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俺の黒歴史ノートが異世界で魔導書になっていました:連載版  作者: きり
第2章 平和な学園に落ちる影! 学園テロリスト編
4/30

2-1

「これなんて如何でしょう? 当店のお勧めですよ!」

「いや、それはちょっと…………」


 とある昼下がり、店員が笑顔で奨める剣を前に俺は顔を引き攣らせた。


「黒剣クーゲルシュライバー! 一度付けた傷跡はそう簡単に消えない恐ろしい威力の武器です! 一説によると伝説のドラゴン、ゲズンタイトすら葬ったという話もあります!」


 その剣は黒かった。そして異様に刺々しかった。柄の先から伸びる刀身は赤黒緑の宝玉が収まっているが一体何の為なのか。そして重くないのかとか色々突っ込みたいが我慢する。だってそのツッコミは俺へと帰ってくるし。

何故か妙にハイテンションな店員の気迫にドン引きしつつ俺は視線を別の武器へと移した。


「も、もう少し落ち着いた雰囲気の武器がいいなあ、て」

「成程……ならばコレです! 黒槍ブライシュティフト! 一説によると伝説の虎、ベルクを一突きで葬ったと言う噂があります!」


 その槍はやっぱり黒かった。そして案の上刺々しかった。当然当たり前のように変な宝玉もついている。それを見る度に俺の心の中で何かが疼くがそれを必死に堪えながら首を振る。


「別なの、別なのは無い!?」

「お客様も我儘ですなあ。ならばこれです! 黒弓ヴィンケルメッサー! 一説によると伝説の鳳凰プファオラーベを仕留めた気がする武器です!」


 その弓はやっぱり黒かった。そして……ってかいい加減にしろ!


「だああああああああああああああああ!? もっと! もっと地味なのが良いの! やたら大層な曰くつきで濁点多めのじゃなくってもっと地味なのが!」


 それは俺の魂の叫びだった。その想いが通じたのか、店の主人はふむ、と頷くと壁に立てかけてあった黒い盾を持ち上げ、


「ならばこれです。黒盾ツィルケル。一説によると――」

「そういう意味じゃねえええええええええええええええええ!?」


 確かに濁点は無いけれど! 名前も短いけれどなんか違うの! そうじゃないの!

 ありったけの悲しみを叫びに乗せつつ俺はカウンターの前で崩れ落ちた。

 そんな俺を前にクーゲルシュライバー(ボールペン)ブライシュティフト(鉛筆)ヴィンケルメッサー(分度器)、そしてツィルケル(コンパス)。過去の俺がドイツ語のカッコよさに魅せられた際に創り出した武器を店主はドヤ顔で見せつけていた。もうやだおうちに帰りたい。




 俺の心を全力で打ち砕きにかかっていた武器屋を出てとぼとぼと馬車へと戻っていくと、馬車の屋根の上で暇そうに足をプラプラとさせていたフェノンと目があった。艶やかな黒の長髪と同じ色の服装は、元いた世界で言う所のアオザイに少し似ているが、あれは一応法衣らしい。女性にしては少し鋭く強気な目元と傷一つない白い肌が生える整った顔立ち。元々のスタイルも抜群な物だから容姿と服装相まって好みに完全にドストライクだ。容姿と服装は!


「なんだカズキ、もう戻ったのか。で、ご希望に沿うものは見つかったのか?」

「…………」


 先の事を思い出して思わず頭を抱えたくなる。そんなこちらにフェノンは目ざとく気付いたのかにやり、と何時もの笑いを浮かべた。


「どうした? 『魔術はいい加減恥ずかしいから武器を使う!』と意気込んで武器屋に入っていたではないか? それで一体どんな武器を買ったんだろうなあ?」

「お前分かってんだろ! 分かってますよね!? というか最初から全部お見通しだったに違いねえ! 何なんだよあの武器は!?」

「お前が考えた武器だ」

「俺の馬鹿ああああああああああああああああああああああああああ!?」


 まさか武器屋に並ぶ武器まで己の妄想の権化だとか。もうなんのコレ? 全力で俺を虐めにかかってきてない?


「それで結局何も買わなかったのか?」

「ぅ……」


 ひとしきり悶えてやっと落ち着いた所でのフェノンの問いに俺の肩がビクッ、と震えた。


「ナ、ナニモカッテナイヨ?」

「買ったのか。で、何を買ったんだ」


 馬車の屋根から飛び降りぐいっ、と近づいてくるフェノンに俺は一歩後巣ざる。手を後ろで組み上半身だけ乗り出すようなその姿勢は危険だ。具体的には胸部が、胸部が!


