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大変遅くなりましたが復活しました
新部署は忙しすぎて更新速度は落ちるかもしれないけど完結は必ずさせますのでお付き合い頂ければと思います
俺は今、選択を強いられている。
「カズキ……おいカズキ!? 流石に冗談だよな……?」
両手を縛られたフェノンが顔を引き攣らせて俺に叫びかける。余程あの格好をするのが嫌なんだろう。確かにアレはキツイ。キツイだろうけどしかし俺は見てみたい。俺の未だ過ぎさぬ情熱――思春期から引きずってきたエロスへの願望は既にヴァジュラ・オン。
だがこれは裏切りだ。フェノンの信頼を裏切る行為。それはきっと許されないだろう。大切な仲間を犠牲に己の欲を満たす行為。それはいけない。だから俺の中の冷静な感情がこう告げる。『上手くやれ』と。上手く、なんとかダメージを最小限にフェノンにあの姿をさせろと。これが話に聞く冷静と情熱の狭間というものか。くそっ、俺はどうすればっ…………って、あれ?
「良く考えたらどっちに転んでもwin winじゃん」
「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!?」
「…………敵の私が言うのもアレだがアイツ色々大丈夫か?」
叫ぶフェノンを捕えたままのシーズルまでもが何故か顔を引き攣らせていた。くぅ、人質とは卑怯な奴め。
「くっ、こうなったら……ククス! そっちはもういいから何とかしろ!」
「了解ですよっ」
そんな掛け声と同時、ククスさんが飛び上がり、血が滴り落ちる釘バッドを構えて俺とシーズルの達の間に降り立った。その姿は中々に凄まじく、紺色の髪やフェノンのに似た黒の法衣が所々どす黒く……というか赤黒く染まっていらっしゃる。そういえば変な太鼓の音も消えているという事は例の謎の半裸の男達は倒したのだろう。どうやって倒して今彼らがどうなってるかは正直見たくない。
「まあ主人というか師匠なフェノン様の命令です。そこの人生棄てた女、フェノン様を離してもらいますよ」
「ちっ、最近密かに話題の魔女の弟子……釘バッドの魔女か!」
いや釘バッドの魔女て。
初めて聞くどこぞのスケバンみたいな呼び名で呼ばれたククスさんは誇らしげに胸をはった。そういやこの人も大きいよなあ。
「ふふん、私にはカズキ様に与えた呪いの呪文は聞きませんし、フェノン様が何故か嫌がっている映像だって効果ありませんよ。そして貴方がフェノン様の人生を社会的に抹消しかねない服を着せるよりも、私が叩くほうが早い。ということで覚悟!」
言うが否や、ククスさんが釘バット片手にシーズルに殴りかかった。シーズルは拘束したフェノンの腕とその肩を掴むと背後に飛んでそれを躱す。一拍遅れて、振り下ろされたククスさんの釘バットが、先ほどまでシーズル達が居た場所を轟音を叩いて抉った。
「お、お前、普通味方ごと攻撃するか!?」
「と、言っていますけどフェノン様」
「構わん。あんな恰好する位ならコイツごと叩け。多少の傷なら問題ない」
「だ、そうですよ?」
なんとも勇ましい断言したフェノンの言葉にククスさんが笑顔で釘バットを構えた。そんなに嫌か…………嫌だろうなあ。
「ほら、カズキ様もいい加減真面目にやって下さい。もし本当にこのままスルーしたらフェノン様ガチでキレますよ。そうなったら……なったら…………」
「青っ!? ククスさん顔が青いよって一体どんな仕打ちが待ってる訳!?」
「鰻……もずく…………とろろ……納豆と馬が合神なエキュスカリバー……」
「わかんねえよ!? どんな仕打ちか一ミリも想像つかないよ!? というか鰻とか納豆とかがあるって益々世界観が判らないっ!?」
「と、とにかく、早くあの未来が無さそうな女を何とかしますよ! じゃないとフェノン様に本当に嫌われちゃいますよ?」
「う……」
うん、やっぱりそれは流石に嫌だ。人の事を散々弄ってくる奴だけどこの世界での大切な相棒だ。そんな相手に嫌われるのは流石に堪える。
そんな俺にククスさんが小さく笑いながら小声で付け足した。
「それに……もしかしたらここでフェノン様を助ければ『イイコト』あるかもしれませんよ?」
「よっしゃあ覚悟しやがれこの外道!」
俺が全ての迷いを捨て去ってシーズルに相対した!
