静寂
終わりを告げる声は、静かにやってきた。あまりにも呆気なく、ただ淡々と響く声。消えていく光を追いかけるには、闇に浸り過ぎた。
薄々気付いていたそれは。悲しむには遅すぎた。
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「ねえ、早く起きて」
躰を強く揺さぶられる。それも、何度も繰り返し。
睡眠を邪魔されたことに対する苛立ちを覚えその原因となる手を払い除けようとする。
けれどその動作で意識が覚醒し、ただ触れるだけに留まった。
「起きた?」
そうやって可愛らしい顔を僕に向けーーーー
違う
可愛らしい顔が、みえていたはずの姿が消えていく
違う
世界が、歪み始めた。
ああ、夢はこちらのほうだ。
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目を開くと無機質な天井が僕を見つめていた。
これが現実だと僕を嘲笑うかのように。
思わず隣を確認してしまった。
けれどそこに彼女がいるはずもない。
ずっと前からわかっていることだというのに今だに受け入れられない自分に嗤いたくなった。
時計に目をみやると午前二時半前、丑三つ時もそろそろ終わる頃。
呪いにでも行こうかと邪な考えが脳裏を過ぎったが、彼女が喜ぶはずもない。
ーー嗚呼、どうして。
静寂が鬱陶しい。わかっている。もう、一人になってしまったんだ。
どうして、君は居ないの