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【連載】「偽物だ」と追い出された最強聖女たちの、自由気ままな珍道中  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 討伐依頼を受ける聖女たち

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27、また助けられてしまった。

「あれっ、珍しい顔だね?」

 

 聞き覚えのある声がして、ミナとレアは男たちの後ろを見る。そこにいたのは、ベルドとウルの二人だった。ベルドは二人が奥にいるのを確認すると、手をひらひらと振り、ウルは軽く頭を下げる。

 男性冒険者たちとベルドたちはどうやら顔見知りらしい。二人の姿を見た途端、男たちの口角が引き攣っているのが見えたからだ。


「……『瞬刻』のベルド……」


 ミナは男たちの様子を見て思った。この男たちは権力や力に弱いタイプだと。

 まぁ、ベルドも男たちに少々圧を掛けているようだ。この圧を受けて怯まない者であれば、付いていくことを考えるのもやぶさかでは無いが……と考えて、男たちの笑顔が思い浮かぶ。

 いや、やはり拒否するだろうと気を取り直したミナは、レアと共に引き続き様子を窺った。


 ベルドは笑みを崩さず涼しい表情で話をしている。

 

「僕の名前、覚えてくれていたのか。嬉しいよ。そうだね、君たちとは何度か顔を合わせたことがあると思うんだけど……確か名前は……カイルとセシル、リュカだっけ?」

「お、覚えていただいて光栄でしゅ……」


 舌を噛んだからか、文末もどんどん声が小さくなっているからか……男の声はとても情けなく聞こえた。まあ、あれだけ凄みのある笑みを向けられて自由に言葉を紡ぐ者がいるなら、見てみたいものだとミナは思う。


 ――ミナとレアはもちろん問題ないのだが、本人たちはそのことに気がついていない。


 どうやらカイル・セシル・リュカの三人は、ベルドだけでなく後ろでしかめ面をしているウルにも怯えているようだ。軟弱だな、という言葉がミナの頭をよぎる。

 彼らはベルドたち二人の圧に耐えきれなくなったのか、ミナとレアへと顔を向ける。


「も……もし機会があったら、一緒に行こうな!」

「……機会は来ないんじゃ無いかなぁ」


 慌てて退散する男たちに、ぽつりと呟くレア。その言葉にミナは吹き出しそうになる。まあ彼女もレアの言葉通り、もう機会は一生ないと思うけれど。去っていく男たち。その後ろ姿をにこやかに見ていたベルドは、思い出したようにその背中に言葉を投げかけた。

 

「あ、強引に誘うのは良くないと思うよ?」

「……気をつけます……」


 すごすごと退散する男たち。彼らの背が扉で見えなくなった後、様子を見ていたギルド内の冒険者たちは、ベルドの行動に賞賛の声をあげた。その中には、『自分たちだって、我慢しているんだ。いい気味』という邪の心があった冒険者がいたとかいないとか……。



 ギルド内が落ち着きを取り戻した後、ミナはベルドに向けてお礼を告げた。


「昨日に引き続き、ありがとうございます」

「ん、気にしないでくれ。見て見ぬ振りはできないタチなだけだからね」


 そう言って肩をすくめるベルドと、後ろで首を縦に振っているウル。特にウルに関しては、無言で瞬きもせず先ほどの男性冒険者たちを見ていたことが彼らを怯えさせる最大の要因だっただろう。


「君たちも大変だね。また何かあれば助けになるよ」


 そう言われて、ミナは横に首を振る。


「いや、いつも助けていただいて、申し訳が立たない。だから――」


 お礼を、と話す前にベルドは人差し指をミナの唇の前に置いた。触れるか触れないかの位置にあるそれに、ミナは驚いて口をつぐむ。ベルドはすぐに指を離してから、にっこりと笑った。


「困っている新人がいたら助けることも中堅冒険者の役割だと思うから、気にしなくて良いよ。まあ、君たちは大型新人だから、依頼に関しては問題ないだろうし? こういうところでしか、先輩風を吹かせることができないだろうからね」


 人差し指を自分の唇に当て、片目を瞑って話すバルド。そんな彼の様子に周囲が感嘆の声を上げる。

 そう、先輩冒険者は本当に相手が困っている時に手を出すのが優しさである……その言葉を周囲の冒険者は改めて心に刻んでいく。邪の心を持つ冒険者は、彼の言葉に格を感じ、意気消沈していたが。


「僕たちへの感謝は依頼をしっかり達成することで返して欲しいな」

「……分かった。そうします」


 何を言っても二人は受け取らないだろう、と判断したミナはバルドの言葉を受け入れた。レアも後ろで頷いて同意をしている。

 そんな様子を見たバルドは、二人へと微笑んでからウルへと顔を向ける。ウルは通常よりも若干細目でバルドを見ていたいたが、その表情の変化はバルドしか気が付いていない。


「それじゃあ、またね〜」


 バルドは依頼掲示板から一枚の紙を取ってから、手を振って受付へと歩いていく。周囲はそんな彼らに見惚れたり、尊敬の眼差しを送っていた。

 ミナとレアも上級冒険者の心持ちを感じ取っていたのだった。



 

 バルドたちが扉から出ていくと、普段のような喧騒がギルド内に響き渡る。

 二人は正気に戻ると、改めて依頼表を眺め始めた。正直に言ってしまうと……気が削がれてしまっている。出鼻を挫かれた。ミナとレアはひとつため息をついてから、白級冒険者の依頼表を確認した。

 最初は討伐依頼を考えていたが、今はそんな気持ちになれなかったのである。

 

「ミナ、今日は街中の依頼にしない?」

「……そうだな」

 

 レアの言葉にミナも同意する。そして一番下にある依頼表を覗き込む。色々な依頼がある中、二人はある依頼に目を留める。その依頼に手を伸ばしたのはレアだった。


「ねえ、ミナ。今日はこれどうかな?」

「いいと思うぞ」

「じゃあ、今日はこれにしよう!」


 そう言って彼女たちは受付へと紙を持って行ったのだった。


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