表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/12

ヘビーなオタクの北原拓海

 窓の外ではセミがかまびすしく鳴き、まだ朝七時だというのに熱々に熱されたアスファルトは蜃気楼を生み出している。

 そんなうだるような九月一日。全国の高校生がため息をつくであろう清清しい朝。高校二年生の北原拓海は奇声を上げていた。


「あー! マジで感動したー!」

 

彼の目の前に鎮座しているリンゴ印のノートパソコンは律儀にアニメの最終話を表示し、パソコンに繋がれた最新型のヘッドホンからは軽快なアニソンが流れている。

 

何を隠そう、北原拓海はアニメオタクなのだ。それも、かなり重度の。

 

「なんだよぉぉぉー! 最終話で主人公がスキル使ってヒロイン助けるとか、王道のくせに泣かせにきてんだろぉぉぉー!」

 

頭を掻き毟りながら、部屋中を夢遊病者のように徘徊する拓海。

 

「ちょっと、朝からうるさい! バカみたいに騒いでないで、早くご飯を食べなさい! 始業式から遅刻したらどうするの!」


「……はい」

 

 何だよ、母さんのほうがうるさいじゃないか! という文句をグッとこらえ、身支度をする。わずか十六年の人生だが、母親の怒号に逆らうと三倍になって返ってくるということはきっちり学んでいた拓海だった。

           *****

 

 アニメ。

 

 それは常に世の健全な一部の中学から高校男子たちを虜にして離さない魔法のアイテムだ。

 

 拓海も中学二年生で見事にハマった。しかも、タイミングの悪いことに『中二病』の時期と被ったのだ。当然のことながら、中学の卒業文集などは中二病的キーワードが万歳な『黒歴史』になっており、送付されてきた瞬間にタンスの奥へ厳重に封印した。

 

 中学二年の夏、特に何もすることがなかった拓海はぶらぶらと大型書店のライトノベルコーナーをうろついていた時、一冊の本が目に入ってきた。

 平積みされた本の表紙には色とりどりの帯が巻かれ、でかでかと『累計三百万部突破!』と書かれている。何気なしに手に取り、パラパラと捲った。


「あのお客様、そろそろ閉店時間なのですが……」

 

 気がつくと外は真っ暗になっており、隣に立っている研修店員は所在なげに佇んでいた。気の弱そうな店員だったが、流石に長時間立ち読みしていた本を棚に戻すほどの度胸はなく、棚からそのシリーズ全巻抜き取ってレジに向かう。

 金額は一か月分のお小遣いが全て吹き飛ぶ金額だったが、非常に浮き立った気分のまま家に帰った。

 

 もちろん、帰宅が遅くなったことで母さんには厳しく怒られたのだが。

              *****

 そんな益体の無いことを考えていると、拓海の通い慣れた私立神崎学園が見えてきた。『学園長の方針』で校舎は常に真新しく、校門には謎の置物が置いてある変な学園だ。だが、学区内では二番目の偏差値を誇る進学校でもある。

 

 校門を過ぎ、まっすぐ正面玄関前の掲示板に向かう。うちの学校は他校とは違い、夏休み明けにクラス替えを行うという変な決まりがある。学年は変わらないのに、だ。恐らく、学年まで夏休み明けに変えたら教育委員会とかがうるさいのだろう。


 掲示板前には例のごとく人だかりができており、わいわいと騒がしい。


「っしゃぁぁぁ! 今度こそ桜川さんと同じクラスだ! 今まで神に祈ってきた甲斐があったぜ!」

 

「マジかよ……桜川さんが別のクラスなんて……俺、もう死にたい……」


「俺のクラスには上谷さんがいるから問題ないぜ! 人生勝ち組みだ!」


「桜川さんと上谷さんは俺の嫁!」


「うるせー! 二人はみんなのものだ!」

 

 何人か変なのが混じっていたが、掲示板の前で騒ぐ奴らの気持ちも良く分かる。何せ、桜川さんと上谷さんはこの学校を代表する二大美人なのだから。

 

 

『小説家になろう』で最もチキンな物書きですので、何を言っていただいても大丈夫です!

感想、評価、どしどしお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