「おおおお前、これ以上近づいたら揉むぞ? 本当に揉むぞコラ!」

「何時もそう言う割には微妙に憶病なのが実にカズキらしいな。で、買ったのはこれ………か……?」


 ニヤニヤと笑みを浮かべながら素早く背後に周ったフェノンが俺が背中に隠していた物を奪い取り、そして眉を顰めた。


「……おいなんだこれは」

「…………」

「返事をしろ。この無意味に黒くてやたらデカい上に妙な雰囲気言語が刻まれたいかにも中学生が思いつきそうな銃は何だと聞いている」

「お前本当に容赦ないね!?」


 容赦ないツッコミを下す相棒の手にあるのは先程買った武器だ。フェノンの言う通り漆黒に染められた表面にはもはや俺すら意味を忘れた言葉が刻まれている巨大な拳銃。それは先程の武器屋で文房具ラッシュに俺の心が折れた後に店主が見せてくれたものである。ものであるのだが……


「どういう事だカズキ。お前そもそも痛い設定と呪文の魔術が嫌だから武器を買いに行ったはずなのにこれはどう見てもその部類だぞ。もしやマゾか? マゾなのか?」

「うるせええええええ! 俺だって、俺だって分かってるけどさ! やっぱ銃とか憧れるじゃん!? それに銃なら見た目さえ気にしなければ撃つだけで事が足りる! ほら見ろ! ちゃんと理に適ってる!」


 そうだ、俺の言っている事は間違っていない! だからそんな目で俺を見ないで! 


「因みにこの銃の名前は?」

「っ!?」


 ぴくり、と俺の肩が跳ねる。それに気づいたフェノンはふむ、と頷きながら手の中の銃を見つめそして笑った。


「おぉ、ここに書いてあるぞ。何々魔導銃デザートイーグル・ヘルカスタム―――」

「あああああああああああああ!?」


 頭を抱えて悶絶する俺の横でフェノンが持つそれの名はデザートイーグル・ヘルカスタム。

 その正体は自動拳銃デザートイーグルを元にした俺の中学二年時代の妄想武器。その威力は絶大な反動を引き換えにありとあらゆるものを打ち砕く魔銃である。名前はどこかの死神ロボットに影響されたに違いない。


「成程格好いいなあデザートイーグル・ヘルカスタム。さぞ強いのだろうなデザートイーグル・ヘルカスタム。これでお前は最強だなデザートイーグル・ヘルカスタム。何せデザートイーグル・ヘルカスタムがあるからなぁ!」

「てててててテメエ! もう許さねえぞ! 今すぐ本当に押し倒してその胸揉みし抱いてやる! そのあと俺の下半身のデザートイーグル・ヘルカスタムが火を噴くぞ!?」

「黙れトカレフ」

「お前色々と詳しすぎじゃありませんかねえ!?」


 ト、トカレフだってすごいもん!


ハヤシ・カズキ19歳。己の過去の過ちを抹消する旅はまだまだ継続中。

 とりあえずドイツ語は危険だ。あの言語は思春期の心にやたら響く……っ!





「そら、いつまでも悶えてないで出発するぞ。鬱陶しい連中もいい加減退屈してるだろうしな」


 からかうのにも飽きたのか、こちらに銃を返したフェノンが呆れた様に言いつつ背後を見る。俺達が乗っていた馬車は街の外に停まっているのだが、その付近では俺達に付いて来ている兵士たちの馬車があちらこちらに停まっていた。彼らはあのアテン大陸同盟とやらが俺達への助けに、と手配してくれた兵士達である。だが何故だろう。こいつらが役に立った記憶が無い。因みにそこに居る連中は俺達があれだけ騒いだと言うのにこちらに羨望の眼差しを向けていた。やめて、そんな目で見ないで!


