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【連載】「偽物だ」と追い出された最強聖女たちの、自由気ままな珍道中  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 討伐依頼を受ける聖女たち

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28/30

28、どうしてこうなった?!

「おや、今日は早かったね? 依頼は受けてこなかったのかい?」


 陽だまり亭に戻った二人は、昼の準備をしていたモリーと顔を合わせた。

 ミナは彼女の言葉に左右に首を振る。そして一枚の依頼書をモリーに差し出した。


「今日はモリーさんのところの依頼を引き受ける予定だ」

「よろしくお願いしまーす!」


 二人の言葉に目を剥くモリー。てっきり武器を得た二人は、討伐依頼を受けるのかと思っていたからだ。

 紙と二人の顔を交互に見るモリー。そして、困惑しながら訊ねた。


「討伐依頼を受けるんじゃなかったのかい?」

「そのつもりだったんだが……横槍が入ってしまってな」


 肩をすくめるミナ。その様子を見て、なんとなく何が起きたか察したらしいモリーは、「ああ、お疲れさん」と声をかけた。

 

「なので、今日は街の依頼を受けようと思っていたら、モリーさんの依頼を見つけたの」

「昨日働けなかった分、今日はモリーさんを助けたいと思ってな」

「ははは、助かるよ! アンタたちがいれば百人力だからねぇ」

「今日は一日頑張るね!」


 気合いを入れる二人に、モリーは娘たちを見つめるように微笑んだ。




「いらっしゃいませ」


 昼の営業が始まると、少しずつお客が店へと入ってくる。そしてお客は皆一様にミナとレアの姿を見て目をまたたかせた。


「あれ、今日は昼も手伝いなんだ?」

「そうなのです〜! よろしく願いしまーす!」


 楽しげな表情で配膳するレアに、お客までもが胸が温かくなる。モリーが娘のように見ている一方で、お客は自分の姪っ子のような優しい視線で見守っていた。

 

「えー、もし二人が昼もいるなら、俺毎日来ようかな?」

「ははは、二人は今日だけさ!」


 後ろを振り向くとモリーも笑っている。どうやら今日は団体の客がいるそうで、手が足りなくなると臨時に雇っただけなのだとか。


「それに二人がいなくても、アンタたちは毎日来てるだろう?」

「違いない!」


 その言葉にお客もモリーも大笑いだ。

 ミナとレアも、どこかで聞いたことのあるやり取りだな、と思いながら笑いを噛み殺していた。


 昼間を無事終えた二人。そのまま夕方以降も手伝ったのだが……普段よりお客の入りが多かった。客足が落ち着いた頃に上がるよう言われていたが、現状その様子が見られない。

 普段であればとっくに上がっている時間だったが、二人は店内を踊るように動く。


 しばらくして客の波が引く。全ての片付けを終えた二人が一息ついた頃……入り口の扉が音を立てて開いた。

 入り口近くにいたレアがどうやら対応してくれるようだ。開ける音からして、女性冒険者だろうか……そんなことを考えていたミナの耳に入ってきたのは、レアの不思議そうな声だった。


「いらっしゃいま……せぇ?」


 なぜが疑問符の付く挨拶不審に思ったミナは顔を上げる。彼女も同様に扉の前を見て……目を丸くした。そこにいたのは、バルドとウルだったからだ。


「二人で」

「かしこまりましたっ」


 バルドに人数を伝えられたレアは、一瞬で正気に戻る。そして店内へと案内した。その間、ミナは残りのテーブルを片付ける。するとその時奥からやってきたのは、モリーだった。


「おや、お二人さん。今日はうちで食べるのかい?」

「その予定。遅くなって申し訳ないけど……」

「なーに言ってるんだい! まだ営業中だから問題ないじゃないか!」


 申し訳なさそうに話すバルドに、モリーは笑い飛ばす。そして今度はミナたちへ顔を向けると満面の笑みを浮かべた。


「今日は遅くまで悪かったね! もう上がりな!」

「ありがとうございます。その前に――」


 ミナとレアはバルドとウルへと近づく。そしてレアはにっこりと微笑むと二人に向かって告げた。


「いつもお世話になってるので、お食事奢らせてください♪」


 ミナが言っても断られる可能性が高い。であれば、レアが可愛らしく言ったらどうだろうか……と。最初は面食らった様子のバルドとウルだったが、後ろでウルが首を左右に振る。

 それを見たバルドも同様な仕草をした。


「気持ちは嬉しいけど、それはでき――」

「おや、アンタたちは顔見知りだったのかい?」


 バルドの言葉を遮るようにモリーが四人に話しかけた。ミナとレアはモリーの言葉に同意する。


「しつこい勧誘から助けてもらったの」

「後は人攫い捕縛の時もな」

「いや、人攫いの件は僕らが助かったんだけど……」


 バルドの言葉は残念ながら、女性三人には聞こえていない。二人の話を聞いたモリーは、最初目を丸くして……その後口を半開きにして驚いていた。全てを聞き終えると、モリーはバルドへ勢いよく視線を巡らせる。そして目に溜まった涙を拭ってから、感極まった表情でバルドたちに声をかけた。


「うちの可愛い看板娘たちを助けてくれて、本当にありがとう!」


 その言葉の後、二人の背中を叩いて健闘を讃えるモリー。彼女の様子に気圧されているらしい二人は、困惑しながら微笑んでいるようだ。感謝の言葉が一通り終わったか……と思いきや、モリーは何か名案を思いついたかのように、音を立てて手を合わせた。


「それならほら、腕によりをかけて料理を作ろうじゃないか! 何が食べたいんだい?」

「あ……肉系で……」

「こっちでいくつか作っておこうじゃないか! 飲み物は最初だけエールだろう? ちょっと待ってな! あ、奥の部屋を使いな!」


 奥に連れて行かれ、個室に押し込められたバルドとウル。あれだけ彼らが狼狽えている姿を見るのは貴重だろう。二人はエールの代金を支払うことに決め、モリーにそのことを告げようとしたのだが……


「何やってるんだい! アンタたちも入りな!」

「……えっ」


 戸惑いを隠せないミナとレアをよそに……あれよあれよという間に個室に入れられる二人。

 しばらくの間、ミナたちは部屋の中にいたバルドたちと顔を見合わせていたのだった。

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