へぎそば
枝鳥は、あまり外出が好きではない。
もちろん、こんなエッセイを書くぐらいだから、美味い店に出掛けるのは好きだ。
だが、出来ることならば自宅で安穏としていたい。
最近では更にだ。
忌々しい花粉などが入らぬように、ドアも窓も開けたくない。
しかし、美味いものが食べたい。
出来れば引きこもったままで食べたい。
食欲のない時なんかは、つるりと蕎麦でも食べたくなる。
だが、蕎麦などは挽きたて、打ちたて、茹でたてが美味い。
スーパーで買う乾麺の蕎麦。
まあ、そんなに不味くはない。
しかし美味くもない。
プツンとした歯ごたえがない。
茹で方が悪いのだろうかと思って早めに引き上げると、今度はブチブチとしてしまう。
どうにか引きこもったまま美味い蕎麦が食べられないだろうか。
何年も思い悩んできた。
茹でる腕が悪いことは置いといて、何とかそんな腕の悪さをカバーする蕎麦の乾麺はないだろうか。
ある時、へぎそばなるものを食する機会があった。
フノリという海藻が練り込まれてた新潟の名産らしい。
食べてみるとこれが面白い。
テュルン、プチッ。
小気味良い歯ごたえ。
帰宅してから早速にへぎそばなるものを調べてみた。
インターネットとは素晴らしい。
生麺だろうと乾麺だろうとお取り寄せまであるようだ。
ここはもちろん生麺だろう。
ポチッとクリック一つ。
これで自宅でも美味い蕎麦が食べられるのだ。
思った通りに家でも美味い蕎麦が食べられるとは、なんと嬉しいことだ。
だが、このお取り寄せできるサイトには乾麺もある。
唸れ、枝鳥の好奇心!
ポチッとな。
取り寄せて、茹でる。
食す。
おや?
おやややや?
テュルン、プチッ。
テュルン、プチッ。
美味いではないか!
まるで枝鳥の蕎麦を茹でる腕前が上がったかのようではないか!!
これは良い。
すごく良い。
しかも乾麺ならば、いつでも家で美味い蕎麦を食べられる。
素晴らしい。
が、まあ毎食が蕎麦はさすがに辛い。
忌々しいほどの晴天が憎い。
盛り蕎麦だけでは物足りないのだ。
天麩羅や鴨南蛮が恋しいのだ。




