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collect fraud online  作者: haruki
第1章 チュダック編
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第1話 冬は大嫌いだ

 冬が嫌いだ

 どうしようもなく

 そう素直に思う

 じゃあどんな季節が好きかと問われれば答えに困るが

 別にある塊の中で嫌いな物があるけど好きなものが特にないことはおかしいのか?

 まあどうでもいいか


 思考を打ち切る


 肌に感じるのは冬に入りたての1枚上着を羽織れば耐えれるほどの薄い冷たさ

 

 風が肌を我が子のように撫でまわす

 流石に寒いと感じる


 もう仲間はいないんだと後ろ指を指されているようだ


 やっぱり冬は嫌いだ

 寒いと感じたのがきっかけだが別にそれが理由ではない


 思い出したくないものを思い出すから


 ゆっくり体を起こし目を開く

 

 周りは少し薄暗い夕方くらいどろうか


 寝起きのような散乱する思考をまとめ自問する


 でてきた疑問は4つ

 自分は誰なのか、ここはどこなのか、なぜ外にいるのか、これからどうするのか


 一つ目の疑問にはすぐにけりがつく


 名前は長谷川 隼人 25歳 で来年大学卒業

 趣味はぼっちオンラインで一様トッププレイヤーと呼べる

 髪は黒かったはずだが今はなぜか白

 服は蒼いジーパンにティーシャツに緑のパーカー


 2つ目の疑問のため立ち上がり首を巡らす

 

 周りの木々は青々とした針葉樹林のような尖った葉をたくわえている

 それが少なくとも視界を埋め尽くして深い森の様相を醸し出している

 自分の右側の先が少し開けている

 おそらく森が途切れているのだろう


 考察の結果特に居場所を特定する情報はなかったのでこの疑問は保留とする


 3つ目の疑問のために一番近い記憶を探る


 ぼっちオンラインをプレイしていて誰もクリアしていないCFO最高難易度クエスト神と悪魔と神竜の宴通称ジンマシンに挑んだ

 仲間達が死力を尽くし道を開いた

 そして竜との一騎打ちでさくやを犠牲にして討伐を成功させた

 時間ぎりぎりでログアウトせず目を瞑った


 思いだすと気分が下降曲線を描く


 ここまでのことを総合するとこれもわからないので保留


 4つ目の疑問は簡単


 とりあえず適当に見晴らしのいいとこに行って周りをみてみるだ

 人の振り見て我が振り直せとは大剣の練習の時よく思ったものだ

 というわけで他人の行動をみて行動を真似しようという主体性をばかにしたかのような方針だが一番確実なのでこれを採用


 行動方針も決まったのでこのまま行動を開始する


 (とりあえずは右だな)


 いつもより幾分ゆっくりと歩みを進める


 頭の中を占めるのは疑問より懐かしさ

 正直今の状況については驚いているがしかしタイミングが悪かった


 ユズキが精霊を魔改造しようとして神に敵視されたこと

 レンと2人でインドラの加護を獲得しにいったこと

 餓死しかけたステラにご飯をあげるからこっちにおいでと言って仲間にしたこと

 戦争で敵の軍に傭兵として参加していたウルザを何回も叩き潰したこと

 この武器は意志を持ってるからこいつしか扱えないと紹介されたラウルのこと

 そして、文字通りその身が果てるまで道を共にしてくれたさくやのこと


 他にも仲間達とつくりあげた<大海>で過ごした日々


 CFOのマイキャラクターハルとして過ごした10年のあふれてくる大切な思い出


 冬が嫌いな理由が増えた


 どうしようもない不快感と喪失感が吹きすさび吐き気が込み上げてくる


 少しだけため息を吐き出し気持ちを切り替える


 「やっぱり地球じゃないっぽいな」


 叫びたいのをこらえそう呟く


 森が開けた先には草原があり視界が開けた

 視界が開けたことにより空に浮かぶ物が目に入る


 とっても元気が良さそうに紫外線を垂れ流す太陽

 ぼんやり眠たげに空で居眠りしている緑色のよくわからない丸


 そんな狂った光景がまったく気にならなかった


 オレはそれよりある一点に視線が捕まっていた


 あったのだ、旗が天幕が


 ついさっき確かにみていた大海の野営地がそこにあった


 慌ただしく人が柵で野営地を囲んでいる

 東寄りのところから煙が見える全員分の食事を作っているのだろうか

 中央からは大きめの矢継ぎ早に指示を出す声が聞こえる

 何人かの団員が談笑している光景がそこにはあった


 気づけば見えないなにかに蹴飛ばされたように走り出していた


 帰ってきたんだと

 また仲間たちと冒険ができると

 また会えると


 野営地と自分を隔てる距離の壁が煩わしかった


 走る、野営地に向かってひたすら走る


 突然幻のように消えてしまうのではないかと不安になる


 心の求めるままに走る


 仲間との再会を祝福するかのように木は風に煽られ不格好なスタンディングオベーションのような様相を表す


 でも完全には満たされない

 小さな棘が心に深く深く捻じ込まれている

 

 今は再会を喜ぼうと

 暖かな気持ちで心を包み込み


 でもオレは呼吸のように無意識に呟いていた


 「やっぱり冬は大嫌いだ」


 その声は風と木が打ち鳴らす音に塗りつぶされた


**************************************************************


気持ちを形にしたい時、何を言えばいいんだろう


 伝えたいことがたくさんあった時、何を言えばいいんだろう


 聞きたいことがたくさんあった時、何を言えばいいんだろう


 思いをそのまま吐き出した意味はわからないけど心に響く言葉?


 修飾語で化粧をした綺麗な言葉?


 興奮した問いかけ?


 違うと思う


 どんなに長く、綺麗で、誰にでも気持が伝わる言葉なんか出てこなかったでもオレはいったんだ


 「ただいま」


 今のオレの限界


 でもそれが必要なんだ


 そうそれで十分なんだ 


 沈みかけの太陽が柔らかく世界を包み込んだ


 CFOの知識辞典

  ステータスについて

   HP、MP、STR、DEF、INT、MND、DEX、SPDの8つで構構成されています。

   HP、MPを除いたものを基礎ステータスと呼んでます。

注意してほしいのがステラのように特殊な能力などもあってSTRやINTがひくくとも大ダメージを与えることができます

   絶対的な基準とは思われていませんでした。

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