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桜川燈子の追憶

 小学生の頃、私は割りと人気者だったと思う。


 クラスでは私の周りには常に友達がいたし、クラス委員もやっていた。学校行事の時には、私が周りの子たちを引っ張っていったし、よく家に友達を呼んでパーティーなんかもしたりした。

 

 小学5年生の頃、私は小説に興味を持った。


 きっかけは確か、名もないネット小説だったと思う。人気もそんなにある訳じゃなかったけど、私はとても感動した。すぐさま感想を書き、作者の方とやり取りしているうちに、私も小説が書きたくなった。毎日、学校から帰ったら少しずつ書き足す。


 中学生になっても、私の周りには人の輪があった。


 ちょうど中学1年生の頃、私は小説を友達に見せた。思いの外好評で、読んだ彼女達は揃って『面白かった』って言ってくれた。


 その頃が、私にとって一番輝いていた頃だと思う。


 きっかけは、些細なことだった。


 私は小説を書くのに夢中で、母親との約束であった『スマホは日付が変わるまでに母親に渡す』という約束を破ってしまった。ペナルティーとして、スマホを3日間使用禁止になった。


 当然、無料通話アプリの返信なんかは滞る。


 最初に、私への陰口を聞いたのは学校のトイレだった。


「最近、燈子って調子のってるよね~」


「そうそう、彩乃ちゃんも燈子に既読スルーされらしいよ?」


「うわー、既読無視とか最低じゃん!」


 次々と並べられていく私のへの酷評。薄いドアの向こうで悪口を言っているのは、同じクラスメイトなのだ。私は、耳を塞いで震えるしかなかった。


 それから、私の周りからは人がいなくなった。


 女子って、その辺の空気を読むのが得意な生き物なのだ。仲間はずれなんか、真っ先に察知して多数派につく。自分の意見とか、正論とかは関係なくて、ただただ保身に走ってひたすら耐える。


 私もそうしてきたし、それで何人もの人たちが苦しんできたのだろう。

 でも、気がつかなかった。いや、気を付けようとしなかった。


 ある日、私の書いた小説がクラスのゴミ箱に捨てられているのを見つけた。体がスッと冷え、手はガタガタと震える。拾い上げてシワを伸ばしていると、書き込まれた文字が見えた。


『超駄作(笑)』


『小説書いてるとか、自己満足だよねー乙』


『てか、マジでキモい』


『控えめに言って、星1つ』


 最後まで読めなかった。視界が激しくぼやけて、膝から崩れ落ちた。私の書いたストーリーが、生み出したキャラクターたちが汚されていた。


 他でもない、『作者』の私のせいで。

 

 もう、私にできるのは遠い高校に通ってひたすら耐えることしか残ってなかった。

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