「……なんとなくカズキ様の扱い方が分かりました。はい」
「お、おいククス? 何かカズキから先ほどまでとは微妙に違いながらも似た様な邪な気配を感じるのだが何を言った?」
「安心しろフェノン! 今すぐ助けてやる!」
「何故だ……安心しきれないのは何故なんだ……」
イイコトってなんだろなー。カタカナな発音ってなんかワクワクするもんね!
「ちっ、余計な真似を……」
そんな俺達を見てシーズルが不利を悟ったのか一歩引く。それを追い詰めるように俺とククスさんは一歩詰め寄る。これで2対1。こちらが有利だ。俺とククスさんは息を合わせて跳びかかろうと腰を落とす。だがその瞬間だ。フェノンが何かに気づき顔を強張らせて叫んだ。
「っ、避けろ! カズキ、ククス!」
「!? カズキ様、失礼します!」
「え?」
何を、という間もなく俺の首根っこをククスさんが掴んで跳んだ。突然急速に流れていく視界と強引な移動による衝撃で目を回す俺の視界に何かが映る。そして響く二つの轟音。
「な、何だ!?」
一瞬で数メートル跳躍したククスさんに連れられて漸く着地した時、俺たちの前――シーズルの正面には二つの人影があった。
「苦戦してる様だねぇシーズル」
「けど魔女を捕えたのは良くやったわ。『あのお方』も褒めてくれる」
「お前らは……!?」
今更だが……本当に今更だがここは異世界だ。そして俺たちの敵は魔族と呼ばれているらしい。だけど思い返しても俺は今まで魔族らしい魔族と言うものにであった記憶が無い。破軍三鬼集も幻魔三魔人もいつの間にか捕えられてたゴーレム三兄弟も見た目は人間と変わりが無かったからだ。ありがちな魔族、例えば角が生えてるだとか翼があるだとか尻尾があるだとか。そんな感じの魔族には出会って無かった。だからいつの間にか、『魔族』という言葉そのものを大して気にしなくなっていた。単純に名前だけで中身は人間なのかと思い込んでいたのだ。
だがそれは間違いだった。浅はかだ。なんて浅はかな考えだったんだ。それは俺の単なる思い込みであり勝手に都合よく解釈しただけに過ぎなかったんだ。ここは間違いなく異世界であり、そして敵は魔族。それに間違いは無かったのだ。愚かな行為だ。そうやって心構えすらしていなかったからこそ、今目の前に現れたソレに俺は恐怖した。有り得ない存在。人智を超えた異質の塊。人と相容れぬもの。人類の―――天敵。それこそが目の前のソレなのだと、俺は否が応でも理解させられた。
「これが……魔族……っ」
隣を見ればククスさんも目を見開いて震えている。やはりそうなのか。本当の魔族という存在はやはり恐怖の対象なのか。
「安心しなさいさねえ。これで3対2」
「私達が負ける要素はないわ」
そう言ってこちらを睥睨する二人……否、二匹。
一匹は小柄だ。その小さい体には今まで刻んできたあらゆる悪意がにじみ出ているのか、皺だらけである。腰は曲がっているのか常に前傾姿勢。その姿はいつでも獲物に飛びかかれる為の準備に過ぎないのだろう。更にはその手にはゴツゴツとした無骨な棍棒を持ち、それで地面を突いてる。開いているのかも良くわからない薄い目からは邪気が毀れ、常に微妙に震えている体。その周囲にはあらゆる命を枯れさせる臭気を漂わせている。
