営業終了
干したタオルを取りこんでソファーのうえに積みあげた。
山になったタオルを一枚取り出し、よつ折りにして棚へいれる。
それをくり返してすべてのタオルを棚へ片づけ終えた。
そうしてまもなくテレビで夕方のニュースが始まる。
番組冒頭から海開きの話題で盛り上がっている。
人びとが海へ飛び込みはしゃぎまわる映像が流れ、インタビューを受けた水着の女性が海の感想を答えていた。
どうやら全国的に見ても今日は平和な一日だったようだ。
ガラス越しに外を見る。
日が高く空が明るい。昼間と変わらないほどに気温も室温も暖かい。
時刻は五時を過ぎたところだ。
明るさだけで考えたならば、この時期は一時間程度営業時間を延ばしても大丈夫かもしれない。
毎年そんなことを考えてはみるものの、実行したことは一度もない。
時期にかかわらず、予約さえいれてもらえれば深夜でも早朝でも店は開いている。営業時間なんて有って無いようなものだった。
そのいちおうの営業時間はもうすぐ終わりだが、結局、お客さんはひとりも来なかった。
そのかわりに予約の電話が数件あり、最終的には、火曜日は定休日でゼロ、水曜日にふたり、木曜日に三人となった。
火曜の定休日は私の店だけではなく、組合にそう決められている。
どうしても、というお客さんの予約でもないかぎりは営業はしない。
さいわいなことに今週はそんな予約を受けていない。
気兼ねなく明日は外へ遊びにいくことができる。
やることはすでに決めていた。
友人の美容師をさそって、簡単な買い物と、近くにできた個人経営のレストランの訪問を予定している。
新しいお店ができたことやパスタがおいしいということやをお客さんたちから聞かされていて、それに加え、あるお客さんからは割引クーポンまでもらってしまった。
そうなると付き合い程度に考えて、一度ぐらいは食べにいかなければならない。
義務的ではあるが楽しみでもある。
友人は、明日の私の予定に自分が組み込まれたことをまだ知らない。
すぐにでも連絡しておきたいが、この時間だと、研修生相手の勉強会を開いている、もしくはその準備をしているはずだ。
いずれにしても電話をするのは晩御飯のあとぐらいの時間がいいだろう。
テレビでは、報道番組にもかかわらず、特集と称して飲食店の紹介を始めた。
この番組のこの特集コーナーのはじまる時間が、ちょうどお店の営業終了の時間だ。
テレビを消して閉店の準備をする。
まずは、清掃。
昨日の後始末も案外に簡単に終わり、きれいにすべて片づいている。
お客さんが来ていないので床もまったく汚れていない。文字通り、髪の毛一本落ちていない。
そして、売り上げの確認。
あたりまえのようにゼロ円だ。
最後に、火の元を確認して電気を消して本日の営業は終了となった。
店内を軽く見渡してから、外へ出てトビラにカギをかける。
取っ手を押し引きして施錠を確認した。
問題なくカギはしまっている。
一歩ひいてお店の前面のガラス全体を見る。
昼間に掃除したおかげで、ガラスはなめたようにキレイだ。
満足した私はゆっくりと自宅へと歩き出した。
洗濯場を通りぬけながら考える。
晩御飯はなににしようか。
冷蔵庫には豆腐と……なにがあっただろうか。
なにもないのなら、これから買い物にいかなければならない。
そうした考えもまとまらないうちに家の前にたどり着いてしまった。
徒歩一分という通勤時間はこういうときに困る。
もうすこし歩いていたかった気もする。
これだけ天気がいいのだから、いまから散歩ついでに買い物にいくのも悪くないだろう。
玄関のトビラをひらき、ダレもいない家のなかへ声をかける。
「ただいまー」




