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始業式(4)

閲覧ありがとうございます!

始業式、その4です!

対面式とかには一切触れてないというね!orz

次は少し日が飛んで健康診断かなと思ってます!


それでは少しでも楽しんでいただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

大股で歩き目の前に来た天賀谷先輩は上に立つべき人として立っているというみたいな品格?に迫力と威圧感が混ざり合った、それこそ一目見て『王様』と呼ばれる理由が理解できるような独特の雰囲気を身に纏っていた。


「花石から事情は聞いた。生徒会の者がすまなかったな、体調は大丈夫か?」


「……い、いえ。あ、はい、それはもう大丈夫です。」


その雰囲気が少し怖くて、失礼とは思いつつも虎向の後ろに少しだけ体を隠すようにしながらも何とか頷く。

ちなみに視線酔いは何か短時間に色々起こり過ぎてどこかに吹っ飛んでいっていた。


「――そうか。なら良かった。しかし、不躾ではあるが、白宮の髪と瞳は随分と珍しい色をしているな。生まれつきのものなのか?」


「……え、えっと……。」


「――生まれつきっすよ。こいつの髪と目。」


完全に気圧されて言葉に詰まった私をちらりと見て答えてくれたのは虎向だった。

それに反応するように視線を私から虎向へ移した天賀谷先輩がすぃっと瞳を細める。


「君は、黒坂だったな。黒坂にも風戸が随分と失礼な態度を取ったと聞いた、すまなかったな。」


「いえ、気にしてないんで大丈夫っす。……それに、俺もかなり生意気な口聞いたんで……。」


頬を掻く虎向に天賀谷先輩が、そうか、と軽く微笑む。


「ところで、君は白宮と幼馴染らしいな。彼女はハーフとかなのか?」


「いえ、こいつの曾々祖母さんが北欧とかそこらへんの人らしいっすよ。な?」


「う、うんっ! そ、そうなんです。とは言っても私が生まれる前に亡くなってますし、写真嫌いな人だったらしくてそういうの遺ってないから、この髪と目がその遺伝かどうかは分からないんですけどね。」


虎向に振られて慌てて頷きながらも小さな罪悪感に少しだけ胸が痛んだ。


そう、これは「神様」から隠されておれの体が変化した時に両親と祖父母、千早さんと虎向のお父さんと住職さん達が頭を捻って考えてくれた「嘘」だ。


人に聞かれたらこう答えなさいとは言われてはいるものの、おれはその「嘘」を付くたびに自分の姿が本当に偽りなんだって実感して少し嫌だったし、仕方ない事だけど嘘をつく事にも抵抗があった。

そんなおれの気持ちに一番に気が付いたのはやっぱり虎向で、いつの間におれより先に虎向がそう言うようになっていた。


……おれ、虎向に負担ばっかかけてるよね。


何だか情けなくなって瞳を伏せると、多分それすらも察した彼に繋いだままの手を軽くきゅっと握られる。


――あああ、もう。


「へえーー、そうなんだ。白宮さんの髪と瞳って凄く綺麗だもんね。羨ましいなぁ。」


「えーー……そうかな? 私はやっぱ日本人らしい黒髪黒目がいいと思うけど。こんな色してるとどこ行ってもジロジロ見られるし、中学の時一部の先生達からは不良扱いされてたしね。」


「ああ、あったなそんな事。何度も地毛だっつてんのに、信じないどころか挙句『黒く染めろ』とか言い出しやがって、あいつら。」


花石さんにそう答えると、当時の事を思い出したのか思い切り眉を寄せる虎向に苦笑する。


「えっ!? 白宮さんそんな事言われたの?! 地毛だって言ってるのに?」


「……う、うん。ただ私よりも虎向や友達や担任の先生がそれ聞いて烈火のごとく怒りだしちゃって。……そっちを止める方が大変だったかな。最終的には凄く頭のキレる学年主任の女の先生が凄い勢いでその先生達完膚なきまでに論破しちゃって……。」


