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絶望の食卓  作者: 枝鳥
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焼き鳥

 もうもうと立ち込める煙。

 パチパチとはぜる炭の音。


 ネギま、モモ、皮、セセリ、砂肝、レバー、つくね、軟骨、ハツ、ボンジリ。

 さあ、今日はどれから頼もうか。

 塩にするべきか、タレにするべきか。

 この店には刺身もあったな。

 砂肝の刺身とレバ刺しにしようか。

 湯びきしたササミもつけようか。

 だが、まずは生中だ。

 付き出しのキャベツとビールだ。


 焼き鳥は、エンターテイメントだ。


 じっくりとメニューを眺めるだけで楽しくなる。

 様々な部位の中から、自分で食べる順番と味付けを選ぶ。

 徐々に脂っこい串にしていくのもいいだろう。

 歯応えで順番を決めてもいいだろう。



 炭の上で、ジワリジワリと脂を落としながら炙られる。

 串から直接噛みとる。

 表面には香ばしい焦げが。

 だが、中は焼き過ぎていないことが重要だ。

 一番良い加減は、生ではないぐらいの火加減だ。

 刺身でもいける店の場合のみ、レバーなんかはミディアムレアが一番旨い。

 塩タレ論争なんぞ、どうでもいい。

 両方食べ比べれば良いだけなのだから。

 最も重要なのは、朝引きの鶏であることだけだ。

 牛肉なんぞは熟成させなければ美味くならないらしいが、焼き鳥屋の鶏は新鮮でなければならない。

 それこそ、刺身があるような店を選ぶべきなのだ。

 まあ、鶏の刺身なんぞはあくまでも自己責任の食い物だ。

 胃腸に自信のない者は、無理に食べるべきではない。


 かつて社食で食中毒が出たことがある。

 死屍累々の社内で、社食を利用しながらもピンピンしていたのが二人だけいた。

 生の肉なんぞは、そういった輩が食べればいいものだ。

 胸を張って言おう。

 その一人は私だ、と。



 焼き鳥を食べる時に、最近は珍妙な光景を目にすることがある。

 平皿なんかに焼き鳥を串からしごき出しているのだ。

 何という冒涜!

 焼き鳥の美味には、かぶりつくことも含まれているはずなのに。

 お上品に食べたいのならば、そもそも焼き鳥屋に来てはいけないのだ。

 綺麗な洋服も、すっかり炭と脂の匂いになってしまうだろうに。


 何故!

 焼き鳥屋で!

 合コンなんぞをするんだ!!!


 焼き鳥屋なんぞは、親しくなってから来れば良かろうに。


 焼き鳥を串からしごき出すのが、昨今流行りの女子力というものなんだろうか。

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