の言葉を遮りながら詰め寄って来たので少し落ち着くように言い、倉庫の空きが足りるか確認をする。


「ちゃんと差し上げますから落ち着いて下さい。ただし、少し大きいのですが桜花様の異界倉庫の空きに余裕はありますか?」

「ん? どの位大きいのかは知らないけど、この部屋位は空きがあるわよ」

「でしたら問題無いですね」


 そう言って僕は洗濯機・食洗器・掃除機・炊飯器の四種を二台ずつと、魔石柱を二十個と設置装置を八個を無限倉庫から取り出して桜花様に渡して使い方を説明した。


「この魔石柱って説明通りの性能を発揮出来たらかなり凄わね、魔道具の革命が起こるかもしれないじゃない」

「それは流石に大袈裟じゃないですか?」

「何を言っているの?! 百倍もの呪力が有れば今まで呪力が足りずに起動出来なかった魔道具が使える様になったり、使用時間が短過ぎてあまり役に立たなかった魔道具も使用に耐える物になるかもしれないのよ。魔道具の幅が広がるのは確実じゃない」


 桜花様の反応は少し大袈裟な気がするのだが、今後何かの役に立つのなら作って良かったと思う。


「何にしてもお城には色々な魔道具もあるでしょうから、色々試して頂ければ助かります」

「助かるのは此方よ。昨日の今日でこれだけの対策を用意してくれるなんて、流石四狼だわ」

「提供してくれた方にそう伝えておきますよ」


 そう答えると桜花様はぶれないわねと苦笑しながら言って城に帰って行った。


 晩御飯は明日から遠征する父上と二狼兄上の為なのだろう、いつもより少しだけ豪勢な気がした。

 遠征前という事も有り今日は珍しく家族が全員揃っての晩御飯だったので、遠征中では食べられないだろう魚や野菜の天麩羅や唐揚げ等の揚げ物や焼き魚と、何時もの野菜たっぷりの味噌汁にご飯だ。

 今日の晩御飯も美味しいなと黙々と食べていたら父上が呟く声が聞こえてきた。


「今日の天麩羅は何時もより美味いな」

「そうですね龍牙様の仰る通り、何時もより美味しい気がいたします」

「ありがとうございます。四狼の持って来てくれた新しい魔道焜炉が何時もより火加減といいますか、温度の調節が楽でしたので、きっとそのお陰ですね」


 その呟きに春菜母上も同意したので秋穂母上が理由を語って二人を驚かせ、父上が訝しそうに尋ねる。


「四狼が魔道焜炉を?」

「はい、試作品の試験を頼まれたとかで、いくつもの魔道具を頂いてきたそうです」

「魔道具を頂いただと? 大丈夫なのか?」

「姫様も同じ物を頂いたので喜んでおられましたし、問題無いと思いますよ」

「そうですね、四狼が姫様に危険な物を渡すとは思えませんし、何時もより美味しいのなら問題無いでしょう。今はその美味しい料理を温かい内にいただきましょう」


 にこやかに答える春菜母上の言葉に、それもそうだなと言って父上も食事に専念する事にした様だ。

 その後は皆の食事が黙々と進み、食後のお茶を飲み始めた所でまだ渡していなかった父上や春菜母上、兄上達や姉上達にも全員に耐毒の腕輪を渡した。


「頂き物ですが毒の耐性を上げる効果のある腕輪だそうです。お守り代わりにお持ち下さい」


 その腕輪を見た父上は不思議そうな顔をしながら尋ねて来た。


「この腕輪もその魔道焜炉と同じ者から頂いたのか?」

「はい、そうですが、何か問題が有りましたか?」

「いや、問題というより高価な魔道具をいくつも配るというのが信じられん。何か裏が有ると思うのは当然だろう?」


 父上が何を心配しているのか理解した僕は誤魔化す為の理由を語る。


「単純にそれでも儲けが出ると考えているからだと言っておられました。今回頂いたのは全て試作品で有り、試験を兼ねて頂いた物です。これらは一点物の魔道具ではなくて大量生産を考えているので、使う人の要望も取り入れる為の試験でもある為多くの人に試して貰いたいそうです。そして僕に話が来たのは半ば偶然ですが、藤邑商会との交渉も報酬に含まれていたからです」

「藤邑商会、巧殿の商会に持ち込んだのか、ならば巧殿が色々検査もするだろうし、問題が有れば直ぐに知らせが来るだろう。成程、上手く取引出来た様だが四狼、お主は商人を目指すのか?」