そう。あれは大変だった。

詳細は省くけど、あの時程『女って怖い』って思った事はないし。


「何か色々大変だったね。天賀谷だったら真っ先に『粛正』対象にしてそうだ。」


「当然だ。俺がその場にいたらその教師の腐った根性叩きのめせたのに残念だな。……しかし。髪と瞳の色で苦労するのはお互い様のようだな、白宮。」


若干遠い目をして話す私を見て眉を下げて笑う花石先輩にフン、と鼻を鳴らした天賀谷先輩の視線が再び私へと向けられる。


……そう言えば。


「あの、天賀谷先輩の髪と瞳の色って……」


「ああ、俺の場合は母がフランス人でな。この瞳と髪は母からの遺伝だ。」


「! そうなんですか!」


そのままふっと瞳を細め笑みを浮かべる先輩を見ながらも何か凄く納得した。


「――ああ、しかし。」


その時、不意に私へとさらに一歩近づいた天賀谷先輩が私の顔を覗き込んでくる。


「へっ!?」


ちょっと待って、近いっ!!


花石先輩同様何かキラキラしたイケメンのオーラに目を白黒させていると天賀谷先輩が微笑んだ。


「風戸の行為は決して褒められたものではないがあいつが迫るのも無理はないな。誰が言い出したか分からんが『天使』とはよく言ったものだ。」


そのままゆっくりと顔を近付けてくる先輩に考えるよりも先に体が反応する。


「――っ、ヒ……!」


虎向の少し焦った様な声が耳朶を打つと同時に彼と繋いでいる手とは逆の手に持っていたスクールバッグを顔の前に構えガードすると、ぼすっとバッグと正面衝突した天賀谷先輩が少し痛そうな声をあげた。


……あ、鼻に当たっちゃったかな?


「…………おい、何をする?」


「それはこっちの台詞だと思うんですけど。今、何しようとしました? 天賀谷先輩?」


あと少し反応が遅れたらとんでもない事されてた気がして未だに顔をガードしたまま尋ねれば、バッグから顔を離し顔を擦る先輩がいやなに、と悪びれた様子もなく口を開く。


「少し挨拶しようと思っただけさ。その白く柔らかそうな頬に、ベーゼでな。」


「ベ……!?」


ベーゼってキス……キスだよね!?

一歩行動が遅かったら私ほっぺとは言えキスされてたって事!?


「結構です! さっき風戸先輩にも言ったけど、初対面の人に触られたいとは思いませんっ!」


「ほう、ならば初対面じゃなければいいという事だな。次会った時が楽しみだ。」


「っな!!?」


すぅっと瞳を細め愉快そうに笑った天賀谷先輩のあまりな暴論に思わず二の句を継げずにいるとはああと深く溜息を付いた花石先輩が、こら。と天賀谷先輩の頭を小突いた。


「天賀谷までいたいけな後輩にちょっかい出さないの。ごめんね白宮さん、こいつちょっと悪ノリする時があるから、そういう時は今みたいにガードするか、月沢に言えばいいから。天賀谷、月沢には頭が上がらないし。」


「……は、はぁ。」


「おい、花石。余計な事を言うな。あとそこで月沢を出すのは卑怯じゃないか?」


「何言ってるの、生徒会長の不純異性交遊なんてこれ以上認められるわけないでしょ? 問題児は風戸だけで十分だよ。」


こ、これ以上?


