誘導
少し慣れてきたので今回は早めに更新してみました。
楽しんで頂けたら幸いです。
今後もなるべく早く更新出来るように頑張ります。
『ご主人差、王子様を鑑定してみて下さい』
『そういえば、まだ鑑定していなかったね』
天照に指摘されたので鑑定してみた。
名前:徳田 一輝
生年月日:和富歴1034年4月4日 h12歳(18歳)
種族:人族
身長:5尺6寸(約168センチ)
体重:14貫(約52.5キロ)
状態:誘導
性交:無し
霊格:h80
位階:h10
腕力:15
握力:15
脚力:16
知力:28
記憶力:26
体力:18
呪力:24
能力:言霊術1、算術3、狩猟1
称号:
役職:和富王国第一王子、次期国王候補
鑑定を選択型にしたせいか、若干並びが変わって種族が追加されていた。
そういえば、街中を孤児院に来る途中で何人か獣人族らしい人も見かけたなっと思いだす。今度見かけたら鑑定してみよう。
そして天照が見せたかった物が何か分かった。状態が誘導になっているのだ。
『天照、この状態の誘導ってどんな状態なの?』
『はい、軽い催眠状態と思って間違いありません。つまり、王子様は誰かに操られています』
『それって、かなりまずい事になってない? でも、他の鑑定持っている人なら分かりそうな気もするんだけど』
『いいえ、鑑定は熟練度が低いと見れない部分や状態等があるのですよ。今回も鑑定の熟練度が低いと見破られない薬物を使用されているのですよ』
王子様が操られるなんて、思っていた以上に問題は大きいみたいだ。
『やっぱりかなり大変な事だよね? 直せるの?』
『はい、症状は軽いので体内の麻薬成分を取り除けば直に回復致しますし、何もしなくても数時間で回復致します』
『主様が王子様に触れて、毒成分を無限倉庫に収納するだけで回復するのですよ』
僕でも何とか出来るのなら早く治してあげた方が良いだろう。そう思い王子に話しかける。
「王子様、僕からも少し宜しいでしょうか?」
「ん、君は確か桜花の刀を指導してくれている四狼だったよね?」
「はい、仰る通りです」
王子様が僕の事を確認してきたので肯定する。
「本日は桜花様に孤児院を案内したいと誘われて、警護の任も兼ねて参りました」
「そうか、桜花が世話になっているね」
「世話という程の大層な事はしておりません」
「まあ、本人がそう言うなら否定はしないけど、それで僕に何か聞きたい事でもあるのかな?」
「はい、少しお顔が赤い様ですが熱等は御座いませんか? 今日は暑いので体調を崩されているのではないかと思いまして」
「ん~特に熱は無いと思うんだけど」
王子様はそう言いながら自分の額に手を当てて答えるが、勿論嘘なので熱等ある筈がない。
「少し額に触れさせて貰っても宜しいでしょうか?」
「ん、構わないよ」
「王子、その様な者をお身体に触れさせては」
何故か草薙が慌てて止め様と話しかけてくるが、王子はそれを否定する。
「四狼は桜花の指導をしてくれている者だし、草薙と同じく桜花の婿候補の一人でもある。なんと言ってもこの国一の武人でもある八神将軍の子息だ。何の問題も無いよ」
「そうじゃ、確かに四狼も候補の一人じゃが順調に功績を積んで候補順位を上げておるぞ。お主と違って実力でな」
桜花様はここぞと草薙を言葉で煽るが、それだと僕に敵意が来るので止めて貰いたい。
「お金を稼ぐのも実力だと思うのですがね」
草薙はそう言いながらも一度こちらを睨み引き下がる。
「それでは少し失礼致します」
そう言って僕は王子様の額に触れ、王子様の体内を検索、毒成分等の体に悪い物を纏めて倉庫に収納する。
「あああ~~っ」
王子様が急にそんな声を上げ座っていた椅子に力を抜いて寄り掛かると、護衛の内二人が動揺した様に僕達に声を掛ける。
「王子、如何なされました!」
