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魔石の効率化

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 その後は特に問題も起きずに残り3ヶ所の孤児院を回り、お城まで桜花様のお供をした後、勢多さんが家まで自走車で送ってくれるというのを歩いても10分程度だからと断り、ついでに勢多さんにも草薙の事を注意するように伝えておいた。桜花様に直接何かをする可能性は低いと思ったのだが、一応だ。

 城から歩く事にしたのは地図に複数の僕に害意を持った者が表示されていて、こちらに向かっていたからだ。やっぱり僕を狙ってきたかと思いながらも何人かを地図上から鑑定してみたが、こちらもやはり誘導状態になっていた。僕のせいで無関係かもしれない人を操られたままにしておくのは心苦しいし、放置して何か問題を起こしてしまうとその人の経歴にも傷が付いたり、最悪捕縛されるかもしれないのだから回復しておこうと思ったのだ。

 そこで僕は勢多さん達も持っていた能力、隠形を試しに使い襲撃者に向かって行くが目の前に出てもまるで気付かれなかったので襲撃者にそっと手で触れ、王子にした様に毒成分を無限倉庫に収納していく。毒成分を抜かれた人は一瞬びくっっとすると、何でこんな所に?っと不思議そうにしながらもそのまま何処かに歩いて行った。その後も何人も繰り返し毒成分を収納していると周りには害意を持った者が居なくなったので隠形を解いて家に向かう。


『草薙はこんな素人を操って何をしたかったのかな?』

『そうですね、この程度の者ではご主人様はおろか、桜花様にすら何も出来ないでしょうから、只の嫌がらせではないでしょうか?』

『主様の実力を測っているのかもしれないのですよ』

『そういう見方も有るのか? それにしても素人では何も測れないと思うんだけど』


 いくら考えても草薙の思惑は分かりそうにないので今は棚上げしておいて、無限倉庫にある収納した薬物を鑑定してみたが、少し思考が鈍る程度の軽い麻薬の様な物でしかない様だ。

 これ以上は情報が無いので今度は魔石の代わりをどうするかを考える。草薙が魔石の供給を減らすかは分からないが、減らされてから対応しても遅いかと思ったのだ。

 そこで魔石について考えてみた。魔石は魔物の心臓から採れる訳だが、そもそも心臓が石で出来ていると血液はどうやって身体を巡ってるんだ? 知らない事は知ってる者に聞くのが早いと天照に聞いてみる。


『いえ、魔石は魔物が活動停止した後に心臓に残っている魔力が心臓を取り込み結晶化したものです』

『心臓が魔石化する物を魔物と呼んでいるのですよ』

『活動停止?』

『はい、動く死者の様に既に死んでいる者も居りますので』


 確かに動く死体は初めから死んでるから、死んだらじゃなくて活動停止なのか。


『他にもある程度高位の魔物は脳や目等も魔石化するのですよ』

『白魔石は脳が、通常の赤い魔石は心臓が魔石化したもので、その2色以外の魔石は目が魔石化した物です』

『白魔石は使い道が少ないから安く買えるらしいけど、他の色の魔石は見た事が無いよ』


 白魔石は売ってもお金にならない分、そのまま放置したり、捨ててしまう場合も多い様だし。


『色魔石は白魔石化する魔物より更に高位の魔物からしか取れませんので、存在自体があまり知られていない様です』


 赤白以外の色が有るのは知らなかったが、そんな高位の魔物なんて一般人が出会ったら逆に狩られてしまうだろうから、普通の市場に出て来る筈が無いのか。軍で狩った魔物は国で直接使うか、大手の商会位しか手に入れられないから、一般に回ってくるのはその後になるしね。


『簡単に手に入らないんじゃ今回は意味が無いよ。安い白魔石で上手く赤魔石の代わりに出来ないかな?』

『充電池の様な物を作れば良いと思いますが』


 それも考えたけど、充填するのに無駄が多いから誰も充填してまで使わないらしい。それなら直接呪力を流した方が早いのだ。


『そのままでは効率が悪いので、直接使用せずに加工して効率化させれば良いのですよ』

『魔石の効率化って出来るの?』

『はい、魔石の周りを銀等の低位魔導金属で覆って魔力障壁を付加し漏れを防いだ後、一点だけに聖銀等の上位魔導金属の欠片を付けて入出力端子にする事で、全方位に発散していた魔力を端子からのみ充填や供給させる事が出来ます。魔石の供給装置も多少改良が必要になりますが、無駄が減るのでかなり長持ちしますし、充填の効率も上がります。勿論再利用も可能になりますが、白魔石の本来の使い方では有りませんのでお勧めはしません。普通に赤魔石を使って同じ様に加工をしましても数十倍の効率化が出来ると思いますので、そちらをお勧め致します』


