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藤邑商会

お待たせ致しました。

楽しんで頂けたら幸いです。

「留守番お疲れ」

「お帰り、此方は寝てるだけの退屈な時間だったよ」


 留守番の分体に軽く挨拶だけをして分体を戻した僕は、桜花様達の居場所を地図で確認すると皆は居間に居る様だったので、そちらに向かい桜花様に進捗状況を尋ねる。


「桜花様、どの位進みましたか?」

「お、四狼、戻ってきたか。わらわの方は人生双六は完成したのじゃ。今は魔物討伐双六を作っておる」


 僕が複製世界に行っていた二時間程の間にもう一つ目を完成させているなんて、流石は桜花様だ。


「三刃ももう直ぐ一つ目が終わります」


 三刃も頑張っている様だ。


「僕はまだ掛かりそうです」


 意外な事に、五狼は苦戦しているみたいだな。


「私はさっぱりで御座るよ。申し訳ないが、やはり頭を使うのは苦手で御座るな」


 伊吹さんは苦笑いで謝って来た。


「無理はなさらなくて結構ですよ。完成していなくても最後には其々を検討して纏めますし、売り物にする訳でも有りませんので、一寸した案だけでも十分なんです」

「それを聞いて少し安心したで御座るよ」


 伊吹さんも苦手だと言いながらも頑張ってくれていた様だ。

 折角なので既に完成しているという桜花様の作った人生双六を確認してみると、中々の大作に仕上がっていた。

 それは既に完成品といっても良い程の出来具合だったのだ。


「桜花様、凄く良く出来てますね。これはもうこのままで良いんじゃないかな?」

「そうか、四狼が褒めてくれるとは嬉しいのじゃ」


 そもそも始める前に自己能力表を作ってから始める辺り、ロールプレイングゲームに近い気がする。

 更に開始地点で初期学習が入っていて、読み書き計算が出来る様になる為の条件が骰子さいころの合計二十四以上になるか、六が二回出るまで次のマスに進めない等の、各職業に就く為に必要な能力を上げるまで進めないますがいくつも在ったりと、かなり厳しい仕様になっている。

 しかし、それが逆に上手く釣り合っているので、下手に手を加えるとそれが崩れてしまいそうなのだ。

 最終的には目指せる職業は、猟師や武士等の戦闘系、採取や栽培・酪農等の農業系、屋台から商会までの様々な商売系、術や鍛冶、道具作り、魔道具作り等の生産研究系、等々、僕の要望以上に多岐にわたっている大作で、これを一回遊ぶのにはそれなりの時間が掛かるだろうと思った。

 なのでこの双六はこのままの物と、簡略化した物を用意した方が良いかもしれない。


 三刃の方は先に魔物討伐双六を作っていた様だがこちらも力作というか、攻撃判定に首を落としたとか殺伐とした表現が有るのは子供用として良いのかなとも思ったが、相手は魔物だし討伐なのだから多少は仕方が無いのだろう。

