主婦の守護者
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嵐の様に現れて帰って行った坂本殿を送った後の屋外修練場には僕の他に、桜花様、伊吹さん、五狼、三刃が残っていたが試合の結果、僕の服はぼろぼろになっていたので着替えたりもする為に午後の修行は延期にして、空いた時間に昨日考えてた孤児院向けの玩具を作るのを手伝って貰おうと考えた。
「桜花様、流石に少し疲れましたので部屋で少し休んで来ます。その間に皆で孤児院用の玩具を作るのを手伝って頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
「うむ、あれだけの試合の後じゃから疲れるのは当然じゃな。ゆっくりすると良い。しかし、玩具作りの手伝いと言われても童には道具なぞ作れぬぞ」
桜花様は難しい事は出来ないと否定的だが、道具作りを頼む訳では無いので問題は無い。
「いえ、子供達に文字や計算等を含め、何かを学べる様な双六を作れればと思ったんですよ。そんな人生双六や魔物討伐双六等があると面白いと思いませんか?」
「確かに子供達が喜びそうじゃが既に売られている双六では駄目なのか?」
当然の疑問だと思うが、孤児達が遊ぶには既製品の双六では問題が有るので理由を桜花様に説明する。
「いえ、通常の物はお金を稼ぐのが目的になっている物が多いですが、孤児院には職業を意識した物の方が良いかと思ったのです」
「成程、目的の職業を目指す方向の双六じゃな?」
「はい、それに現在売られている人生双六の大半は最初から身分は一般人か商人ですから、孤児でも目指せる職業を示唆する事で、将来を模索出来るのではないかと考えたのです」
実際の処、この国で販売されている人生双六等の娯楽玩具は一般とはいっても多少は裕福な家庭で無いと買える余裕など無いのだから、当然人生双六を買える身分から始まる訳である。
これを孤児達に当て嵌めても意味は無いだろうと僕は考えたのだ。
「確かに和富王国では孤児でも実力さえあれば兵士になり、頑張れば士族になる事すら不可能ではないが、商候処か商人になるにも初期の資金が無い分、そちらの方が難しいじゃろうな」
孤児院の子供達に必要なのは、教育と将来目標だと考えた僕の意見に桜花様も一定の納得を示してくれた様だ。
「その辺りも踏まえて魔物討伐型にも現実に沿って事前準備が整っていないと失敗する様な仕組みを入れたりすると、実用的な知識も得られるかと思ったのです」
「流石四狼じゃな。遊びながら学び、更に将来の事まで考えさせるとは見事じゃ」
桜花様は僕の事を少し褒め過ぎな気もするが、僕も桜花様に褒められて悪い気はしないので素直に受け入れる。
「有難う御座います。それを皆で其々に考えて貰い、それらを統合編集すれば、実用的で面白い双六が出来るんじゃないかと思ったのです」
「良かろう。童達に任すが良い」
桜花様は胸を張って乗り気で答えてくれる。
「五狼と三刃も桜花様を手伝って貰えるかな」
「はい、僕も良い考えだと思います。喜んでお手伝い致します」
「ん、三刃も姫様と一緒にやります」
五狼と三刃も快諾してくれた。
「それで、伊吹さんは如何します?」
「そうですね、確かに面白そうなので私も此方を手伝うで御座るよ」
「有難う御座います」
僕はお礼を言って皆に其々九十センチ四方の紙を二枚ずつと魔道具の筆を渡す。
この筆は呪力を流すと一定時間文字等が書ける物で、和富王国では一般的な筆記用具だ。
何気に和富王国の魔道具が充実しているのは初代国王様や過去・現在の覚醒者のお陰も有るのだろう。
能力も資材も大量に有るのだから、僕も頑張って皆が使える様な魔道具を作れないか考えてみようと思ったが、まずは自分で使う物から始めよう。
「それじゃあ皆、宜しく」
「任せるのじゃ」
「「はい」」
「後は任せるで御座るよ」
皆の快い返事を聞いてから、僕は部屋に戻って着替えを済ます。
わざわざ皆に部屋で休むと言って時間を空けたのは、朝に作っていたIH炊飯器を完成させ、桜花様に任せた双六用の魔道骰子や、他にも時間が有れば作っておきたい物が有ったからだ。