「どれだけお前が叫ぼうと魔縛教典の作者という名声は揺るがないらしい。良かったなあ、カズキ?」

「嬉しくない。全っ然嬉しくない!」


 畜生、この魔女め。こっちの痛い所をこれでもかとばかりに突いてきやがる。そりゃ買った俺も悪いけどもうちょっといい方ってもんがあるだろうが! どうにかして見返してやれないものか。

 俺がそんな事を考えていた矢先だった。突如その兵士たちの馬車の内、一つが轟音を上げて爆発した。


「ぬおぉぉ!? 何、またこのパターン!? はっ、まさか!? 遂に密林ビキニ部隊桃色大三元がやってきたのか!?」

「黙れ阿呆。襲撃……いや、違うな」


 げし、と身を乗り出した俺の頭を押さえ付けつつフェノンが目を細める。俺もつられる様に同じ方向を見て、うげ、と声を漏らした。


「ふはははははは! このような牢で我々、法魔四天王イフリル配下魔剣七塵将ガーディス直下、破軍三鬼衆を捉えようなど愚か也!」

「破限魔術師め! 押しこめられた屈辱、晴らしてやる!」

「魔女ぉぉぉぉ! 魔女は何処に行ったぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


 何やら騒動の中心で暴れていらっしゃるのは先日現れた三人組、ゼロスとクリスとブライだった。因みに陽の魔剣士クリスと豪の魔剣士ブライとやらは《ジャスティス・サンストローク》をぶち込んだらあっさり勝ったので捕らえていたりしたのだが、牢を破ったらしい。


「これって不味くね? 何かすんごい怒ってるんだけど。というか約一名お前に対してガチギレしてるけど何やったの?」

「ふむ。奴らから情報引きずり出す為に色々拷問かます為に捕らえていたが失敗だったか。とりあえずまず弱らせるために簀巻にして水責めから始めていたのだが」

「……第一段階でそれなの?」


 どうしよう、隣の相棒がちょびっと怖い。


「いや、唯の自己紹介だが? 逆らうともっとヒートアップする旨は十分に伝わったと聞く。そういや最後の奴……ブライだったか? あいつは特に抵抗して面倒だったので兵士たちの中から厳選したゲイ士達に後を任せたのだが」

「……」


 もう何も聞くまい。せ、戦争だもんね! それ位普通なんだよねきっと! 

 そんな俺の思考を知ってか知らずか。心なしかブライだけは妙に内股で尻をやたら気にしていたが俺は見なかったことにした。


「で、どうする? もう一度奴らを氷漬けにするか? それとももう一度こんがり焼くか?」

「ナチュラルに恐ろしい事を言っている気がする……。けどあいつらもう剣ないし大丈夫じゃ―――」


 と、俺が言いかけた時だった。ゼロス達が周囲に居た兵士をその拳で打ち倒し剣を奪っていた。そして、


「喰らえ!《アブソリュートイグニッションゼロ》!」

「唸れ!《炎獄魔殺灰塵斬》!」

「砕けろ!《鷹返し!》!」

「普通に使ってるが」

「なんでだああああああああああああああああ!?」


 俺は頭を抱えて崩れ落ちた。何で? どういうことなの? 剣なら何でもいいの? じゃああの無駄に豪華に装飾された剣は何だったの?

 鳥肌と疑問と怒りと涙に膝をついた俺の横でフェノンがふむ、と頷いた。


「どうやらお前の書いた黒歴史ノートのキャラを演じていれば武器は何でも良いらしいな。つまりあいつらは身も心も魔剣士になりきっていると言う事だ。良かったな、お前の妄想は奴らの心をがっちり掴んで離さないらしいぞ。だから胸を張れ、魔縛教典作者(マテリアルマスター)!」

「お前って……! お前って本当にっ………!」


どう見ても状況を楽しんでいるフェノンをきっ、と睨みつける。この女、いつか絶対復讐してやる……っ!


「睨むなら顔だけにしろ。私の胸を睨むな」


 バレてました。




 俺達がそんな事をしている間にも破軍三鬼衆とやらは暴れまわっていた。ゼロスが剣を振るたびに光が巻き散らされ、周囲が凍りついていく。クリスが剣を振るえば炎が舞い、大地を焦がす。唯一ブライだけは何故か動きがぎこちなく、剣を振っても大した威力が出ていないが。しかも何故か内股だけどその理由は考えない事にする。不思議だなあ!

けどそれでも破軍の名は伊達じゃないらしい。俺達に付いて来ていた兵士達が次々に打ち倒されていく。流石にこれは不味くないか? 

