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絶望の食卓  作者: 枝鳥
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タピオカ入りのココナッツミルク

 休日と旧JIS。

 きゅうじつときゅうじすは言葉の響きがよく似ている。


 たまには機械設計者っぽいことを言ってみた。


 もういい加減、脳みそが花粉でやられている様だ。


 こんな時は速やかに脳みそに栄養をやらねばならぬ。

 甘い物だ。

 素敵な休日のために準備をしよう。



 小さなボウルにカラカラカラと白い小さな固まりを流し込む。

 水道をキュッと捻って水を注ぐ。


 よし!

 これで準備は万端だ!!



 タピオカ入りのココナッツミルクは、どこか若い娘さんの飲み物のような気がする。

 数人で連れ立って歩く少女たちの手にこそ、相応しい飲み物だ。

 枝鳥がタピオカ入りのココナッツミルクを手に歩いていたら、そこいらの携帯が震えるかもしれない。


【怪しい人物がタピオカ入りのココナッツミルクを持って歩いている事案発生】


 昨今ではおちおち安心してタピオカ入りのココナッツミルクを持って歩くこともできやしない。

 それに、なんとなく恥ずかしいじゃないか。

 こういう物を手に歩きながら飲むのは、青春真っ盛りの若者の象徴であるように感じられるのだ。



 だが、時には必要な時もあるのだ。

 カラカラの脳みそが、タピオカ入りのココナッツミルクを求めているのだ。



 乾燥したタピオカを水に浸すだけで、休日でも枝鳥は早く起きることができる。

 だって。

 浸りすぎたら、せっかくのタピオカがブヨブヨになってしまうかもしれないじゃないか!


 諸氏にも、早起きするためのタピオカを是非ともお勧めしたい。


 爽やかに目覚める休日の朝。

 素晴らしい。

 弾む心でタピオカの様子を確認する。

 おお、良さそうではないか。

 2.3分ほど茹でてからそっとザルにあけて、軽く流水で洗ってから水を切る。

 ココナッツミルクを器に注ぎ、牛乳でのばす。

 ガムシロップで甘みを足す。

 そこへタピオカを好きなだけ入れる。


 タピオカ入りのココナッツミルクが完成である。


 一仕事終えた枝鳥は、思うがままにタピオカ入りのココナッツミルクを飲む。

 否、タピオカがたっぷりと入っているので、ココナッツミルク味のタピオカを食べる。

 ココナッツの風味。

 タピオカを口にすると、グニュッとした感触の後に、モッチュモッチュした弾力が気持ちいい。


 優しいココナッツミルクの甘味が、枝鳥の脳みそに染み渡る。

 見慣れたダイニングにいるはずが、まるで南国の様ではないか。

(行ったことなぞ当然無いのだが)

 ハイビスカスを髪に飾る少女の気分にもなれるのだ。




 明日は休日。

 早くタピオカ入りのココナッツミルクを準備せねばならない。

 だが現実は無情である。

 パソコンのモニターに映るのは、よくわからぬ規格で描かれた参考図面。

 なんだ、これは!

 よくわからぬ図面を調べてみれば、昭和の頃に使っていた旧JISでひかれた図面ではないか。

 ああ、面倒臭い。


 素晴らしい休日を夢見て、面倒臭い旧JISを現実に見る。

 タピオカ入りのココナッツミルクまで、まだ遠い。

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