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俺の黒歴史ノートが異世界で魔導書になっていました:連載版  作者: きり
エピローグ カズキさんボーナスステージ
30/30

エピローグ2 フェノンさんシークレットステージ

なんとなく思いついて書いてみたアフターもの

黒歴史は繰り返される……

 フェノンの様子がおかしい。

 俺がそれに気付いたのは先週の事だった。

 その日、俺はいつもの様に大学の講義を終えると自宅へとのんびりと帰っていた。その日はバイトが無い日なので帰ったら何をしようかなと考えつつフェノンの待つ自宅へ向かう。フェノンはこの世界での戸籍等は手に入れたが、まだ慣れたとは言い難い。最近は図書館等で新聞を読み漁ったりしてこの世界に順応しようとしているらしい。ある程度順応したら働くとも言っている。そういう行動的な所はフェノンらしい。


「そうだなー、なんか甘いものでも買って帰るか」


 そうやってフェノンが色々頑張ってくれるのは嬉しい。自分だって協力するところはしているが、それでも大変な事だろう。そんなフェノンを労う為にも途中のコンビニで適当にスイーツを買い、俺は自宅のアパートまで帰ってきた。そしてインターホンを鳴らす。その途端だった。


「へ?」


 何というのだろうか。どたんっ、だとか、バタバタッ! といった音が部屋から聞こえた。そして数秒の後、インターホンから声がする。


『だ、誰だ……?』

「誰だって俺だよフェノン。というかインターホンでその受け答えはどうかと思うぞ」

『そ、そうだな……! 少し待ってろ、開けるから』

「?」


 何故だがインターホン越しのフェノンの息が荒い。そしてそれから更にドタドタと部屋の中から音が響き一分ほどだっただろうか。漸く扉が開いた。


「お、お帰りカズキ」

「うん……? ただいま」


 ぜえはあ、と何やら荒い息をして顔を引くつかせているフェノン。

 うん、どう見てもおかしい。


「何かあったのか?」

「い、いや! なんでもないぞ? それよりお疲れ様だなカズキ。どれ、鞄は私が片付けておこう」


 フェノンは誤魔化すように首を振ると俺の持っていた鞄を奪い部屋の中へと戻っていく。


「………………?」


 それがきっかけだった。その後も何度か、似たような事が続き俺は首を傾げる日々が続いていた。





「と、言う訳でフェノンの様子がおかしいんだが」

『それで僕に相談するのか? 僕は人形と妹には詳しいがそっちはアウトレンジだぞ』

「相変わらずブレないなぁおい」


 翌日、講義の休み時間に加藤に電話で相談してみた。だけど相談して早々、相手を間違えたと後悔する。


『いいか、林。お前ならわかってると思うけどいくらギャルゲやエロゲをクリアしたところで現実の女性が口説ける訳じゃないんだ。同じように女性の気持ちが分かる訳でも無い。そう錯覚するのが一番危険なんだよ。だから僕は現実を認めて、ドールのファッションセンスを高めているんだ。いずれ相手が出来た時に着せる為に!』

「お前が一番現実を見つめていない気がするんだが」

『うるさいぞリア充。いつの間にか彼女なんか作りやがりまして。ってか前から思ってたんだけどフェノンさんって海外の人だよな? 見た目には日本人っぽいけど名前的に』

「海外と言えば海外になるのかな……。二度と行きたくないが」

『?』

「それより、結局どう思うよ? フェノンの様子について」

『そうだなあ、何か慌てている様子って事は何かを隠したいって事じゃないのか?』

「……やっぱそうなるよなあ」


 それは何となく予感していた。しかしそこまでして隠したいフェノンの秘密とはなんだろうか? ただそれを態々暴き立てるのも気が引ける。


『ま、大きな問題じゃないのなら放ってもいいんじゃないの? 別に仲が悪くなったわけじゃないんだろ?』

「まあなー」

『なら良いじゃん。それより、今日暇? 久々に飲みにいかない?』

「それもいいな」


 そうして俺はフェノン事はしばらくそっとしておくことにして、加藤と飲みの場所について話し始めたのだった。





 そして、その夜。


「あーーーー」


 頭が痛い。視界がフラフラする。それでも感じる謎の高揚と、腹の中に渦巻く吐き気。つまり俺は酔っていた。

 電話で決めたとおり、講義の後に加藤と合流し飲んで、その帰りなのだ。明日は休みという事もありお互いに少々ハメを外して飲み過ぎてしまった。それでも何とか電車を乗り継ぎ、ギリギリ終電で帰ってくることは出来たのだが。


