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戦姫アリシア物語  作者: mery/長門圭祐
王女アリシア
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シルクとわたし

ここからは私、アリシアのバカ話がずっと続くぞ!

突然ではあるが、私はシルクが好きだ。

大好きだ。

はじめて出会った時から、あのすべすべの肌触りに夢中になってしまった。


むかーしから、欲しい欲しいと思っていたのだが、前は私も手持ちが少なかったので、それこそ屋敷が一軒たつくらい高価なシルクのドレスには手が出せなかった。


でもシルクが欲しい。

触りたい! ということで、王都の雑貨屋で小さなシルクのハンカチを買って、日がな一日中、気の済むまですりすり、すべすべ堪能したことがある。

あのときの感動は言い表せない。


奮発したかいがあったと、暇を見つけては頬ずりしていたのだが、たちまち私の顔の脂でギトギトになり、駄目になってしまった。


私は泣いた。

涙こそ出なかったけど、心の中は涙の川で大洪水である。

美しいものは儚いのだ。

大事に使おう。


反省した私は、泣く泣く買い求めた二枚目のハンカチをここぞという時のとっておきにした。

そっちは半年もの間、頑張ってくれた。

もとを取れて満足した私は、その洗いすぎでぼろぼろになったハンカチを、作業着の継ぎハギに使ってもらって供養した。


というのが私のシルクエピソードその一である。

他にもまだまだある。


私のシルク好きエピソードは全部で108まであるぞ!


まぁ、それはうそなんだけど、とにかく私は大のシルク好きなのである。



カゼッセル要塞に来たその日は、それはもう、どんよりしていた。

でも殿下とお会いしてお話ししたり、要塞内でいろいろな方と話してみた感じで、どうやら本当に歓迎してもらえているとわかると、私はすっかり安心してしまった。


そして思い出したのだ。

お部屋の衣裳部屋にある、シルクのドレスちゃんたちのことを!


赤白黄色、しゅっとしたのもふわふわしたのもよりどりみどりである。

あの、ずっと憧れていたシルキードレスにまさかこんなところで出会えるとは。

私、大興奮である。


そこで一つ思い立ったことがある。


私が最初にシルクの手触りに惚れ込んだのは、友人が身につけているシルクの手袋を指の上から触らせてもらった時のことなのだ。


誰かが着ている上からすりすりしたい。


自分で言ってて変態臭い自覚はあるが、したいったらしたいのだ。

ある種のあこがれである。

大きなケーキをワンホールまるごと食べたい、とかそういう感じのやつだ。

私にとってのそれがシルクすりすりなのだ。


一着、これだ、というドレスを手に持って、侍女達を見回す。


今いるのはメアリとステイシーだった。

ステイシーはあまりまだ慣れてないから、頼みにくいというのもあるけど、そもそも私のドレスはサイズが合わない。

彼女は長身なうえ、プロポーションもいいから無理だ。

私はメアリを見た。


そして、目が合ったメアリは、心底嫌そうに顔を歪めた……。


まあ、あれである、お察しの通り、メアリに着てもらって私がすりすりしようという計画なのであるが、一つ問題があった。

メアリが触れられるのを嫌がるのだ。

念のため言うと、私が嫌なわけじゃなくて、だれかに触れられるのがそもそもあまり好きじゃないらしい。

私が嫌とか言われたら、ガチ泣きする自信がある。


私は人に触れるのが好きな方なので、かまってほしくてくっつきに行くことがある。


ちなみにこういうシーンって、普通は可愛い女の子が二人イチャコラしてる図を思い浮かべるものだと思う。

でも違う。

メアリはぜんっぜんそんなことない。


まず、最初から離れろオーラ全開で拒絶してくる。

それでも無視して頑張っていると「こいつまじうっぜぇ」て顔をする。

それでも頑張るとどすの利いた声で「いい加減、離れろ……」っていう。

もう命令形。

私主人なのに。


私がしつこいのも事実だけれど、メアリはもう少しデレ度を上げてくれてもいいと思う……。


「メアリ、頼めないかしら? 」


なにが、とは言わない。

彼女は私の積年の夢を知っているのだ。


はぁーーーーーっと、もうながい、5文字分続くぐらいのながーい溜息のあと

「仕方ありません」と彼女は頷いてくれた。


この返事を聞いた時の私の顔は、ここ一年で一番輝いていたんじゃないかと思う。


私が選んだドレスは、胸元がきつすぎてそもそも着れなかったので、一番余裕がありそうなのを選んでベッドの端に座ってもらった。

メアリはめっちゃ豪華なドレス着てるのに、場末の酒場にいるすすけたおっさんみたいな雰囲気を醸し出していた。


でも私は気にしないよ! いよいよ、私の夢が叶う日が着たのである。


いざ!


唯一、おさわりを許された背中に頬をつける。

それから私は思う様、マイほっぺたでシルクの肌触りを堪能した。


素晴らしい体験であった。

シルクパワーが一年分ぐらい充電できたと思う。


しばらくすりすりしていただろうか、摩擦熱で、そろそろほっぺが焦げそうになってきたのでちらっと顔をあげると、なぜか側によってきていたステイシーと目があった。


「私も今度、シルクのドレスを着てきましょうか」


彼女は言った。

ちょっとためらいがあったけど、わたしはこくりと頷いた。


そして私のシルク好きエピソードが、また1ページ……。


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是非、お手にとって頂けると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] ジークハルト殿下も変態的なので、アリシアにも変な所があっても良いんじゃないでしょうかね。 シルクの手触りは確かにいいからねー 他人の温もりがある上でのシルクの手触りかー、色々な触感がありそ…
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