 そして一定回数攻撃判定に失敗すると逆に自分が倒された事になり、ふりだしに戻るのでこちらも一回遊ぶのにも時間が掛かりそうだった。


 二人とは裏腹に五狼に至っては良くも悪くも普通過ぎて、僕には何もいう事が無なかった。

 何はともあれこちらの方はこのまま任せておいても問題無いだろうと判断し、僕は魔石柱や魔道焜炉について相談する為に巧義兄上の店に行く事にする。


「僕は少し出掛けて来るから、皆はこのまま続けていて欲しい」

「四狼は何処へ行くのじゃ?」

「先程の焜炉等を見て貰いに、巧義兄上のお店に行ってきたいと思います」

「成程、藤邑商会ふじむらしょうかいじゃな、了解したのじゃ」


 桜花様はあっさり納得してくれた。


「四狼兄上、行ってらっしゃいませ」

「四狼兄上、三刃はお土産を期待しております」


 五狼は普通に、三刃はしっかりお土産を強請る始末だが、これも何時もの事なので気せずに、何か良い物が有ったらねと受け流す。


 そうして僕は屋敷の門を潜り、外に出てふと考える。


『皆には耐毒の腕輪を配ったが、屋敷の方にも何か防御をした方が良いのかな?』

『御心配でしたら敷地内に結界を張る事をお勧めします』

『結界?』

『障壁は真っ直ぐな壁や湾曲した壁を発生させるので背後は空いてしまうのに対し、結界は球や立方体等の様に周囲を完全に覆ってしまいます。また、対象物を覆う事で任意の形にする事も可能ですので屋敷を結界で覆ってしまい、害意のある者を入れなくしてしまえば内部を守る事が容易に出来ます』

『主様は自動的に御自身の身体に八重の結界を纏っているのですよ。そのお陰で昨日重力制御で空を飛んでいても風圧の影響を受けなかったのですよ』


 そう言えば、昨日空を飛んだ時、結構な速度で飛んでいた筈なのに風圧とかは殆ど感じなかった。


『飛行中は身体に密着していた結界を少し広げていましたから、服等も脱げずに飛行出来たのです』


 確かにあの速さで普通に飛んでいたら風圧で服が脱げてしまいそうだ。


『話が逸れてしまいましたが、屋敷に結界を張る事で侵入者を防ぐ事が可能です。結界を張りますか?』

『そうだね、敷地全体に結界を張る事は出来るのかな?』

『問題ありません。効果・範囲・効果時間を設定するだけで発動出来ます』

『それじゃあ効果は害意ある物を通さない、で効果範囲は敷地内全域、効果時間は可能な限り長くって事で後は任せて良いのかな?』

『了解致しました。ご指示通りの結界を張らさせて頂きました』

『有難う、天照』


 これで家の事を心配する必要も無くなったので、僕は改めて巧義兄上の元へ出かける為に歩き出した。


 家の前の中道を抜けて大通に出ると、直ぐに有る乗合自走車の停留場に行き、待っていると数分で次の便が来たのでそれに乗り込み、お金を払って藤邑商会の在る東区の第四商業区に向かう。

 この乗合自走車の料金は安く、第一門の中を出入りする乗合自走車は何処から何処迄乗っても一律八文と、銭貨一枚で済むので利用率も高く、いつでも其れなりに混雑している。

 そして第一門の内側、中央区に入らない乗合自走車は更に安く四文で済むのだが、これは身分や所得の格差による問題を防ぐ為にも必要な事だったし、庶民が中央区に来る必要も滅多に無いので、寧ろお偉いさんに会わなくて済むんで料金も安いと庶民には好評だったりもする。

 それに、中央区は文字通り町の中央で城のある富裕層の多く住む区画になる為、南北や東西等の反対の区画に行くには中央区を突き抜けるか、回り込むしか無いので乗合自走車が登場してから数年しか経っていないにも拘わらず、庶民の足として定着していた。


 ちなみにこの国のお金は小さい方から、銅で出来た長方形の板型の小銭貨しょうせんか銭貨せんか、銀で出来た円盤型の小玉銀こだまぎん丁銀ちょうぎん、金で出来た見た目そのままの小判・大判の六種類が一般で使われており、素材毎にもんりょうの単位で数えられている。