 あれ? それで問題解決なんじゃないかな? それに…


『白魔石の本来の使い方って、呪力を補充して使うんじゃないの?』

『いえ、白魔石の元は脳です。つまり簡単な処理で制御装置として使う事が出来ますし、絡繰り等の制御に使えばかなり柔軟な行動も可能になります』

『無限倉庫に入っている絡繰りの制御にも使われているのですよ』

『つまり、一般に使われている絡繰り人形も白魔石で制御装置を作って入れると性能が上がるのかな?』

『簡潔に言えばその通りです』

『超高品質の白魔石が有れば、人を超える人工頭脳も出来るのですよ』


 なんか考えていた事と方向性が変わってきてしまったが、これって技術分野が一気に進化してしまいそうな位に凄い情報なんじゃないかな? 問題が起きない様、良く考えてから試さないといけないし、まずは充填型の魔石とそれを使う為の装置を作らないといけないのか。本当にやれる事が増える度にやる事も増えてしまう。もっとのんびりしたいんだけど、それ以上に興味も沸いているので困ったものだ。そんな事を考えている内に僕は家に辿り着いた。


 帰ったら丁度夕飯の時間だったので、そのまま食卓に向かう。父上と二狼兄上はまだ仕事なので帰って来ていないが、その他の家族は全員揃っていた。ちなみに今日の夕飯はご飯と秋穂母上特製の大根等の複数の野菜と果物をおろして煮込んで作った調味料がかかっている槍猪の賽子焼き、所謂サイコロステーキと野菜の味噌汁等だった。特製調味料のしょっぱさの中にある微妙な甘みと酸味が肉の味を引き立ていてとても美味しかった。

 夕飯に満足した後に五狼と三刃に明日の午前中に術の指導をすると言ったら、五狼は喜んでくれたが三刃はなんで私まで? っと乗り気ではなかった。三刃は五狼とは逆に武闘派だから術の方にはあまり興味が無かったので、三刃に合いそうな新しい武器の使用に必要だと言うと新しい武器に興味津々で喰い付いてきた。新しい武器はある程度の呪力制御が必須だからと呪力制御が出来る様になったらあげると約束させられた。これで二人は暫く屋敷に閉じ込める事が出来そうで一安心だ。そう思っていたら三琅兄上が話しかけてきた。


「四狼、先程三刃に聞いたのだが四狼の姫様の婿候補の順位が上がるというのは本当なのか?」


 余計な事を話したな、っと三刃の方を見ると拙いと思ったのか、あからさまに顔を背けてしまった。知られてしまったのなら仕方が無いので正直に答える。


「えっと、本当かは分かりませんが、桜花様はそう仰っておりました」

「桜花様だとっ! 四狼、何時の間に姫様を名前で呼ぶ事を許して貰えたのだっ!」

「今日ですが一般の方でも本人のいない所では普通に名前で呼んでいますよ。桃姫様もいらっしゃいますし」


 まぁ一般の人が桜花様に直接会って話す事は無いのだが、和富王国には姫様が二人居るので姫様呼びだと、どちらか分からなくなるので名前で呼ぶのも珍しくない。しかし、王族の名前を本人に直接呼ぶのには本人の許可を貰う必要が有る。違反したからといって特に罰則は無いのだが、この国の数少ない身分制度の一つである。これも理由は分からないけど、きっと初代様が決めたのだろう。


「まあ、名前の方は良い。しかし何で四狼だけ順位が上がるんだ?」


 そう言えば一応三琅兄上も桜花様の婿候補の一人だった。年齢が僕より離れている為、僕の2つ後の順位だった筈だ。三琅兄上は桜花様の事が好きだったから、元から可能性は低いのは知っていた筈だが、出来れば結婚したかったのだろう。なのに僕だけが順位が上がった事に納得出来ない様だ。三琅兄上を見ていた二刃姉上の目には優しさが浮かんでいて、その後こちらに目で説明を訴えてきたので経緯を説明する。


