袁の敗北
「街中探しても見つからない。昼間は街に居ないんじゃないか」門弟の1人が言うと「確かに、だが、どこにいるのだろうか。山の中か、行ってみるか」
門弟達は山中を捜索する事にした。
街を出て馬を走らせ山に向かった。
街から山までは半日の距離だった。
山の麓に着くと馬から降り、山道を歩いた。
やがて湖に着いた。小屋があったので入ってみる。人が住んでいたようだが朱は発見できなかった。
「引き返そう。奴は夜に街に来るだろう」門弟達は山での捜索を諦め、街に馬を走らせた。
門弟達が去った後、小屋の地下から朱が這い出て来た。小屋の地下にトンネルがあり朱はそこに潜んでいた。
門弟達は街に帰ると全員、武館に泊まり込んだ。
李英風は酒店に泊まり、夜、武館を訪れた。
「今日は晴れている。月がよく見える」袁は言った。
だが、結局、この日、朱は姿を現さなかった。
「もう、戻って来ないだろうか」袁は言った。
「今日も山を探して見ます」門弟達はそう言い袁を残して山に向かった。
李は酒店に戻り仮眠をとった。
空が曇り始めた。
ポツポツと雨が降り始める。
風が強まって来た。
袁に眠気が襲って来た。
人気の無い雨振る中、朱が歩いて来る。
武館の前で剣を鞘から抜くと部屋の中に入って来た。
「ムッ」袁は目覚め、剣を手にした。
ギイッと扉が開くと朱が立っていた。
「来たな」袁は剣を構えた。
朱は軽く突きを出し、切り込んで来た。
袁は突きをかわし、切り返す。
金属音が響き亘り、お互い剣を交える。
朱の斬撃の凄まじさに袁は後退を強いられる。
遂に朱の剣先が袁の胸に刺さった。
「何のこれしき」袁は言うと胸から血を滴らせながら反撃した。
すると朱は飛び上がり、剣を袁の頭上から降り下ろした。
袁の剣が折れ、朱の剣が袁の脳天に刺さった。
袁は崩れる様に倒れた。