第五話 「作戦」
「なんでこんなことになっちまうんだよ!」
探検の日から一週間後。
自宅謹慎からやっと解放されたケイゴたちは集まっていた。
しかしカオリの姿だけはなかった。夏休みの間、家から出すつもりはなさそうだ。何故ならカオリの家は夕空町でもちょっとした有名な名家で、今回の事件についてかなり神経質になっているらしい。
事件。
あの日、正午には全員が家に帰った。
ただ一人、アオイを除いては。アオイは結局、あの日から姿を消していた。心配した親は当然、警察へ連絡。そして一週間も捜索しているがまだ見つかってない。彼女は行方不明になってしまったのだ。
「あんまりデカイ声出さないでよ。一応あの女、隣の部屋で寝てるからさ」
「わ、わりぃ……」
素直に悪びれるケイゴ。
それもそう、そこはマンションの一室、リュウジの部屋だった。
六畳半ほどの部屋は彼らを収めるといっぱいだった。最初にケイゴが訪れたとき、女子の部屋みたいだと感想を述べたように、整然と片付きながらもアイドルのポスターや可愛らしいぬいぐるみと少女じみた趣味で溢れ返っていた。
その隣の部屋では、夜はスナックで働いているリュウジの母親が寝ているため騒ぐわけにはいかなかった。だが、それでもケイゴの不満は消えなかった。それは皆、同じだった。
「アオイちゃん、どこ行っちゃったのかなぁ」
「ぼ、ぼくたちのせい、かも……」
リエはいまにも泣き出しそうだった。
あのヒロユキでさえ沈んだ表情を浮かべている。だがしっかりと茶菓子の饅頭を口元へ運ぶ食い意地は変わらない。
「まさか! あの子が勝手にいなくなったんでしょう」
驚いたようにリュウジは声を上げる。
「そうだけど、俺たちだって全く関係がないわけじゃない。あの時、アオイを止めてれば、探検なんて下らないことやめておけば」
ケイゴは悔しそうに歯噛みする。
それを見てリュウジは眉根に皺を作ると、近くにあった熊のぬいぐるみを彼に投げつけた。
「な、なにすんだよ!」
「男らしくないわね、あんたって奴は。過ぎたことでいつまでもウジウジしてんじゃないわよ!」
それは確かにそうだった。
過ぎたことを悔やんでも仕方がない。考える前に行動しろと、彼はそう言いたいのだろう。
「つぅか、お前にそれ言われたくねぇーよ」
「フン、悪かったわね、オカマで」
少しだけ、彼らに笑みが戻る。
「リエたちもさ、アオイちゃんを探しに行こうよ」
「そうだな。できればカオリも誘いたいけど……無理だろうなぁ」
きっと門前払いを食らうだろう。
ケイゴはそう想像して嘆息する。そして彼女が夏休みを台無しにしてしまったことを哀れむ。
「そんなの、引っ張り出してやりゃいいでしょ」
リュウジはにやりとして言った。