流石に味方が敵にやられっぱなしと言うのは具合が悪い。なので俺もビビりつつも前に出ようかとフェノンに訊こうと思った時だ。俺達の前に三人の兵士が立ちはだかった。


「ここは我らにお任せください!」

「破限魔術師殿や魔女の助けなくとも魔剣の無い魔剣士などっ!」

「お前達……」


 それは顔なじみの若い兵士たちだった。俺がどんだけ悶えても叫んでも忠誠心というか羨望の眼差しが曇ることない兵士達。そりゃ俺だって戦うときは『いかにも強そうな魔術師』になりきって羞恥心とサヨナラバイバイしようとしてたが普段は全然違うのだ。それなのにここまで信じてくれている事にちょっぴり感動してしまう。


「破限魔術師殿! あなたが何時も苦しんでいるのは我々も存じております。ですが我々は今まであなたに助けを乞う事しか出来なかった」

「そう、そんな無力さに俺達は涙しました。しかしそれでも、いつか役に立つ時が来ると信じて研鑽を重ねてきました!」

「今こそ、その力を発揮する時! そして破限魔術師殿……カズキ様を苦しみから救う時なのです!」


 口々に想いを語ってくれる彼らに俺は感動した。なにコレちょっと俺泣きそうだよ? 感動して泣いちゃうよ? こんなにも俺を想ってくれているなんて号泣もんじゃね? それに俺の苦しみに気づいていた? と言う事は彼らももしかして魔術の痛さに気づいていた? ほら見ろやっぱりこの世界の人達っだっておかしいって気づいてるじゃん!

 俺は新たに見つけた同胞に感動した。恐る恐る手を伸ばすと兵士たちが笑みを浮かべ俺手を……掴んだ!


「カズキ様お任せください。必ずやあなたを苦しみから救って見せます」

「お、おぉ!」


 俺は何て馬鹿なんだ。こんな良い奴らが居る世界を恨むなんて。それに役に立たないなんて決めつけるなんて。彼らはとってもいい奴らじゃないか! 

俺は感動に眼を潤ませ首を縦に振った。そんな俺の姿に兵士たちは少し気恥ずかしげに顔を掻きつつ頷きあう。そしてゆっくりと手を離すと未だドンパチ暴れていらっしゃるゼロス達に向き直った。そして、


「いくぞ皆! 破限魔術師殿を魔術行使の呪い《邪炎王の誘い》から救い出すぞ!」


…………え?


「ああ! 魔術を使う度に体を侵食していく邪炎王の呪い! それに耐えてくれた破限魔術師殿に報いる時だ!」

「呪いが信仰すると額に第三の目《邪炎眼》が開眼してしまう! そうなる前に俺達が救うんだ! 行くぞぉぉぉぉ!」

『うおおおおおおおおおおおお!』

「待って!? ねえちょっと待って!? 待てって言ってんだろうがゴラァァァ!? 人に怪しげな設定追加して盛り上がってんじゃねえええええええええ!?」


 だが俺の叫びも空しく三人は破軍三鬼衆に突っ込みつつ呪文詠唱を始めやがった!


「純白なる聖なる光よ! この世に蔓延る悪夢を取り攫え! 喰らえ《ワイド・ハイター》!」

「悪夢ってかそれシミだから!?」

「赤き業炎よ、蒼き罰氷よ! 我が腕にて混じり戦場に清らかなる波を! 届け、《ブルーレット》!」

「ブルーレットって色じゃねえよ!? つーかレッドですらねえよ!?」

「ひれ伏せ、そして母なる庭に散らばる悪鬼どもを消し去れ! これで止めだ!《クイックル・ワイパー》!」

「何故それを技にした過去の俺ぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 三人が放った魔術は破軍三鬼衆に叩き込まれた。三鬼衆の周囲では真白の光が撒き散らされたかと思えば青と赤の入り混じった波紋が広がり最後はそれを押しつぶす様に空から落ちてきた壁が三鬼衆に叩き込まれ轟音を撒き散らす。


「ふむ、壮観だな」

「ぁぁ……」


 感心気に頷くフェノンの横で俺は顔を覆った。厨二病とは違った痛さから目を背けたくて。なんだろうこれ? 寒い? 痛い? 痛寒い? 