何だかとんでもない言葉を聞いた気がしたけど、それを聞こうとした瞬間キーンコーンカーンコーン……というあのお馴染みのチャイムがそれを遮った。


「……あ、あれ? 嘘、私達遅刻!?」


慌てて虎向と花石さんを見るとどこか唖然としていた花石さんが慌ててううん、と首を振る。


「大丈夫。今のは時間から見ても予鈴の筈だから。でも、そろそろ教室行かなくちゃね。」


「そうだね。本鈴は十分後には鳴るし、僕らも片づけをして戻らないとね、会長。」


「ああ、そうするとしよう。では三人ともまたな。」


そう言って踵を返すと少し慌ただしく歩いていく先輩達を見送り、私達も教室へ向かうため歩き出す。


「虎向? 行こう?」


「――ああ。」


何故か黙り込んだままの虎向の手を引きながら言えば、何故か少しだけ固い声音でそう返されて、繋いだ手をさらにぎゅっと握り締められたのが少しだけ気になった。






***






「じゃあね、白宮さん、黒坂くん。また明日!」


「おう。」


「うん、花石さんまた明日! 気を付けて帰ってね!」


バス停に着いた時、運良く来たバスに乗り込みながら手を振れば「二人もね!」と笑った彼女がちらりと虎向を見て眉を下げる。

……ああうん、花石さんも分かるよね。


あの後、始業式そして対面式はつつがなく終了した。

昨日同様今日も学校はお昼前で終わりで、電車通学の花石さんとバス停までだけど、と三人で下校したのは良いんだけど。


――何だか分からないけど、虎向の機嫌が天賀谷先輩達と別れてからずっと悪い。


「ね、虎向。何か怒ってる? 何かあった?」


「……別に。何でもねえよ。」


バスに揺られながらも眉間に皺を寄せたままの彼に今朝から何度目に分からない質問をすれば、返ってくるのはその素っ気ない言葉だけで。

そんなんじゃ到底納得なんかできなくて虎向の制服の裾を掴んだままこれももう何度目か分からない溜息を付く。


それは家への最寄りのバス停でバスを降りてからも変わらず、ずっと黙り込んだ虎向の横を歩いているうちに何か段々とイライラしてきて、虎向の前に通せんぼするように回り込むと彼の手をがっと掴み握りしめた。


「ねえ虎向! 何でもないなんて嘘だよね?! 何に怒ってるか言ってよ! もしかして私、何かした!?」


「…………何でもねえって言ってんだろ。あと別にお前が何かしたとかじゃねえよ、ヒナ。そこどけ。」


「やっ!! それじゃあ何も納得できない! ねえ虎向、嘘つかないでよ! 私には、私にだけは、お願いだから嘘つかないでっ!」


「おい、ヒナ。」


僅かに眉を寄せた虎向の瞳をまっすぐ見つめながら必死に言い募る。


我儘言ってるのは分かってるけど。

でも、そんなの寂しいんだもん。


「っ、だって、虎向はいつも私を助けてくれるのに、私虎向に何も返せてない。……っ頼りないのは分かってるけど、でも、話を聞くことはできるし、それが私に出来る事ならするから。だから……少しは、頼ってよ。」


何だか言ってるうちにどんどん情けなさが増していって最終的に虎向の手を握ったまま顔を伏せると、はぁーーと大きく息を吐きだした虎向が「……分かった。」と呟いた。


「っ、本当!?」


その言葉にパッと顔をあげると私をまっすぐ見据えた彼が小さく頷く。


「ああ。……ヒナ、お前今出来る事ならするって言ったよな?」


「え? う、うん。」


「なら、もうちょいこっちに来い。」


「う、うん」


何故か確認するように言われ、首を傾げながらも虎向の側へと寄った瞬間、ぐいっと私が掴んでいる方の手を引かれ虎向の胸元へと倒れ込む。


「わっ!!? えっ、ちょ、虎向っ!?」


さらには反対の腕を腰に回されがっちりとホールドされた状態に慌てて顔を彼を見上げると、目の前に虎向の顔があった。


「…………え。」


あまりの至近距離に目を見開く私に構うことなく、さらに彼の顔が近づいてくる。


待って、これって今朝の天賀谷先輩と同じ……っ!?


「ちょ、まっ、待って虎向、ねぇ!!」


何で虎向がこんな事をするのか分からないけど、何か凄くまずい気がして慌てて制止をかけるけど逆に腰をさらに引き寄せられて体が密着する。


「――――ヒナ。」


「っ……虎向……。」


鼻先が付きそう距離で名前を呼ばれ、ふるりと体が震える。


何でだろ、抵抗しなくちゃいけない筈なのに、体がうまく動かない。


「~~~~!!」


そのままさらに寄せられた彼の吐息が唇に当たった瞬間、反射的にぎゅっと瞳を閉じると彼が微かに笑った気がして、それで。


――何か温かなものが唇を掠め、頬にチュッと音を立てて吸い付かれた。


「へっ!? えっ、えぇ!!?」


え、もしかして今ほっぺにキスされた!?