「四狼、これはどういう事だ?」
僕も王子様の反応に吃驚していると。
「ああ、何でもない。いや、何でも無くは無いな。凄く身体が軽くなった気がする。四狼、有難う」
そう言いうと王子は立ち上がり肩を回し始めた。
「いえ、僕は手を当てただけですよ」
「そうかい、四狼の手には癒し効果でもあるのかな? 凄く身体が楽になった気がするよ」
「楽になったのなら何よりです」
そんな僕達のやり取りを見ていた警護の一人が問題無いと分かると僕に頭を下げてきた。
「四狼殿、早合点してしまい申し訳ない」
「いえ、警護の方なら致し方ありませんので気にしていませんよ。王子様が元気になられたのなら何よりです」
「そう言ってもらえると助かります」
もう一人の警護も不思議そうに尋ねてくる。
「四狼は何時の間に治癒が出来る様になったんだ?」
「いえ、治癒なんてしていませんよ、二狼兄上。僕は手を当てただけですから」
そう、もう一人の知り合いは二狼兄上だったのだが、何故小隊長の二狼兄上が王子様と一緒に居るのか分からなかっのたが、そこに王子様が席に座り直して説明が入る。
「ああ、そういえば君も八神将軍の子息だったね。今日は臨時で来て貰って助かったよ」
「恐縮です」
改めて頭を下げた警護の二人に僕も軽く頷いて、元の様に桜花様の席の後ろに立つ僕に桜花様が労ってくれる。
「四狼、ご苦労じゃったな」
「だから僕は手を当てただけですよ」
桜花様は僕の言葉にニヤリと笑いながら、そういう事にしておこうと言い、全員が元の位置に戻ったのを合図に、桜花様が話を続ける。
「それで、兄上は孤児院に寄付をするという草薙を連れてきたと、何時から第一王子ともあろう者が商候如きの使いになり下がったのじゃ?」
「そんなに大袈裟な事ではないよ、桜花。私も草薙には色々助けて貰っているし、今回も桜花の為になると思ったから紹介しただけなのだし、皆が得しているのだから良いではないか」
穏やかに説明する王子様とは違い、桜花様は不機嫌そうに王子様の言葉を真っ向から否定する。
「明らかに童と他の候補者が損をしておるではないか!」
「そうなのかな? まぁ、桜花の言い分も分からなくもないから今回も含め、今後寄付は功績に含めない事にする。それで良いかな?」
流石に寄付した事が無意味になってしまうのは困ったのか、草薙が反論する。
「お待ち下さい王子、流石に今回もそれなりの金額を寄付させて頂いたのです、それを功績に含めないと今更言われましても……」
「金で功績を買うという、桜花の言い分も確かだと思ったからね。今までの分までは無かった事にはしないという辺りで納得して貰わないと、全てを精査し直さないといけなくなるのだが?」
「わ、分かりました、全てを無かった事にされては困ります。今回の事は残念だったと思う事に致します」
草薙は言葉通りに全てが無効にされては堪らないと直ぐに言葉を返し、押し黙る。
「これで良いかな? 桜花」
しかし話が纏まりそうな所に桜花様が待ったをかける。
「いいや、それだけでは駄目なのじゃ。今後、草薙からの寄付だけは功績に含めない。何故なら、既に寄付している分は功績に含むのじゃろ? ならば同じ回数か金額までは他の者にも認めんと不公平なのじゃ」
「それも分かったよ。同じ回数、8回まで認める事にしよう」
「何故金額は条件に入れんのじゃ?」
桜花様は不思議そうに尋ねるが、確かにわざわざ金額だけを外すのは変だ。
「草薙の寄付した金額を超えるのは無理だと思ったからね」
「そんなに多いのじゃろうか?」
桜花様は訝しげに尋ねるが、王子様は肩を竦めながら答える。
「ああ、草薙の寄付金は今回の分を含めずとも千両程になる」
「千両じゃと!」
桜花様が寄付の金額に驚いたのが嬉しいのか、草薙がニヤリと笑う。
「当然ですよ桜花様、それだけ私の愛が大きいという事、お解かり頂けましたでしょうか」