「水―飲みてー」


 喉が渇く。自販機で買ってもいいのだが家はもうすぐだ。だったら帰ってから飲もう。俺はそう決めるとふらふらとした足取りで、何とか自宅まで辿り着いた。

 フェノンには遅くなるかもしれないから、チェーンだけは開けておいてくれと既に伝えてある。と、いってもまだ12時過ぎたばかりなので起きている可能性もあるが。しかし寝ている可能性も当然あるのでインターホンは鳴らさずに、俺は鞄から鍵を取り出し扉を開けた。


「ん~?」


 電気がまだついている。アレでマメなフェノンは自分が寝るときはしっかり消灯するタイプだ。それがついているという事はまだ起きていたのか。そんな事を考えつつ俺が玄関から居間に入り、そして見た。


『いくよデスティニーちゃん! これが私の全力圧壊! 受けてみて、サンライトブレイカーの超強化版!』


 俺の部屋ははっきり言って狭い。学生の一人住まいだから当然だ。玄関があって、その目の前に台所や風呂、トイレの入り口があり、そしてその先にあるのが6畳ほどの居間。ベッドが一つにテレビや本棚などが置かれた普通の部屋だ。

 そしてその部屋の32型テレビには白くてフリフリの服装の少女――いわゆる魔法少女という存在が声高らかに桃色破壊光線を放っており、


「あ…………」


 そのテレビの正面ではフェノンが呆然とこちらを見ていた。そしてそのフェノンの近くにはTUDAYAのレンタルケース。


「あ……あ……ああああああ!?」


 フェノンは俺の顔を見て、そして画面に映るフリッフリの魔法少女を見て、そしてもう一度俺を見て、顔を真っ赤にしてダラダラと冷や汗を流しながらパクパクと口を開閉していた。


「かかかかかカズキっ!? 今日は遅いのでは無かったの……か?」

「う、うん。ちょっと飲み過ぎたから早めに帰ってきたんだけ……ど……」


 そう言って俺はもう一度テレビに視線を移す。桃色破壊光線は未だ健在であり、凄まじい破壊力で海を割っていた。それを見て俺はうん、と頷く。


「劇場版か」

「いやあああああああああああああああああああああ!?」


 フェノンは顔を覆って悲鳴を上げた。





「まあつまりか、何だかんだで興味を持ってこっそり借りて見ていたと」

「くっ……そ、そうだ……」


 あれから少しして。酔いも吹っ飛んだ俺は目の前で悔しそうに正座して顔を俯かせているフェノンの前で成程、と頷いていた


「さ、最初は気まぐれだったのだ! 魔甲少将クリティカルあげはの元ネタと聞いて……カズキが今までどんな物を見ていたのか気になって。そしたら……」

「面白くて嵌ってしまったと」

「…………」


 ぷいっ、とフェノンは顔を逸らした。その顔は耳まで赤い。

 けどそんなに恥ずかしがる事なのだろうか? 大きいお友達だって女性だってあの作品は見ていると聞く。別にそれほど気にする程じゃ……。


「…………まさか」


 一つ、俺はある事に気づいた。まさか、と思いつつ、今までのフェノンの事を思いだすとその疑念が増していく。なので思い切って聞いてみることにした。


「面白かったのとは別に、実はちょっぴりあの服装に憧れてたり?」

「なななななななななな何を言っている!?」


 真っ赤な顔を引き攣らせて焦るフェノン。え? マジで? これビンゴ!?