ハッと目を開けば可笑しそうな虎向の顔が眼前にあってきょとんとその瞳を見つめる。


「――虎向?」


「お前な、そこで目ぇ閉じるかよ、普通。てか、まさか本気でキスされるのかと思ったのか?」


「…………えっ……は、はああああぁあああっ!!?」


ククク、と喉の奥で笑った彼の言葉に揶揄われたという事に気が付き思わず絶叫すると「うるさい」と頭をはたかれた。


「っ~~~~!! 虎向っ!! おれ真剣に言ったのに!! 酷い!!」


「おい、口調元に戻ってんぞ。しっかり演技しろ。……大体何でもねえって言っただろうが。おれがそう言うんだからいいんだよ。」


「っ~~~~!! この馬鹿!! 変態、痴漢っ!! 『やめてよ触らないでっ!! 誰か、誰か助けてぇええええっ!!』」


「おい、誰かに聞かれたら誤解されるような事言うな!!」


何だかいやに楽しそうな彼に心の底からムカついてわざと高い声でそう叫べば再び頭をべしりとはたかれる。


「いったい!! もおおおお、虎向なんて知らない! 帰るっ!! 離して!!」


「離したところで帰る方向同じっつーか、家隣同士だけどな。」


腕の中から逃れようとじたじたと暴れ、虎向の胸をばしんと叩けば、はいはいとおれから手を離した虎向が呆れたように息を付いた。


あああああああもう、むかつくっ!!


「もう今日は虎向の部屋遊びに行かないっ!!」


あまりに腹が立って今朝バスに乗る前にした約束を反故にする事を伝えればすぃっと瞳を細めた虎向の表情が実に意地悪そうなものに変化する。


「おお、いいぜ。だったらお前の昼飯と夕飯おれ作らなくて済むし。今日いないんだろ? 杏希さんと親父さん。うちも母さんも親父も今日帰り遅くなるからお前の分も昼飯と夕飯作ってやれって言われてたんだよな。」


「っう!」


痛いところを突かれぐっと黙り込む。

虎向の言う事はその通りで、今日は二人とも帰りが遅くなるとは朝御飯の時に聞いていた。


「だからは今日は虎向君と昼ご飯と夜ご飯済ませてくれる? 勿論虎向君と千早には伝えてあるから。」


そう母さんから言われた言葉が脳裏を掠める。


けど、けどさっ!!


「いい!! いらないっ!! ご飯くらい自分でっ……」


「目玉焼きすら満足に作れない奴が何言ってんだ。こげこげの飯になるのがオチだぞ。」


お前本当料理の才能ないもんな、とまで言われかああああと頭に上った血が全く収まらない。


ちなみに虎向の料理の腕はかなりのもので、ほとんどプロ級なんだよね。

レシピさえあればどんな料理でも作れるし、美味しいし。


うん、でも今はそれはおいといて!!


「買い置きのインスタント食べるからいいもん!」


「……おい、それだとバランスが偏るだろうが。だからお前いつまで経っても細ぇんだよ、モヤシ女。」


「うるさいデリカシーゼロの乱暴男っ!! 虎向に変な事されたって、千早さんにLINKで言ってやる!!」


もうこうなったら奥の手だとばかりに叫び、そのままダッシュすると背後から「おいっ!!」とさすがに焦ったような虎向の声が聞こえてきたけど、知るかっ!


「てめぇ、なんつー捨て台詞だ! てか母さんにチクるのは反則だろうがっ!! 待ちやがれ!!」


「虎向が意地悪ばっかするから悪いんじゃん!! あと、追いつけるもんなら追いついてみなよ!! 足は私の方が速いんだからね!!」


「ヒナ、てめぇ絶対泣かすっ!!」


そんな感じで、大声で怒鳴りあいながら、全力疾走した結果。

家に着くころにはお互いへとへとになっていた。


「…………何やってたんだろうな、俺ら。」


「…………っ、ね。」


肩でぜぇぜぇと大きく息を繰り返し、顔を見合わせる。


……何だろう、色々あった筈なんだけど、なんか全部どうでもよくなっちゃった。


そう結論付けてふっと息を付いた。


「……ねえ、虎向、お腹空いた。」


そのままへらりと笑いかければ、きっと私と同じだったんだろう虎向もまた小さく息を付き口元に笑みを乗せた。


「…………ああ。ほら、昼飯作ってやっから。何食いてぇか言え、ヒナ。」


「ん、ならオムライスがいい。虎向のオムライス美味しいから。」


「……了解。てかお前も手伝えよ、ヒナ」


「はぁい。」



……そんな感じで。私達の高校生活二日目はこうして幕を閉じたのだった。

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