「ふん、いくら金を積もうとも、童の愛は買えぬとしれ!」
「しかし、私を超える寄付など不可能だと思いますが?」
「先程から言っておる、一番大事なのは童の気持ちだと。お主では童の気持ちを動かす事等出来ぬよ。四狼とちごうての」
いや、だから桜花様、そこで僕を引き合いに出さないで下さい。あっ、やっぱり睨んでるよ。
「ふんっ、そちらの方とて親の七光りではないですか、せめて自分で稼いでから大きな顔をする事です」
「だから先程から言っておる、四狼は自力で功績を上げておるとな。それに王族との婚姻なのだから親の身分が関係するのは当然じゃ。お主の方は詳しい素性も知れんではないか」
素性が分からないのに候補に入ったのか? さっきの王子の状態といい、凄く胡散臭いので一応鑑定もしておこう。
名前:草薙 識
生年月日:詳細不明 h15歳(21歳)
種族:亜小鬼族
身長:5尺4寸(約162センチ)
体重:13貫両52両(約50.7キロ)
状態:良好
性交:384人
霊格:h80
位階:h0e
腕力:15
握力:15
脚力:15
知力:15
記憶力:15
体力:15
呪力:15
固有能力:前世知識、他種族選択-妖魔、優しい世界3
能力:生物鑑定3、呪術2
称号:色欲の襲撃者、悦楽の殺戮者、快楽の探究者
役職:指導者、草薙商会会長、第一位商候
なんだかツッコミ処が多過ぎて返って納得してしまったが、間違いなくこいつは危険だ。桜花様にも注意しておく必要が有るなと思いつつ、どう説明していいものかが分からなかった。
種族も初めて見るものだったけど、それは固有能力に他種族選択を持っているので良いとして、それよりも気になるのが称号だ。どう考えても何らかの犯罪行為をしているとしか思えない。こんな称号を持ってる者を桜花様の婿候補に入れるのも色々変なのだが、先程の王子の状態からすると、他にも何人か操られていたのかもしれない。
『ご主人様、草薙の好感度も見ておいた方が良いと思います。表示しても宜しいでしょうか?』
『え、男の好感度なんて見ても意味ないんじゃない?』
『主様に対する感情と、桜花様に対する感情を確認しておいた方が良いのですよ』
『分かった、二人が勧めるなら意味があるんだろうから、それも表示してみて』
『はい、ご主人様』
そうして表示されたのは僕に対する感情の割合が円グラフで、それに重なる様に感情の大きさがレーダーチャートで表示されていて、隣には桜花様に対するグラフが表示されていたのだが、内容は僕に対しては敵意103、害意84、困惑42、他24、殺意2の順で多くあった。
数値的には2と僅かだったがこの極短時間で殺意まで持たれてるとは思っていなかったので少し驚いてしまった。ちなみに一番多い敵意は103と全体の4割を占めているけど、実質全部敵意だよね。
そして桜花様に対する感情が色欲118、征服欲62、保有欲38、権力欲20、他18、の順で略全てが欲でしかなかったが、半分近くが色欲なのが称号や性交の数を物語っている気がする。
『これは酷いね』
『ご主人様に危害を加える事が出来るとは思えませんが、周囲の者は気を付ける必要が有るかと思います』
『特に桜花様が危険なのですよ』
確かに桜花様は危険かもと初めは思ったけど、今の僕には注意を促す位しか出来る事がない。それに僕は仮にも一国の姫に害を与える様な真似が商候如きには出来ないだろうと思い直したのだ。伊吹さん達も居るしね。
僕の周りの人達もまぁ、問題は無いだろう。略全員が昨日の僕よりかなり強いのだし、父上に至っては国内最強と言われる位に強い、それこそ商候如きにどうこう出来る筈が無いので心配は無用だと思う。強いて言うなら末の二人の弟妹だが、暫くは屋敷の敷地から出ない様に言っておけば大丈夫だろう。大人しくさせる為の餌もあるしね。