二匹目は逆に大柄だ。いや、大柄どころではない。あれは巨人だ。丸太より太いのではないかと言う腕は全てを叩き潰すかの如く硬質に黒光りしている。それは両脚も同じで、外から見てもわかる極限まで密度を高められた筋肉がビクンッ、と脈打っていやがる。肩甲骨は異常に隆起し、やはり次節ビクンッ、ビクンッ、と震えている。きっとアレは翼だ。あそこから翼が生えるに違いない。そしてその人間離れした肉体を制御する脳がある頭。その顔もおおよそ人間とはかけ離れている。堀が深すぎて目元が昏く、それはまるで深淵の更に奥底から獲物を呪う悪魔の眼。中央に添えられた鼻にはゴルフボールすら容易く詰められそうな穴が開き、それはいつか見たファンタジーアニメのオークを想像させる。いや、実際にオークに似た何かなのだこいつは。そうでなくては説明がつかない。
そんな対照的ながらも悪魔の象徴の様な二匹だがある一点、共通している事があった。
それはシーズルとよく似ながらもより際どい紐ビキニを着ているという点だった。そう、つまりだ。
「さあ、思い知らせてやろうかねぇ」
「私達、密林ビキニ部隊桃色大三元の美貌を!」
紐ビキニを着て杖を付いたババアとゴリラの生まれ変わりの様な極マッチョな女がそこに居た。
「って、ふざけんなああああああああああああああああああああああああ!?」
俺はキレた。心の底からキレて叫んだ。
きっと今はキレても許される筈だよね?
「ふざけんなよ手前ら!? 確かに痛々しくて俺ですら罪悪感感じる密林ビキニ部隊桃色大三元だったがな! だからと言ってそんな化け物染みた姿形はしとらんわ!? 大体何だよ、お前ら俺のあのノートの内容を忠実に再現してるんじゃなかったのか!?」
思わず地団駄を踏みつつ怒りに任せてその化け物共を指さす俺だが、当の化け物二人は心外だとばかりに首を振りやがった。
「何を言っているのかねえ。私たちは忠実に再現している。そう、私は密林ビキニ部隊桃色大三元が一人《儚くも幻想的な雰囲気》を持つクラリス!」
「黙れババア!? 儚いどころか飛び越して即身仏みたいな風体じゃねえか! 幻想ってかホラーでしかねえんだよ!? あとそれは雰囲気じゃなくれ加齢臭じゃねえか限度を考えやがれ!」
「愚かね。そして私が《健康的でボーイッシュな少女》レクター!」
「そんな視覚に暴力的な健康見たことねえよ!? つーか何が少女だ!? お前の場合ボーイ通り越して完全に雄じゃねえか!? どう見てもゴリラ遺伝子にXY染色体倍率ドンじゃねえか!?」
「失礼な男ね。これでも31歳。ゴリラ換算では15歳。立派な少女よ」
「ゴリラ換算っ!? ってかゴリラって認めた!?」
もうやだ帰りたい。こんな連中の相手したくない。今まで幾度となくこの感情を味わったが過去最高に嫌だ。何が嫌って幼い頃の妄想がどんどんドドメ色に汚されている気がして。
だがそんな俺の気持ちは露知らず。クラリスとレクターは馬鹿にした様に笑った。
「破限魔術師。思ったより愚かな男だね」
「そう、真の美貌とは外面に非ず。内面にこそ映し出されるのよ。……そういう意味ではシーズルもまだまだね。だから人質を取っていても雰囲気で押されるのよ?」
「は、はい……」
シーズルが恐縮したように頷いている。というか良く見たらアイツも化け物二匹に視線合わせようとしてないんだが。
「くっ……カズキ様。思わず私もあの化け物二匹には動じてしまいましたが所詮二人増えただけです。私達の力なら問題ありません」
「お、おお!」
流石にあの連中は堪えたらしいククスさんがふら付きながらも武器を構える。何とも頼もしい。だがクラリスとレクターの2匹は嘲る様に笑った。
「愚かだねえ、釘バッドの魔女」
「私たちはお前の弱点も把握しいてるわ」
「はっ! 適当な事を言うべきじゃあありませんよ!」
ただの脅しと思ったんだろう。ククスさんは構わず飛び出すと一気に距離を詰めクラリスへと釘バットを振るう。しかしレクターが前に出るとその一撃を腕で受け止めた。その光景にククスさんが目を見開いた。
「なんですと!?」