そして僕は一応誰か来た時の為に分体を一人残して複製世界に転移すると、複製世界担当の分体が声を掛けてきた。
「あ、本体もこっちに来たんだ。朝作ってた炊飯器は出来てるよ」
「え、今から完成させようと思ってたのに」
今から完成させようと思って来たのに、分体が既に完成させてしまったいうので無限倉庫を確認すると、五合炊きと一升炊きが十六台ずつ入っていた。
事情は聞くより記憶統合した方が早いと思い統合すると、無限倉庫内の炊飯器を見つけた分体が記憶統合して事情を知り、天照が火力や時間を演算して幾つかの候補を上げてそれを分体四人で複数の炊飯器を同時に作って好みの炊き具合になる様に試した様だ。
確かに一人でやるより早く出来て良かったのかもしれない思い、これから作る物も協力させる。
「じゃあ、これから作る物も分ってるみたいだから参加して欲しい」
「了解、僕は二つ目の方を作るよ」
「じゃあ僕は三つ目だね」
複製世界担当の分体に更に分体を一人増やさせて参加して貰い、三人の僕で魔道具の作成を始める。
僕は初めに考えていた回転式魔道骰子を作る事にした。
骰子とはいっても実際にはルーレットなのだが、この国には対応しそうな言葉が無いので仮にそう呼ぶ事にしたのだ。
僕は錬成空間を展開し、銅を素材に直径九センチ、厚さ三ミリの円盤を作り、中心に直径一センチで高さを六ミリ盛り上げ、その盛り上げた円柱の周りにはねじ山を刻み、中央には直径一ミリの半球の軸受け用の穴を開けておく。
更に銅板の淵から幅八ミリの高さを十二ミリ盛り上げ、淵と中央の六ミリを覗いて銀糸を張って線を引き六等分する。
その銀糸の淵側に銀で厚さ一ミリで一センチ角の板を付けて回る針の止め板にし、更に光の術を付与しておく。
土台が出来た所で角の部分を子供達が怪我をしない様、全て面取りし丸めてから中央の出っ張りと銀を素材に使った部分以外を少し暗めの白い塗料で塗り、六等分した枠に一から六の数字を書いていく。
次に四ミリ程の白魔石を聖銀で覆い下側に直径一ミリ弱の出っ張りを付け、上側には銀の棒を一センチ伸ばしておき、白魔石の直ぐ上銀の棒の根元に直径六ミリの胴の円盤を固定して独楽の様な軸にし、呪力の一時貯蔵と回転の制御装置にする。
この軸を軸受け用の穴に嵌め、軸を通す為の穴を開けた銅の蓋の内側に銀膜を張り呪力の通り道とし、内側の側面にはねじ山を刻んで、土台中央の出っ張りに刻んだねじ山にねじ止めして外れない様にする。
蓋から出た軸から横に直角に薄くてしなる様にした銅版の針を固定し、軸の天辺にも銀の円盤を固定して呪力の受け皿にして最後に全体に軽く保護を付与して完成だ。
中央の円盤に呪力を流すと土台の淵の内側にある止め板が仄かに光り、流した呪力の量によって光る止め板の数が増えるのだが、呪力操作の練習にもなる様に光の数が増える程に必要な呪力も増える仕様にしてある。
呪力を流すのを止めて指を離すと針が回りだし、流した呪力の量によって止まるまでの時間も変わる。
この光る板の数が多い程、高い数字の位置に針が止まる確率が上がるのだが、どの数字に止まるのかは確率なので光が一つでも六に止まる可能性はあるし、八つ全てが光っていても一に止まる可能性もある。
流す呪力で高い数字を確定にすると面白みが減ると思い、あくまで確率にしておいたのだ。
これで回転式魔道骰子の方は完成したので、複製を十五個作成し纏めて無限倉庫に収納しておく。
これで僕の作業が終わったので、分体が作っている他の物の出来具合を確認してみる事にした。
まず一つ目は縦横六十センチ四方で高さが百二十センチあり、上に後ろで固定された扉のある縦長の箱だ。
扉は本体より若干小さくしてあり扉の手前には左から、赤黄青と少し離れて緑の四つの突起があり、右端には魔石柱を入れる為の穴もある。
扉の中は四角い空間で術の付与の為に軽聖銀合金を使用し、上の蓋は開き易くする為に軽い軽銀(アルミ)を使い、外側は強度と錆に強くする為に不銹鋼(ステンレス)を使用しているが、どちらも薄い板状の物を加工してあるので中は空洞になっていて、見た目の体積に対してはかなり軽く出来ている。