きっと過去の俺は面白いと思ってネタ的にあれを書いたのだろう。きっとノリノリで書いたに違いない。そして時たま思い出してはニヤけていたに違いない。ごめんねおとうさん。ぼくやっぱり重症だったよ。


「だが駄目だな、大して効いていないぞ。お前が授業中にノートの切れ端に書いてほくそ笑んでいた笑うに笑えない寒痛いネタ魔術には限界があると言う事か? やはり痛寒いネタ魔術では威力は余り期待できない様だな。そういう意味でもやっぱり痛寒い。……ふむ、やはり痛寒いの方が語感が良いな。お前はどう思う?」

「お前は本当に俺の心を虐めるのが大好きねっ!?」


 にやにやと笑うフェノンに俺は涙目で叫び返すしかなかった。なにこの悪魔。

 そしてフェノンの言う通り、魔術の爆心地に居る破軍三鬼衆は多少煤こけているが未だ健在だ。その現実に魔術を放った三人が呆然としていた。


「ば、馬鹿な俺達の魔術を受けて倒れないだと!?」


 そんな兵士たちの驚きを前にゼロスは相変わらずの気障な笑みを浮かべた。


「ふっ、確かに派手な術であったが我らにはそよ風の様なものよ!」

「我らの敵では無いわ!」

「……尻に……尻に氷が染みる……っ」


 ブライだけが何やら震えていた。


「一人にしか効いていない様だな。他の二人はいかにもな台詞を叫んでいるが――――カズキ?」


 フェノンの言葉を聞きつつ、俺はゆらりと立ち上がった。そして腰からデザートイーグル・ヘルカスタムを抜くとくくく、と笑いを漏らす。


「もういい……お前らそうやって俺を虐めて楽しいんだな? 楽しいんだなこの野郎……。だったら俺だって手段は問わないぞこん畜生ぉぉぉぉ!」


 デザートイーグル・ヘルカスタムの銃口をゼロス達へと向ける。俺の剣幕に驚いているゼロスや兵士達。だがそれを無視して俺は昏い笑みを浮かべながらフェノンへと振り向いた。


「見てろよフェノン。確かに名前は痛々しいが威力は本物だ。これさえあれば今後あんな魔術を唱える必要はないんだからな!」

「それは確かに助かるがどうにも面白くも嫌な予感しかしないのだが」

「ふふ、負け惜しみか? これでもうお前に弄られる事も無い! だからそこで見てろフェノン、俺の一撃を!」


 俺の意志をくみ取ったかのように銃身に刻まれた謎の雰囲気文字が光る。周囲から何かを吸収しているかのように光が銃口に集まり唸りを上げる。

 これだよ、これ! バカみたいな呪文叫ばなくてもこういう武器さえあれば良かったんだよ! もう俺は今後魔術を使わないぞ。だってこれさえあればそんな必要も無いしな! 威力も凄そうだし問題ない!


「破限魔術師! 一体何をする気だ……」


 ゼロス達が警戒しているがもう遅い! これは俺の決別の一撃。痛々しさから解放されて苦しみを解き放つための一撃なのだ。


「喰らえええええええ!」


 俺は万感の思いを込めて引き金を引いた――――――!




 一つ、大事な話がある。デザートイーグルと言う名の自動拳銃はよく反動が強く素人や女子供が使うと反動を抑えきれず肩を外すとか、ちゃんとした撃ち方をすれば別にそうでも無いとか色々言われている。但しそれは普通のデザートイーグルの話である。

 デザートイーグル・ヘルカスタムはその銃を元に俺が考えた魔銃でありその威力は本来のそれとは比べ物になら無い。


 つまり、反動も。




「痛ぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!? 肩が、肩がああああああああ!?」

「お前は本当に馬鹿だな!?」


 失敗しました。

 そもそも正しい撃ち方すら知らない俺は撃った途端にその衝撃に吹き飛ばされ見事に肩を脱臼しました。

 そんな俺の襟首を掴みフェノンが大地を疾走している。その周囲では兵士達が逃げ惑い、それを追撃する形で破軍三鬼衆が魔術を放ってきている為に周囲はさながら爆撃を受けている様である。


「ふはははははは! 破限魔術師恐れるに足らず!」

「破限魔術師殿が破れたぞ!? 皆の者撤退だ!」

「逃げろ! 早く逃げるんだ!」


 しかも撃った銃弾は見事に外れたらしい。つまり俺の自爆損……。泣きたい。いやもう痛みでガチ泣きしてるけど!


「破限魔術師殿! 気をしっかり! 呪いが進行した右腕が疼くのですか!? 邪炎王に負けてはいけませんぞ! さもないと更に進行して額から第三の眼が――」

「うるせえお前らもう黙ってろ!? ってか本当に痛ぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「お前も黙ってろ!」


 ギャーギャーと言い合いつつ俺はフェノンに引きずられる様にして撤退していった。


黒歴史ってなんだろう


そう考えたときたどり着いたもの。それは厨二要素だけじゃない

今になって思い出すと身悶える事全部ですよね。昔つくった替え歌とかギャグとかネタとか

そんな話

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