46、来たよ!ランディア王国
その後レアとウル、ベルドは道中で合流し、三人は誘拐犯の後を引き続き追った。
彼らが帝国内に留まる様子はなく、現在は街道沿いに移動している。そして関所が締まった夜中に、ランディア王国の関所のある街へと辿り着いた。彼らは塀を飛び越えながら関所内へと悠々と入っていく。
その様子を遠目から見ていた三人は、木陰に隠れて話し合った。
「ランディアに来たから、ミナを助けてもいいんだよね?」
「うん。我慢させて申し訳なかったよ」
「ううん、皇帝陛下の言葉なら仕方ないし、最終的に私はミナと一緒にいれればいいから大丈夫」
――その確率が高くなるのであれば、我慢だって厭わない。
そんな彼女の姿勢を、ベルドはありがたいと感じた。そんな彼女に報いるためにも、この奪還は成功させなければならない。
ベルドは浄化の腕輪に魔力を流し込む。すると、もうひとつの腕輪の場所が宝石内に現れた。中心より左上で光っているのが、もうひとつの腕輪の場所だという。その光は何度も同じ場所で光っては消えるを繰り返していた。
「どうやら、この街に留まっているみたいだね。レアさんから見てどう?」
「うーん、確かに残滓量は変わらないままかな」
ベルドに請われたレアは、そう告げる。二人の言葉で誘拐犯がこの街に留まっているというのは理解した。
「ランディアに入国したからだろうか」
「その可能性は高いね」
ベルドは少し悩んでから、レアとウルへと顔を向ける。
「ここで一旦仮眠を取ろう。ウルと僕が浄化の腕輪を利用して様子を見ておく。相手方が動いたら移動を始めよう。もし、朝まで動く様子がなければ、入国して情報収集と居場所の特定を急ごう」
彼の言葉に二人は大きく頷く。そこから朝まで、誘拐犯たちが動く様子はなかった。
翌日。関所が開く頃。
ベルドとレアとウルの三人は街へと向かう。無事に入国した三人は、ミナの魔力残滓を感じながら大体の方向を確認する。その後ベルドとウル・レアの二組に別れ、ベルドはギルドへ、ウル・レアは残滓を追って街へと繰り出した。
神聖魔力を追っていた二人は、街の片隅にある大きな屋敷へと辿り着いていた。
屋敷の内部は高い石塀に囲まれているため見えない。けれども、彼女の残滓が一番濃い場所だ。二人は屋敷の向かいに位置する食堂で、昼食も兼ねた食事をとり始めた。
この食堂は人気があるようで、二人が食事をしている間にも多くの人々が席に着いていく。そしてテーブルが全て埋まると、注文が飛び交い一気に騒々しくなった。
そのときになるとレアは食事を終えていたので、山盛りの料理を無言で食べているウルを見ながら周囲に耳を傾ける。聞こえてくるのは、国の状況だ。
「どうやら国境近くの街に魔物が現れたらしいぞ?」
「えっ、以前までそんなことなかったよな」
「ああ。幸いそこまで強い魔物ではなかったらしいから、無事に倒されたらしいが……」
「珍しいもんだなぁ」
彼らの話を聞いたレアは、魔物を防いでいる防御壁が弱くなっているのだろうと判断した。防御壁は最低でも三日に一度はほぼ満杯にしなければ、綻びができてしまう。魔物はその隙をついて入ってきた可能性がある。
たとえ魔力を毎日入れていたとしても、満杯になっていなければ水晶玉本来の力を発揮できないのだ。ウルもこの話を聞いていたのか、レアと視線がぶつかる。
「防御壁の強化が間に合っていないんだと思う」
魔力を入れても修繕に使われてしまい、防御壁そのものを強化することができない。そんな悪循環に陥っているのだろう。ミナが以前『ランディアの聖女全員力を合わせても、満杯にすることはできないのではないか』と言っていたが――。
二人が目を合わせていると、別の場所から気になる話が聞こえてくる。
「なあ、知ってるか? 今王都はてんやわんやしているらしいぞ」
「そうなのか?」
「ああ、最近大聖女様が体調不良で休まれているらしい。だから他の聖女様たちで回しているらしいのだが、追いついていないそうだ」
「へぇ、大聖女様のお力は凄いんだなぁ」
レアはうんうん、と頷きながら話を聞く。表情は満面の笑みを湛えながら。
そんな彼女を食事をとりながら見つめるウル。二人の間に和やかな空気が流れる中……次の一言で、それが崩れた。
「そう。だからなのか……聖女探しの旅を王太子殿下がお忍びで……なんて噂があるらしい」
「え、わざわざ王子がか?」
「それだけ一大事なんだろうな」
レアは眉間に深い皺を刻む。まるで彼女の周囲の温度が氷点下まで落ちたかのようだ。実際彼女の魔力が漏れ出しているのだろう。ウルは彼女に視線を合わせ、落ち着くように目で訴える。それが功を奏したのか、少しずつ滲み出ている魔力の量は少なくなっていった。
話している冒険者たちは彼女の魔力を感じたのか小さく身震いしてから、話を続けていく。
「ああ、でもどこから廻るのかもわからないしな。あくまで噂だから、来ないかもしれない」
「もしかしたらこの街に来ていたりしてな!」
「いや、流石にそれはないだろ」
大笑いしながら話す冒険者たち。ウルとレアは顔を合わせ、お互い首を縦に一度振ってから食堂を後にした。