 さらに其々の貨幣は八枚毎に次の貨幣に交換出来るので、六十四文で一分になり、六十四分で一両になる訳だ。


 そんな乗合自走車に乗って十数分程で最寄りの停留場に着き、更に数分歩く事で目的の藤邑商会の店舗に到着する。

 藤邑商会の店舗は三階建てで一階は庶民向けの商品を、二階は富裕層向けの商品を扱っており、三階が巧義兄上達の居住区になっている。

 用が有るのはお店の方にではなくて巧義兄上なのだが今はまだ仕事中だろうとお店に入り、馴染みの店員に取り次いで貰うと直ぐに執務室に案内された。


「ご無沙汰しております、巧義兄上」

「ご無沙汰って先月も会ったじゃないか。で、今日はどうしたんだい?」


 巧義兄上は仕事中に突然訪ねて来た僕ににこやかに笑いながら訪問理由を尋ねて来た。


「お仕事中に申し訳ありません。少し面白い試作品を紹介出来そうなので相談に来ました」

「面白い試作品? 何か気になる事を言うね」

「これです」


 僕はそう言うと無限倉庫から魔石柱・設置装置・魔道電磁焜炉・魔道電磁炊飯器・魔道電磁焼鍋を順に取り出し巧義兄上に見て貰う。


「どれも、何なのか分からないのだが、最後のだけは焼鍋やきなべの様に見えるが、妙に底が厚いね」


 巧義兄上は魔道電磁焼鍋を手に取ってひっくり返したりしながら色々な角度で眺めるが、どれも初めて見る形状な為か、巧義兄上は困惑顔だったので説明をする。


「そちらは巧義兄上の仰る通り焼鍋ですが、そこの突起を動かす事で鍋の内側の底が発熱して焜炉を使わずに料理が出来るそうです。更に取っ手から直接呪力を流す事で魔石を消費せずに使用する事も可能だそうです」

「調理の魔道具か、とても便利そうだけど魔石はこの取っ手に入っているのかな?」


 そう言って取っ手を眺める巧義兄上に魔石柱の場所を教えると、巧義兄上は不思議そうな顔で聞いてくる。


「これが魔石? そういえば最初に出した物と同じ物の様だけど、銀色の金属にしか見えないんだが?」

「はい、先に渡した物と同じで魔石代わりになる魔石柱という物なのですが、魔石を加工した新しい使用方法だと聞いております。こちらの設置装置を魔道具の呪力吸引端子に繋げる事で今までより効率良く呪力供給が出来るそうです」

「効率が良いのかい?」

「はい、同じ大きさの魔石に対して今までの百倍以上長持ちするそうです」

「百倍っ!?」


 流石に百倍は信じられないのか、巧義兄上の困惑顔が今度は驚愕に染まる。


「信じられないのも無理は有りませんし、まだ試作段階だとの事なので、まずは試して貰いたいのだそうです」

「そういえば、試作品なのだったね」

「はい、それで改良点が有れば教えて欲しいそうです」


 僕は巧義兄上にそう答え、魔道電磁焜炉や魔道電磁炊飯器を説明すると、更に驚いて喜んでくれたので要望を伝える。


「これらの物の使用感や改善点が有れば教えて欲しいのと、実際に売り出した場合の相場が知りたいそうです」


 巧義兄上は首を捻りながら答える。


「これが説明通りの性能を持っているなら、従来の魔道焜炉の値段から考えても其れなりの値段になるのは当然だが、採算の取れる金額にするには材料費や工賃等の原価がある程度は分からないと値段が付けられないよ。四狼はその辺りも聞いているのかい?」


 僕は材料費等の話を聞いて少し困ってしまった、というのも従来の魔道焜炉は発火装置に聖銀を其れなりの量を使っている為に非常に高価なのだが、この魔道電磁焜炉は加熱装置には銅を使っているし、術の発生装置には小さな金を、呪力の伝達には銀を使っている程度なので高価な素材は僅かしか使われていないのだ。

 他には設置装置に聖銀を少し使っている位だろうか。

 なので材料費は従来の魔道焜炉の百分の一も掛かっているかどうかといった程度なのだ。

 工賃も僕が作れば一瞬なのだから無料だし、普通に作るには特殊な電撃の術の付与が出来る者が必要になるので、これは他の者には出来ないだろうから、他者に任せるには素材を僕が一々用意する必要が出て来る。

 しかし、それなら全て自分でやった方が早いので意味が無いし、焜炉作りに忙殺されるのは嫌なので誰かに任せる方法を考えた結果。

 結局他者に出来ない加工を代替わり出来る魔道具を作って、その魔道具の操作を任せるのが面倒が少なくて最良なのだろうと結論付けて、巧義兄上に答える。


「材料費は従来品よりかなり安く、工賃も現在は本人が作っているので直接は掛かっていない筈です。今後大量生産する事になれば工賃は発生するでしょうが、材料費はあまり変わらないと思いますので、初めは従来の物と近い値段で売りつつ、将来的には下げて行ければ良いと思うのですが」