「真の美貌を持つ者は鋼の心と肉体を持つのよ……。そしてぇ!」
レクターの動きはそれに留まらない。もう片方の手で釘バットを掴みあげるとその釘を一気に引き抜いた。ククスさんは慌てて釘バッドを手放すと背後に跳躍。レクターから距離を取る。だが、
「欺瞞に満ちた貴様の姿形など、無力!」
しなやかに引かれる黒光りの筋肉。そして脈動する血管。俺が見ることができたのはそこまでだった。気が付いた時にはレクターが釘バットから奪い取った釘をククスさんに向け、凄まじい勢いで投擲していた。
「ククスさん!?」
「ククス!?」
「っく!?」
俺とフェノンが思わず叫ぶ。放たれた釘はあろうことかククスさんの胸部に凄まじい勢いで迫り、それを躱すことも防御することもできずククスさんの胸部に突き刺さったのだ。ってこれはマジでヤバい! 最悪の事態が俺の脳裏に過る。そしてククスさんは衝撃でふら付き倒れ―――――無い?
「かはっ、げほっ」
「ククスさん!」
良かった無事だ。俺は安心しつつククスさんに駆けよった。
「大丈夫で―――――え?」
そして見た。見てしまった。その異常な光景を。
「ぁ…………ぁぁぁっ!?」
ククスさんが震えている。顔を真っ青に染めて震えているのだ。肩をガタガタと揺らし呼吸は荒く、少しでも新鮮な空気を求めようとフェノンに及ばずとも結構育った胸を上下させている。だがその胸が。胸がおかしいのだ。
「さ、刺さってる……けど?」
「っ!」
ビクンッ、とククスさんが震えた。
そう、彼女の胸には釘が刺さっていたのだ。いやまあそれはいいんだ。だって投げつけられたわけだしそれは不思議じゃない。問題は別のところにあるのだ。
凄まじい勢いで放たれた釘はククスさんの胸に突き刺さった際に衝撃で衣服の一部も弾き飛ばしていた。つまり今のククスさんの姿は胸部がボロボロになっておりその下を覗くことができる。
だけどそれならおかしいのだ。それほどの威力を持っていたのなら、服の下の肉体も傷ついてなければおかしい。なのに血が一滴も垂れていない。代わりに見えたのは丸みを帯びた何か。半円形のお椀の様な何かがそこにありそれに釘が刺さっている。
「く、ククスさん……まさか……!?」
「い、嫌です! 言わないで下さい!? 私は……私は……!」
怯えた声で首を振るククスさん。だが敵であるの2匹はそれを許してくれなかった。
「愚かね……そんな偽りの姿で戦場に出てきたことを後悔するといいわ釘バッドの魔女。いえ…………違うわね」
レクターが獲物を見つけたゴリラの如く眼差しで笑いながら告げる。
「これで終わりよ、釘パッドの魔女!」
「言うなあああああああああああああああああああああああああ!?」
ククスさんが崩れ落ちた。
「私だって、私だってこんな事したくなかったですよ!? けど仕方ないじゃありませんか! フェノン様の一番弟子って事は一番近くであの人の胸の凶器を拝むことになるんですよ!? 分かりますかこの気持ち!? 揺れるんですよ跳ねるんですよ柔らかいんですよ!? そんなのの横に胸がモノリスな人間が居たらどう思われると思います!? 分かりますかこの気持ち!?」
「お、落ち着けククスさん! そういう需要もきっとあるから! ステータスとか言う人もいるしそういうのが好きって人間も居るからきっと! あと柔らかいとかその辺り詳しく!」
「そういう人はロリじゃなきゃダメな人が大半じゃないですか! 私は身長はあるんです! 普通なんです! それでも断崖絶壁なんですよ!? よしんば需要があったとしてもフェノン様の横に居る事で微妙に居た堪れない目で見られるのには変わらないじゃないですか!? 大体その需要ってどれくらいの価値があるというんですか!?」