「いえ、まだそこまでは考えておりませんし、まずは桜花様との件がどちらになるにせよ決まらなければ、その後の事は進められませんよ」

「おぉっ、そういえば四狼も三琅も姫様の婿候補の順位が上がったそうだなっ!」


 そう嬉しそうに話す父上に、今まで腕輪を物珍しそうに眺めていた三琅兄上が父上以上に嬉しさを溢れさせながら肯定する。


「そうなのです父上! 朝の見回り直前に詰め所に城からの使いの者が突然現れて、俺の婿候補位が五位に上がったと告げていったのです!」

「そうか、良かったな。四狼にも使いが来たのだな?」


 三琅兄上の気迫に父上は引き気味に祝福の言葉を掛け、僕にも聞いてくる。


「いえ、僕の所には何時もの様に桜花様が直接来られていたので、本人に聞きました」

「そうか、今日も姫様の剣術指南の日だったか」

「いえ、今日は五狼に付き合っていただき、術の方を修行されて行かれましたので、剣術の方は指導出来ませんでした」

「何を言っているのですか、今日の試合は姫様だけでなく、五狼や門下生にも良い見取り稽古になった事でしょう」

「そうだな、格上相手に無傷で勝ったし、良い試合だったぞ」


 しかし、剣術の指導はしていないと説明した僕に春菜母上と一狼兄上が訂正と称賛をしてくれるのが少し恥ずかしい。


「なんだ、四狼も試合をしたのか、俺の所にも試合の申し込みがあったので軽く捻ってやったぞ」

「三琅兄上も勝てた様で何よりです」

「いや、相手は五狼では勝てるか分からない程度で、間違いなく四狼もよりも弱かったぞ。四狼の相手は強かったのか?」

「はい、坂本家次男の忠昭殿で、とても強かったです」

「何?! 四狼が坂本忠昭殿に勝ったのか? それは凄いな」


 どうやら父上は坂本殿を知っている様子で、僕が勝ったという事に驚いている。


「父上は坂本殿をご存じなのですか?」

「ああ、忠昭殿は二狼と並んで軍では二人しかいない十代の隊長職の一人なのだが、四狼は良く勝てたものだな、俺も鼻が高いよ」


 父上は僕が勝った事を嬉しそうに褒めてくれるが、成人前で副隊長に勝ったのはやり過ぎだったのだろうかと少し心配になったので言い訳をしておく。


「いえ、坂本殿は身体能力だよりの戦いしかされませんでしたから、普段僕に稽古を付けてくれている二狼兄上の程の技能がある訳でも無く、頼みの身体能力でも一狼兄上程では有りませんでしたから、それでなんとか勝てたにすぎません」

「そう謙遜するな四狼、普段の修行の成果が出せたて勝てたらのならそれで良いでは無いか、今日は勝った事を誇り、明日からまた頑張れば良い」

「はい、ありがとうございます、父上」


 僕の話で引き合いに出された兄上達は嬉しそうに僕の方を見て頷いてくれたが、実際に勝てたのは修行の成果というよりも、転生特典の能力によるものだと分かっているので、僕はズルをしている様で少し恥ずかしく感じてしまったのだ。

 そんな気持ちを誤魔化す為に話を逸らす。


「僕の事よりも父上と二狼兄上は明日からの遠征、気を付けて行って来て下さい」

「ああ、この腕輪はありがたく使わせてもらう」

「四狼ありがとう、俺も明日からの遠征で使わせてもらうよ」


 そう言って二人は装着した腕輪を見せながら答える。


「父上や二狼は良いとして、何で俺達にも腕輪をくれたんだ?」

「そうだな、父上や二狼兄上は遠征に行くから危険かもしれんが、俺達は普段通りにこの町に居る訳だから必要無いと思うんだが」


 そう言って一狼兄上と三琅兄上は不思議そうに装着した腕輪を眺めながら聞いてくる。


「桜花様から聞いたのですが、候補から外れた者の中から暴走する可能性のある者が居るそうなので、武力だけなら兄上達に敵う者などそうそう居ませんが、毒物を使われると厄介なので一応用心の為に着けていて貰えると安心なのですが」

「なるほど、その様な者が居るのなら用心は必要だろう。四狼、ありがたく使わせてもらおう」

「そうですね兄上、四狼、感謝する」

「どういたしまして」


 その後は今日の呪力操作の訓練を五狼が楽しそうに父上に語り、父上だけでなく兄上達迄一緒になって試したりして僕達はこの後も暫く、久しぶりの家族全員そろっての団欒を楽しんだ。



読んで下さった方、有難う御座います。

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