 巧義兄上は僕の答えを聞いて暫く考え込み返答する。


「材料費がどの位安く済んでいるのか分からないけど、一人で作っているとなると暫く量産は難しそうだね。実際、魔道具の大半は誰にでも作れる物でも無いのが高価になる原因なのだから仕方が無いか。そういう意味でも初めは高めで売るというのは良いだろう。これが説明通りの性能を持っているのなら間違いなく売れるだろうしね」


 そこで巧義兄上は更に難しそうな顔で続ける。


「問題は焜炉よりこの魔石柱? の方だよ。只の魔石より百倍長持ちだとやはり百倍の値段で売るべきなのか、付加価値として更に高値にするべきか」

「魔石柱の中は白魔石だそうなので、此方の素材買取も相場の倍払うので頼みたいそうです」

「相場の倍!?」

「はい、差額を利益にして欲しいとの事です」

「さっきから聞いているとその依頼人は相当の太っ腹なのか、只の馬鹿なのか、判断が難しくなるね」

「例え倍の値段で買っても百倍以上の性能ですから、魔石の五十倍の値段で売っても二十倍以上の利益になります。十分に考えていると思いますよ」


 僕の反論に巧義兄上も確かにそうだと今度は納得してくれた。


「それに白魔石で出来ているという事は、再充填が可能だという事です。新しい魔石柱を買う時に使用済みの魔石柱を持って来たら交換品を八分の一程値引きして頂けると、その分の補填もしてくれるそうです」

「その再充填は誰にでもは出来ないのかい?」

「はい、呪力操作の熟練度が相当に高くないと難しいそうです」

「そう上手くはいかないか」


 巧義兄上は少し残念そうに笑いながら力を抜いた。

 丁度その時を待っていたかの様に襖の向こうから声が掛かる。


「お茶を持ってまいりました」


 そう言って襖を開け、中に入って来たのは一刃姉上だった。


「お久し振りです、一刃姉上」

「久し振りって、先月の四狼の誕生日にも会ったじゃない。で、今日は如何したの?」


 そう言って一刃姉上は巧義兄上と僕の前にお茶を出す。


「はい、巧義兄に少し相談がありまして、上手くいけば儲けになる話を持ってきました」

「四狼が儲け話?」


 一刃姉上は僕が儲け話を持って来たという事に半信半疑の様だ。


「そうだな、僕が見るより一刃が見た方が良いかもしれない。新しい魔道焜炉と魔道炊飯器に魔道焼鍋だそうだ」

「魔道焜炉はともかく、魔道炊飯器と魔道焼鍋?」

「ああ、これが説明通りの能力を持っているなら仕入れの移動中でも暖かい物が食べられる筈だ」

「それは、便利そうですね」


 流石の一刃姉上も巧義兄上に実物を見せられると興味を持った様だ。

 町の外を移動中は暖かい物を食すには焚火等を準備したりと何かと時間が掛かるが、魔道焼鍋が有れば火を焚かずに料理出来るのである。これは他の町を移動する者にはかなり重宝するだろう事は実際に時々他の町へ移動している二人には明白だった。

 異界倉庫を持っていれば話は別だが、大概の者はその様な便利な能力を持っていない。

 なので魔道炊飯器が有れば誰でも町の外で温かいご飯が食べられるのだから、ある意味革命的発明なのだろう。

 流石、食に拘る和国民といった所か。

 和富王国は初代様を始め、過去の覚醒者が色々やらかしたお陰で拉麺ラーメン麺麭パン等を含め、日本で食べる事の出来た食べ物の八割近くが和富王国で既に食べられるのだ。

 現在の和富王国で食べられない食物は、未だに国内で発見出来ていない果物や香辛料を使った物や、刺身等の生物なまもの、材料や制作過程が秘匿されていた物、位だろうか。

 そんな食に拘る国民性なのだから、この魔道電磁調理器は意外と早く普及するのではないかと僕は思った。



読んで下さった方、有難う御座います。

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