「えっと……刺身の大根的な……」
「微妙すぎて嫌ああああああ!?」
ドバドバと涙を流しながら訴えるククスさん。うん、確かに今の光景は居た堪れない。完全に崩れ落ち胸のパッドに釘を刺したまま泣き続ける姿は流石に擁護できない。
「うふふ。これで三対一.それにこちらには人質もいる」
「勝負あったねえ……」
「さ、流石お姉さま達! 凄いのは見た目だけじゃ無いんですね!」
桃色大三元は勝ち誇った様に笑っている。確かにこれは不味い。フェノンは人質に取られククスさんは黒歴史どころか現在進行形で秘密を暴かれ崩れ落ちてしまった。つまり戦力にならない。
「さあ破限魔術師。これで積みよ。大人しく私たちに従いなさい」
「お、お姉さま! 今すぐ殺しましょう! 今すぐさあ直ぐ!」
「落ち着きなさいなシーズル。『あのお方』の命令はあくまで捕獲だったろうねえ」
「くっ、……だけど」
不味い。本当に不味いぞこれは。フェノンは人質に捕られたままでククスさんは戦闘不能。真面目に打つ手が無い。また無詠唱系痛魔術を使うか? いや、駄目だ。ここにはサインペンが無い。サインペンが無ければ第三の眼が開眼できない。いや本当はしたくないけど! けどじゃあオリ古武術で行くか? いやそれも駄目だ。そもそもアレは使い物にならないと以前フェノンにも言われたし、第一ククスさんの一撃を生身で防いだあのゴリラ相手に効果がある気がしない。
そんな俺の様子を見てクラリスがその皺を更に深くして笑う。その度に異臭――加齢臭が漂ってきて頭がクラクラしてくる。何て恐ろしい奴。
「諦めなさいな。なあに、殺しはしないんだ。ちょっと私達のいう事を聞いてもらうだけだからねえ」
「くっ……だけどそう易々と」
「いいや、無駄だねえ。忘れていないかい? 私達の能力を」
「能力……?」
そういや何だったけ? 確かこいつらの能力は……
「…………あ」
そうだ思い出した。思い出しそしてその意味に気づき、俺は…………震えた。
「ま、待て……ちょっと待て! まさかお前ら……」
「ほう、思い出したようだねえ」
クラリスの加齢臭がキツくなってきた。ずっと嗅いでいたせいで頭痛が激しくなってくる。だがそれとは別の感覚が俺の中で芽生え始めていた。駄目だ。それだけは駄目なのに、なぜか体はいう事を聞かず、更にその匂いを嗅いでしまう。
「何て甘い匂いなんd…………って違う!」
「カズキ……?」
捕らわれたままのフェノンが訝しげに声をかけてくる。だがそれよりも別の者に目がイってしまう。それは俺の目の前で不敵に笑う―――ミイラとゴリラ。ああ、なんて彼女たちは……ってやめろ、やめてくれ! これは、こいつらの能力は……!
「ようやく効果が出てきた様だねえ。それに破限魔術師も思い出した様だねえ」
「……貴様――カズキ――に何を――し――」
遠くでフェノンの声がする。だが駄目だ頭が痛くてよく聞き取れない
。クラクラする。駄目だ。飲まれてはいけない。これに飲まれたら俺は、俺は人生最大の悪夢を味わう事になるのに。だって、だってこのままじゃ俺は!
そんな俺を嘲笑うように桃色大三元は高らかに叫んだ。
「そう、私達の能力。それは≪誘惑≫!」
「全ての男を魅了し虜にする能力。つまり破限魔術師はもうじき私達の美貌の虜になるという事よ!」
「それだけは嫌だあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
誰か、誰か助けて! マジで助けて!?
やっぱこういう美女は定番ですよね。それに誘惑も(棒
黒歴史あんま関係ない気がするけど一応これも必要なのです