「今日、桜花様が術が使えないというので術の指導を致しましたら、少しだけ使える様になりましたので、それが功績だと仰っておられました」

「術だと? 四狼は刀の指導をしているのではなかったのか?」

「今日は予定に無かったのですが、桜花様が突然来られまして、準備も時間も無かったので話をしていたら、その流れで術の指導をする事になりました」

「良く判らんが、四狼は指導が出来る程に術には詳しくは無かったと思うのだが?」


 やっぱり皆そこを疑問に思うか。実際、昨日までの僕は殆ど術は使えなかった筈なのだ。疑問に思わない方がおかしいだろう。なのでここは天照に頼ろう。


『どう誤魔化したら良いかな?』

『新しい書物を見つけたか、詳しい人物と知り合った、辺りでは駄目でしょうか?』

『その書物を見せろって言われたり、詳しい人に会わせろって言われたらどうするの?』

『無限倉庫にいくつも魔術書が有りますので初級の物を見せれば良いのですよ』

『詳しい人物の紹介は相手の都合が付かないから難しい、で問題無いかと思います』


 どっちにしても多少は問題が有りそうだから、両方を合わせる事にしよう。


「最近知り合った人に術に詳しい人が居まして、その方に魔術書を見せて頂いたのです」

「いつの間にそんな知り合いが?」

「僕にも色々な付き合いが有りますから」


 三琅兄上はいまいち納得出来ていない様だがそれ以上は聞いてこなかった。しかし代わって五狼が聞いてくる。


「四狼兄上、その魔術書を僕にも見せて貰う事は出来ないのでしょうか?」


 そう来たか。仕方がない、見せても良い魔術書が有るか後で確認してみよう。


「頼んでみるけど、期待はするなよ」


 一応適切な魔術書が無かった時の為に五狼には言い含めておく。

 その後はそのまま話す者を残して、僕は自室に戻る事にした。魔石の加工や孤児院の玩具等、色々考える事も多いからだ。

 自室に着いたのでどれから始めようかと考えていたら、月詠が話し掛けてくる。


『主様、夜のお勤めをするのですよ』

『夜のお勤め?』

『救済活動で御座います』


 そう言えば、そんな事も言っていたね。今日は色々あったからすっかり忘れていたよ。


『命の危険にさらされている主様好みの女性をお助けるのですよ』

『いや、助けるなら好みの女性に限定しないよ』

『お気持ちはお察し致しますがご主人様、それでは人数が多過ぎるので全てを助けるのは不可能なのです』

『多過ぎるって、何人いるの?』

『実際に今現在命の危険にさらされている者、で検索してみると良いのですよ』


 それもそうかと月詠の言う通りに検索してみたが、地図が印で埋まる程大量に表示され、数が多過ぎて地図が隠れてしまった。


『これは確かに多過ぎて全く数が分からないんだけど、何でこんなに大勢の人が死にかけているんだ?』

『現在、約2億6千万人の人が死の危険にさらされている訳ですが、大半が戦争に由るもので、残りは病気や飢餓等の状態異常、事故や災害による怪我や遭難、魔物や盗賊、刺客に襲撃を受けている。等理由は様々です』

『この検索条件では襲撃中の盗賊で返り討ちに合って怪我をした者も入るのですよ』


 そっか、中には自業自得な者も居るのか。それに戦争は今攻めているからといっても、それが侵略なのか報復なのかすら分からない、それ以外の理由も有るだろうし、状況が分からない以上どちらにも加担は出来ないし、簡単に参加して良いものでもないだろう。それに戦争なんて怖い事に自分から関わりたいとも思えない。なのでこれは条件から外すしかないだろう。


『戦争を条件から外した場合は何人になるの?』

『それでも3千万人位残ります』

『好みの女性に限定したら243人まで減るのですよ』


 かなり減ったけど、僕の好みの女性も多いなぁ。しかも死にかけている人だけで200人以上も居るのか。この世界全体だと僕の好みの女性はとんでもない人数になりそうだ。あまり好みに厳しくないのも問題なのかな?


『この中から更に身分の高い物を優先的に助けるのですよ』

『何でわざわざ身分で優先順位をつけるの?』

『身分の低い者を助けても良くて感謝しか貰えませんが、身分の高い者からは今後の協力が貰える可能性が有ります。協力が得られればより多くの人を助ける事が出来るでしょう』


 つまり先行投資みたいな物なのかな? まあ、分体を使って同時に助ければ優先順位も何もないか。


『ついでにこの女性達の周りの者も助けるのですよ』

『周りの者?』

『はい、集団感染している者や、飢餓、事故、災害、襲撃等、一人だけ被害を受けている訳では無い者が多数居りますので、一人だけ助けると今度は周りの者に奇異の目で見られたり、内通者や裏切り者と疑われたりする可能性が有ります』

『たしかにそれじゃあ助けた意味が無いよね』

『主様の、なるべく多くを助けるという目標にもそうと考えます』

『飢餓状態の方が多くて、それだけで2千万人近い人数になるのですが、今朝回収した調理済みの食料で十分間に合うのですよ』


 あれ? 結局殆どの人を助ける事になるのか? まあ助けられるのならそれで良いか。

 僕は救助活動の為、最初の救済場所に転移し、まず8人の分体を出し、それぞれに128の思考力を持たせてそれぞれの担当場所に転移して更に拡散して貰った。分体が千人も居れば何とかなるだろう。さて、初めての救助活動を始めるとするか。




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