更に底面の四隅に直径六センチの樹脂製の足をねじ式で付けてあり、この足を回す事で高さを微調節出来る様にもしてある。
四つの足が独立して高さを変えられるのは、多少床が歪でも設置が出来る為に工夫したのと、無害化した廃棄物を底面から排出する為だ。
これは日本の知識が有れば見た目で直ぐに分るだろうが、一応洗濯機の様な物だ。
様な物というのは実際には汚れを浄化して落としている為、洗濯している訳では無いからなのだが、浄化は数秒で終わるし洗濯ではない為に洗剤は勿論、水も使っていないので干す必要すら無い辺り、使い勝手はこちらの方が上だろう。
一応洗濯機は既に販売されているのだが、二層式で脱水は別だったり、洗濯中も回転を操作しないと一方向に回り続けたりと使い勝手が悪く、我が家の様な荒事も多い武家等では良く付く汚れの一つでもある血の跡等の落とし難い汚れは結局手洗いになるし、生地が痛むので高級な服等にも使えないので、どんな服にも使えて、しつこい汚れも落とせる洗濯機の代わりになる物を作ってみたのだ。
操作も簡単に赤黄青が強中弱に対応しており、このどれかを押した後に緑を押す事で起動する様にしてある。
最後に金属剥き出しよりは良いだろうと思い、白物家電の代わりという事で白く塗装しておいた。
折角なので全く同じ機能で九十センチ四方の物と、高さが半分の物も作っておく。
大きい方は鎧等の大きな物用で、小さい方は洗濯機では無くて食洗器代わりだ。
地球の洗濯機の様に中で回転している訳では無いので、そのまま流用が可能だったりする。
最後に用意したのは掃除機だ。
形は円筒形でこちらも不銹鋼(ステンレス)を白く染めている。
中には円錐状にした軽聖銀合金に竜巻の術を付与してサイクロン掃除機を再現してみた。
当然筒の中央で外れる様になっており、下部には紙製の袋を付けて溜まった塵も簡単に処分出来る現代風にしてある。
吸引口から延びる管の部分は陸鰐の小腸を薬液に漬けて乾燥させる事で防腐と強靭化した物を使用し、更に銀の糸をばねの様に回しながら埋め込んで補強しつつ、この銀線を通す事で吸引や停止の操作が手元で出来る様にもした。
上部の排気口前には軽聖銀合金の網を設置し、気体以外を通さない様に設定した障壁を付与して塵や埃が外に出ない様にもしてある。
底には当然車輪が三つ付いていて、自由度を高める為に其々が独立して方向を変えられる様にした。
どれも試した結果は予定通りの働きをしたので、炊飯器を含めて白物家電型魔道具が三点完成だ。
ちなみに冷蔵庫は既に普通に有るので僕が作る必要は無かったりする。
『おめでとう御座いますご主人様、今回の魔道具作成で家事の革命家、主婦の守護者の称号を獲得致しました』
『主婦の守護者? 守護なんてした覚えは無いんだけど』
『主様、炊事・洗濯・掃除は主婦の三大仕事なのですよ。それを簡易化させたのですから守護者なのですよ』
『確かに炊飯器・洗濯機・掃除機を作ったけど、朝の下着の件とか有ったし狩りをすれば血で汚れるのも当たり前だし、この世界は僕しか居ないから掃除も自分でしないといけないからとか、全部僕が必要だと思って作ったんだけどな』
『これらも今後市場に売り出すのなら同じなのですよ。ならば主婦の皆さんは大助かりなのですよ』
『称号は功績になりますので素直に獲得した事を喜べば宜しいかと思います』
『それもそうなの、かな?』
意図していた訳では無かったのだが、自分の為に作った物が他の人の役にも立つのなら、それはそれで良かったのかもしれないし、狙わずに功績を貰えたのだから天照が言うように素直に喜んでおこうと思った。
「分体の皆もお疲れ、目的の物が完成して、称号迄貰えて助かったよ」
「自分に礼は必要無いよ」
複製世界担当の分体はそう言いながら出していた分体を戻したので、僕も今回作った物を十六台複製して無限倉庫に収納し、一台はこの世界の分体が使う為に残しておいた。
これで今此方でやる事が全部終了したので、元の世界の自室に分体しかいない事を確認してから自室に転移する。
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