「ふぇ、フェノン。魔法少女は卒業したんじゃ……?」

「な、なんの話だ!? 私は話が面白いから見ていただけだぞ!?」

「けど確かフェノンってフリフリのゴスロリ好きだったよな。さっきの作品もそういうの多いし……」

「そ、そんな事は無い! あれは私の若さゆえの過ちという奴だ!」

「そういえばこないだ、テレビで秋葉原のメイド喫茶が特集されてた時もぼーっと見ていた様な……それに加藤が送ってきたドールのゴスロリ写真も熱心に眺めていた様な」

「今それを思い出すな!? 違う、違うのだ!?」

「ま、まあ俺は良いと思うぞ? そういうのに理解あるし」

「だああああああああああああああああああ!?」


 それからしばらく、フェノンはただひたすら悶え続けていた。






「く、嗤うなら嗤えばいい!」


 そしてまたしばらくして。もう観念したのかヤケクソなのか。フェノンは俺の言葉を認めた。


「ああそうだとも! 好きで悪いか!? 確かにあの魔法魔女は私の汚点だがな! 女性が可愛い服に憧れて何が悪い!? 言ってみろカズキィィ!?」

「おおおおお、落ち着けフェノン! 今のお前はちょっと錯乱している!」


 まあフェノンが乙女趣味な事は知ってたし。いつものクールな様子も実はそれを隠す為の物だと最近気づいた。それに俺もオタクの端くれ。そういうものは嫌いじゃない。


「く、屈辱だ……まさかカズキにこうまで責められる日が来るとは……」

「ま、まあいいじゃん? 俺だってあの作品好きだし。何だったら他にも魔法少女もの見る? 『魔法幼女マドカ・ゼフィリス』とか『プラズマ・イヤズヤ』とか……」

「………………見る」


 どうやら本当に観念したらしい。フェノンはそっぽを向きつつも小さく頷いた。


「あ、あと今なら劇場版プリキラがやってるかもしれないけど――」

「流石にあの作品をこの年で見に行くのは不味いだろう!?」


 まあ確かに。俺も流石にそれは嫌だ。

 けどね、フェノン。世の中には『大きいお友達』という不思議な言葉有るんだが……。

 しかしこれで謎が解けた。フェノンには悪いが、俺としてはすっきりしたので万々歳だ。

 と、そこで俺はある事実に気づいた。


「待てよ……フェノンがフリフリ好きだという事は、だ。ゴスロリ風メイド服を用意すればフェノンがそれを来てくれる可能性がっ!? よしフェノン! 明日は秋葉原に行くぞ!」

「…………お前は本当にブレないな」


 あ、怒った? 顔を引き攣らせたフェノンが手を伸ばし耳を抓まれた。痛い! そにれ不味い、やはり性急すぎたか!? やっぱりウェイトレスから始めるべきだったか!?

 そんな俺の耳を引っ張るとフェノンは口を寄せ、


「まあ、お前が望むならそれもいい」

「へ……?」


 呆然とする俺の顔を見て、フェノンはいたずらっぽく笑っていた。

 え、マジで……?




 そして後日、俺とフェノンはTUDAYAにやって来ていた。そして店員の趣味なのかどうかは不明だが、やけにスペースをとっている魔法少女コーナーでフェノンは感慨深げに頷き、


「しかし、カズキ。お前が詳しいという事はここにある作品を全てを見てきた訳だな……。つまり魔甲少将クリティカルあげははお前の中でのそれらの集大成と言う訳か。そしてお前はその集大成をすね毛全開で装着したという猛者なのだな…………凄まじい」

「言わないで!? お願いだからあの事を思い出させないでくれませんかねえええええ!?」

おかしい、フェノンとのイチャイチャを書いてみようと思ったらフェノンがエライ事になっていた。 まあいいか


それとまた別の作品を投稿し始めました。5-4で女神が言っていた、魔王が宇宙で戦艦相手にドンパチやる偽SFですが、読んで頂けたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] カズキとフェノンが幸せそうで何より。 ハッピーエンドは良いですね。 [一言] いやー、面白かったです。 一気読みになりました。 後で思い返せばこっ恥ずかしいことでも、当時は真剣に取り組んで…
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